~四頁目(八雲家~???)~前編
「___起…ろ………緑、起きろ」
「ん……?」
昨日飲みすぎたせいか妙に頭が重い。オマケに体も怠い。それでも、あれだけ呑んだ筈なのな二日酔いの様に頭痛は起こらなかった。普段呑んでないから多く感じただけかもしれないが……もしかして妖怪だからだろうか?
「あぁ、藍か……」
「やっと起きたかりょ___!?」
のそり、と体を起こして両手を天に向けて伸びる。伸び終わる時には何故か藍の顔が驚いた表情で石像の様に固まっていた。
「……なあ、どうかしたか?」
「___え、本人は無反応!? いや、緑? その頭は一体どうし___なっ!? 緑、腰! 腰にも!」
今まで聞いたことのない藍の声を聞いた。寝起きなのでそこまでハイテンションになれない、などと突っ込みを入れながら髪を掻く。
「……あれ、これは___!?」
藍の次は自分が驚く番だった。頭を掻こうとすると何かが邪魔をする。触ってみると耳。動物とかの三角形の様な耳が生えていた。
「はい!? んなぁ!?」
頭の上の耳を触るとまるで体の一部の様に触られた感覚がする。とっさに指摘されていた腰に手を当てるが、こちらも薄々予感していたが尻尾のようなものが生えていた。
「な、ななな、ななっ___なんだこりゃあああぁぁぁあああ!?」
___今度は祭りの大太鼓の音に勝てる様な声を天に向かって上げた。
叫んだ後、必死に無心を保ったり素数を数えようとして間違えて自然数を数えたりしながらもなんとか冷静になり、俺はまるで100m走の如く外に飛び出し、井戸から汲み上げた水に写った自分の顔を見た。
「なんだよこれ……?」
俺の黒の何時もの癖毛っぽい髪の毛にある二つの白い三角形。明らかに耳、間違いなく耳だ。
「な、なぁ……緑。それは一体なんだ?」
後から追い付いた酷く息切れしている藍に後ろからそう聞かれた。そんな事、寧ろ俺が知りたい。
紫が起きたときも同様の反応を受けた。
しかし、一つ藍と違う点と言えば俺の尻尾に迷う事なく抱きついてきたことだ(これは尻尾を上手く動かし避けた。人間慣れが大事、今は何故か人間じゃないけど)。
「___だが、なんでいきなりこんな耳がいきなり?」
ご飯を食べながら愚痴を溢す様に話題を出す。すると紫が口に入れたご飯を急いで粗嚼して口を開いた。
「……多分、今までよりも妖怪寄りになったんじゃないかしら? 人間と妖怪の関係は曖昧って私の友人の大天狗が言ってたしね。……でも、まだまだ妖怪とは言いがたいわ」
紫はそう言うとご飯を平らげる作業に戻った。しかし、『妖怪』と一纏まりに言っても結局、俺は何の妖怪なんだ?
俺は無意識のうちに尻尾を不機嫌そうに動かしていた。
「___ねぇ、緑? 妖怪になったんだし、空を飛べるんじゃないかしら?」
食べ終わった頃、俺は突然紫から思わぬことを告げられた。
「……What?」
「いや、いきなり英語で反応されても……妖怪が空を飛ぶのは何度か見た事あるわよね?」
「ああ、インパクトありすぎて一番最初にその内容を日記に書き込んだぐらいに」
そもそも、妖怪だから空を飛べるのも可笑しい話だが、そこで常識を捨てる、すると別に大した事に思えなくなる。
……最近、これが悟りの境地だと自覚してきた。
閑話休題。
時々、僅かに吹いてくる風が俺を落とそうとしているんじゃないか、と思わせる勢いで後ろから俺を押してくる。
「___さあ、緑。ここから軽く跳んでみなさい」
「それは遠回しに『他界しろ』と言ってるんですかねぇ?」
「いや、そこまでは……」
……そもそも、空を飛べると言う確信は持てない。こんな状態で飛ぶのは自殺願望者ぐらいだろ。俺は特に、ここから水に飛び込む訳でもバンジージャンプをする訳でも、時を駆ける訳でもない。特に最後は激しく違う。
「いやいや、失敗するってこれ。足首をくじきましたー、で笑い者になるだけだって」
屋根の上ははそこまで高くないが、下手に飛び降りれば足首を挫いていまうだろう。空を飛ぼうとして足首挫きましたー、などは笑えない。笑う前に泣く。
「……じゃあ、藍。手本を見せてあげなさい」
「はい、紫様」
そう言うと、俺の横に居た藍は早苗達が飛んだ時と同じようにフワッ、と飛んだ。本当に不思議だな……何を利用して飛んでいるんだ?
「体を上に持ち上げるイメージで飛べるぞ」
「イメージが正しいか確信を持てないんだよ……」
藍がそう言うがそんな簡単な物ではないだろう。仮に此処で簡単に飛べたら人類の夢が呆気ない物になってしまうだろう。鳥人間コンテストはどうなるんだよ……あ、今は人類じゃないんだっけ? 耳が生えようが尻尾があろうが妖怪って確信がもてない。
「良いから飛んでみなさい!」
「だが断る。そんな簡単に飛べる訳___」
「……えい」
紫が手元にスキマを作り上げ、手を突っ込む。それと同時に背中が押された。
「おま何をする___だああぁぁぁああ!?」
後ろから押されて俺は前屈みに屋根から飛び出した。体が上に浮いた感じがしたがすぐに謎の浮力が万有引力に負け、結局そのまま勢いよく前に飛び出してだらしなく顔で着地した。
「あー、大丈夫かしら……?」
俺の上の空中から不安そうに紫が聞いてくる。
「___藍、今すぐ熱湯で淹れた玄米茶を5杯持ってきてくれないか?」
「投げつける気!? ねぇ緑!?」
「わかった。出来るだけ100度近くだな?」
「藍までもが!?」
……なんか、藍とチーム(?)ワークが上がった気がする。
その後、危なっかしいが俺は空を飛べるようになった。
飛ぶのはとても気持ち良く、清々しい気持ちでまさに『解放された』と言えた。
……恐らく階段下の物置に住んでいた生き残った男の子も箒に乗った時はこんな気持ちだろう(ちなみに、紫には玄米茶を投げつけた……が、スキマを作られ、そこに玄米茶が入ってしまった……畜生)。
しかし、紫はなんで俺に空を飛ばそうとしたんだろうか。
今の俺には思い付かなかった。
___夜
「___咲夜、用意はいい?」
紅い色の薄暗い部屋。そこで一人の少女が呟く様に問いかけた。
「___はい、こちらもパチュリー様も良いそうです」
突然、何もないところに現れたのはメイドの格好をした銀髪の女性。それが問いに答えた。
それを聞いた少女はほんのわずかに口元を吊り上げる。
「フフ……これであの子も喜んでくれるといいんだけど……ね?」
数少ない小さな窓から館の一部を見下ろしながら呟く。
彼女の居る館の上に浮かぶ月はまだ、満月とはギリギリ言えなかった___
___数ヵ月後。
妖怪になってから月日が一瞬に感じられるようになった(小説ではホントに一瞬だったけど)。
今日も紫にスキマを開けてもらい、博麗神社に行った。最近、神社と人里と魔法の森に行くのが日課になった。
「あら、今日は早いわね」
「おう、今日は特に暇になったからな」
ここの巫女、霊夢に冷茶をもらいながら返事をした。
ここに初めて来た時には『うっかり封印しちゃいそうになったわー』と、言いながら札を投げるのが(文字通り)挨拶代わりだったが、今は友人の様に話し合えるようになった。お札怖い。
「しっかし、暑いわね。氷の妖精でも連れてこようかしら」
「……ここら一帯氷漬にされたかったらな」
そんな冗談を話している。これが楽しいことの一つでもある。なんか、何かに染まって来たなぁ……
「緑はそんな格好で暑くないわね……」
「ん? ああ、北海道民だったが慣れた」
「……なによ、北海道って」
「試される大地だ」
「何それ修行でもしてたの?」
……そういえば、俺の今の格好は外の世界の服装ではなく、白に薄く青のかかった浴衣の様な服を着ていた。この服、見た目とは裏腹に動きやすく吸水性、通気性などが凄い。
この技術はどこかの姫の運動着に使われている……らしいが真相は不明だ。
「まあ、そんなことよりも今日は面倒なやつが来るし……」
「それは私じゃないよな?」
そう言いながら突然現れたのは魔法の森に住む魔女、魔理沙だった。
「……だと良いわね」
「なぁ!?」
ショックを受ける魔理沙を見て、俺は少し笑った。霊夢も小さく笑う。
「……冗談よ。面倒なのは___「この私♪」
また突然、そう言って出てきたのは紫だった。……流石にスキマから突然出てきても驚かなくなった。
「いちいち“♪“を使うな。記号に切り替えるのめんどくさいのよ」
「メタ……そんなことより貴方達、こんな暑い中だからバデて気が付いていないのかもしれないけど、空を見たかしら?」
紫がそう言った直後、俺と魔理沙は一斉に空を見上げた。
「なぁ!?」
「空が……!?」
なんと、空が少し紅色に染まっていたのだ。まだここは薄いが、遠くを見ると向こうは霧が濃くなっている。
「___紫! これはなんだ!?」
俺がそう聞くと紫は森の方を指差す。
「……紅魔館を知ってるかしら?」
「紅魔館?」
二人はあ、と反応したが俺にとっては初めて聞く名前だった。
「またあの吸血鬼かしらね……」
「吸血鬼?」
霊夢が呆れたかのように呟いき、俺が訪ねる。
「ええ、そうよ。血を吸う奴ね」
「またあの『うー☆』か!? 霊夢、行くぞ!?」
「魔理沙、その必要はないわ」
「……は?」
魔理沙が霊夢が言った言葉に素の反応をして固まる。
「……でしょ? 紫」
「なんだ、さすが勘の鋭いだけはあるわね。わかってるじゃない」
紫がご機嫌そうに話す。何か二人で会話が成立していた。
「今回はこの緑に行ってもらうわ」
「なっ!? 緑にか!?」
「……え、はい!?」
魔理沙は酷く反応し、俺は酷く驚いた。
「___さあ、緑。と言う訳で今夜までに準備しなさい。今夜に攻め入るわよ」
「ええ!? なんでそんな賊みたいな言い方ってか、何で俺がn___」
紫は俺を引きずりながらスキマに引き込む。そして神社に開いたスキマはすぐに閉じて突然静になった。
「___なあ、大丈夫か? これ?」
「大丈夫よ、なんとかなるわよ。それにもう決まったんだし、どうしようも無いじゃない」
「いや、まぁ……うん。そうだな」
魔理沙は無理矢理納得し、霊夢と共に赤い夕日が落ちるまで紅色の空を見上げていた。
はい、今回もありがとうございます。
誤字等が激しくなっています……少し反省。
文章の書き方を教えてくださった“きっゃまだ“さん、”マダオン”さん、本当にありがとうございました。
さあ、次回からバトルパートを入れます。
それでは、次回にご期待ください!!
感想、批判、アドバイスよろしくお願いします。