東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

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 書いてる身が長く感じた永夜抄編。遂に完結です。長かったぁ……永かったぁ……

 それでは、どーぞ!


 ※ 破魔矢は先端に何もついていません。決して当たっても血とか出ません。痛いけど。


~四十三頁目(永夜抄ED)~

 

 

 早苗によって限界まで引かれた矢は俺が弓を向けた先、輝夜に向かって一直線に向かって行き、遮る弾幕を数弾突き破り___

 

 「___ぐっ!」

 

 

 ___命中した。

 

 輝夜が矢の被弾した部分を手で押さえると同時に刀に途絶えずに飛び続けてきた弾幕は一瞬にして蛍の様な一つの光の玉になり、消滅した。

 

 「___あーあ、負けちゃったわ……」

 

 刀を視界の端に退かすと輝夜が両手を挙げて『降参』と云っていた。向こうの降参で終わるのはパチュリー以来かもしれない。だがなんか嘗められてると言うか、悔しい様な気がする。

 

 「は…あはは……」

 

 いつの間にか俺の上から横に移動して仰向けに倒れ込んでいた早苗が乾いた笑い声を小さく出した。

 

 「や…やりましたね、妖怪退治」

 「ああ、矢を引いて当てたのは早苗だから、早苗が解決した事になるな」

 

 「……いや、私は妖怪じゃないわよ?」

 

 遠くから否定する声が聞こえたが反応する程体力は俺も持っていない。今ここで一人だけだったら早苗の様に地面に倒れ込んで同じく笑っていただろう。

 

 「は、はは……私、ちょっと疲れました……」

 

 

 ……え?

 

 ……いや、ちょっと待て。その手の下りって死亡フラグじゃね?

 

 「緑さん、私、眠いんです……」

 「うわこの人本当に死亡フラグ建て始めた!? そして俺は犬じゃないしまだ秋だから凍死しねぇから! ちょっと待て、待て待て目を瞑るなおい!?」

 

 俺は必死に死亡フラグを建てて回収まっしぐらな早苗の上半身を起こして寝かせまい、と言わんばかりに揺する。

 

 「っ、せめて、これだけは……」

 

 早苗は目を瞑ったまま、人指し指を立てて上に伸ばして天を指す。

 

 「___我が生涯にぃ……一片の悔い……無し……」

 

 

 ___きゅう、と声を小さく出して早苗はガクッ、と崩れ落ちた。

 

 

 「うわーっ!? 早苗ーっ! その台詞は女性が言う物じゃ無いとか本来握り拳でやるとか色々アウトとか今は見なかった事にするから取り合えず死ぬなああぁぁあああ!!」

 

 「……なんか声かけにくいけど、疲れすぎて気絶しただけよ」

 

 後ろから声が聞こえて振り向くと永淋が襖から出てきた。永淋は笑顔のまま輝夜に『姫様、お疲れ様でした』と言うと俺達の方に真っ直ぐ向かって来た。

 

 「安静にすれば直ぐに良くなるわ。取り合えず直ぐに運びましょう」

 「あ、ああ。分かっ___? これって……」

 

 永淋が運ぶと言ったので早苗を抱えようとしたら短い棒の様な物___確か紫から貰った筈の扇子を投げ渡された。

 

 「なっ……!? どうしてお前がこれを!?」

 「もし、怪我人が出たら私の家で預かって良い、って賢者からこれを渡すと一緒に伝えて来たのよ」

 「……紫は何考えてるんだ? まあ、良いや___ふっ!」

 

 疑問を一時保留にして扇子を縦一文字に振ると空間が裂ける。向こう側は覗いて見る事が出来て寝室に繋がっていた。

 

 「それじゃあ、私も着いていくわ」

 「ああ、頼む」

 

 そう一言会話をすると、俺と永淋は早苗を抱えてスキマを通って行った。

 

 

 「……ふぅ、あの子がアイツが言ってた人間、ねぇ」

 

 スキマが閉じて一人だけになった輝夜は微笑みながら呟いた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……これで異変も解決かぁ……まだ謎は多いけど」

 

 早苗を運び終わり、永淋に『私だけで様子を見ておくから』と、言われて俺は今、久しぶりの紫達の家を歩き回っている。因みに、コロは永淋が少し治療の手伝いをさせると言っていたのでおいてきた。つまり今は一人だ。

 

 「なーんか、何処か行きたい訳でもないのに歩き回るってのは変な気分だな」

 

 そう言いながらブラブラと歩き回る。中庭の池に近い縁側で、籃との会話を思い出したりと感傷に浸っていると、いつの間にか薄暗い部屋に入ってしまった。

 

 「___あれれ、考え込んでいたら変な部屋に___ん?」

 

 戻ろうと振り返った時、何かを蹴飛ばした感覚がした。何かが転がって行ったので俺はソレを拾い上げる。

 

 「……なんだこれ、日記?」

 

 拾い上げた物は一冊の本、誰かの日記の様だが名前は書かれていなかった。いや、その部分が酷く擦れて見れなかった。

 

 「……読んでも、問題無いよな……?」

 

 何処かの偉そうな人が日記は誰かにこっそり読まれる物って言っていた。とりあえず、こっそり読んでみる事にする。

 

 「___十月某日『今日、私は起きた出来事が多すぎて頭がパンクしてしまいそうだった。 自分で出来事を整理すると、私はうっかり池に落ちてしまい、溺れてしまった。 そして、気がついたら見知らぬ人の姿になっていてあらゆる場所をひたすら日が暮れるまで歩いていた。 遂に夜になった時、謎の妖怪と名乗る女性に保護されてここに居る事になった。何で見知らぬ人の体になってしまったかはわからない。だけど、何時かこれに書き込んだ事が謎の解決の手助けになる事を信じて書くことする』」

 

 その後は長く色んな事が載ってたのでパラパラと適当に捲った。

 

 

 「___某月某日『ここの世界に馴染んできた。住民は皆個性豊かで十人十色。何より……お酒が好きな妖怪達が多い。 楽しいのだが、やっぱりあの人が未だに気になる。もう一度、あの池に飛び込めば帰れるかもしれないが、臆病な私にはあの恐ろしく冷たい池に飛び込む勇気はなかった。 ……それに、私は知らない人の体になっただけだと思ったが、なんと妖怪になってしまったらしい。そんな私を見ても、彼は私を嫌うだろう』」

 

 ……何だか暗い内容だが、構わず進める。

 

 「___『……万年筆が酷く震える。いや、私が震えているのだ。話によれば体ではなく、魂をあの『闇』にやられたらしい。……油断した。取り合えず荷物はここに纏めておいて、処理は紫に任せる事にする。 未練と言えば、紫にも幽々子にも、永淋にも。……秘密だけど天魔にも、私が会いたかった人を見せる約束をしたのに出来なかった。そこが堪らなく悔しい。 皆も私が消える事を悲しんでいるけど、別に私は意思だけが幻想郷に留まるらしいから気にしなくて良いと思う。それでも悲しむなんて皆、心配性だなぁ……。それに何時も紫が言ってる様に___『何してるのかしら?』どうわぁ!?」

 

 日記を読み耽っていると背後から永淋が立っていて二度ビビった。相変わらず心臓に悪い。

 

 「早苗なら問題ないわよ。今日一日は寝かせておきなさい。コロちゃんも一緒に寝ちゃったわ」

 「あ、どうも。って、コロが一緒に寝たって……」

 「ええ、でもちゃんと手伝ってくれたわ。……さて、家に返して貰うわよ?」

 「……ああ、わかった」

 

 

 日記の事を記憶の端に置く事にして、俺は永淋を永遠亭に送るためにスキマを開いた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ごめんねぇ、色々伝えれなくて。それぐらい緊急だったのよ」

 「……まあ、何事も無かったっぽいし、無駄な事だったっぽいけど、早苗には良い経験になったし良いか」

 

 時は暫く経って満月の夜。

 

 あの月の異変に関わった人達で今夜は博麗神社で月見酒を呑む事になった。

 

 結局、あの事件の真相はと言うと、月の使者が幻想郷に忍び込んで来たので永淋達が月の使者を弱体化させる為に月の魔力を抑え、紫や幽々子等の一部妖怪が永淋と手を組んで返り討ちにさせたとの事。月の使者がその後どうなったかは定かではない。うーん、こわっ。

 

 

 そして副作用として、月の魔力が得られなくなった弱小の妖怪は魔力を求めて大暴れして、各地を回った霊夢によって退治される。人里は駆けつけた魔理沙と(意外な事に)アリス。咲夜と妖夢によって守られた為、奇跡的に建物が数件吹き飛ぶだけで(犯人は確実に魔理沙)終わった。

 

 そして何とか月の民を撃退した後、俺達が永遠亭に攻め行った……向こうからすりゃ良い迷惑だったな。

 

 あと、一瞬だけ一部の地域の月を隠すだけだったので、月読に月を隠す事について連絡を入れなかったらしい(連絡の入れ方が謎だが)。この事を月読は特に気にしていないとの事だ。イメージとは違って結構優しい神様だった。

 

 

 

 そして、その妖怪退治に関わったメンバーは勿論、永遠亭のメンバー、そして守矢神社のメンバーが集まった。そして集まったメンバーで赤い葉が数枚しかついていない桜の木の下で皆仲良く呑んでいた。

 

 

 「ほら、お詫びとして外の世界で手に入れた高級な芋酒でも呑もうじゃないの」

 「まあ、ありがたく頂く……だが、早苗には呑ますなよ? 絶対にだぞ?」

 「あらあら、そんな二の舞は踊らないわ。それにもう酔ってるからね」

 「あ、そうか。___じゃなくて! 何で!?」

 

 紫から酒を注いでもらって飲もうとした直前にハッと気づいて早苗を探した。

 

 「いつもいつも! あんらはわたひのまねをしてぇ!」

 「れーむさんこそ! そんひゃことをいえるとおもっとるんですかーっ!」

 

 ……うわぁ、博麗の巫女さんと山の巫女さんが何か言い争ってる。ベロんベロんに酔いながらなので説得力は皆無だし、色々と印象とかが崩壊してるし、周りは酔った人と言うことでスルーしてる。こういう時の皆のスルースキルには何時も憧れていたりする。

 

 「あっちゃー……早苗、弱っ!」

 「まさか、甘酒で酔うとは……」

 

 なにやら、犯人らしい守矢神社の神二柱がそんな早苗を遠くで見ていた。いや、どうにかしろよ。

 

 「霊夢がまさかあそこまで酔うとは……」

 「ウフフ、さっきから何が気にくわなかったのかわからないけど、酒の一気飲みを五回も繰り返したからねぇ?」

 「あのですね、俺の知ってる限りにはですね。人間には急性アルコール中毒って恐ろしい物があってですね」

 「あらら、外にはそんな常識があったのねー。初めて聞いたわー」

 「……そうだな。急性アルコール中毒だなんて俺もたった今、初めて聞いたって設定だからな」

 

 ここは幻想郷。それで済むのもアレかもしれないが、そこに関しては特に追求しない。明日から使える幻想郷で生き残るための知識だ。

 

 「ほら、橙も藍も呑みなさいよ。折角の月見酒よ?」

 「それじゃあ、いただきます」

 「いただきまーす。 ええっと……確か、器のお酒に月が映るようにして……」

 「そうそう、そうしてから呑むんだよ」

 

 両手で酒が注がれた器を持って出来るだけ伸ばしてから呑む橙を藍は頭を撫でて誉める。本当に二人が親子に見える。

 

 「ほら、貴方も呑みなさいよ」

 

 不意に声が聞こえて振り向くと永淋と輝夜が酒を注がれた器を同じように持って立っていた。

 

 「ここの皆は既に呑んだと言うのに……酒を呑んでないのは貴方だけよ」

 「わかったわかった……それじゃあ、いただきます」

 

 そう輝夜に勧められて、紫に注いでもらったお礼を言ってから月を酒の水面に浮かべて、揺らめいているそれを眺める。

 

 

 自分が妖怪になってしまった事からあの夢の事、皆が知っている事、神力の事、そしてあの日記の事。

 

 全てのよくわからない部分は降り積もった雪の様な物に閉ざされていて未だに解決していない。

 

 

 しかし、積もった雪も春になれば自然と溶けて無くなる。同じように、ゆっくりと時間をかけてその謎も解かしていけばいい。

 

 

 俺は心の中でそう決めると、橙の見よう見まねでまるで月を飲むように酒を呑んだ___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Good End

 

 






 毎回通り、ラストにカッコつけましたが、これで原作の異変関係は全て終わりました(多分)。後は色んなキャラ達ときっと様々な事をやって行きます。

 あと、このペースだと恐らく、小説のストーリー自体の完結(推敲、後書き、解説(?)等を除いて)は年が明けるか明けないかぐらいです。曖昧。

 それでは、次回もお楽しみに。
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