東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

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~二十九頁目(人里)~ 中編

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 「妖怪バスター!」

 

 私は懐から若干紫色をした札を三枚取りだし、まとめて風を切るように手を振って投げる。素早く飛んでいく札は一枚だけでも妖怪を辺り所によれば一撃必殺な威力を持つ。敵の至近距離をキープして放つと体力が面白い位に減る……って、どうでも良い話だったわね。

 

 「霊夢!」

 

 後ろから魔理沙の声が聞こえる。それを聞いて私は攻撃の手を止める。

 

 『ルルルル……ガルルル……』

 

 手を止めたのを好機と思ったのか周囲を狼の様な妖怪が囲い始め、更にその周りを逃げられない様にするために他の妖怪が集まり始める。本当に知能が低いとは思えないわね……だから、人里襲わないでよ。

 

 「……」

 

 囲われた中、私は両手を前方に重ねる様に構える。外から見たら中々奇妙な光景になっている事だろう。

 

 『ガアァァ!』

 

 一匹が私に向かって突っ込んでくると直ぐに他の狼も突っ込む。他の妖怪も遅れて殺到する。

 

 「……今よ、魔理沙」

 

 一言呟いて全身に霊力を込める。

 

 「___彗星『ブレイジングスター』!」

 

 まとまった狼から大きめの妖怪までを吹き飛ばす青い光が一気につき抜けた。魔理沙のミニ八卦炉の推進力を使った魔理沙らしい大技。と言うか、本人は妖怪とかにぶち当たっているだろうに平気なのだろうか?

 そんな事を考えていたがいい加減行動に移そう……

 

 「……ふッ!」

 

 私は偶然、亜空間の出口に立っていた妖怪の頭を踏みつけて踏み台の様にして妖怪共から距離を取る。勿論、その妖怪にも札を残してから跳んだ。……うわっ、見事に爆散した……

 

 因みに、今のは私が引き寄せれる所まで引き寄せ、亜空間を開いて避難した所を魔理沙が一網打尽にする……と言う作戦。余談だけど、打ち合わせは無し。これが意外にも、なんとなく分かるのよ。

 

 「私のよくわかったな? やっぱり女の勘は怖いぜ」

 「長年の付き合いもあるのよ。でも、まさか突っ込んでくる所は分からなかったわ」

 「そりゃ、そうさ。完全に読まれるのが嫌だったんでね、直前で行動を魔砲から今のに変えたぜ」

 

 多少、魔理沙の行動の真相を聞いて呆れたが、辺りを見てもここら辺には妖怪は居ない。逃げたと思うがもう、殆どいないだろう。

 

 「……あれ? 所で緑は?」

 「ん?……ああ! 彼奴! 勝手に飛び出して行ったんだった!?」

 「な、ななな…なんですって!?」

 

 自分でも同様し過ぎな言い方をしてしまった事が良く分かった。だから魔理沙、少し距離を置くな。

 

 「あのっ……バカ! フランの時みたいにコテンパンにされるかもしれないって分かってるのかしら?!」

 

 此処でグダグダ話してる場合じゃないので、地面を蹴って宙に飛ぶ。

 

 「……」

 

 グルリと見渡すが、建物が多いし、火による煙が立ち込めているので視界が悪い。

 

 「……どうだ?居たのか?」

 「居たら立ち止まって無いわよ。魔理沙、まだ私を箒に乗せて緑を探して。追加料金も払うわ。緑が」

 

 魔理沙の返答も待たずに箒に乗る。最近こうして箒に乗って飛ぶことが増えた気がする。

 

 「ツケなら今回だけは良いぜ……さあ、今から最高速度で走るが、振り落とされても承知しないからな!」

 

 そう言い魔理沙は一気にスピードを上げた。勝手にツケにした事をなんとも思っていないし、むしろこんなに心配かけた事に対して色々やって貰おうかしら___?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うわわ! あわわっ!」

 

 よくわからない声を上げながら妖怪の攻撃を避けて表通りに走る。飛んできた弾幕は他の妖怪の影に隠れてやり過ごす。チームワークとかが無いから同士討ちが多い。頑張ったら攻撃せずに全滅させれるかもしれないレベルだ。いや、俺は頑張らないけど。

 

 「コロ!援護頼む!」

 

 尻尾にしがみついているコロに声をかける。

 

 「えんご?なーに、それ」

 「俺を助けてくれ! フォローしてくれ!」

 「ふぉ…ろー…ほぇ?」

 「だーっ! 良いから攻撃してくれ頼むから! 妖怪に魔法当ててくれ!」

 

 今度言葉から教えないと駄目だな。

 声をかけてから正面を見直すと、走っている先に妖怪が先に進もうとして満員電車顔負けのレベルでぎゅうぎゅう詰めになっているのが視界に入った。

 

 「っ……! これで!」

 

 弓を構えて走りながら弦を引く。人差し指と中指の間から細長く霊力が伸びる。おお、これは楽しいな。勝手に霊力が更に形を変えて白い羽が付き、先端は火のように霊力が出ている。

 

 「……喰らえっ!」

 

 ヒュッ!と風切り音を出すと妖怪共の真ん中に飛んで行き、弾けて全包囲に妖怪を吹き飛ばした。我ながらすごい霊力。

 

 「もう……少しで……!」

 

 暗い裏道から飛び出す。一気に日光が目に入り少し眩んだ。

 

 「……ここはどの辺りだ?」

 

 辺りを見渡すと何時もは余り寄らない所に出た。ちょうど確か……

 

 「寺子屋……か?」

 

 少し拓けた場所に一階建ての大きめの建物のある場所が視界に入った。確か、寺子屋だったはず。

 

 「……! こんな時に……!」

 

 ぞろぞろと集まる妖怪共。そこまで数は多くないが一人で、しかも近くに人里の人間が避難している場所があるのだ。少々厳しい。

 

 「なんてこったい……」

 

 緊張感無い台詞を呟きながら寺子屋への入り口に立ち、弓を構える。しかし、この弓から打ち出せる矢は一本だけだ。先程みたいに蹴散らす方法もあるが、矢の威力は少し吹き飛ばすだけの完全に弾幕ごっこ向けだ。仕留めるには一本の霊力を集中させた矢を放つしか無い。魔法も唱える時間が必要でここまで多い相手でいつ襲い掛かるかわからない時は不向きだ。

 

 「ええい! 纏めてかかって来やがれ! もうやけくそだ!」

 

 言葉通り、もう自棄になり弓を構える。兎に角、何があっても群がる妖怪を寺子屋に入れない様にしてやるつもりで神力を解放する。神化しても痛いものは痛い。神だって死にはする、だが多少は気休め程度にはなってくれるだろう。

 

 ……しかし、周り寄っては来るものの、襲ってこない。神化しているせいか。と思ったが、体験談で諏訪子が神力関係無く妖怪に攻撃された事があるらしいので襲ってこない事に神化は関係無い。

 

 ___何故と思っていたその疑問も直ぐに解決した。

 

 

 

 

 

 

 『……お久しぶりね、緑』

 

 「……ああ、本当に久しぶりだな、紫」

 

 耳元にそこまで長い間会っていない訳では無いが、懐かしく思える声が聞こえた。

 

 『そして緑、お届け物よ。せめて何か言って欲しかったけどね……ちゃぶだいに置かれていた時はビビったわよ?』

 「その時留守だったから仕方ないだろ……して欲しかったら呼び鈴を置いてくれよ」

 

 妖怪に囲まれている四面楚歌状態とは思えない会話を繰り広げている。やはり、家族との久しぶりの会話は心地よい物だ。

 

 『……河童に少し無理言って少々手を加えて貰ったわ。思いっきり暴れて来なさい』

 「お届け物だけじゃなくて援護して欲しかったんだがな……まあ、ありがとうな、紫」

 

 片手を顔ほどの高さに開いていたスキマを見ずに入れて呟く様に言う。紫は返事をしなかったが、その代わりにスキマに入れた片手に重さと金属の冷たさを感じた___

 

 

 『ガアァァァアア!』

 

 先程の熊の様な妖怪が突っ込んで来る。妖怪って一直線に来るなと思っていたり。

 

 「___再起不能なレベルで退治されても文句は言うなよ……!」

 

 挙げていた手を下ろして昔、何度か助けてくれた銃を熊に向ける。やっと見た銃は大型で、オプションのライトと合体している赤外線のレーザーを頼りに銃口を前足に向ける。

 

 ___ズガン!

 

 『ガアァァアア!?』

 

 前足が発射音と同時に変に歪む。霊力弾が足に当たり、大きく転倒する。

 

 「ん! いけっ!」

 

 隣から氷の結晶が飛んで熊の体の殆どを氷漬けにした。人里のど真ん中に不思議な氷像が出来上がった。もう少し起き上がって、鮭をくわえていたら完璧な感じ。

 

 「コロ、この調子で仕留めていくぞ」

 「ん、りょくのぶきで、すぐおわる。たぶん」

 

 多分ってなんだ。確かにこの銃は形状が初期と違う銃は見た目以外に威力も速さも桁違いだ。そして格好いい、ここ重要。

 

 「……そら! うらっ! ……そこ!」

 

 妖怪に向かって急所を的確に狙っていく。通常の弾だが、ここも進化してて貫通する様になっているらしく、妖怪を一度に纏めて貫けた。ついでに住宅も。そこの家の人、ごめんなさい。

 

 俺が妖怪を行動不能にし、まだ動けそうな妖怪をコロが氷漬けにして片付ける。わりと良いコンビネーションだ。

 

 「! りょく! うしろ!」

 「っ! マジかよ!?」

 

 コロから突如、大声を出されて後ろを向く。後ろには降り下ろす為に上げた腕を此方に向けている妖怪が立っていた。いつの間に回り込んでいたのだろうか?兎に角、避けるには間に合わない。腕を前に出し、腕にくる痛みに備え……

 

 『ギャッ!?』

 

 至近距離で妖怪の横に青い物___ナイフが刺さっていた。

 

 「っ!?」

 

 ナイフの刺さった場所が悪かったのか一撃で倒れた妖怪を途中まで見届けてからナイフの飛んできた方向を見る。

 

 「フッ! なんでこんなに居るのかしら?!」

 

 視界と声のした先にはナイフを振るって妖怪切り刻んでいるメイド___咲夜がそこにいた。

 

 「咲夜!? 何故ここに?!」

 「さぁね、でも偶然人里に居て、偶然妖怪が来て、偶然鉢合わせしちゃ駄目なのかしら……っ!」

 

 片手に持った数本のナイフを一直線に飛ばす。青い残像を残しながら全て妖怪に命中する。なんでこんなに上手いんだ?

 

 そんな事を思っていたが直ぐに我に返り敵に銃弾を撃ち込んで一気に片付ける。直ぐに数は減っていき遂には全滅した。妖怪は倒しても死体が残らないのは結構有難い。残ったら踏む場所が無くなるぐらいになっただろう。俺に相手の顔を踏む変な趣味なんてないし。

 

 「ふーっ、やっと終わった終わった」

 「ねぇ、緑。どうしてここまで妖怪が溢れてるのかしら? コミケ?」

 「さあ? 何かあったのかは知らんけど何時もはこんなに好戦的じゃないよな? 今まで襲ってこなかった点で何かあったんじゃないか? あとコミケ言うな」

 

 そんな会話をしながら周囲を見渡す。咲夜が投げたナイフを拾う音以外は聞こえない。恐らく他の妖怪は遠くに居るか、逃げたり全滅したのだろう。

 

 「……あと、ありがとな。あの時ナイフを投げてくれなかったら大怪我したかもしれないし」

 「ええ、普通に受け取っておくわ。それに貴方に借りができたでしょう?」

 

 何か企んでいる顔で言われて冷や汗がタラリと流れた。……絶対後で何か言われるな。

 

 「ほら、巫女と魔法使いが来たわよ、私はこれで。……多分、後で何か頼んだりすると思うけど貴方が断らないと信じてるわよ」

 「……ひでぇ」

 

 最後にしっかりと釘を刺される。反論の代わりにジト目で訴えかけるが既に消えていた。時止めたな、彼奴。

 

 「おーい、緑ぅー」

 

 咲夜が居なくなると入れ違い様に魔理沙の軽快な声が上から聞こえた。

 寺子屋の向かいにある住宅の屋根の影から箒に乗った魔理沙と霊夢が見えた。最近、霊夢はよく箒に乗るね。

 

 『……あんた』

 

 「……ん?」

 

 二階建ての家より上の方なので声が小さく聞こえる。何か声のトーンが低い……?

 

 「……なに勝手に単独になってるの……よっ___!」

 

 

 霊夢が飛び降りたと思うと霊夢の靴がやけに大きく見えた。と言うか視界の全てがそれだった。

 

 「ウボァ!?」

 

 

 ……飛んできたのは怒りと蹴りでした___

 

 

 ……ひどくね?




 後編とか書いといて普通に中編でしたー。ごめんなさいっ!

 次はその後みたいな感じです。短いかも……?
 あと、予定ではそろそろオマケを書きます。文字数が不安な最近。

 それでは、次をお楽しみに。
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