Scarlet Busters! ~Refrain~   作:Sepia

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RefrainEpisodeは、理樹、音無ときたので次はやはりこいつでしょうね。


Refrain3 はじまりの超能力者

 かつてこんな会話があった。

 

・喪魅路『なぁ、正しい意味での超能力者っていったらどんな連中のことだと思う?』

・白詰草『急にどうしたの?』

・喪魅路『超能力捜査研究科(SSR)の書庫からお前が借りてきた本を今俺に貸してくれてたじゃん?ほら、俺が魔術の歴史関係でいい本ないかって聞いたときに持ってきてくれたやつ』

・白詰草『え、あれもう読んだの?あれ結構分厚かったはずなんだけど……また徹夜したの?』

・喪魅路『おう!おかげで今めっさ眠たい……けど、たまには歴史関連のものを見て見るものだな!結構面白かったぞ!』

・白詰草『テスト前日に何やってるの……』

・喪魅路『俺ほどの実力者ともなると、学校のテストくらい勉強するまでもないのさ。というか、武偵の免許とるまで勉強くらいしかしてこなかったから簡単すぎてわざわざやるまでもない。二年三年の先輩方をいれても理系学校一位をなめるなよ!』

・白詰草『よし、それじゃ今度は古典の勉強でもやっとこうよ。なぁ古典の中間試験14点。理系完璧なのに、どうしてそんな点数しか取れないんだ』

・喪魅路『黙れ中間数学12点。お前よりマシだ』

・白詰草『ボクは国語学校一位だからいいの!数学がちょーっと悲惨なだけで、総合点数だとお前と大して変わらないじゃないか。お前現代文と漢文も悲惨じゃないか。なぁ国語学年ワースト3位?』

・喪魅路『200点満点の数学で26点とか出したドベ4位の奴に言われたくない!俺は、古典漢文200点のうち、38点はとったんだ!』

・白詰草『…………』

・喪魅路『…………やめようか、悲しくなる』

・白詰草『…………そうだね。で、なんだって?』

・喪魅路『超能力者ってどんな連中だと思う?』

・白詰草『そんなの、普通に固有の異能の能力を使う連中じゃダメなのかい』

・喪魅路『定義としてはそれでいいんだろうよ。けど、魔術と超能力はれっきとした別物だ。魔術をつかったらその時点で魔術師と呼ぶべきなのか、それとも体質が超能力者のものだったら普通に超能力者と呼ぶべきなのか。武偵用語なんかでは魔術師も超能力者もオカルトじみた能力が使えるってことからか一括りにして超偵なんて呼んでいるみたいだけどさ、やっぱり資料見て見たら違うもんなんだなって思ってよ』

・白詰草『別にそれがどうかした?別にそんなことなんて些細なことだよ。魔術にしろ超能力にしろ、一般には存在が認知されていない。むしろ、されるべきじゃない。特に超能力なんて、あんなものは存在するくらいならいっそのことない方がいいようなものだ』

・喪魅路『知ってる。お前は超能力者をうらやましいと思わない奴だ。けど、この本読んでたら少し思うところがあってさ』

・白詰草『………』

・喪魅路『もともと魔術は、超能力者という特別な人間が異能の力を使えていたことがうらやましくて、凡人が必死に法則性とかを探して長い歴史の中で手にしてきたものだとされている。才能ある人間が超能力者で、才能のない人間が魔術師だと言うとされる』

・白詰草『それが?』

・喪魅路『だったらさ、本当の意味での超能力者って一体どんな連中だったのかねと思ってさ』

・白詰草『魔術師が羨んだとされる、本物の才能があった人間か……きっとそいつらは、才能しかなかった連中なんじゃないかな』

・喪魅路『というと?』

・白詰草『例えば魔術を代々受け継ぐ一門の出身の超能力者(ステルス)だと、身体がそれを使うのに適した体質に長い年月をかけて変わっていった連中が多いんだよ。もちろんボクのところの一族のようにどうしようもないようなくだらない理由からその体質を突然変異的に獲得した場合もあるけど、基本的に魔術って歴史が長ければ長いほど有利なんだ。それだけ研究が進んでいるってことだしね。だから、最初の超能力者っていうのは体質が一般人のものと大して差がないというのなら、案外中途半端なことしかできなかったんじゃないかな。魔術という名の努力がない、超能力という才能だけの人間。偶然手にした超能力を振りかざしているだけの人間。……おっと、これじゃまるでボクのとこの一族のようだ』

・喪魅路『でもさ、偶然にしろ必然にしろ、お前のとこの一族って体質がやっぱり一般人のものとは違うんだろ?努力せずとも努力して手に入れるべき結果を手にしているようにも思うけどな』

・白詰草『そうだね。ボクのような雑草のような人間でも、やっぱりあの一族の血の影響を受けていると自分でも思うよ。ボクの持っている能力は佳奈多のように目に見える分かりやすいものではもなく、そもそも超能力者(ステルス)を名乗るにはボクなんかにはおこがましいとは思うけど、それでも全く影響がないとは思えないからね。そうでも考えないと、ボクの運命力があんなおかしなことになるとは思えない』

・喪魅路『それじゃ、最初の超能力者っていうのは体質が一般人と変わらなかったのかな』

・白詰草『ちゃんとした言葉で言うと、「原石」って呼ばれてる連中かな』

・喪魅路『出身が一般の家庭で魔術なんて一切かかわったことのない人間なのに、超能力を宿している人間だったよな。でも「原石」って確か……』

・白詰草『そう。知っての通り「原石」は特異な超能力を扱う専用の体質を持たない。そりゃそうだよ。魔術を受けづいてきて体質が変わってきたわけでもなんでもないんだ。ただ突然超能力が使える様になっただけ。歴史を重ねてきた連中には勝てない。だから「原石」。未だ何も磨かれていないただの石ころさ。彼らこそ、「はじまりの超能力者」と呼ぶのにふさわしい連中じゃないかな。つまり、かつて才能がある人として羨まれた「はじめりの超能力者」は、いまや魔術という才能を扱うだけの体質を持たないでいる残念な能力者でしかないのさ。ただの才能では積み上げてきた努力に勝てなかったんだね!アッハハハハ!!』

・喪魅路『かつての才能あふれた人間は、今の時代では特にそうでもない。ありふれた話ではあるけど、当の本人たちはどんな風に思っているのかね』

・白詰草『さぁね。でも、どのみち超能力者(ステルス)なんてロクなものじゃない。あんなもの、差別と偏見を生むだけの存在することが間違いのようなものだ。「原石」の持つ超能力があくまで才能だというのなら、かつて魔術師と呼ばれる人間たちが憧れた才能ある人間というのは、なんの努力もしないような案外たいしたことのない人間だったのかもしれないね』

 

 

 

           ●

 

 

 ずっと小さな頃から疑問に思っていたことがある。 

 なぜ自分は自分でしかなく、他人ではないのだろう。

 自分の気持ちは考えるまでもなく理解できることがたくさんある。

 うれしい。悲しい。痛い。楽だ。 

 そんななんてことのない感情は、自分でどう感じているのかはすぐに分かる。

 なのに、他人のこととなると途端に分からなくなる。

 怪我でもして血を流して泣いている子供がいたとして、その子がどうして泣いているのかは想像がつきやすい。

 

 けれど、結局は第三者から見た想像でしか分からない。

 他人がどのように考え、どのようなことを感じているのかは知る由もないのだ。

 

 我思う。故に我あり。

 一体どこの誰が言った言葉か僕は覚えていないけど、これは昔の哲学者の言葉だそうだ。

 自分が見ている景色は他人のものと同じであるとは限らないという。

 景色という目に見えて存在している者のはずでさえ実際にあるか証明できないのだ。

 まして、感情なんてどうして理解できよう。

 あくまでそれが他人である以上、自分には理解することも共感することも真には不可能のはずなのだ。

 

 だから、僕は思うのは我ではなく、他人のことを思ってみた。

 

 例えば、交差点ですれ違っただけの何の接点もない人や、公園のベンチに座って本を読んでいるあの人。

 見渡して見える人たちが、他人ではなく実は僕なのではないか。

 そんなことを考えてながら他人を思う。そうしたら僕は他人になっていた。

 

「……これがこいつが見ている景色か」

 

 比喩表現でもなんでもない。今の僕にはその他人が見えている景色が実際に見えているのである。

 現に、近くで情けなくよだれを垂らしたまま地面に倒れている僕の身体が見えていた。

 他人の身体に乗り移り、その身体を自分の身体だとして行動できたのである。

 

「あれ、いまなにをやって……ぎゃあああ、ひ、人が変な体型のまま倒れてるっ!!」

 

 しかし、それももって五秒程度。この後すぐさま本来の自分の身体に戻されてしまう。

 しかもその間、僕の本当の身体は無意識状態となっていて、けがをしていることもよくあった。

 

 そのうえ視界にいる人間にしか乗り移ることができないから、よこしまなことには使えなかった。

 

 せいぜいむかついたやつに乗り移って、他人に喧嘩を売ってもとに戻る。

 そんな腹いせ程度にしか使えない。

 

「てんめぇ何してくれてんだよッ!!」

「ち、違う、俺は何も!」

「とぼけんな!」

 

 この能力は何かを生み出すようなものではない。せいぜい人間関係が壊れていく様子を他人のように眺めながら、いい気味だと心の奥底であざ笑う程度のことしかできない。決して自分に何か素晴らしいものを見せてくれるというものではなかった。

 

 だが、ついに、この異能力が存分に発揮できる事態を思いついたのだ!

 

「ふふふ。あはは。あっははははははははははは。素晴らしい、素晴らしい能力だったんだ。この能力さえあれば、僕はなんだってできるんだ!」

 

 能力の使い方はいたって単純だ。

 

「テスト終了五分前。ちゃんと名前と出席番号を全部の解答用紙に記入したかもう一度確認おいてくださいね」

 

 クラスで頭のいい奴らに乗り移りまくって、回答を暗記して戻ってくる。

 そして回答欄を埋める。ひらすらそれをただただ繰り返すのだ。

 廊下で学校のテストの成績上位者の順序が張り出されている中、そこで一位のところに自分の名前が書かれていることをなんとも思っていないフリをして、いつも内心ほくそ笑みながら通りかかっていた。

 

 当然、このまま名門校に進学してやるつもりであった。

 しかし、ここで問題がある。

 普段の学校のテストとは違い、受験では一体誰が頭のいい連中なのか全く分からないということだ。

 僕の中学校は決して進学校というわけではないが同じ高校を受験しようとする奴がいないことはない。

 ただ、そいつらとは同じ教室で受験することになるかは分からないのだ。

 万全を期すためには、準備が必要だ。

 

(これがこの間の模擬の成績か。さて、どいつがどの名前の奴なんだ?)

 

 それから僕は、いくつもの名高い進学塾へ塾生のふりをしてもぐりこんだ。

 どの受験生がどこを受けるのか。

 そしてどの教科が得意であるのか。

 ノートや教科書を開くこともなく、徹底的にリサーチを繰り返した結果、僕と同じ志望校を目指す頭のいい受験生をひたすら見つけることに成功し、無事にエリート校に進学した。

 

「これより、校長による式辞を終わります」

 

 この私立陽野森(ひのもり)高校は名門の進学校。

 決して部活動を軽視しているわけではないのだろうけど、それでも学力が第一である世界。

 当然毎年の新入生代表には、その年の成績トップの生徒が選ばれることとなっている。

 

「では、新入生代表の言葉。乙坂(おとさか)有宇(ゆう)君」

「はい!」

 

 そんな生徒として、呼ばれた名前は僕の名前だった。

 僕は何一つとして後ろめたいことのない、立派な返事をすることができたと思う。

 

「あいつが成績トップってことかよ」

「しかもイケメンとか……」

 

 自分で言うのもなんだが、今の僕ははたから見ていて何の非の打ち所もないはずだ。

 自信に満ち溢れたような表情をしている、今年度の主席合格者。

 僕はただ前だけを見据えて校長が待つ教団の前へとゆっくりと歩いているつもりなのに、何やら羨むような声が聞こえてきた。あいつとは、住む世界が違う人間だ。人間としての劣等感を感じ、きっと妬みを抑えきれないのだろう。だがそんなものにいちいち反応してはいられない。笑うな。抑えろ。今は希望に満ち溢れた純粋無垢な一生徒の姿を見せる場面だ。

 

「本日は私たち新入生のために、このような盛大な式を挙げていただき、誠にありがとうございます。温かい春の日差しに包まれて、私たちは伝統ある陽野森高校の一員となりました。これから始まる学校生活では学業はもちろん、部活動も……」

 

 受験勉強ということでロクに鉛筆一つ持たなかったのに、わざわざ中学の先生のところにまで相談に行って考えた文章を必死になって暗記した。カンニングペーパーももたず、どうどうと全校生徒の前で返事をする姿は様になっていたはずだ。

 

「本日は誠にありがとうございました」

 

 挨拶を終えて礼をする。その時に会場には拍手に包まれたが僕はにやけた笑いを隠しきれているか心配だった。それでも僕が内心どんなことを思っているのかなんて他人でしかないほかの連中は気づくはずもない。いつしか授業が終わると知らないメールアドレスから連絡が入っていることがしばしばあった。

 

「またか」

 

 書かれていたメールの内容は女子からの告白文。

 学年トップの成績に加え、ルックスだって行けている方なのだ。これでモテないわけがない。

 それでもこの現状を前に、僕はただ早く帰れなくなったと残念に思う程度のことしか感じなかった。

 

「ごめんなさい!こんなところにまで呼び出して!」

「それはいいけど……僕に用って何かな?」

「あの!……と、と、友達からでいいので、私と付き合ってもらえませんでしょうか!!」

 

 顔を真っ赤にして、勢いで話す目の前の女の子をそっけなく扱うつもりはない。

 僕は心の中では冷めながら、優しい口調で語り掛けるように言葉を出していく。

 

「えっと、僕は今の成績を維持するために寝る間も惜しんで勉強しなきゃいけない。僕はもともと頭がいいわけじゃないから、必死にやっていかないとみんなについていけないんだ。だから誰かの相手をしている暇なんてないんだよ。……だから、ごめん」

 

 もちろん、勉強なんて最後にしたのはいつのことだったかすら覚えていない。

 

「そう……ですか。分かりました。突然お呼びしてごめんなさいでしたー!」

 

 お前たちみたいな普通の女子を、僕が選ぶわけないだろう。

 僕のような才能ある特別な人間には、それ相応の女子がふさわしいのだ。 

 すなわち、狙うはまさにこの学校のマドンナ的存在。

 白柳(しろやなぎ)(ゆみ)

 穏やかな雰囲気を醸し出し、男子と話しただけで赤面するようなそんなつつましやかな女の子。

 こいつを落とし、僕はこの学校生活で夢のリア充となるのだ。

 

(できる。できるぞ。僕は、この世界での勝者となるのだ。人生の勝ち組となるのだ)

 

 さしあたって、まずはどのように接触しようか。

 僕は今後のことを考えると、無限の可能性を前に気持ちが高ぶらずにはいられなかった。

 




友利奈緒「くたばれ科学者」
牧瀬紅葉「んだとコラ」

勝手な印象ですが、こいつら相性が悪そうです。
いつしか本編の方に、隻眼の死神が出てくるかもしれません。

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