オータムを倒した一夏だが、新たな襲撃者にオータムの時より、警戒を濃くしている。
何故か、それは人間では出すことが出来ない気配を感じていたからだ。
「貴様、何者だ?」
「フフフッ」
一夏の問答にただ笑うだけ、一夏は刀を鞘に納め、かスールとジャッカルを取り出す。
不確定要素が多い敵に対しては先ずは観察し、対策練るのが常識であり、一夏はその大切さを知っている。
故に遠距離からの攻撃で、様子を見ようとした矢先。
「ハアアァァッ!!」
「あのバカ!?臨海学校で何学んだんだよ!!セシリア援護!!」
「嘘...あれは...、そんなはずは...」
「馬鹿セシリア!あんたも援護しなさいよ!!」
「っ!?は、はいっ!」
イノシシの如く突っ込む箒に頭を悩ませながら、援護する鈴だが、セシリアが思考の渦に捕らわれていたセシリアを正気に戻し、援護する。
蝶の様なISから、小さいパーツが放たれるとそれは間違いなく、BT兵器搭載型の特殊武装であるビットだ。
「ちょ!?あれセシリアのブルー・ティアーズと同じじゃないの!」
「あれはイギリスの第三世代型ISの、BT兵器搭載型試作二号機、サイレント・ゼフィルスですわ!」
鈴の攻撃をビットでけん制し、セシリアの狙撃を鏡撃ちで相殺し、迫りくる箒を蹴りで吹き飛ばす。
「私と兄さんの邪魔をするなッ!!」
「グ、ハァ...!?」
「あれは...」
「俺の...七夜の技か!」
サイレント・ゼフィルスはレーザーブレードで鈴を切り付けるが、その技に一夏達は見覚えがあった。
それは先ほど、まで一夏が使っていた『七夜の技』に非常に似ていた。
「ッ!?」
「所詮は模倣だよ兄さん。七夜の高速移動も出来ない、見よう見真似だよ」
「チッ...。お前の声を聴くと懐かしく、頭が割れそうになる...。何故だ...」
「それは兄さんが私の事を覚えているからだよ。記憶じゃなくて心が私を覚えている証拠」
「何?」
カキンカキン、とレーザーブレードをガン=カタの要領で防ぎ、反撃しているが、一夏は突発的な頭痛とその場に似合わない懐かしさに戸惑いながら、攻撃する。
レーザーブレードが頬を掠めるが、一夏はジャッカルをサイレント・ゼフィルスの搭乗者のバイザーに押し付ける。
「俺を困惑させるそのお前の顔拝ませてもらおう!」
「クッ!?」
カスールを真上に高く投げ、空いた手で突きだしたレーザーブレードを持った手を掴み、逃さないようにする。
連続で引き金を引き、マガジンが空になると同時に降りてきたをカスールに持ち変えると同じようにマガジンが空になるまで撃ち続ける。
空になると、一夏はカスールの銃身を持ちそのままバイザーに叩き付ける。
「オータムじゃ当て馬にもならないか...。流石は私の兄さんだよ」
「お前は何者だ...。何故、俺を兄と呼ぶ...」
バイザーに罅が入り、少しだけ砕けると、蒼い瞳が一夏をみつめると一瞬悲しそうな顔をする。
「...そんなの決まってるじゃない。兄さんが私の実の兄なんだから...。ねぇ、一夏兄さん」
「グッ...!そ、の...声は...俺の妹......!!」
言いようのない痛みが襲い、一夏は後退すると頭を抱え苦しみだす。
苦しみ出す一夏の頭に掛かった靄が晴れるよう感覚が起きると、今まで忘れていた記憶が蘇る。
いつも自分の後ろについてくる一人の年端もいかない少女、いつも一緒に遊んでいた少女、両親と一緒にどこかに行ってしまい自分と離れたくないと泣き叫ぶ少女の名は――――。
「...織斑、マドカ」
「え?一夏、それはどういうことだ?」
「ようやく思い出したんだね。妹の名前を忘れるなんて...いけない兄さん」
「「「「「「っ!?」」」」」」
失った記憶を取り戻した一夏は目の前の人物がマドカであると思い出すと、箒は一夏に説明を求めようとするが、マドカは嬉しそうに言うと、壊れかけのバイザーを取ると一夏以外の全員が目を見開いた。
目の前のマドカの顔は千冬と瓜二つなのだから。
「俺の両親が居なくなる時に、一緒に連れていったのがいるそれが――」
「それが私。途中で私を施設に預けて二人はどこかに行ったけどね」
「じゃ、織斑先生と一夏の...」
「あぁ、実の妹だ」
実の妹と言う言葉に誰もが息を飲むが、彼女の戦闘力の高さに納得がいった。
だが、誰もが動かない中、突如マドカの周りが爆発した。
「感動の再開中悪いけど、この学園を守護するものとして、貴方達の行いは認められない。これ以上、手荒な真似はしたくないの。投降しないなら、そのきれいな体に傷ができるわよ」
「その程度の攻撃で私に傷を付けることが出来ると思っていたのか?」
爆炎が晴れるとそこには外傷も無く、三日月の笑みを浮かべるマドカから出る、
「何故だ!お前は人間だろ!!なのになんでまつろわぬ神と同じ気配がするんだよ!!」
「まつろわぬ神?」
「白き王と呼ばれ、戦い抜いてきた神殺しである兄さんが分からないはずがないもんね!兄さんなら、これがなんのまつろわぬ神かわかるんじゃない?」
「...リリス」
「せいかーい」
リリス
旧約聖書やユダヤの伝承など多くの書物に記され、男児を害すると信じられていた女性の悪霊であり、サマエルの伴侶、俗説ではサタンの伴侶などと言われている。
その起源は旧約聖書より前であり、その原型ともいえる存在もある。
着物をベースにした衣装を身に纏う。それは嘗てリリスが着ていたものだ。
「リリス?神殺し?何を言っている貴様!」
「兄さんに蔓延るうっとおしい女...。消えちゃえ」
「っ!?」
「なんで邪魔をするの?兄さん」
「目の前で知り合いが死ぬのは目覚めが悪くてね...。それに
何処からともなく出した大鎌で箒の首を刎ねようとしたマドカの攻撃を鞘で受け止める一夏。
「箒、お前は退け!」
「な、なぜだ一夏!?」
「お前じゃ、相手にならないからだ!例え、ここにいる専用気持ちが全員で戦っても勝てない!」
「お姉さんの実力舐めないで頂戴!生徒会会長は常に『最強』であれってね!」
「えぇい!これだから、何も知らない連中は!!戦国の世に生まれし魔王の剣よ!」
「グッ...!?」
一夏は箒と楯無を簪たちのいる方向に蹴り飛ばすと虚空から現れた、刀を地面に突き刺す。
地面に突き刺した剣が、境界線の様になる。
「そこから出るなよ!何が起きても、俺は知らねえぞ!!」
「フフフ、他者を気遣うなんて、本当に優しいね兄さん」
「答えてくれ、マドカ」
「ん?」
警告を出した一夏はずっと気になることを聞く。
「何故、お前からリリスと同じ気配がする?お前は人間だろう」
「確かに私は人間だよ。でもね、少しずつ人間を辞め始めているってのが正しいかな」
「何?」
一夏の疑問に答えるとマドカは自分の身に何があったのか語り始める。
「思い出したように、私は両親に連れてかれ、何処かの施設に預けられ、身寄りの無い私を亡国企業が引き取ったんだ」
「つまり、恩返しか」
「違うよ。手段だよ」
「手段?」
「そう、手段さ。私は兄さんと離れて寂しさのあまり死にそうで、心に穴が開いた気分だったよ。でも、ある時気づいたんだ。私があの家に戻るだけじゃ、この穴は埋まらない。兄さんの全てを独占しないと気が済まない!!」
マドカの語りを聞いたとき一夏はあるワードが思い浮かんだ。それは“ヤ”で始まって“レ”で終わる四文字のワードだった。
「だから、兄さんの周りにあるもの全部壊す。友人も、思い人も、家族も有象無象全て...、兄さんに纏わり付く蠅を消す...、世界なんてどうでもいい、周りの人間なんて勝手に死ねばいい...。兄さんが居ればそれでいい...、兄さんの顔も、身体も、声も、流れてる血の一滴全て、兄さんの全てを私のモノだ!邪魔をするんなら皆、消えちゃばいいんだ!!」
「こいつ、狂ってやがる...。病みすぎたんだ...」
一夏が連想した通り以上のヤンデレであった。
「だけど、私には力がない。例えISに乗っても神殺しの兄さんには勝てない。兄さんを奇襲して、拉致監禁しようと思った時だった。ある日、夢の中で黒い影が私に『兄を自分のモノに出来る力』を挙げるって言ってね。何を言ってるかわからなかったけど、その影が封印されたリリスの居場所を教えてくれたんだ」
「俺の封印を解いたのは...」
「うん、私だよ兄さん。石板に封印されたリリスを現世に復活させたのはいいけど、身体が弱っていてね。私の肉体を乗っ取ろうとしたんだけど、逆にリリスの全てを取り込んだんだ。それがあの影が言っていた力だって理解するのに時間はかからなかったよ」
「おいおい...、異常もいい所だろ...。取り込むって前代未聞すぎ...」
「これも兄さんへの愛がなせる技なんだよ」
「愛って怖いなっ!?」
マドカの言っていることが、真実なのは間違いないんだろうが、人の身で神を取り込むなど、どのような事態になるかわかったものじゃな。
だが、その傾向どころか、むしろ好調な様子から一夏はある仮説が出来た。
「リリスの力に引っ張られて、肉体がまつろわぬ神に近くなっているのか...」
「その通りだよ兄さん。だから」
「グァ...!?」
『一夏(君/さん)!!』
「ISの時より早く、そして重い攻撃を出せるんだよ!」
一気に距離を詰めたマドカは一夏の鳩尾を殴るとステージの壁まで吹き飛ばす。
「本来のまつろわぬ神よりも下とはいえ、この威力か...」
「普通の人間なら、胴体が真っ二つになっているのに...、流石は神殺しだね」
まつろわぬ神と神殺しの力関係上、まつろわぬ神が上だが、現在のマドカの力はまつろわぬ神より下でありながら、神殺しより上であると一夏は考えた。
ここである疑問が一つ出てくる。
「兄さんの考えていることは分かるよ。私とリリスの相性が良かったのか、ものの一か月で6割くらい使えるようになってね。呪力も人間だった時とは比べるのが馬鹿馬鹿しいくらいに上がったよ」
「予想通り...。だが、ここでお前を助けないとこの後どうなるか分からん。悪いが倒させてもらう!」
「傷つけられるの?家族を大切にする兄さんが?」
「無明三段...、クッ...」
一夏は虚空から出した刀を引き抜き無明三段突きをしようとするが、寸前で止まり、刀からガチガチ、と振るえる音が聞こえる。
「そうだよね。出来ないようね!兄さんは家族を傷つけられない、大切な家族に優しいもんね!そんなんだから、兄さんの周りに虫が蔓延るんだ...」
「クソッ!震えが止まらない...、マドカを斬ることに戸惑ってやがる...、ガ、ハッ...」
震えが止まらない一夏を壁に投げつけた次の瞬間、マドカが一夏の顔の近くまで接近し、片手を壁に置いていた。所謂、壁ドンである。
一部の女子が居れば黄色い歓声が響いただろう。
「兄さんの心を手に入れるのなら、周りを排除した上で実力行使しないと...。でも、私は周りに見せつけるのが好きなんだ」
「一体、何を......ムグッ!?」
『あぁっぁぁぁぁぁ!?』
「殺殺殺殺殺殺殺」
一夏の頬を抑えると一夏にキスをしたのだ。
その光景に一夏ラヴァーズは悲鳴を上げ、一部の女性は暴走していた。
その様子をマドカは眺めながら、足元に闇を広げ、そこから大量の蛇を差し向ける。
「んっ...、まだ私の愛を受け取る気にならないの兄さん?せっかくここまで大胆になってるのに...」
「プハッ...、そんなことに積極的になるな!俺は家族にそんな関係を求めない!!」
「むぅ...、なら、もう何も考えれなくなるくらい熱く情熱的で、激しいのをしよう。フフフッ、何もできないまま兄さんの事を見守ることしかできない...ゾクゾクするね」
「うわぁー、ヤンデレと同時にSだよこの妹...、ガッ!?」
「私から逃げられないように...、動けないにしないと」
両腕から出てきた蛇がピン、と伸びると鋼の如く硬くなった蛇を一夏の両腕に刺し、動きを封じる。
そして、一夏の唇に触れようとした瞬間、二人の間に一筋の刀が割り込む。
「見ない間に、ずいぶん生意気になったな。マドカ」
「邪魔をしないでよ、姉さん」
「両親が居なくなった時、一夏を守ると決めた!マドカお前が戻るのなら...」
「守る?フフフッアハハハハハ!!お笑いだよ姉さん!兄さんの事何一つ知らず、守ることなんて出来てないくせに...。その上私を守るぅ?寝言は寝てから言いなよ!!」
「グッ!?」
一夏を助けるように入った千冬だが、マドカの言ったことに唇を噛むが、マドカが千冬の頭を掴むと地面に叩き付ける。
「結局、口だけで何もできない。世界最強の称号に甘んじた道化らしいよ」
「クッ...本当にあの優しかったマドカなのか...」
「私は私だよ。私の邪魔をするならたとえ姉さんでも...」
千冬に大鎌を振り下そうとしたマドカの前に一つの影が立ちふさがる。
「磔にしたはずなのに...、邪魔をするの兄さん?」
「千冬姉はお前の家族だろ!なのに何故!?」
「例え家族でも、私の障害になるなら排除するまで」
「ヤンデレになったせいか、それともリリスを取り込んだせいか、何方にせよ性格が変わりすぎている!!」
先ほどまで一夏が居た場所には刺さったままの蛇と刺されたときに付着した血が残っていた。
七夜の短刀で防ぐ一夏だが、その手からは血が零れ落ちている。傷が塞がっていない証拠だ。
「このままじゃ、何もできない...。なら!」
「何をしている一夏!」
「グッ...」
短刀を自分の左肩に刺し、引き抜く。
突然の自傷行為に戸惑いを隠せない千冬。
だが、これは一夏の気持ちを切り替えるために必要な事なのだ。
「俺はお前を助けるために心を鬼にする!行くぞ!!」
「おいでよ兄さん!すべて受け止める、人間の兄さんも、神殺しの兄さんも全部全部!!」
「我は天を照らす太陽と成りて、蒼天に舞う不死鳥となる!!」
大鎌を持ち飛翔するマドカを炎の翼を広げ、羽ばたくき追撃する一夏。
六本の黒鍵を持ち腕をクロスさせながら、進むとマドカの背後に闇が広がると、そこから大量の蛇が雨の様に襲いかかる。
「マハード!マナ!そいつらを頼んだ!!」
「任せなさい、一夏!」
「一夏!貴方は妹を救うことに専念してください!!」
「こんな時でも...そいつらの心配かい兄さん!!――グハッ!?」
飛来する蛇を黒鍵で防ぎながら進み、マドカに接近すると力を一点に集中した右腕の突きを放つとマドカは体勢を崩し、地面に落下する。
これを見た鈴はマジカル八極拳でしょあれ、とつぶやいていた。
蛇を防いだ時に刀身が砕け、柄だけになるとその場に投げ捨てる。
「これが兄さんの人体破壊に特化した八極拳...。中々の威力だね...」
「内臓を破壊するつもりでやったんだが...甘かったか」
「内臓は破壊されたよ?でも、すぐ再生したけどね。もともと戦闘向けじゃないから」
仕方ないか、というマドカだが実際は一夏と相性がいい。
フェニックスの権能は元を辿れば、太陽神ラ―であり、その神格を受け継ぐフェニックスの権能は太陽の属性を持つ。
太陽は闇夜祓う光だが、夜は太陽を遮り、深淵に陥れる闇であり、互い相克関係である。
故に一夏がフェニックスの権能を使おうと夜に彷徨う悪霊であり、冥界に属するリリスの力を持つマドカの攻撃は一夏の再生を著しく低下させる。
現にフェニックスの権能を使っている一夏だが、両手の傷はまだ塞がっていない。
「ゼェエヤァァァ!!」
「効かないよ。兄さん」
「チィ!!」
千冬から離れ、雷電を纏い、雷光を放ちながら遠距離から様子見する一夏だが、マドカは大鎌で雷光を切り伏せながら突き進と大鎌を振り下ろすが一夏は黒鍵を交差させ、防ぐが罅が入る。
後ろに下がろうにも、飛来してくる蛇が行く手を阻み、近距離を仕掛けようにも傷を負えば致命傷になりかねない為、遠距離からの攻撃するも大鎌で切り伏せられる。
「流石、兄さん。例え戦闘向けの力じゃなくても、相性が悪いことに気が付いて、遠距離からの様子見...。でも、それだけと勝てないよ!!」
「チィ...。月と狩猟の女神よ!汝が授けし、弓は蒼穹の彼方を射抜く一矢と成る!」
「クッ...!」
まだ公開していない権能を発動させ、漆黒の弓を出現させるとマドカの持っている大鎌に向け放つ。
一夏はマドカの攻撃を避けながら、同じ個所目がけ射っていく。
「威力はある...。だけど!!」
「セイッ!!」
「なんという命中率...。流石は『外れることがわかった上で射った』時しか外さないと言われるほどの名手なだけある。だけど、その権能は決定打に欠ける!!」
「これで...!」
「ナッ!?」
大鎌を横なぎにしようとしたマドカだが、弓を最大まで引き絞った一撃を受けると大鎌は射った場所から真っ二つに割れる。
「例え、神の武器だとしても形がある以上、限界はある。同じ場所射抜き続け、ダメージを蓄積させ、最大の一撃を与えれば壊れる」
「流石は兄さん...。常人では、出来ないことを平然とやってのける...」
口で言うのは簡単だが、実際にやれと言われれば止まっている的であればまだしも、動いている的なら無理難題に近いだろう。
一夏が戦いの中で培ってきた人並み外れた集中力と精神力によるものだ。
だが、マドカは不敵な笑みを浮かべ、一夏は不思議に思っていると左足に強烈な痛みが走る。
「グアッ!?...足が...動かない」
「左足のアキレス腱を食われたからね...。左足は動かせないよ」
「小癪な...。アァ...!?」
闇から這い出た蛇に左足アキレス腱を食い千切られた一夏は左足に力が入らず、片膝を突く一夏だが、心臓が大きく跳ねると痛みが走り、胸を抑える。
「...その目から感じる不快感...気に食わない...」
「グワァァァ!!??」
『一夏!!』
「フフフ...」
左目が白から黒に反転し、赤い瞳に変わり、何やら模様のようなものが浮かび上がるがマドカは左目から感じ取れる不快感から一夏の左目を抉る。
その光景を見ていた者は悲鳴と心配が混ざった声で一夏を呼ぶ。
通常ならこの程度の怪我、どうという事ないのだが、フェニックスの権能が雀の涙ほどしか効果が出ない以上、再生は期待できない。
一夏の強みである、再生が使えない今、一夏はどうすればこの状況を打開できるのか考える。
撤退させるにも、一歩間違えればマドカが死ぬかもしれない強力な権能しかなく、自分の権能の内容に初めて悔やむ一夏。
だが、一つだけ使った事のないのがある事に気づく。
「イチかバチか試すしかないな...」
「何を...?クゥ...」
「い、...一夏?」
「GUUUU...」
一夏が動物の皮を取り出し、身に纏うと一夏の身体が変化が起きる。
一夏の髪が薄紫色に変わると、全身が黒い靄に覆われ、靄から呻き声が聞こえ、その姿に誰かが一夏の名を呟いた。
「GUUUAAA!!」
「クッ...!」
咆哮と共に一夏はマドカに接近し、体当たりを喰らわすが、寸前で避けると上空に避難すると両腕から翼の様なものを出した一夏が追跡していた。
突きだした右腕を掴むとその勢いを利用し、背負い投げをするマドカだが、弓を射ながら体制を立て直す。
先ほどマドカが掴んだ腕の部分の靄が取れるとそこには人間には決してない翼が生えていた。
射られた弓はステージに大穴を開け、マドカは自分に向けて射られた矢を掴むと一夏の腹に突き刺す。
「GUU...UAAAA!!」
「何!?...グアァ?!」
突き刺さった矢を気にせず掌底を叩き込まれたマドカはステージの壁を破壊しながら飛ばされる。
そして、一夏はマドカが飛ばされた方向を見つめながら着地すると、蛇の矢が一夏に飛来するも弓矢で落としていく。
「す、すごい...」
「これが一夏の実力...」
「これが神殺しの戦い...」
一夏とマドカの戦闘を見ていた一夏ラヴァーズはその戦闘の現実離れした光景に口がふさがらないでいた。
だが、そんな中でマハードは思いつめたような顔をしていた。
「あの靄が覆ってから一夏の生物の領域を超越した動き、そしてあの翼...」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「あの権能は初めて見るが、あの動きと変化が気になってな」
「あのような動きが出来るほど変化があったのではないのか?」
「いや、それにしても...。あれは...」
何かがおかしい、そう思い動き回る一夏を見つめるとある事に気づく。
腹に刺さった矢だけでは到底出ないであろう血と靄が部分的に消えたことで見えた一夏の身体と右目を見て、ある事に気づいた。
「あの理性のない目...、あの不自然な傷...。まさか、あの権能は一夏の理性を失わさせ、人体を無理やり変えているのか!?」
「それはどういうことなの?」
「あの権能は一夏の理性と引き換えに発動するんです。腕を翼のように変化させ、飛行し、人を逸した動きができ、理性を失っても論理的な思考を維持している。ですが、人体の構造を無視した機動や変化は全身に絶えず激痛を与えているはずだ...」
「それって...」
「このまま使えば一夏が危険だ!最悪、死ぬぞ!!」
マハードの観察によって、一夏の権能の内容が明らかになる。
マハードの推察通りで、肉体の強化と変化を使用者に与えるが、その代償は一夏の身体を絶え間なく激痛が襲っている。
ガラガラ、と壊れた壁を支えにしながら、マドカが一夏の前に再び現れる。
「あと少し...耐えれば...、兄さんに限界が来る...はず...」
「あいつ...まだ...」
息も絶え絶えで現れたマドカだが、一夏はマドカ見つけるなり、接近するとマドカは再び大鎌を構える。
「ハァァァァ!!」
「GUAAA!!」
拳と大鎌が交差すると静寂が訪れる。
「ゲホッゴホッ...、うぅぅぅう...」
「AArrr...」
一夏の拳がマドカの腹部にめり込むように殴り、マドカの大鎌は一夏の左肩を軽く切り込み、数歩交代すると倒れる。
「勝ったんだ...神殺しの兄さんに勝ったんだ!!」
「一夏が...負けた...。そんな...」
「これで兄さんを...。グハッ...」
勝利の笑みを浮かべ、おぼつかな足取りで一夏に近づくマドカだが、一夏のすぐ目の前まで行くと吐血し、血だまりを作る。
殴られた腹部を抑えながら、一夏に触れようとした時、マドカにプライベートチャンネルが開く。
『オータムは回収したわ。M、撤退しない』
「馬鹿な!兄さんを目の前にして撤退なんかできるものか!!」
『そんな手負いの状態で、そこに居る全員を相手にするつもり?さすがの貴女でも苦戦は免れないわよ』
「それでも、私は...!」
『そんな状態で戦って万が一一夏君に当たったら?傷だらけの貴女は一夏君を守りながら、戦えるの?もし、貴女が死ぬ可能性だってあるのよ』
「クッ...、了解...」
そういうとマドカは上空に少しづつ浮かんでいく。
「待て!逃げるのか!!」
「今は兄さんを預けてあげるよ。...でも、必ず兄さんをお前たちから奪って見せる」
「うぅ...、マド...カァ」
「待ってて兄さん...。必ず、必ず迎えに行くから」
「行くな...。マド...カ...」
マドカに向けて手を伸ばし、今に消えそうな声で呼ぶがマドカはその場から離れていく。
小さくなっていくマドカの背中を見ながら一夏の意識は途絶えた。
イシュタルは手に入れたけど...中の人ネタなのか所々にリリなののセリフが入っている。
邪ンヌ礼装落ちないよぉぉぉ!!??
JDASLは癒しで、何かに目覚めそう...。ハァハァ
因みにリリスの見た目は最弱無敗に出てくる切姫を更に大人にした感じです。
リリスを取り込んだことによって見た目も変わっています。
身長も大きく出るとこは出ていて、目は青と紫のオッドアイになっています。