インフィニット・ストラトス ~蒼天の魔王~   作:ハルン

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長かった。

今回は過去最大となっています。

途中extralinkとか、バトオペ2とか、グラブルとか、FGOで忙しくて全然進まなかった。

FGOガチャ?魔神さんとか、以蔵さんとか、一役三人とかいう豪華なワルキューレとか、正義の眼鏡・セイバーマンことシグルドとか、福袋で実所持鯖のアガルタの17歳教とか、スカディとか引いてましたよ。

バトオペは基本、ガンダム(バズーカ装備)ジムスナカス、ジム改で楽しんでますね。

宇宙空間でのスナイプは楽しい。



因みにマハードの声は誰で再生されます?私は福山さんです。


君臨するは古参の王 挑むは若手の王

一夏と護堂が女性版範馬勇次郎やブロリー、凄女(せいじょ)等と陰で呼ばれている腕力至上主義筆頭、羅翠蓮と邂逅していた頃、マハードたちは思わぬ来訪者に緊張が走っていた。先日ロサンゼルスに現れた蛇神レヴィアタンがこの地に現れ、奇妙な魔女や女嫌いの一夏の弟弟子に当たる人物などで外は外で賑わっていた。

 

 

「レヴィアタンですか、先日ジョン・プルート・スミスと暇つぶしで参戦した一夏によって撃破されたと聞いていましたが、生きていたのですね」

 

「いや、暇つぶしで参戦って...。一夏君はどれだけ暇なのかな?お姉さん気になちゃう」

 

「一夏曰く『動物と植物が俺に教えてくれる』だそうです。なんでもギルガメッシュ叙事詩に出てくるエンキドゥを倒してから気配感知が異常なレベルで上がったそうで」

 

「いつでも対処できるように警戒態勢に入る? お兄ちゃん」

 

 

ええ、と頷くとマハードとマナの手元に剣と小さな杖が何処からとまなく飛来する。一夏が二人の為、希少金属であるオリハルコンやミスリル、ダマスカス鋼など現代において入手困難もしくは手に入らない素材を贅沢に使った武具である。地上に居るのであれば自分の手元に来るようになっており、優れた性能があり、マハードの持つ剣に関してはエリカとリリアナの持つ名剣にも劣らない代物である。未熟なマナに関しては、魔術の補助的役割が強い。警戒態勢に入る中エリカとリリアが考察していると参考にマハードの意見を聞きだした。

 

 

「『黒き魔剣士』の異名を持ち神官である貴方から見て、あのレヴィアタンはどのような存在だとお考えですか?」

 

「我が主、夜叉王は半年前にロサンゼルスの守護聖人と共闘で、蛇神を撃破したと先ほど言いましたが、その蛇神を《蠅の王》の邪術師が単独で顕現されたと推測されてますが、これに関しては私や主も疑問を抱いています。単独で顕現が出来るのかと」

 

 

マハードは一端話しを切ると日光山に居る蛇神を一瞥すると話を再開する。

 

 

「《蠅の王》の総帥であるアーシェラと呼ばれる魔女でしたが、先刻目撃した魔女もアーシェラと名乗り、ロサンゼルスから来たと言っていました。恐らく、先程目撃したアーシェラと呼ばれる魔女とロサンゼルスに現れた魔女は同一の存在と見ていいでしょう。同名の魔女が現れるとそこに蛇神が現れた。話に聞いた外見的特徴と一致しています。そして、アレは魔女などと呼ばれる存在ではなく―――信じがたいですが、アレは真祖と呼ばれる存在だと推測します」

 

「真祖?」

 

「詳細は省きますが真祖とは、地母神と呼ばれる神の中には弱まり、落ちぶれ、神の座から追放され神でなくなった存在です。この真祖がアーシェラだとするのであれば突然現れた蛇神に説明が付きます。彼女が元の姿に戻っただけですからね」

 

「アーシェラという名前、アシェラトが変化したものかもしれないわね。旧約聖書を始め各地の神話に登場する海獣レヴィアタンは、メソポタミアのアシェラト女神を悪しき獣として語り替えた神格ですもの」

 

 

そういうと魔術関係者は日光山の上で縦横に走る多少の全身の傷から、血を流し日光山を鮮血で紅に染めている蛇神を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

近くの西天宮の境内で様子を窺っていると甘粕と合流した。日本古来の隠密術に長けたエージェントである彼がここに来たという事は、現状有益な情報を持ってきたと考えていいだろう。

 

 

「私からの報告です。陸鷹化(りくようか)と思われる少年は東照宮の奥社にて待機中。何やら人待ち顔でしたな。で、ご存じなかったと思いますが、その祠はあなた方の言うところのアストラル界に繋がる扉です。《鋼》の軍神が封じられています」

 

 

一気に言い切られたためエリカ達は苦笑いした。

 

 

「甘粕冬馬、そんな重要機密をわたしたちに話してもいいのか?」

 

「機密は可能な限りなしにするから、一緒にやろうということでしょ」

 

「まぁ、そういうことになります。あとうちの上司から草薙さんと織斑さんの居場所についての伝言があります。こいつを踏まえる共闘するメリットは大いにあるかと」

 

 

さりげなく告げた最重要情報に護堂側は呆れ、一夏の裏顔を知っている者は「なんだいつものことか」とむしろ安心していた。マハードとマナは、友人の家に遊びに行くと言い見送った目の前で迷惑夫人の『通路』に呑みこまれる光景を見たことあるせいだろうか。各々自分たちが持っている情報を交換する。

 

 

「ははあ。思いがけない名前と、予想通りの名前が出てきましたな」

 

「さっき《鋼》の神格が眠っていると言ったな? あのレヴィアタンはまるで《鋼》を呼び寄せるための餌に見えるぞ。死にかけの体をさらして、生贄の様ではないか」

 

「生贄と言い得て妙ですな。実際その通りでしょう」

 

 

リリアナの甘粕は頷き、《鋼》を封印している『弼馬温』の封印の解き方を呟いていると、いきなり祠の格子戸が開き、内側から強烈な風が吹き出す。絶世の佳人が天女の如く空を舞っていた。上空から地虫でも眺めるかのように興味なさげな表情。彼女が飛び出そうとした直前、エリカは叫んだ。

 

 

「お待ちくださいませ、羅濠教主! 我が主、草薙護堂はいかがなさいましたか!?」

 

「特別に直答を許しましょう。金髪の髪の娘よ、今日この時が初対面の筈、この羅濠の竜顔何処で知りました?」

 

 

美しい、しかし臓腑を抉るような迫力、一目見ただけで分かるほどの次元の違いを実感する。片膝を地に着け、騎士の礼を取りながら答える。

 

 

「我が名は、エリカ・ブランデッリ、《赤道黒十字》大騎士。拝謁の栄に浴したのは、おっしゃる通り本日が初めて。私はただ全ての状況を鑑みて、御身の御名は羅濠教主ありえないと推察しただけでございます」

 

 

これまでの情報を照らし合わせ、その名を言い当てたのだ。これはエリカの思考が並外れて早かっただけ。

 

 

「草薙王は、目端の利く臣を持っているようですね。おまえの機知に免じて答えを授けましょう。―――かの、王たちは幽世にて武威に屈し、何処かへと逃げ去りました。しかし、退却も兵家のひとつ。そして、この羅濠より退いてみせた手際の見事さをほめるべきでしょう。そして、夜叉王は相変わらず、奇策を講じ、相手を欺き悪だくみと密事には、毎度ながら呆れるを通り越して、天晴と言いましょう」

 

 

羅濠との戦いはもう終わっていたことに、マハードは「あぁ、今回もダメだったよ。アイツは一歩歩けば面倒ごとに巻き込まれるからな」とどこぞの天使長を思わせる台詞を内心呟きながら、「まぁ、一夏なら問題ないでしょう」とほぼほぼ心配していなかった。むしろマハードの中で、「大丈夫だ、問題ない(キリッ」とどや顔をしている一夏の姿が頭を過った。

 

 

「ならば教主......!」

 

「これ以上は控えよ、大騎士! わたくしは今、征路の途上にあります。お前ごとき顧みている暇はないのです!」

 

 

体が震えるほどの一喝。 いや、震える等と生易しいものではなかった。その場にいた全員が暴風雨にあおられたかのように吹き飛んだ。木々に叩き付けられたエリカ達は立ち上がった時には、羅濠はレヴィアタンのいる東照宮上空に向かっていた。

 

 

「いやはや。衝撃的としかいいようのない方でしたな、色々な意味で」

 

「羅濠教主がまさか女性だったとは...」

 

「主の師匠ですからねあの人。幼少期に負ったトラウマは相当なもので修行以外で遇うことを忌避する数少ない人物ですよ」

 

「あの人が一夏さんのお師匠さんなのですか? 織斑先生の上位互換の様な人の様ですが、幼少期の一夏さんに何がおありに?」

 

「最年少カンピオーネである主を拝見のつもりが、実力を測るという事態に発展し戦闘になり権能が二つしかない主は苦戦。有効打を与えたら勝ちという大ハンデの中行われました。実力差があり、一撃喰らっただけで腕は骨折、衝撃で後方の木々を倒しながら飛ばされ1Km離れた大岩にクレータを作ったり、徹底的に痛めつけられましたが起死回生の一撃により何とか条件を満たし、その果てない闘争心と素質に気が付いた教主が主を弟子にしたという経緯があります」

 

 

お前はどんな幼少期を送ってんだよ、と全員の思いが一つになった。IS組の中で「人間の範疇での強さ」が一番であるという認識が出来つつあった。

 

 

「だが、どうする? 草薙護堂や万理谷姉妹それに夜叉王を迎えに行くかレヴィアタンと羅濠教主の対応をするのか。いっそ二手に分かれるか?」

 

「そうね。できれば、そうしたいところね」

 

「でしたら、教主を追うべきでしょう。目の前にある問題を最優先すべきです。アストラル界に行くにしても準備が必要でしょうが、その時間すら惜しいです」

 

「アストラル界とはなんだ? それと一夏達を放っておいていいのか?」

 

「そうですね。現世と不死の領域の境目といえば大体分かるのですが...。簡単に言ってしまえば三途の川の一歩手前と言った所でしょうか?行くには世界移動(ブレーンウォーキング)という貴重な霊薬が必要です。まぁ、殺しても死なない人ですから、問題ないでしょう。彼に関する心配はするだけ無駄ですよ」

 

「そうね。護堂もあっさり終わる様な人ではないわ。それに一緒にいる彼女達も無事よ、きっと。あの二人の事だから、全力で守っているわ」

 

「―――そういうことでしたら、私がアストラル界にへ参りましょうか?」

 

 

突如聞こえた若い女性の声の方を全員が向いた。エリカやリリアナ、甘粕そしてマハードにも気取られずに者など滅多にいない。

 

 

「わたし、荒っぽい事は苦手なのです。だから、どうやって皆さんのお手伝いをしようか悩んでいたんですけど...。でも幸い、そちらの方面(・・・・・・)は専門家といってもいいですよ。お任せいただけませんか?」

 

 

各々、声の聞こえた方を見る中、エリカは珍しく驚きの表情が出ており、マハードは眉間に皺を寄せ飽きれていた。プラチナブロンドの二十代前半の美女は服装も相まって何処ともなく『お忍び街を歩く姫』を思わせる。取りあえず、彼女の頼ろうとマハード達は決断するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい豪雨に打たれる山小屋の中に二人の神殺しと隠居した老神スサノオと即身仏と亜麻色の姫君の二人の人物がいた。

 

 

「よりにもよって、なんでここに居るんだ? 俺は」

 

「え? お前の意思で此処に来たんじゃないの?」

 

「そりゃあ、オレの劔がおめぇらをここに連れてきたからよ。ほれ、天叢雲」

 

「やっぱ、この劔は俺の所有物ってことなのか」

 

 

羅濠との戦いで追い詰められた時、右手が疼き気づけばここ幽世にたのだ。この事を後に合流した一夏に話すと「厨二病でも再発したか?」と揶揄われる始末。お前たちの存在そのものが厨二だと突っ込む輩は誰もいない。

 

 

「おおよ。まだ完全に掌握していなようだが、いずれは完全に使いこなせるようになるぜ。まぁ、長い間一緒に戦った相棒だ、大事にしてくれや」

 

「銃刀法違反するつもりなかったんだけどな...」

 

「うんうん、そうだね。それもまた銃刀法違反だね」←暗器仕込み捲ってる人

 

 

一夏はともかく、この剣が無ければ護堂はあの場でタコせんべいの如くプレスされていただろう。まぁ、そうならないように一夏は事前に仕込みをしていたので問題なかったのだが。

 

 

「それはそうと、万理谷達を元に戻してもらうわけにはいかないのか?」

 

「いかねえなァ。俺はざっくばらんな方だが、これでも神の端くれなのさ。御坊や姫だって、人間どもの前に軽々と姿を見せるわけにはいかねぇ立場だ。魔王でもない人間がオレらのことろに来るのは認められねえ。ま、しばらく我慢してくれ」

 

「お? 珍しく神様ぽいこと言ってるぞ此奴」

 

 

護堂は手元にある大小二つの櫛があった。この場所に転移した時、気絶した二人に対し何か唱えると櫛に変えられたのだ。一夏は、こうなることを理解していたので幻想大陸に置いてき、終わったら呼ぶ予定である。

 

 

「なにやら、外では面白そうなことを起こしているようですな」

 

「起こしているじゃなくて、巻き込まれただ!」

 

「結局、どちらにしろ事の渦中にいる以上、対して変わんないって。後、その被害者ズラがむかついて殴りたくなる」

 

「理不尽!?」

 

 

包帯のないミイラ、干乾びた即身仏に力一杯反論するが、一夏の癪に障ったのか歯食いしばれ、と拳を握る。そんな二人に咳払いし、十二単(じゅうにひとえ)を纏った手前にあった水鉢を押し出すと、そこには上半身のサルで下半身は石であり眼球は赤く瞳は金色。酷く奇妙な姿である。

 

 

「実は申しますと、『弼馬温』の城内に猿王を閉じ込めたのは私たちでございます。特に中心となって事を運びましたのは―――」

 

 

姫君にちらりと見られた即身仏は、歯のない口を開いて笑った。

 

 

「左様。地上にあった頃のそれがしでございます」

 

 

なんでそんな面倒ごとを、という視線を送る護堂を尻目に一夏は話を聞いていると気になる単語が出来た。

 

 

「実は、我が国には厄介な『御子』が眠っておりましてな。()つ国より流れ着いた播神、最強の《鋼》なる御子でござる。この神を起こすぬ為に、猿王殿には竜蛇除けに招いたのです」

 

 

最強の《鋼》という単語が一夏の頭の中から離れない。それは、決して忘れる事も記憶の片隅に置くことも許されないと一夏の勘が訴えていた。それこそ、目の前のサルよりも重要な事だ本能的に実感しているからだ。

 

 

「なるほどな、あのエテモンはそういう役割で此処にいたのか。だから、中国ではなく日本にいる訳か...。お前らにとって最強の《鋼》を目覚めさせることは何を犠牲にしてでも阻止したい存在という事か」

 

「え? 一夏さんつまりどういうことですか」

 

「お前は前にペルセウスと戦ったな。アイツは何が原因んで顕現した?竜蛇と《鋼》の関係を思い出してみろ。そしたら分かる」

 

「それは竜が現れて、それを打倒すために現れたはず。《鋼》は竜蛇を倒すことが役割みたいな感じで...。あのサルは竜蛇を倒す役割で招かれて、ここには《鋼》が眠っている......あ!」

 

 

あのサルがいる理由は理解した護堂だが、ここに来てからよく聞く単語に疑問があった。

 

 

「ここに来てから、ひつばおん(・・・・・)ってよく聞くけど、それはあの神の名前なのか?」

 

別の方(・・・)なら、あながち間違ってはいないだろうけど、正確には違う。弼馬温はいわば天界から与えられた役職だな。厩で馬を管理するそれが弼馬温。まぁ、低い役職で激怒して唆されて改名したよな《天に斉しき大聖者》ってな」

 

 

護堂の頭にある名前が浮かび上がってきた。それはあの剽軽なサルの本名。神としての名。護堂は試しにその名を口にしてみると夜叉王は「ようやくか」と呆れ、スサノオは「へえ」とつぶやき、姫は目を見開き、黒衣の僧はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。

 

 

「なんだお前、エテ公の正体に気づいたのかよ」

 

「ちょっと思いついただけだよ。くそ、もしかしたらアテナより有名かもしれないだろう!」

 

「子供でも知ってるだろうな。絵本やドラマにもなってるくらいだし」

 

 

その正体の気づいた護堂は舌打ちした。徳川家康とかそんなレベルではない。

 

 

「あのサルをもう一度封印するには、どうすればいいんだ!?」

 

「『弼馬温』の呪縛を解こうとしているのは、唐国の君。あの御方をあなた方の手で掣肘なされば。猿王も再び眠りにつきましょうが......」

 

「俺が猿山を倒すから、お前翠姐相手な」

 

「俺に死ねっていうんですか!?」

 

「戦って死んで強くなる神殺し生活」

 

「そんなのいやだぁぁぁぁ!!?」

 

 

取りあえず、決意と覚悟を叫びながら地上に戻すように言うが、スサノオと黒衣の僧が猿芝居をを始め、一夏はそんなやり取り白い目で見ていると、亜麻色の姫君が護堂と一夏に迎えが来ていることを伝えると、護堂を送る。

 

 

「で、お前は行かなくていいのかァ?」

 

「行く前に確認したい事があってね」

 

「エテ公の事か?それはお前さんの手で見つけるべきもんだろ」

 

「あのモンキーマジックなんざレベルを上げて物理で倒すからいい。俺が確認したいのは最強の《鋼》だ」

 

 

そう一夏が聞きたいことは、ちらっと話に上がった最強の《鋼》の事だ。未だにその全貌が掴めないその存在の手がかりがあるのだ。それを逃すような真似はしたくなかった。

 

 

「俺の勘なんだが、その最強の《鋼》は、『全ての神殺しを滅ぼす、祝福されし王』と以前聞いた奴と同一の存在じゃないかって思っている」

 

「なァ。織斑、それをどこで聞いた?オレ達はそれを一切外に話したことは無いんだ。なのにお前は何で知っている?お前は何処まで掴んでいやがる」

 

「氷山の一角、俺達神殺しに対する抑止力であり、幾度も現れては倒す規格外な存在としか知らん。情報元は俺が嘗て倒したまつろわぬ神、旧神ノーデンスだ。こいつを倒し、『この世界を裏で暗躍する混沌』を倒さない限り、俺たちに未来はない、と言われてな...。戯言だと流せばいいだろうが、俺にはどうしてもそうは思えないんだ」

 

 

一夏の口から出た思いがけない推測にスサノオ達は、先ほどまでのふざけた態度は消え、真剣な表情になる。

 

 

「前者については、詳しい事は今は教えられないなァ」

 

「同一の存在なのかこれさえわかれば俺は、次の対抗策が練れる。だから答えてくれ」

 

 

一夏の言葉に誰も答えない。だが、それが何を意味するのか、長い付き合いの一夏に理解できた。

 

 

「沈黙は肯定と取るぞ?」

 

「好きにしな。だが、後者に関してはお前の方が知ってるんじゃないのか」

 

「『虚妄と狂気、そして狂信的な夢見る男は、本来は此処には存在しない外(・・・・・・・・・・)の神話を言い当てることで、それは存在すると肯定された邪悪』恐らくは、この世界で最も新しい神話であり、最も邪悪で狂気に満ちた神々。だが、その中の誰が当てはまるのか俺には分からない」

 

 

一夏は、自分の推測が当たっているという証言は手に入った。後は自力で見つけるのみ。あの二つの戦いは今までにない熾烈な戦いになるだろう。その時、自分や護堂は大切なものを護り、勝利をもぎ取れるのか分からない。出来る限りの事はするし、最善は尽くす『織斑一夏』という存在の全てを捧げてでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば湖のほとりに居た護堂は、立っていた。水は清らかで、木々を透き通る風は気持ちよかったが、護堂はあることを思い出した。

 

 

「―――ッ、そうだ!万理谷達は!?」

 

 

竹の櫛にされていた二人が、手元にない事に気づいた護堂は周囲を見渡すと湖の近くで折り重なる二人を見つける。

 

 

「...ここは、まだ幽世の中なのですね?」

 

「う~ん...頭が痛くて、ものすごくだるいです。お兄さま」

 

 

意識を取り戻した二人に安堵する。特に羅濠との邂逅時、様子がおかしかったひかりも回復してるのが確認できた。護堂は、二人に櫛されている間の事を説明する。

 

 

 

「大体の事は分かりましたが、一緒に居た一夏さんはどちらに?」

 

「そういえば、白い王様見当たらないです」

 

 

 

護堂と一緒に居た、一夏の姿見当たらない事に不思議に思った巫女二人の前にナニかが、上空から土煙を上げ飛来した。

 

 

「待たせたな」

 

「スネェェェクッ!...じゃなくて、一夏。もう少し安全な方法で来れなかったの?」

 

「この手に限る」

 

「この手しか知らないんでしょ!!なんで、いきなり『これから高度1000mからスカイダイビングを始める』ってなるの!?あの都市に行くとき普通に行けたよね!!?悲鳴すら上げる暇なかったよ!!気絶してたから!!!」

 

「最高のショーだと思わんかね!」(愉悦的な意味で)

 

「そんなに落ちたいんなら、一夏なんて、バルスされちゃえばいいんだよ!!」

 

 

土煙の中から聞こえた声に、心配するだけ無駄だと実感した。

 

 

「一夏さん...なにしてるんですか...?」

 

「いや、そのまま海門(ゲート)潜ってきてもインパクト少ないし、なら上空から行ったら面白いんじゃね?、て考えてな」

 

「もう...、あんなの...こりごり...」

 

 

楽しさとスリル、そして愉悦を求めた結果があの行動なのだろう。確かに、インパクトはデカいが、犠牲(同行)者は顔を真っ青にし、口元を抑えてる当たり相当な恐怖なのだろう。

 

 

「で、向かえは誰が来るんだ? てか、遅くね」

 

「もう来ておりますよ。やっと見つけました!」

 

「What?」

 

「うわぁぁ!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 

声がしたと思ったら、いきなり一夏達の前に一人の女性が立っているのだから、驚かない方が無理である。現にシャルロットは悲鳴を上げている。

 

 

「びっくりさせてごめんなさい。わたし、これでもあなた方の見方です。実はエリカ・ブランデッリとは以前からの知り合でもあります」

 

 

プラチナブロンドを輝かせる。優美な白人女性に一夏が近づくと握りこぶしを振り下ろす。

 

 

「痛い!?何をするのですか!」

 

「痛い、じぇね!お前こそ何をやってるんだ!!アレク(保護者)呼ぶぞ!!」

 

「待ってください!保護者って誰ですか!!もしかして、アレクですか!?そもそも、毎度のことながら、幽体なにのに痛く感じるの?!」

 

「魂とか魔術が関連してるなら、いくらでも権能で対応できるわ」

 

 

近づくくと何の迷いもなく、拳を振り下ろす当たり旧知の中なのだろう、と考える護堂は薄っすらと涙を浮かべながらゲンコツが落とされた頭部を抑える女性とは、どのような関係なのか気になった。

 

 

「来てもらってなんだけど、立て込んでるから名前を教えてもらえるか?」

 

「今回の出張では『匿名希望の謎の美女』で通すつもりなのですが...」

 

「エリクソンとアレクの番号は、と」

 

「で、ですが王のご下問とあれば、とぼけられませんね。仕方ありません、お答えいたしましょう」

 

 

色々と面倒ごとが舞い込んでいる為、時間が惜しい護堂は謎の女性の名前を訊こうとするも、答えようか迷ってる様子を見た一夏はこの女性の最も関わりのある二人の名前を出しつつ、スマホをいじる。あ、これチクられる、と理解した女性は名乗ることを余儀なくされた。

 

 

「名をアリスと申します。ときどき「プリンセス」等と呼ぶ方もいらっしゃいますが、わたしは恥ずかしくて口にできません」

 

 

これで問題ないですか、と一夏を見るアリスと名乗る女性。その名を聞いた祐理、ひかり、簪はまるで有名人でも見るかのような視線を送っている。ここまで来た経緯を話し、幽世に着くはいいものの中々見つからず苦労したと漏らすアリス。そんな彼女右は日本に来日した経緯を説明し始めた。

 

 

「実はわたし、ある魔女の足跡を追ってフランスからアジアに渡ってきたのです。今回羅濠教主が贄とした蛇神レヴィアタン。あれを融通したのは彼女の仕業です。私は追跡の対象を蛇神と教主に変え、日本にやってきました。そして、護堂さまの不在で困っているエリカ達にあいまして、協力を申し出たのです」

 

「傍迷惑な連中が、好き勝手にワールドワイドで暗躍してるんだな...」←戦闘の余波で色々壊してる人(予備軍)

 

「お、せやな」←世界中で有名且つ活躍、暴れまくってる人(末期)

 

 

アリスが日本来日の理由を聞いた護堂は、迷惑な連中もいるんだな、とブーメランともいえる事を口にしながら、周りからしたら自分たちがそれなんだよな、と思いのほか自覚症状のある一夏だった。そんな彼はここに近づく気配に気づくと、警戒度を上げる。現れたのは、猿猴神君の面影を持つサルであった。

 

 

「彼奴の分身みたいなのか」

 

「護堂さまの権能でなんとかなりませんか?一夏は、私達に対する被害が出るので結構です」

 

「俺の力は色々制限があって使いにくいんだ」

 

「あ゛?お前は少し、権能を手に入れる事を少し考えろ。お前ら、俺の周りに密着するように集まれ。そうそう、そんな感じ」

 

 

一夏が指示を出している間も20にも及ぶ猿共は、包囲しじわじわと追い詰めてくる。不安になる一行に対し、一夏が口角を二ィ、と上げると一瞬一夏の周辺に呪力が迸る。

 

 

「畜生の分際で、いい気になってんじゃねぇぞ!」

 

 

一夏周辺から護堂たちを巻き込まないように、衝撃波が放たれ、サルたちはそのまま吹き飛ばされていく。

 

 

「一夏さん...。今何をしたんですか?」

 

「俺の呪力を放出して吹き飛ばした。いやー、お前たちを吹き飛ばさないようにするの面倒なんだわ、これ。地上に戻る手段あるんだろ?ほら、ととっと使えよ」

 

「実は、幽世でみなさんを探していたらアストラル体の呪力を大きく使ってしまいまして、地上に戻る儀式が出来ません。どうしましょう?」

 

「一応、そういう事(・・・・・)にしておいてやるが、次はない」

 

 

ここに来て、呪力が足りないと言い始めるアリスに一夏は小さな青筋を浮かべ始める。これ以上は色々と疲れると感じた一夏は、アリスの儀式ではなく、別の方法でどうやって戻るか考える。

 

 

 

 

 

 

 

地上に居るエリカに護堂のウルスラグナの権能、十の化身の一つ《強風》は、発動条件こそ限られるが、自分を呼ぶ相手の下に風に包まれ瞬間移動する事が可能である。

 

 

 

「移動方法は分かったから、後は翠姐の対処か...。これが一番の難題なのよネー」

 

「でも、二人がかりでなんとかなるようには見えないけど...。一夏は、なにか対策とかあるの?」

 

「私にいい考えがる」

 

「ものすっごい不安なんだが...」

 

 

ISのハイパーセンサーを駆使し、様子を窺っていたシャルロットは一夏に何か作戦はないか聞くと、人差し指を立てながら言うが、この考えはきっと碌な目に合わないんだろううなと考えていた護堂は言いようもない不安があった。後、今の一夏から妙な胡散臭さが漂っていた。

 

 

「取りあえず、最後の決め手は護堂。お前だ」

 

「というとそれまでの直接対決は一夏さんが?」

 

「正確には、序盤から中盤までだな。取りあえず、『駱駝』と『鳳』可能であれば『戦士』かな。作戦としてはね――――」

 

 

一夏は意気揚々と現状の戦力で、羅濠に認められ尚且つ勝利をもぎ取る作戦を護堂に説明する。成功するための保険込みの作戦に護堂は舌を巻く。

 

 

「一番大事なのは一番最初の俺だが...。まぁ、成功するだろう。人間が持つ思い込み(・・・・)を利用させてもらう。ちょっと、呪力回復したいから一人にしてくないか?本格戦闘となると、相当な呪力使うんよね」

 

「そういうことも出来るんですね...」

 

 

だろ、と一夏は最初の仕込みが成功するという、確信があった。そしてその理由を説明した時、一同目を見開き、特に魔術に関して詳しいアリスは驚きを隠せずにいた。そんな中、他の女性陣と話していた万理谷護堂達に近づく。

 

 

「申し訳ありません。一夏さん、少しだけ席を外してもらってよろしいでしょうか?」

 

「なんでそんなこと...。あー、そういうこと完全に理解した」

 

「いや、絶対理解してないですよね?」

 

 

万理谷からのお願いに一夏は、腕を組みながら内容を把握したような素振りを見せるが、護堂はしていないだろと離れていく一夏をジト目で見ていた。

 

 

 

「どうしたんだ万理谷? みんなで帰るんだから一緒に居た方がいいぞ。でも、一夏さんは別行動だったな」

 

「わ、わかっています。ですが、席を外してもらった方がよろしいかと......」

 

「なんでさ? このままエリカが俺の事を呼んだらアリスさんもひかりも置き去りになるんだろ? 早く呼び戻してこよう」

 

 

護堂としては当然の指摘をしたつもりだったが、しかし祐理は驚愕の表情で、

 

 

「で、ですが、私達は今からあれ(・・)をするのではないのですか......?」

 

「あ、あれ? あれってなんだよ?」

 

「あれと言ったら、あれです。あなたはまもなく羅濠教主と戦われます。あの方の権能を『剣』の言霊で無力化するために、ここで準備を済ましておくべきでしょう。とっくにお気づきだと思っておりました」

 

 

言った本人である祐理は顔からうなじまで赤く染まり、すでに霊視済みでいつでも問題ないという祐理に、護堂は覚悟を決め唇を重ねる。そして、その様子を遠くから見守る四つの人影。

 

 

『お姫様の言う通りお姉ちゃんとお兄さま、凄い事をしてます!』

 

『ね?言った通り来てよかったでしょ? あの巫女は何か隠しているとは、思っていましたが......ここまで凄いものが見れるとは思いませんでした!』

 

『あの二人、いつもこんな事してるの?うわー、舌まで入って、あんなに激しくして!い、一夏もこういうのする時とかあるのかな!?今から練習した方がいいかな!?』

 

『正直、一夏は必要ないような...。で、でも一夏の時はもっと、こう...激しいのかな』

 

 

 

外野の存在に気づいた護堂は気まずくなるも、目の前の少女は気づいておらず、没頭しており、集中力を欠いてはいけないと、自分だけに集中するように仕向ける。徐々にヒートアップしていく様を見守る四人の背後に一人の夜叉が降臨した。

ゴツンという音共に四人が草むらから出る。

 

 

「ひ、ひかり!?離れていてってて言ったのに!?」

 

「ごめんお姉ちゃん......。見ちゃった」

 

「――――――!?」

 

 

妹の告白に声にならない悲鳴を上げる万理谷。

 

 

「何、見られると興奮するのか?所構わず、公然の場でキスするバカップルか?こっち来るなとか言ったら行きたくなるのが人間だろ?お前ら馬鹿だろ」

 

「お願いです一夏さん!これ以上は、言わないでください!!万理谷が羞恥死しちまう!!」

 

「後、お前らもそういうのは興味本位で見るもんじゃね。見るなら本人の前で堂々と見やがれ」

 

「後半可笑しいですよ一夏さん!!?一夏さんだって、こうやって教授とかやって事あるでしょ!」

 

「は?俺は―――」

 

 

一夏は必要とはいえ、キスをしていた護堂達を煽り始めるが、その言葉は護堂の『剣』の如く、主に万理谷に突き刺さり、全身を真っ赤に染め上げ、両手で顔を隠しながら俯いていた。それを見かねた護堂は一夏にこれ以上はやめろとお願いする中、一夏は興味本位で見ていた四人に注意するが、後半はかなりズレた事を言っていた。護堂も反撃と言わんばかりに一度くらい経験あるだろ、というと一夏は少し、昔を思い出す。

 

 

『フフフ...世界を股にかけた追いかけっこ...。恋人同士が浜辺で追いかけっこする気持ちがわかるわ!追いかけ、弱らせ、そして食べる...その過程と雰囲気を作る絶好の行為よ!!』

 

『んぁ...あぁん...。あぁ、いいわ、いいわ、とてもいいわッ! やはりあなたと体の相性は最高を通り越して完璧よ!!両手足を切り落として、意識を消失させ愛玩人形にしなくて正解だわ!!』

 

『触れあった肌から伝わるかしら?私の温もりを。あなたの温もりや鼓動すらとても気持ちよく感じるわぁ』

 

『その怒りと憎しみ、そして絶望に染まった表情もそそっていい!その奥に見える諦めないで燃え続ける希望も逆にそれを挫折させたい...!アァ...心も体も昂っていく...体が熱くなって止まらない!!』

 

『さぁ、まだ夜はここからよ? 淫靡に淫蕩に、廃退的にどこまでも堕ちていきましょう。もっと深くもっと奥へ一緒に進みましょ。可愛い、可愛い私の愛玩ペット(ア・ナ・タ)

 

 

「うっ...」

 

「ゑ? 一夏さん?一夏さぁン!?」

 

 

キスとか余りしたことの無い一夏は、記憶の奥底まで思い返すとあの日のトラウマが蘇る。そう、一夏が女性とのそういうことに対して苦手意識が芽生えた原因である淫乱クソビッチ諸悪ビチクソ腰軽女悪魔(リリス)の事を思い出した一夏は一瞬にして顔が蒼白になると口元を抑え木々の奥へと向かった。要領を得ないひかりは首を傾げ、ある程度一夏の過去を知っている人たちはトラウマが蘇ったのだと理解し、きっと銀色のアーチを作りながらリバースしているだろう。

 

 

「ややや、やばい!?一夏さんの逆鱗に触れちまった...!どうしよう、どうしよう!」

 

「だ、大丈夫ですよ。...きっと」

 

「取りあえず、誠心誠意謝罪した方がいいかな...」

 

 

 

無意識のうちにやらかしてしまったことに気づいた護堂は怯え始め、他の人たちがフォローする一夏は、口元をハンカチで拭きその場で燃やす。

 

 

「あ、あの一夏さん...」

 

「安心しろ今回はお前は悪くない。俺が記憶を呼び起こしすぎただけだからな。...まぁ、翠姐戦ってる最中の誤射には注意しておけよ」

 

 

あ、行動一つで天罰下るな、と思った護堂は『確実に勝とう、必ず勝とう、絶対勝とう!』負けたら何をされるのか分からない。明日をもぎ取る為に護堂は戦意を滾らせるのだった。

 

 

『来なさい、草薙護堂!あなたの女がこんなところで死にかけて、あんなヤツにいいようにされているのよ!? 今すぐ駆けつけて、仕返しして頂戴!』

 

「誰が俺の女だ。勝手に設定作ってるんじゃないぞ......!」

 

 

だが、これは二重の意味で救いの手。今までの気まずさを払うように周りに女性を手招きする。そして、護堂は《風》に乗って飛び、幽世から地上へ、仲間達が待つ日本の聖域へ!周囲で吹き荒れる暴風が消え去ったとき、東照宮最上部の奥社にたどり着いた。

 

 

 

 

「―――草薙王よ、幽冥界と人界の狭間を風に乗って超えましたか」

 

 

あの麗しい花の様な可憐さで、羅濠教主はにっこりと笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羅濠の愛おしさは今まで出会った美少女を凌ぐほどだが、一度手合わせをした護堂にはゴリラ女(脳筋凄女)にしか見えず、女性ではなく拳闘士(グラップラー)という認識が出来つつあった。

 

 

「あなたは武と膂力だけだはなく、術にも通じているのですね。ふふふ、新たな倭国の王がここまで見どころのある若者だったとは、嬉しき発見です。今の世に幾人の『王』がいるかは知りませんが知勇双全なるはこの羅濠のみ。しかし、あなたや夜叉王は我が後継者となるやもしれません」

 

「あんたの後継者なんか、冗談じゃない。誰がそんなのになるかよ。俺は他人を傷つける武道なんかに興味ないし、怪しい魔術なんか勉強するつもりなんざ金輪際ないんだよ!」

 

「そうでありながら、強大な権能を握りますか」

 

 

可愛い弟でも眺めるような眼を教主の眼を、真っ向から睨みつける。

 

 

「それもまた王者の特権です。たとえば我が仇敵、東欧の狼王は武芸を知らず、魔術にも背を向けた魔王。それでいて彼はわたくしと同等の力を持つのですから。また逆も然り、この羅濠のように武芸に励み、様々な魔術に精通する我が義弟、夜叉王もわたくしに迫る勢いで強くなっています。いずれはわたくしと同等もしくはそれ以上の力を持つでしょう。それほど内に秘めたる力は凄まじいものです」

 

 

狼王というのが一瞬分からなかった護堂だが、それがヴォパンを示していることに気づくのにさほど時間はかからなかった。確かに死者を隷属、狼に変身など異常なところはあるが、身近にそれを超える逸般人(一夏)がいるせいか羅濠と同等という言葉がしっくりこなかった。

 

 

「とにかく!俺はあんたのやろうとすることは認めない。あのサルを神様に戻すなんざふざけすぎている。おかげで、万理谷やひかりが大変な事になったんだ。俺は平和主義をを掲げているが今だけ返上して、あんたとやりあってやる」

 

「このわたくしと武で競うと?勝てるつもりですか、草薙よ?夜叉王がこの場に居ない状況で......。いいえ、彼の事です何か企んでこの場に居ないのでしょう」

 

「勝てるかどうかはどうかが問題じゃない。やるかやらないかが問題なんだ。そして俺は大いにやる気だ!」

 

「その言や良し。この羅翠蓮の権能と絶技、存分に味わいなさい!」

 

 

互いに戦闘態勢に入ったとき、羅濠の上空から12本の剣が円を描きながら降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーと、そろそろ始まるな。じゃあ、始めますか」

 

 

一人、幽世に残っていた一夏は木の上から地上の様子を確認すると海門を二重に開き、聖句を唱える。

 

 

「集え、十二勇士よ!今此処に我らは王勇を示さん!―――疑似勇士召喚!!」

 

 

一夏の周りに12本の剣が現れると海門の中に落とすと一つ目を閉じる。

 

 

「我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ。さあ、月と星を創りしものよ。 我が行い、我が最期、我が成しうる“聖なる献身”を見よ!――――流星一条(ステラ)ァァ!!」

 

 

続くように流星一条を放ち、別の弓を取り出し海門越しから地上の状況を確認しながら、2本の矢を番える。

 

 

「太陽神と月女神の加護を願い奉る。この災厄を捧がん」

 

 

上空に放たれた2本の矢は矢の豪雨となり降り注ぐと残った海門を広げ、豪雨の矢は吸い込れていく中一夏もその中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

羅濠の退路を断たんなと言わんばかりに周囲に突き刺ささるとほぼ同時に頭上から極光が降り注ぐ。極光が羅濠に触れる間際に剣が爆発、一瞬怯んだ羅濠の眼前まで迫っていたが、その自慢の腕力を持ってして、上空に弾く。だが、それすらも予想していたと言わんばかりに矢の豪雨が羅濠を襲った。

 

 

「なんという波状攻撃でしょう。相手の退路を立った上でのあの砲撃、たとえ外れても問題ない様に次の手を用意するのは戦の常とはいえ、ここまでのモノを用意するとは...流石夜叉王と言った所でしょう」

 

「では、次の手に移らせてもらおう」

 

「む?」

 

 

豪雨により多少被弾するも未だ、大して特にダメージとなっている様子はない。それを何処かで窺っていた一夏は次の一手を打つ。羅濠の周辺に複数の魔法陣が現れるとそこから伸びた黄金の鎖が、羅濠の四肢を拘束すると背後から音もなく現れた一夏は頂肘すなわち肘打ちの態勢で羅濠の背中にまで接近する。拘束?そんなもの知らん、と言わんばかりに鎖を砕き回し蹴りをするも靄の様に揺らめき空ぶると背後から重い音が響く。そこには鉄山靠をした一夏の姿あった。

 

 

「ぐっ...この羅濠の背後を取るだけではなく、ここまでの一撃を与えるとは見事です。夜叉王」

 

「かの李書文により、鍛え上げた正統派の八極拳。その一撃は二の打ちあらずという文字通り一撃必殺の技だ。一撃で終わらせるつもりで、放った一撃だがやはり耐えるか...。一人で戦うのには俺は力不足だ、だから二人一組で戦わせてもらう」

 

 

一夏の言葉に護堂は一歩前に出ると『駱駝』を使う。本来、『駱駝』は一定以上のダメージを負うのが条件だが、護堂は先ほどまで戦っていない為、傷は負っていない。なら、何故発動できるのか。それは一夏が鉄山靠をした時、護堂は近くに居たのだが、その際鉄山靠をした際に放たれた衝撃波は護堂にまで届き、条件を満たすほどのダメージを与えたのだ。発動条件を最小限のダメージで済んだのだが、味方の余波で発動したことに護堂は少し複雑な気持ちになった。

 

 

「ほお...以前と交えた時と動きが変わりましたね。技ではない。闘士と精強さで勝利を引き寄せる、獣の身ごなし―――。敵の力と状況に合わせて自らを変える。あなたは千変万化の闘神より戦いの権能を簒奪したのですね。そして、それを良く使いこなしている!」

 

 

護堂は蹴りを放つも容易に躱す羅濠。『駱駝』を使ったことにより、格闘センスの向上に加え異常回復能力もあるためなんとか凌げていたが、絶技を見せようと少し本気を出した羅濠は瞬く間に護堂の顎を掌打で撃ち抜かれ、両手の掌で腹を打たれ、肩の鎖骨の当たりを手刀で抉られ、揃えられた指で腿を穿たれた上に衝撃波まで使ってきた。

 

 

「アグニの咆哮!」

 

 

それを見かねた一夏は二人の間に高威力の矢を放ち、距離を作り、そして一夏は一歩前に出ると神速で動き始める。

 

 

「神速の弓...受けてみるか!」

 

 

四方八方から襲う攻撃に羅濠は焦らず躱し、例の謡が出てくる。

 

 

「猶お()る、太白の雪。遇うを喜ぶ、武夫の天。影は静かなり、千官の裏。心蘇る、七校の前。今朝より漢の社稷(しゃしょく)は新たに中興の年を数えん」

 

「開け!海門ッ!!」

 

 

見えない壁の如く、衝撃波が襲いかかるが、一夏が護堂の前に行くと空気中の水分と幽世の湖にあった水をあらかじめ開いた海門から流し込み、10メートルはあるであろう渦巻く水壁を作り防いでいた。

 

 

「あの衝撃波を防ぐなんて...。流石です!一夏さん!!」

 

「衝撃波は防げても翠姐自身は防げないしなー。あ、そうそう護堂」

 

「なんですか一夏さん?」

 

「仕込み失敗した」

 

 

一夏の思わぬ一言に(゚д゚)ハァ?と思わず間抜け顔になったのは致しかたないだろう。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!? 当初の作戦失敗したら負ける未来濃厚じゃないですか!?」

 

「諦めんなよぉ!」

 

 

我に返った護堂は思わず叫ぶ隣で、頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって! やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ! そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ と鼓舞している暑苦しい一夏の姿は見えてない。見えてないったら見えてない。

 

 

「じゃ、どうすれば...」

 

「諦めたらそこで試合終了ですよ?」

 

「一夏さんは少し黙ってください。いや、ほんとマジで」

 

「と言われても...」

 

 

ザシュ、と肉を裂く音が聞こえると一夏の左腕が宙を舞う。

 

 

「ッ!?」

 

「この通り、左腕損失してるんよ。まぁ、時間は稼ぐからさ、それになんも問題ないからさ。鮮血よ、鮮やかに舞え」

 

「む?」

 

 

次の一手を打とうとする羅濠に対し、余裕の表情を崩さない一夏は護堂に問題ないと伝えると、宙に舞う左腕がさく裂すると鮮血が矢のように二人の間を射抜くと、その隙に海門を一夏と護堂の周辺を隔離するように覆う。羅濠の衝撃波も肉体も内側まで通さず、成す術がない状況が一分ほど過ぎた時だった。

 

 

「これは...水蒸気?」

 

 

辺り一面を水蒸気が覆い、視覚を封じられ中、水蒸気の些細な動きから何かが上空に飛ぶのがわかった。

 

 

「例え、一夜一時の幻であろうと我らは此処に王勇を示す。聖騎士帝よ示せ(シュヴァリエ)儚き幻の輝剣(・パラディン)!!」

 

「ほお、なんと優美な」

 

 

上空に飛び立ったのは一夏だった。左右に展開された12本の剣が広がる際、まるで天使の羽ばたきの様なものが一瞬見えると目標に(羅濠教主)向けて、手に持っていた聖剣から放たれた13の光が降り注ぐ。直撃こそ免れているが、放たれた光が着弾する際に周囲を爆破しており、微々たるものだが着実にダメージを与えていた。攻撃を終え、滞空している一夏の動きがない事に疑問を持った、羅濠にナニか別の力が作用したのか急に体制を崩す。倒れ際に見たのは黄金の馬上槍を振り回した一夏の姿であった。

 

 

「粉砕爆裂ッ!!」

 

「むっ?」

 

 

倒れる前にすぐさま体勢を立て直すが、先ほど羅濠がいた場所に先ほどとは別の剣を持ち、地面に叩き付けると爆炎と共に大きな爆発音が轟く。

 

 

「わたしの眼には夜叉王が二人いる(・・・・)様に見えます。あなたの十八番である相手を欺く戦いは変わりませんね」

 

「人間そう簡単に変わるのであれば、とっくに人類はよりいい方向に進んでいる。そうならないのは人間が同じことを繰り返す愚かな生き物だからだ」

 

「長い年月を生きる羅濠の眼から見てもそれは明白でしょう。戦い、奪い、見下し、差別しそれを繰り返し続けている。高度な技術革命を遂げると同時にそれは悪化の一途をたどり、ISと呼ばれる鉄鎧もそうです。蒸気機関から堕落をより加速くさせているのですよ? 女性が使えるから女性が優れている...?戯言も行き過ぎれば狂気といえましょう。人類史を支えてきたのは女性かと言われれば否、天動説を覆した星見は? 天才と謳われし芸術家は? 神の雷を人類にもたらした者は? 世に名を轟かせている者たちの大半は男性です。それに対し、過去の偉人を咎めて尚、鉄くずに乗れる自分たちの方が優秀と謳う者たちの心情は理解できず、呆れを通り越して苛立ちすら覚えます。何故、あのような不出来なものを世に知らしめたのかあの物の意図が計り知れません。全くを持って女尊男卑とは愚かなものです」

 

「お、おう」

 

 

上空に滞空する一夏の姿が一瞬ぶれるとそこには骸の大きな鳥に捕まり剣を振り下ろした髑髏がいた。昔から変わらない戦い方についての話だったが、いつの間にかISに対する非難に代わっていた。思いのほか、よく見ているなと思いながら一夏は話を聞いていたが、この会話が聞こえたであろうIS勢の顔色が悪いのは気のせいだろう。もしかして人類に味方するカンピオーネ少ない?私達護られない?、と不安にはなっているのはおいとこう。

 

 

「ま、まぁ...取りあえずは今回タッグなのでね。そろそろ翠姐の気になっているあいつに頑張ってもらおうかな。行けるよな? 護堂」

 

「大丈夫です、一夏さん! 羅濠教主! あんたの謡はインドの女神ガーヤトリーを倒して簒奪した権能だ! 五面十臂―――五つの顔と十本の腕を持ち、聖なる賛歌を女神に擬して拝めた神格!」

 

 

護堂の周辺に星のように瞬き出すと、羅濠の周囲では衝撃波に伴う魔風が周辺を破壊し、夜空を彩る星々の様に煌めく光を自分の周りに展開し、衝撃の魔風から身を護る。

 

 

「古代バラモン教の聖典であるヴェーダ。ガーヤトリーとはヴェーダの韻律のひとつ、典型の一パターンをも指す言葉だ。でも、神としてのガーヤトリ―は創造神ブラフマーの妻にして河の女神、文字と言葉の女神、更の遡れば地母神にまで至るサラスヴァティーと同体を成す。極めて高位の女神なんだ!」

 

 

今や教主の放った衝撃波は最大限まで高められている。形あるものはすべて破壊され、無事なのは台風の眼である教主と『剣』によって守られている護堂、海門を開き迫りくる衝撃波を幻想大陸(アトランティス)に流すことで身を守っているが、衝撃波の到達地であるアトランティスはもはや、発掘された古代遺跡の如くボロボロ......で済んでいればいいな、と考える一夏だった。

 

 

「サラスヴァティーはサンスクリット語とデーヴァナーガリー文字の創造主。音楽と武芸を司る女神であり、日本では弁財天となる。ガーヤトリーとしての彼女は音の霊を操り、神々へ捧げる賛歌を司る女神! これがあんたの権能の源だ!」

 

 

『剣』を加速させ女神ガーヤトリ―の権能を切り裂かせる。手応えはあった。唐突に荒れ狂う魔風が止み衝撃波による破壊も停止した。

 

 

「神を切り裂く言霊の剣、見事なり!草薙王―――いえ、草薙護堂よ。魔王としての我が生は200有余年、このような手で私を追い詰めたものはほんの一握りのみ! ふふふ、やはり同格のモノとの仕合は心躍ります。今度は我が絶技を披露しましょう!」

 

 

羅濠の言葉の中で特に「仕合いは心躍る」という言葉に同意すかのように頷く戦闘狂。さて、一夏の目的である護堂が羅濠に認められるという目的は達成したも同然だ。ならば、残るは全身に闘気に満ち、殺る気満々の羅濠を倒すのみ。自覚せずに微笑む護堂は東に意識を向ける。羅濠の横暴さは、民衆の敵に対する正義の焔を解き放させてくれた。

 

 

 

「我がもとに来たれ、勝利の為に。不死の太陽よ、輝ける駿馬を遣わし給え。瞬足にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!」

 

 

ウルスラグナ第三の化身で、太陽の似姿である『白馬』を呼び出した。

 

 

西に沈んでいく太陽とは別に東から暁の曙光を放つ。天体としての太陽では、その大気中で爆発が起きるという。それがフレアだ。東天より、麗しき魔教教主めがけて、白く燃える焔の鉾先が伸びていく。それはまさしく白いフレアそのものだった。それを見た羅濠教主は言霊を唱えると仁王尊を今度は二体呼び出すと白き焔の前に雄々しく立ちはだかると。

 

 

――(フン)ッ!!――()ァッ!!

 

 

二重の掛け声とともに前に踏み出すと羅濠教主の前で肉壁に『白馬』の焔から護った。黄金の肉体がドロドロに融解する必死の形相で耐えていた。宇宙的スケールの超々高温のと破壊から、創造主を護ろうとしているのだ。やがて、暁の曙光が消え、白色のフレアの槍も攻撃を止めた。終わると同時にドサッと膝を突く仁王尊の半分は融解し、残りもひかりとなり消える中、仁王尊の顔はやり切った漢の顔だった。

 

 

「そんなてがあったなんて...」

 

「いや、可笑しい。絶対可笑しい。俺の流星一条の時も同じだけど絶対おかしいって。あの人さ異能生存体かなんかじゃないの?」

 

「わたくしは、賛嘆の念を惜しみません。次は当方が絶技を見せましょう。羅翠蓮の拳脚と掌は、100万の軍さえ滅ぼすと知りなさい!」

 

 

 

 

 

 

そこからは超高速の戦いだった。鳳凰の如く舞ながら戦う羅濠、その速さにウルスラグナ最速の『鳳』で回避し、攻撃に移り、師より優れた縮地と神速による高速戦が始まった。それを遠くから見ていた者は「凄い...」「一体...何が起きているんだ?」「目で追うのがやっとだ」大半がヤムチャ視点になっていた。そんな高速戦の中護堂は不利な状況だった。低スペックPCでオンラインゲームをしているかのように二人の動きがカクカクするのだ。

 

 

「これはどうだ!」

 

「残念ながらその手は届きませんよ。一夏」

 

「挟み撃ちなら!」

 

 

同じ領域で動ける一夏が羅濠の動きを止め、何とか追いつける護堂が隙を突くという戦法を取るも一向に決まらないでいた。互いの顔を見るや一夏と護堂は一端後ろに下がる。

 

 

「ほお......覚悟決めましたか。よい目をしています」

 

 

二人からの攻撃を待つかのように無防備の様で無防備ではない、彼女の狙っているのはカウンターだという事は二人は理解した。

 

 

「行くぞッ!」

 

「来ますか義弟ッ!」

 

 

一夏は羅濠に肉薄すると把子拳と呼ばれる指を握り込まない八極拳特有の拳で、貫通力に優れた“穿つ拳”を放つもカウンターを放つと、一夏の身体が壊れたガラス細工のように砕けるとすかさず突然現れた一夏が頂寸を放つ。

 

 

「グッ...ですがまだ甘い!」

 

 

教主もすかさず全身の筋の連動を一点集中させ、密着状態で放たれる発勁である「寸勁」を放つと頂寸を放った一夏は陽炎の様に揺らめく。一体何が...、と疑問に思っていた時一つの衝撃が羅濠を襲う。いつの間にか接近を許した護堂が右の拳を羅濠の鳩尾にめり込ませていた。『く』の時に折れ、膝を突くとそこで予期せぬ事態が起きた。轟!と風が唸りを上げると護堂の拳と羅濠の鳩尾の間で、風が唸り、地上のあらゆる物体を薙ぎ倒す衝撃波が羅濠を駆け抜けた。まるで羅濠が衝撃波の魔風雨を生み出したように。

 

 

「なんとか勝てたな」

 

「一夏さん...」

 

 

護堂の後ろから、一夏が歩み寄っていく。

 

 

「一夏さんの『幻術で隙を作り、一気に攻める』という作戦はうまくいきましたね」

 

「まぁ、といってもされは最後だがな。最初に悟られないように幻術を仕込み、機を見て発動させ、一気に攻め落とす」

 

「にしても本当に起きるんですね。起きていないのに痛みが襲うって」

 

「脳の誤作動によりありもしない痛みが本当にあったように起きる(・・・・・・・・・)痛み―――幻痛(ファントムペイン)。一度目は把子拳はちゃんと起きるかの再確認、二度目の幻術で隙を作り、三度目はお前を認識できないようにし、一番にいいのを食らわせる。うまくいってなに...より...」

 

「い、一夏さん...!?」

 

 

痛みは脳から送られた信号の受信で成立する。今回の幻痛の理屈は、その信号を誤作動させる事で本当に痛みが起きたように肉体を錯覚させるというものだ。中盤の失敗という発言は嘘であり、敵を騙すならまずは味方からという考からだ。一夏は護堂の肩に触れようとした緊張が解れ、疲労が一気に来たのか、後ろに倒れ、そんな一夏を助けようとした護堂の心臓がギリギリと、絞められるような痛みが襲う。『鳳』の副作用だ。

 

 

「あー......これは師父の負けですねェ」

 

 

皮肉っぽい声が告げたのはその直後だった。

 

 

 

 




夏休み恒例行事のアレンジとしてラジオア○ゴリズム体操をすることにした。
本日の歌の皆さん。箒、セシリア、鈴、ラウラ、楯無、マハード、マナ。体操ペアは一夏、束ペア、シャルロット、簪ペア。スマホにスピーカを繋げ、音楽を流す。


<テッテレッテテッテテッテテーテッテ


『こっち向いて二人で前ならえ~♪×4』

『手を横に~』

『あら危ないッ!!(一夏がシャイニングウィザード)』

「イィィタッタイ!!」

『頭を下げれぶつかりません。手を横に~』

『あら危ない(束が波動拳)』

『頭を下げれ大丈夫(後方に阿修羅閃空)』


そして、ISを起動した簪が同じく起動したシャルロットの手を掴む


「回転ッ!」

「ふみゃ!?」

『ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐ~るぐ~る~♪×2』


そして曲も終盤に差し掛かり


『パッチン(ビンタ)パッチン(全力ビンタ)ガシン(頭掴んで)ガシン(頭突き)×2』

「うごっ...!?」

『パッチン(しげるビンタ)パッチン(往復ビンタ)ガシン(一夏を空中で掴み)ガシン(飯綱落とし)』

「まそっぷ!?」

『パッチン(蝶野ビンタ)パッチン(倍返し蝶野ビンタ)ガシン(束を空中で掴み)ガシン(マッスルスパーク)』

「ホウセイキュアアムールゥァァァ!?」


そして最後の締めに一夏と簪が......


「「吸って吐いたら...」」


一夏は山吹色、簪は銀色の波紋を両手に纏わり......


「「波紋疾走(オーバードライブ)!!!!」」

『ギャァァァァ!!?』


こうして朝の(殺伐とした)アルゴリズム体操は終わったのだった。
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