IS学園に入学後、一夏は定期的に実家に帰っている。
理由は家の掃除と読み終えた本と新しい本を交換するためである。
そんな事はマハードに任せておけばいいと思うが、これにはちゃんとした理由がある。
「あそこに行くの久しぶりだな」
一夏は書庫の中にある本棚の前に行くと本を慣れた手つきで動かしていくと何かが作動した音が聞こえた。
音が聞こえると一夏はそこから数歩下がると、床が開き、そこには下へ続く隠し階段が現れる。
一夏は仕舞っていた懐中電灯を持ち、薄暗い階段を降りていくと、先程開いた床が閉じたが一夏は動揺もせず、進んでいく。
階段を降りていくと、一つの大きな扉の前に行くとあらゆる角度から無害な赤い光線が一夏を探るように照らし、赤い光線が消えるとピー、という機械音が響くと続いて、鍵が開く音が聞こえると一夏は目の前の扉を開ける。
「千冬姉も知らない、父さんと母さんの秘密の部屋。今となってはこの場所を知ってるのは俺だけだな」
一夏は部屋の中を進んでいくと其処には書庫にある本よりも古い文献や嘗て両親が仕事の関係上貰った遺跡の掘り出し物等、その道の関係者なら目を輝かせるような物が並んでいた。
そして、一夏は二つある机の内、一つの机の上にある一つの写真を見る。
其処に移っているのは自分に似た男性と小さい頃の自分を抱きしめる優しいそうな女性、二人の間で照れくさそうにしている千冬。
この二人が一夏の両親であり、一夏を神話や伝承好きにさせた張本人。
小さい頃は親が神話について話すが、とうの一夏は理解出来ずにいたが、話している時の両親は何処か楽しそうで、一夏自身も二人の楽しそうな顔を見ていると楽しかった。
今でも、はっきり覚えている思い出。
両親の写真は千冬によって、殆どが捨てられたが、この秘密の場所を知らない千冬はこの世界で一枚だけ残った家族全員が残った写真。
一夏はこの秘密の場所を誰にも教えたくなかった。ここは自分と両親の数少ない繋がりであり、思い出の場所であり、一夏の安らぎの場所。
この場所は両親によって、織斑家の人しか入れないようになっている。
先程、一夏に当てられた光線は遺伝子レベルで、登録した人物か判別するモノで、該当しない人物だった場合、その人物を追い出す為のモノが数多く用意されている。
一夏は机の上にある、一つの神話が記された文献を取りだす。
「これはクトゥルフ神話か...。今回はこれを持って行くか」
ついこの間読んだのより、明らかに古く、少しでも取り扱いを間違えれば悲惨な状態になるだろう。
少なからずこれは俺に関わりがあるしな、と心でボヤキながら用意した段ボールに入れていき、その後も一夏の気になった文献を段ボールの中に詰めていくと、一夏はその場を後にした。
この時一夏はある気配を感じ取ると自宅前に待機させておいたマハードに段ボールを渡すとその場から、跳ぶと屋根から屋根へと跳んでいく。
その気配がしたところまで。
とある高層ビルが並ぶ街に時代外れな鎧を着た武者がビルの屋上に立っていた。
「よもや、この儂がまつろわぬ神になるとは何たる皮肉か」
武者は腕を組み変わり果てた現代の日本を見る。
「時代の流れとは恐ろしいモノよ。儂の居た時代から何百年と経つがここまで進歩するとはな。だが...」
武者は苦虫を潰した顔をする。
「時代が進むにつれ文明が進歩するのは是非もなし。だが、それに伴って精神が、思考が衰退しておる。む?」
武者は現代の日本を見て、落胆していると炎の翼を羽ばたかせて、一人の男性が武者の前に降り立つ。
「さっき感じた、気配はお前だな。まつろわぬ神」
「遺憾ながらそうだ。同郷の神殺し、いや、同胞よ」
「同胞?」
同郷の神殺しという事は日本由来の神だと分かったが、同胞の意味が分からない。
「大将同士顔を合わせたのなら、名を申さぬか!戦の作法も分からぬのか!!」
言葉遣いといい、その姿、覇気は戦国時代の武者を沸騰させる。
「...同郷の神殺し、白き王。織斑一夏」
「漸く名を名乗ったか...。ならば儂も名乗ろう」
武者は一泊おいて、帯刀していた刀を抜き、一夏に向ける。
「我が名は第六天魔王...、戦国の世に生まれし、風雲児。織田信長じゃ!いざ、尋常に」
「なっ!? チッ、白き王、織斑一夏...」
『勝負(参る)!!』
始まる、と思った一夏は持ってきていた刀を抜刀し、縮地を使い信長に接近する。
「セイッ!」
「ぬぅ!中々、いい太刀筋をしおるな。我が同類よ」
「アンタからしたら、俺達は同類だろうな!魔王を名乗り、神々を敵に回す者同士な!!だが、一つだけわからない事がある」
「ほぉ、何だ?申してみよ」
「アンタは
一夏の疑問、それは何故、織田信長がまつろわぬ神として存在しているのかというものだった。
一夏はありとあらゆる文献に目を通している。
その中には日本の史実に関するモノも入っている。
一夏の記憶違いで無ければ、親友で半人半神の英雄の様な神の血筋という訳でもなく、特に変わった出自を持つという訳でもない。
「そうだ。余は生まれついての神という訳でも、その血筋という訳でもない。だが、時代の流れと共に存在が変わるとしたら、どうだ?」
「なんだと」
互いに手を止める事も無く、互いに持っている刀で一進一退の攻撃をしている。
「まるで
「その答えは貴様の知恵を持って、導き出せ!」
「なら、そうさせてもらおう!」
「グッ」
一夏は斬り上げをした後、強烈な突きを放つ。
だが、そこまでダメージがあるわけでもなく、平気そうな顔をする信長。
「ふむ、やはり刀より、こっちの方が良いな」
「!?」
間合いを詰めようとした一夏は信長に接近すると虚空から現れた火縄銃を突きつけられる。
一夏は咄嗟に上体を逸らし、避けると突き出された腕を蹴るとその反動で後ろに後退する。
「今の攻撃に対応するとは...、その反射と判断力、それなりの場数を踏んだと見込んだ」
「両手両足じゃ、数えきれない数を相手にしているんでね」
「では、この鉛球の雨に耐えきれるか?」
「マジかよ...」
信長の周囲に現れた無数の火縄銃の銃口が一夏を捉え、その光景に冷汗を流す。
「燃やせ、焦がせ、焼き尽くせ!劫火は我の思うがまま、全てを焼き尽くす焔と成る!!」
「放てぇい!!」
「
迫りくる、弾丸の嵐を炎の斬撃を飛ばし、鉛球を溶かし、斬撃が信長に命中すると思ったその時
「ふぅん!」
「何?」
火縄銃と同じように虚空から現れた刀を掴むと炎の斬撃を両断する。
両断された炎は周囲のビルに命中し、ビルを燃やす。
「我が権能が鉄砲だけと思わぬことだな」
「チッ、なら!」
「さぁ、貴様の力見せてみよ!この儂が見定めてくれよう!」
「こいつなら、どうだ!無明三段突き!!」
「甘いわ!!」
「ガッ!?」
一夏は劫火の剣の形状を刀に変え、無明三段突きを放つが、信長によって防がれ、一夏の背後から現れた、四本の刀が一夏の身体を突き刺さり、痛みによって出来た一瞬の隙を突いて、信長は蹴りを放ち、その衝撃で後方のビルに衝突し、刺さった刀がより深く刺さり、中には一夏の身体からその刀身が姿を見せている。
「どうした?もう終わりか」
「この...、程度で、終わるかよ!!」
「それでこそだ。我が同類よ」
「グゥ...アァァ!!」
背中に刺さった刀を引き抜き、無造作に投げる。
刀を抜く度に、鮮血が噴出するが一夏はそんな事気にせず、刺さった刀を全部抜く。
不死の権能を使っているのに妙に傷の治りが遅い事を気に留めながら、一夏は聖句を紡ぐ。
「戦乙女よ!我に汝の武具を、我に勝利を与え給え!」
「刀の次は槍か!面白い!!」
「ハァァァ!!」
身の丈はあるであろう大槍を一夏は容易に扱うが、血を出し過ぎたせいか、少し視界がぼやける。
「撃ち抜けェェイ!」
「ハァァ!!」
「なんと!?」
「デイヤァァァ!!」
「グォアァ!?」
至近距離の一夏に向けて放たれた、弾丸は一夏が手を横に振るうだけで現れた炎によって消され、その炎を喰らった信長は驚愕している隙に一夏は大槍で信長の鎧を突くと罅が生じる。
「一つ聞こう、第六天魔王。お前は今の世で、天下統一を成し遂げるとしたどうする?」
「決まっておろう。ISとやらを破壊し、この腐りきった
「クソッタレみたいな回答ありがとうよ!おかげで、あの力が使えるよ!!」
「なんだと?」
一夏は一度、後退すると大きく上昇する。
「たおす、タオス、倒す、斃す!!お前だけは此処で倒す!!」
「グルァァァァァァ!?」
一夏の倒すという言葉に反応するかのように、槍はその大きさを変え、元の大きさの五倍以上の大きさになるが、更に大きくなる。
この槍は一夏の思いによって、重量とサイズを変える。
今、一夏は目の前の魔王を倒すという強い思いに共鳴し、最終的には十メートルに及び、重量は5トンを超えている。
超重量の大槍は慣性+炎によって、更に威力が跳ね上がり、その攻撃を真面に喰らう信長。
信長はそのまま、衝撃で地面に叩きつけられる。
「俺が最初に手に入れた権能だが、使いやすくもあるが、条件がメンドイ。それにここまでこの権能を使ったのは久しぶりだ」
「よもや、余の武具を壊すとは...。今世にここまでの豪傑が居るのなら、儂も本気を出すべきだろう」
信長は両手を広げ、叫ぶ。
「我は第六天魔王!我が前にひれ伏せい!!我が灼熱の焔は神仏に仇成す、紅蓮の劫火と知れィ!!」
鎧が砕け、鍛え抜かれた上半身が見え、信長が紡いだその瞬間、
「この紅蓮の業火は余が後世に語り継がれた、恐怖と畏敬の念が権能と成り具現化したモノだ」
「比叡山焼き討ちか...」
「その通りだ」
今の子供なら、聞いたことはあるだろう言葉。
比叡山焼き討ちは教科書に載る程の出来事なのだから。
一夏は思い出せる限り、信長はについて思い出す。
信長は豊臣秀吉、徳川家康に並ぶ、戦国三英傑の一人。
そして、家康と同じく神格化されている―――ここで一夏は信長が神として出て来たのか理解した。
「俺としたことが忘れてたぜ。アンタは明治天皇によって、健織田社、て所が創建され、其処でアンタは主祭神として、祀られてる。そこに長年積み重なった信仰によって、神格化したという事か。恐怖と畏敬ってのも一種の信仰だ。長い時間をかけて生まれた新しい神、それがお前だ!」
「よくぞ見破った!」
「オラッ!」
巨大かした大槍を振るうが、信長は容易に避け、掠っただけで新しく出来た、無人のビルが積み木崩しのように崩壊する。
幾度となく、繰り広げた攻防の最中、一夏は息を荒くして膝を着いていた。
「如何した、この程度か?」
「ハァ...ハァ...ハァ...。クソ、身体に力が入らない...、それに息苦しい...」
一夏は自分の身体に起きた、異変に困惑していた。
可笑しいのだ。それなりに体力があると思っている一夏だが、今までの戦闘より時間も少なく、そこまで、権能を使っている訳でもないのに体力の低下が速いのだ。
「身体の異常は...、その...炎か...。しかも、これは...呪いの類...!」
「ほぉ、この短時間で見破るとはな。貴様の想像通りのモノだ」
自分の魂がすり減っていくような感覚に危機感を強める一夏。
「この炎は儂の所業を具現化したモノ。「神秘」や「神性」を持つ者に対してはただ発動してるだけで、猛毒よ。時間が経てば経つほど、貴様を蝕み、最終的には死ぬことになるだろう」
「なんだよ...チートじゃねーか...。時間との勝負...これはアレを使うか」
「まだ、儂に立ち向かうか。その生きざまは良し!」
「俺にこの権能を使わせたこと...後悔させてるよ!お前の力、使わせてもらうぞ!!」
一夏は力の入らない身体に鞭を打ち、立ちあがると聖句を紡ぐ。
「我が宿敵にして、我が親友よ!我に力を、我に汝の朱槍を授けよ!我は汝の魂と共に戦場を駆け巡り、勝利を掴もう!!」
現れた一つの朱槍をて手にし、構える一夏。
信長は槍を手にした途端、槍から放たれる悪感もそうだが、一夏の雰囲気が今までとは比べものにならないほど変わる。
これは危険だ、と判断した信長は火縄銃を呼び出し、一斉射撃をするが、一夏は朱槍をペン回しの如く、指と手首を軽やかに使い全て、弾く。
「行くぜ!」
「ぐぅぅぅ、先程より、攻撃が鋭く、何より速い!?」
「オラオラオラッ!!」
残像が残すほどの連撃を信長は刀で捌くが完全には捌けず、身体の至る所から、血が流れる。
「その権能は何だ!」
「この権能は親友である、光の御子――クー・フ―リンから授かったモノだ!!」
「授かった?簒奪ではないのか!?」
「違う!奴は確かに
一夏はこの権能を授かった時の事を思い出していた。
「アイツは只、消滅するのを良しとせず、俺に自分を倒し、権能を奪うように言った。俺は心が痛かったよ。例え敵であっても、親友を討つなんてしたくなかったから!だがな、それだとアイツの思いを踏みにじる事になる!」
「クッ!」
槍に込められる力が増していく、この権能を使う一夏にはある決意があるからだ。
「だから、俺はアイツをこの手で討った!その時にアイツは俺にこう言った!!」
『俺の槍を、魂を使う以上、誰にも負けない強者であり続けろ』
思い出したせいか、一夏の目には薄らと涙が浮かんでいた。
「だから俺は負けられない!例え、どんな強敵が来ようと、抗えない絶望だとしても、俺は勝ち続ける!!どんな結果になろうと、俺は強者であり続ける!!それがアイツを討つ時に決めた。俺の
「グァァ!」
槍は信長の左肩を刺さり、棘となり、信長の左腕を破壊する。
「この...程度...、効かぬわ!!」
「ガァァ!?...グゥ!」
虚空から現れた刀が一夏を両断しようとするが、咄嗟に避けるが完全に避ける事が出来ず、左肩から綺麗に切り落とされるが一夏は信長の腹を蹴り、槍を引き抜くと同時に下がる。
肩から切り落とされた左腕は再生しない。
それは
それは一歩間違えれば死を意味する。
「そろそろ、ヤバいな...。これで終わりにする!」
「来るがいい!打ち砕いてくれる!!」
「我に敗北は無く、俺に敗走は無く、我にあるは勝利のみ!」
「三千の屍を超え、天魔降臨!」
禁忌を唱え、大きく跳躍しすると左腕から流れる鮮血が軌跡を描く。
『ゲイ・ボルクはな、ただ突いたりするもんじゃね。本来の使い方はな』
クー・フ―リンから教えて貰った本来の使い方、それは―――
「その胸に刻め!これこそが魔王の三千世界!」
「
本来の使い方それは――相手に向けて、投擲する事。
大きく振りかぶり、投擲した槍は閃光となり、神速の領域で信長目掛けて、突き進んでいく。
銃弾が当たってもその勢いは止まらず、このままでは不味いと思った信長は刀を呼び出し、重ねる事で即席の盾を作る。
「これを凌げば...「これで終わったと思ってるんじゃねーぞ!!」何ィ!?」
声のした方を向くと一夏が信長目掛けて、急降下していた。
「どっわりゃぁぁぁ!!!」
跳び蹴りの態勢を取り、一夏はそのまま死滅の朱槍を蹴る事で勢いを加え、バキンッ!と金属が壊れる音が立て続けに起きる。
「貫けェェェェェ!!!」
「グワァァァァァァァッ!!??」
最後の刀を破壊し、信長を貫くが勢いは止まらず、そのまま数メートル引きずられた所で止まる。
「目には目を歯には歯を、呪いには呪いをってね」
「そうか...、身体を蝕むこの感覚...は死の呪いか...」
「死滅の朱槍で刺された以上、お前に待ってるのは死だ。それにこの槍は例え、外れようが標的を追う。アイツ曰く『最大解放したこの槍は貫いたという結果を作ってから槍を放つという原因を作る』確か、因果逆転の呪いだったな」
「放たれた時に儂の敗北は決まっていたか...」
死滅の朱槍の究極の一撃は一夏の持つ、権能の中ではトップクラスだが、デメリットや発動条件が大きいため滅多に使う事が出来ない。
地面に磔にされた信長は負けた筈なのに何処か、清々しい顔をしている。
「まつろうぬ神になった事で...、儂の魔王としての格が落ちたか...。だが、まつろわぬ神になった事で、お主の様な豪傑と相まみれた」
意識が遠のいていくのを感じながら、信長は笑みを零す。
「魔王としての存在は生前の儂...、いや、儂以上だ...。なら、儂が...負けるの...是非も......なし...」
光となって消えた信長を眺めながら、一夏の身体が一瞬重くなったのを感じる。
これは幾度となく感じたモノ、権能を手に入れた感覚だ。
「まさか...史実の魔王と戦うとは...な」
戦いの緊張がほぐれ、意識が遠のいていく。
このまま倒れればメンドイ事になると思った一夏は大きく跳躍し、ビルの屋上の壁に寄り掛かると死滅の朱槍を解く。
「我は天に登る太陽と成り、空を羽ばたこう」
切り落とされた左腕を再生させ、マハードに自分の回収を頼むと連絡を入れる。
意識を失う最中、紅い眼をし、長い青い髪を後ろで束ねた全身青タイツを着た一人の青年が『たく、情けねー野郎だな。だが、いい面構えだったぜ』と言っている気がした。
次は臨海学校いけたらいいなー
5次ランサーの刺し穿つ死棘の槍と突き穿つ死翔の槍を合わせた様なモノだと思ってください。
個人的に信長のCVは個人的に若本さんです。