この調子で四十頁目までに色々とやりたい事を一通り出来れば良いんですが……出来るかねぇ……
それでは、どーぞ!
「……いやいや、引き分けで終わっちゃうとはねぇ~」
「……まさか俺達の戦いで賭けをしていたとはな」
縁側に腰かける幽々子の隣に座りながら俺はまるで呪うように言ってやった。試合の時、静かだったのは別に自分の庭師の実力を見守るとかそんな綺麗な話ではなく、真相は大人の汚れた遊びだったと聞いて全身の力が抜けた気がした。
「……しっかし、下手すりゃ負けてたな」
縁側に寝転んで屋根の一部と蒼い空が目に入った。少し離れたところでプリズムリバー達が演奏の練習をしているのでそれをぼんやり聞いていると眠気がしてくる……
「……緑さん?」
「……ん? ああ、妖夢か」
目を開けると屋根の一部と蒼い空。そして妖夢の顔が映った。
「あ、そう言えばこれを返しそびれたな。貸してくれてありがとな」
「いえ、その刀についてですが……緑さんに差し上げます」
妖夢が照れ臭そうにそう言った。と言う事を理解する事にラグがあった。
「差し上げるって……良いのか? 本当に」
「はい。今回は私の勝手なお願いを聞いて下さりましたし……勝手な推測ですが、あまりその長刀に慣れてなさそうでしたし……」
「……お見事。素晴らしい推理力をお持ちの様で」
正直言ってこの刀はリーチが長い分、遠心力に振り回されやすい。細かい動きが出来ないので細かい弾幕が来たり、連続で続く弾幕が飛んで来たら不利だろう。その為の斬撃の貫通仕様なのだろうが。
「……不要でしたら遠慮なく言って下さいね」
「いや、ありがとう。頂いていくよ」
短刀を渡された木でできた鞘に納める。その時、ちょんちょん、と幽々子に呼ぶように突かれる。
「ん? 何だ?」
「いや、その短刀の事なんだけどね……実は前に悪くなっちゃった刀を妖夢が頑張って直してみた物なのよ。それを渡すと言う事はそれだけ彼女が感謝しているのよ。だからどんなに壊れる様な使い方をしても必ずその短刀を役立てるのよ?」
幽々子は何時通りの表情のまま小声で教えてきた。しかし、内心では妖夢の事を大切に思っているのだろう。……出来れば、あの時も賭け事なんてしないで見ていて欲しかったが。
「妖夢、本当にありがとな。大切に使うから」
もう一度そう言って感謝すると妖夢は恥ずかしそうに「みょん」と楽器の演奏の音に消えそうな声で返事した。
___自宅。
「帰ってきたー!」
「とーちゃーく」
家の前にフワリと降り立つ。そばに遅れてコロがついてくる。コロは何時も九十九神化した時は尻尾で空を飛ぶ。尻尾で空を飛べるって便利だな、こっちは能力使ってるのに。
「……おー、りょく。おきゃくさん」
「客? 家は商売してないぞ?」
「じゃあ、じゃあ……めいどさん?」
『めいどさん』の部分で一瞬疑問に思い、次に特定した。幻想郷で『メイド』は名無しの妖精以外で一人しかいない。
「___あら、ちょうど来てたのね」
数歩先の場所が人型に一瞬霞み、次の瞬間には紅魔館のメイド長である十六夜 咲夜が現れた。
「ああ、たった今妖夢との試合から帰ってきた所だ」
「暇人ね」
咲夜が呆れた様な感じで冷たい感想を述べた。仕方ないじゃないか。幻想郷の住人の九割がのんびり過ごしてる訳で、咲夜みたいな人はシリーズの一作品に一人か二人程度___じゃなくて、殆ど居ないんだぞ?
「……まあ良いわ。お嬢様が暇しているし、そろそろ夕方でしょ? お食事にでも招待したいってお嬢様が言っていたわ」
「是非行っても良いんだが……一様、否定権はあるのか?」
「……人里の件の時、確か私は言ったでしょ?」
「……あー、はいはい。成る程」
……そこであの約束が出てくるとは。あの時は助かったとは言え約束自体は殆ど一方的だったんだが……
「あー、分かった。ちょうど暇だから今すぐ行って良いか?」
「ええ、勿論。お嬢様も喜ぶわ」
咲夜はそう微笑みながら返事をすると懐中時計を取り出して時間を見る。そしてパタンと閉じる。
「さあ、急ぐからちょっと時を止めるわよ……あ、貴方は大丈夫かしら?」
「ん? ああ、ちょっと待って___よし、これで『時を止める程度の能力』を効かなくすれば……」
「……チートに拍車がかかってるわね」
神化して能力のオマケの作用だが、こうして能力の効果を無くせば時が止まっても動ける筈だ。
そして、けっこう気にしてる所を指摘するなよ……最近はチートにならない様に控えめにしてたけど、逆に空気になって大変なんだよ。作者は新武器増やしすぎて能力の使いどころに困ってたんだぞ。
閑話休題。
「……なんか変な怒りをぶつけられた気がするけど、今から止めるわよ」
「おう、良いぞ」
そう返事した瞬間、辺りが灰色に染まった。言ってしまえば昭和頃のテレビみたいな光景だ。
「じゃあ、飛んでいくわよ」
「……あ、そこまで速く飛ばないでくれないか? 能力使ってると神力を使えないし、同時に二つの能力を使えないし……霊力だけで飛ぶのはそこまで得意じゃないから」
「……なんか調子狂うわね」
咲夜はそういいながら苦笑いした。その後、たいして速くないスピードで灰色の世界を飛んで紅くない紅魔館に飛んで行った___
「……ねえ、緑?」
「ちょっと待てっ……と、セーフ」
久しぶりなので鈍ってしまった能力無しでの飛行を無事に終えて紅魔館の門から少し遠い所に降りる。
「ふぅ……で、何だって?」
「いや、あまり関係のない話なんだけどね……詳しくはお嬢様が尋ねてくると思うけど、貴方はお嬢様の事をどう思ってるのかしら?」
「どうって……何が?」
「私から見たら、何時もお嬢様から距離を置いている様に見えるのよね。なのに会話とかする時には仲の良い友人の様に自然と接しているのを何時も不思議に思っていたけど……貴方はどう思っているのかしら」
灰色の世界を歩きながら咲夜は此方を見ずに聞いてきた。
「……何時もレミリアとは距離を置いているのは事実だ。何て言うのか、尊敬と言うのか……まあ、そんな感じの気持ちで接してくるのが何て言うか歯痒いって言うのか……あまりそう接されると自分らしく対応するのが出来ないんだよ。だから若干だが距離を置いてた」
「……要するに誉められると恥ずかしくなるタイプね」
「流石咲夜、人が気にしている部分を的確に当てる……」
頭を片手で掻きながら言い返すと咲夜は小さく笑い声を出しながら門へ歩いて行く。と言うか何故門の目の前で降りなかったのか。
「……だけどさ、距離を置いていたとしても何か喋ったりしているうちに『純粋に好意を向けている』って自然と納得してそれに答え様としてるんだよな……そして次会うときは全く同じ事を繰り返している。……みたいな感じだな」
「何で同じ事を繰り返しているのかが謎だけど、貴方がそれなら変に借りを作らせる必要は無かったわね……あ、時を戻すわね」
「それが目的だったのか……? ん、分かった」
咲夜が時を戻した瞬間、風で秋の赤や黄色をした木の葉同士が擦れ合う音がする。その音の中に変な音、鼻息と言うのか……
「zzz…」
「……寝てるわね」
「……立って寝てるな」
久しぶりに会った美鈴はやはり立ったまま首を倒して鼻で息をしながら昼寝をしていた。お前は極限まで疲れきった社会人か。
「なあ、こういう時ってお前はどうしてる?」
「……妖怪は風穴開けても治るのよ?」
「……メイド怖ぇ」
と明後日の方向を見ながら腕を組んで言うその姿を見て血の気が引きながらも(自業自得かもしれないが)美鈴の今までの不運とこれからの不幸に対して黙祷を捧げた。心の中で。
「そう……じゃあ、貴方が起こせば?」
「起こすって……なぁ、つかぬことをお訊きするが、何時もはどんな感じに?」
取り合えず不幸な目にあっているのかはわかっているのだが、どの様な目に会っているかが何故か気になる。
「何時もは……こう、ナイフを持って___」
「___ストーップ!! ストップ! その後の惨劇は間違い無く『残酷な表現』確定な気がするし、そう言うの無しを押し通してるから止めろ!!」
「あら、『残酷な表現』と『血などの表現あり』って書かれてるけど?」
「……確認してきたけど本当だ!? 畜生、タグめ! 作者め!!」
変な方向に話が流れて行ったし何故、美鈴に(これは同情と言うのかよくわからないが)ここまで反論を唱えてるのだろうか。
取り合えず俺が止めなきゃ他に庇う人が居ない気がした。
「じゃあ……やってみる?」
「何を……うわわっ!? ナイフを投げて渡すな!?」
そう言われると、放物線を描いて横向きにナイフが飛んできて危うく落としそうになりながらも受け止めた。
「いやいやいや、俺も刺さないから! 普通に起こせよ」
「普通にって?」
「ええっと……あ、そうだ___こう、とかか?」
「……普通じゃないじゃない」
銃を取り出して今回も活躍する霊力シャワー。果たして、これで良いのか俺のメイン武器。
「じゃあ、美鈴は貴方の救済を無駄にしたくないし……説教だけで済ませるから先に上がってて。だいたい道は分かるでしょ?」
「ん、美鈴に宜しくと伝えといてくれ」
俺は一言咲夜に言って門を開けて館に入り、懐かしい図書館を進んで行った___
「……さて、この辺りだよな」
結構立派な扉を前にしてボソリと呟く。
ちょっと迷子になったとかそれが理由で周りの妖精メイドに聞いたら関係無い所に案内されたとか、最後はコロに頼ったとか、そんな番外日記にも載らない内容は割愛してたどり着いた扉に手をつける……が、その時に咲夜と話した内容が頭の中で甦った。
(……いい加減に態度とか変えた方が良いのかねぇ)
もしかしたら、今までの態度にレミリアは何かを思っていた為に咲夜に言わせたのかもしれない。仮にそれで不快に思わせていたら自分の良心が痛む。魔理沙みたいにもう少しフレンドリーな感じにしてみるか。
よし、と意を決して扉を押して___少し開いた瞬間に中から楽しそうな声がワッと溢れてきた。
『……わーっ! 倒れたー!』
『ふふ、私に勝とうなんて100年早いわ!』
何かが大量に崩れる音と二人の少女の声___レミリアとフランの大きな声が扉越しに聞こえた。……何やってるんだよ。
『___これでフランは2勝4敗ね。よって私の案の『生の玉葱一気食い』か、フランの考えた『塩水一気飲み』のどちらかを選びなさい!』
「……いや、本当に何してるんだよ」
黙っている事が我慢出来なくなり、扉を更に押して部屋に入る。あ、ノックしてない。まあいいや。
「なっ…緑!?」
「あっ! 緑だーっ!」
声を出して入った為に直ぐに二人に見つかる。フランは両手に持っていた塩水が入っていると思われるコップと生の玉ねぎを置いて此方に駆け寄って___ぐはっ。
「久しぶり~! 本当に来たんだね!」
「り、緑。ひ、久しぶりね」
内蔵をすり潰さんとばかりに腹に抱きついてくるフランと何時もとは違い冷静そうに振る舞うレミリア。何で今回は何時もと違って冷静そうに振る舞ってるんだ? 何時もだったら見た目通り(かなり失礼)の反応をするのだが___ああ、そうか。フランの前だからか。
「……とか、冷静に判断したけどいい加減に離れて内蔵が再起不能になるぐああぁぁ……っ!」
「ちょ、ちょっとフラン離れなさい!」
意識が朦朧とする危うい中、やっぱり今まで通りにしよう。と、作戦を速やかに『フレンドリーに』から『現状維持を大事に』にシフトした。やっぱ今が一番だよね。
おお、0%0%0%よ、中途半端に終わるとは情けない。 ……なに? 文字数オーバーじゃと? なら仕方ない(前回の二番煎じ)
感想の方で(小声で)レミリアとフランを出すとか言っといて今回は殆ど出てないですね……ちくせう。
次回は殆ど紅魔館がメインになりそうです。詐欺にならないと良いんですが……
次回もお楽しみに。
誤字があったらズバズバ指摘して下さい。