……いじょうぶ…………だいじ……ですか?
ぼんやりと頭に声の様な物が響く。
「……大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
「っ……痛てて……」
体があちこち痛むが、ゆっくりと起き上がり周囲を見回す。
「あ!良かった……無事だったんですね」
周りを見回すと廊下ではなく図書館だった。周りには数多くのメイドの妖精達がヒソヒソと話していて、体には包帯が巻かれている部分があった。小悪魔が必死に治療してくれた様だ。
「痛てて……何で皆ここに?」
「妹様が館をうろついてると咲夜様が皆に呼び掛けて……ああ!安静にしてください!薬もまだ効いてないのに……そしてメイド達をここに避難させたんです。咲夜さんは他のメイドの妖精が居ないか探してから霊夢さん達を呼んでくるそうですけど……」
メイド達を探しに行ったと言うことは……咲夜はあの体で探しに行ったのだろうか?
「……二人は?パチュリーとレミリアは?」
「パチュリー様は魔法を使う為にこの場を離れてまして……お嬢様は分かりません……」
「そうか……フランは今何処に居るんだ?」
「さぁ……妹様は今は廊下をうろついているんですが、もしも外に出てしまったら……」
「……大惨事。かもな」
支えにしている手を動かすと冷たい物に当たった。金治丸だった。
弾幕を切った部分は黒い汚れが付着してあった。
「……やっぱり、銃が無ければろくに戦えないな……向こうは弾幕ごっこできるとは言え精神状態が不安定なんだろ?」
「はい。しかし、狂った人間の様に異常に暴れたりはしませんし、むしろ落ち着いて話も出来ます……が妹様の気に下手に触れたりするとどうなることか……」
一様、フランと会話は出来る。上手く説得すれば事件は収まる筈……だが、その結果が先程の惨敗だ。攻撃する暇もなく、蹴散らすように倒された。相手からしたら良いサンドバッグ同然だろう。
おまけにフランが本当に狂気になったとする、そうなると弾幕ごっこは確実に殺し合いの弾幕に変わるだろう。
「……なあ、ここの皆は逃げないのか?図書館だと何時か来るかもしれないだろ?」
「いえいえ、ここは臨時で扉や窓は封印がかけられていますし、ここも妹様はそう簡単に開けれなくなっている筈です。それに……」
「?」
小悪魔は少し恥ずかしくなったのか言葉を止める。正直、俺の印象でここまで喋る様な子だとは思っていなかった。小悪魔との初対面が場所を聞くだけだったからそんな印象がついたのだろう。
「……紅魔館の皆さんは今も一生懸命戦っているんです。なのに逃げるなんて事は私には出来ません!」
小悪魔は自分の意思を拳を握りながら放つように言った。するとメイドの妖精達もそれぞれ頷く。
恐らく小悪魔と妖精達はフランが図書館に入って酷く暴れるまでここから逃げたりしないだろう。そう思うと俺の中でも固い決心がついた。
「……なあ、お前は止める様な事なんだが……これこそ皆の為のお願いだ。……まあ、パチュリーには怒られると思うがな……」
「?」
小悪魔が首をかしげるが、俺は一つの頼み事を小悪魔に言った___
「……何処だ……何処だ……なあ、お前は分からないか……って言葉が分からないだろうしな」
使い魔を飛ばしながら必死に紅い廊下を走り、フランを探す。小悪魔は俺の頼みを聞いて初めは必死に止めようとしてきたが俺の押しに負けて聞いてくれた。話し合いってなんだっけ。
「ここには……くそ、ここは…『やっぱり、貴方は何時も飛び出すわね……』…うわぃ!?」
死角から声が聞こえ跳び跳ねて転倒する。本気で声と言う声がフランの声に聞こえる……怖すぎ。
「……って、レミリア!?何処に行っていたんだ?」
「色々よ、で?貴方は勝手に飛び足した挙げ句に返り討ち。そしてまた飛び出すって……貴方、脳が無いのかしら?」
レミリアは少々イラついた感じに問い詰めてくる。
「そう言えば魔理沙は吸血鬼に脳は無い的な事言ってたな……そして何で返り討ちに会った事を知ってるんだ?」
「私の能力を忘れたのかしら?」
そう言えばレミリアは運命を操る程度の能力を持っていた。因みに何故かこの能力は俺には使えなかった。何故かは知らないがこんな能力もあるようだ。
「そりゃ、覚えてるとも……それじゃあ、俺は探さないといけないからこれで」
「……ねえ、一つ聞きたい事があるんだけど」
「悪い、後で」
「今ここで聞きなさいよ!ここで!」
レミリアに怒鳴られて渋々戻ってくる。何が言いたいんだ?レミリアは。
「ここに住んでいる者は皆家族の様だわ。私も、咲夜も、パチュリーに小悪魔、勿論フランも……よ」
何時もは見せない真剣で暗い顔を見せながらレミリアは続けた。
「……家族は当然、困ったときには助け合うのよ。だけど、貴方はどうしてそこまで怪我を負ってもフランの為に動こうとしているの?」
確かに、本当は部外者な俺は本来関わる必要の無い事だろう。だが、俺は部外者とかは気にしていない。それに……
「……皆が一生懸命戦っているのに逃げるなんて事は出来ないって立派な悪魔が言っていたしな。その言葉に心を動かされたから今こうやって動いてる」
そう言うとレミリアは下を向く。何かと思えばすぐにウフフと笑いだす。
「フフフ……随分と立派な言葉ね……私も心が動かされたわ。良いわ、貴方にあの異変について話すわ。これであの子が心を開いてくれるといいんだけど……」
そう言うとレミリアは真っ直ぐに歩いてきて紫の様な微笑みを見せながら異変の真相について話してきた___
「ウフフフ……アハハハ……」
何処までも紅い廊下に笑い声が響く。声自体はまさに少女が遊んでいる様な笑い声だ。文字通り、フランは廊下をクルクルと回って遊んでいるのだが。
「……よう、探したぞ」
フランを止めるように俺は立ちはだかる。一様、何時でも対応出来るように神力を解放している。
「あれ?さっき壊れちゃったんじゃなかったの?」
平然と”死ぬ”を”壊れる”と言っている時点で生き物の死を何とも思ってない事がよくわかる。オマケに恐ろしい力を持っているのだから出会うこと自体自殺行為だろう。……普通なら。
「そうだな、壊しちまったら治せば良いんだよ」
「だったら……もう一回壊してあげる!」
そう言うとフランは掌に球体を出現させ、俺に笑顔を向けて握り締めた___
「……あれ?何で……」
握り締めたが何も起こらない。もう一度やっても同じだった。
「……『フランドール・スカーレット』、能力は“ありとあらゆる物を破壊する程度の能力“……お前さんの壊し方。今の俺には効かないぞ」
相手の名を知り、能力も知り、使うところも見る。これで俺の能力を使うことが出来るようになる。
そして神化し、相手の能力を効かなくする。一瞬しか出来ないがモーション等でタイミングは分かる。一歩間違えたら……うぅ、怖い……
「なーんだ、つまらないなぁ……じゃあ、弾幕ごっこでもしない?」
「本来ならお断りする……なんだが今回は折角の誘いだ。それに話を聞いて貰わないとな」
懐から一冊の本を取り出す。それを開いて左の腕と二の腕で挟んで固定する。
「あれ?魔法使いさんだったの?」
「そうだな、半人前の魔法使いだ。だが、ちょっと無断で借りてきた」
実は図書館から一冊本を盗ってきた(誤字にあらず)のだ。臨時だったので後先とかは特に考えてない。俺はやりたいことをやるだけだ。
「まるで魔理沙みたいだね……魔理沙は何時でも会いに来てやるさ。なんて言っておいて全く来てくれない……紅魔館には来てるのにパチュリーとお話ばっかり」
暗い顔をしてフランは語り出した。聞いていると此方もズキンと心が痛む。魔理沙は慰めとして言った言葉をそのまま受け取り、ずっと待っていたのだろうか?
「何時も何時も……退屈だった!」
「……じゃあ、フラン。一つ取引をしようか」
下を向いて震える声で言うフランにできるだけ優しく声をかける。取引と言ったが悪魔と取引ってよく考えると危険な事じゃなかったっけ?
「今からお前と弾幕ごっこをしてやる。止めて良いと思うまでな……ただし、お前が攻撃の手を完全に止めるか、どっちかが負ける___俺は負けるよりも殺られるの方が正しいかもしれないが……まあ、止めたときに俺に話させてくれ。別に説教とかじゃないからな」
「本当に遊んでくれるの?」
「今更嘘をついてどうするんだよ」
そう語りかけるとクスス……と笑い声がフランから漏れ出る。
「じゃあ……早速やろうよ。弾幕ごっこ」
「ああ、好きなだけ遊んでやるさ。今日は臨時休校で暇なんだよ」
フランの妖力が跳ね上がる。それに合わせて自分も魔力を上手く練って蓄える。
「遊んでやるよ、とっておきの魔法でな!」
俺にとっては命が掛かった弾幕ごっこが始まった___
「っ……~~~~…うらっ!」
片手に三本の氷の結晶を作り出して投げつける。三本の氷の結晶は真っ直ぐにフランに飛んで行く。
「禁忌『レーヴァテイン』!……まだまだぁ!」
紅く輝く炎の剣を振るって氷を溶かし、そのまま俺を切ろうと(もしくは燃やそうと)フランは縦に剣を振る。
「うわっあちち!?」
剣はすぐ側を通りすぎたのだが、剣の発していた熱が体を包んだ。
……尻尾の毛から焦げ臭い臭いがするんだが……気のせいだよな?
「あー、惜しいなぁ……ギリギリ尻尾に当たったのに……」
「やっぱり気のせいじゃなかった!うわっ!焦げてる!?」
神化してるので白い尻尾の先端が茶色くなってしまった。見た目が動物の尻尾っぽくなったが、触ると焦げた髪の毛の様にパラパラと折れる。ほっておけば治るでしょ、多分だが。
「そっちが来ないなら……今度は私が先攻!」
気がつくと上の方でカードを構えたフランの姿がある。同時にフランの周囲から妖力が発生する。
「禁弾『スターボウブレイク』!」
発生した妖力はそれぞれ固まって色とりどりの弾幕に変化する。まるで魔理沙の弾幕の様な虹色だった。
「行っけぇ!」
フランのその言葉で弾幕が一斉に落ちてくる。大きさはそこまで大きくないが、館の廊下に当たるとどれ程の妖力が篭っているのか、大きく砕ける。しかし、直ぐに空いた穴に破片が集まり只の平らな紅い廊下になる。ここにも魔法が掛けられている様だ。
「っ……魔法は……何か魔法……」
辺りに弾幕が降り注ぐ中、本をペラペラと必死に捲る。ここまで羊皮紙の捲れにくさをじれったく思ったのがこれが初めてだろう。
「……これなら!……水符『ジェリーフィッシュプリンセス』!」
魔法をスペルカードの様に使うと体の周りを水が包んだ。
「っ!?」
水に当たった弾幕は速度を失ってそのまま線香花火の様に消えた。おお、こりゃ凄い。パチュリーの技だったけど。
「よし、こいつを……頼む!時間を稼いでくれ!」
透明な陰陽玉を取りだし、妖力と魔力を込めて飛ばす。すると俺の代わりに魔法を飛ばしてくれる。……何か俺より魔法を使うのに必要な魔力を練る(唱える)スピードが速いんだけど何で?
「むっ……何やっているか分からないけど行けぇ!」
フランは様々な方向に弾幕を飛ばす。使い魔が何発か相殺しているお陰でそこまで飛んでこないが、危ない物もある。
「~~~~……チッ!…~~~~~~~」
間違えない様に慎重に唱える。時々、肩を弾幕が掠ったが、痛みを堪えて唱え続ける。この魔法はやっぱり時間が掛かる。でも自分らしくてお気に入りなのだ。
文字数オーバー、次に進むぅ!(ぇ
フランって情緒不安定って設定ですけど普通に話したりするからどうな感じに書けば良いのが悩むキャラです……うーむ。
それでは、次回に続きます。
(緑のとある台詞は旧作を意識していたりそんな感じだったり)