東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

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 受験一週間切ったぜぐへへへへ(狂気)。

 そんな感じで出来上がった話ですが、どうかお楽しみください!





~四十八頁(人里~自宅)~

 

 「……っ、と。まだ店は開いてるかな?」

 

 女性を背負って人里の目立たない路地裏に降りた俺は表に身を乗り出して辺りを確認する。時間帯は夜だと言うのにまだ表は昼間と変わらず多くの人が歩き回っていた。

 

 「あ、あの。神様……?」

 「……ん? どうした?」

 

 後ろに立っている先程此処に連れてきた女性に声をかけられて返事をする。丁寧語では距離を取っている感じがするし、さっきから『神様』と呼ばれてしまってるので神奈子達の様にいつも通りの口調に変えた。それが原因なのかはわからないが、表情は疑問に満ちているのがよくわかる。

 

 「一体、何処に行くんですか……?」

 「ほら、色々と聞きたいのに立ち話じゃアレだろ。折角だし座って話そうと思ってさ」

 「座って……?」

 「ん、お気に入りの店があってな。……まだ開いてるよな」

 

 俺はその店のある方向に目を凝らして見る。その店だと思われる建物にはまだ光が灯っている。きっとやっているだろう。

 

 「……よし、それじゃあ一緒に来てくれ」

 「……は、はい」

 

 後ろの女性を手で招いて店に向かって歩く。女性も遅れておずおずとした様子でついてくる。

 

 「……おばちゃん! まだお店やってる?」

 「いらっしゃい……まあ、緑さんじゃないかい」

 

 『甘味所』と書かれた看板を立て掛けている店の入り口に掛かっている赤い暖簾から顔を出してそう尋ねると直ぐにゆったりとした返事が返ってくる。

 

 「今日も里を守ってくれてありがとねぇ」

 「いえいえ! そんな……あ、それでなんですけど、お茶と何でも良いので和菓子を二人分お願い出来ますか?」

 「はい、ちょっと待っててね」

 

 そう注文して暖簾から顔を引き抜くとちょうど女性が跡を追って来た。その女性に赤い布を被せられた長椅子に座らせて俺も隣に座る。

 

 「……さて、実は色々と尋ねたい事がある。だが内容はプライバシーに関わる物でもし、ぶっちゃけこの質問自体自分の興味でもある。もし答えたくなかったら黙っていても良い」

 

 そう人差し指を立てて言うと女性はコクン、と頷く。俺は一度咳払いをして尋ねる。

 

 「……それじゃあ、いきなり返答に困る事を尋ねると思うが、家で酒を飲んでいる男。あの人は誰だ? 何故お前さんが働いた金で酒を飲んでいるんだ?」

 「ぇ……」

 

 短刀直入に尋ねると女性は驚いた表情をしてすぐに下を向いてしまった。

 この事は俺達の様に跡を追ってくる事が無ければ普通は誰にも知られる筈がない事だ。もう少しやんわりと言うべきだったのかもしれない。

 

 「……すまん、いきなり言いにくかったか。やっぱり今のは___」

 「……あの人は、私を拾った人なんです」

 

 俺が質問を撤回しようとすると、それを止めるかの様に女性は語り始める。俺も姿勢を正してしっかりと話を聞く姿勢になる。

 

 「……私が幼い頃に妖怪が里に攻めて来て、私のお父さんとお母さんが妖怪に食べられてしまいました。当時、私は気を失って物陰に倒れていたので運良く妖怪に気付かれずに済みましたが、その頃の私はまだ泣いてばかりで到底一人で生きていける様な状態じゃなかったんです」

 

 女性の語った内容に自分も何か悲しい様な、同情の様な感情が出てくる。

 幼い頃に関わらず、妖怪に襲われて家族を失う___。そんな事は人里の何処に居ようがいつ起きても可笑しくない。この女性もいつ起きても可笑しくない幻想郷では当たり前の出来事にあってしまったのだ。

 

 「……そんな時、親戚でもないのに私を引き取りたいと言う人が居ました。その人が___」

 「……あの男か」

 

 俺の言葉に対して女性はコクリ、と頷く。

 

 「引き取ってもらった頃、食事は貧しく、お金も殆ど無いので毎日近場の山菜を必死に集めて売る事を繰り返していました。当時は自分がこの人に引き取られたからこの家が貧しくなったんだ。この人の食べ物を分けてもらっているんだ、と思っていました……が、ある日に厠へ行こうとした時、その人が隠していた食べ物を食べているのを見てしまいました……後でわかったんですが、その人が私を引き取った理由は自分の畑で働かせて、自分は楽しようと考えていたからだそうです」

 

 目を瞑って俺は黙って聞き続ける。幼い頃からそんな生活を送っていた事への感情とその男への別の感情が渦巻いている感覚がした。

 

 「……ある日、その人の畑が土砂崩れで駄目になってしまいました。そしてその人は今の様に私を働かせてお金を稼いで生活していましたが、最近、酒を飲む様になって……」

 「……わかった。こんな質問に答えてくれてありがとう。そして辛い事を思い出させたかもしれない、その事に関してはすまんかった」

 

 なんだか胸が張り裂けそうになって俺は女性の言葉を止める様にそう言った。

 

 しかし、この女性がどんなに辛い生活を送っていたかがわかり、今すぐにでもなんとかしてやりたい気持ちになる。だが、打つ手は今のところ見当たらない。

 

 「はい、お茶とお菓子。置いておくね」

 「……ああ、ありがとう」

 

 店から出てきたおばちゃんが俺と女性の間に二人分のお茶と花を象った和菓子を置いた。俺はおばちゃんに礼を言って先にお菓子とお茶の代金を払っておく。

 

 「……なあ、今の生活をどう思ってる?」

 「……どう、ですか?」

 

 お茶を手に取った女性は俺の質問に対して少し柔らかい笑顔を作り、

 

 「あの人に引き取ってもらっている以上、あの人に文句は言えません。でも何時かは彼処から独り立ちしたいとは考えてますね……」

 

 ……と小さく答えた。独り立ち、と言ってもその男が寿命か何かで亡くなるか、妖怪に襲われるかしない限り出来ないだろう。話を聞いた限りこの人に頼って生活している。きっとそう簡単に手放そうとしない筈だ。

 

 「……そういや、何時も稼いだお金で酒を買ってるんだったか?」

 「あっ……そうでした。後で山から山菜を取ってお金を稼がないと……」

 

 そう言ってわたわたとしている女性を一回落ち着かせる。……そう言えば、アレはまだ残っているだろうか。

 

 「……多分、一切手を付けてないだろな。よし! コロ、ちょっと行ってきてくれないか?」

 

 俺は陰陽玉を取り出して変化させ、コロにある場所へ飛んで行ってもらった。

 

 「あの、今のは……」

 「ちょっと、な。……そう言えばなんだが、お前さんって名前はあるのか?」

 「名前、ですか?」

 

 何時も何時も、地の文で『彼女』やら『女性』、『参拝客』なんて言い方じゃ俺もなんか違和感あるし、読者は大変分かりにくい。それにあるんだったら是非知っておきたい。

 

 「私の名前は……菜奈、です」

 「そうか、菜奈か。俺は『神様』って名前じゃなくて、あー……緑。八雲 緑って名前だ」

 

 そう名乗って自分の分の羊羹を一切れ爪楊枝で刺して口に放り込む。餡の甘味と風味がお茶と合っている。

 

 その時、上空から大きな物と共にコロが降りてくる。と言うか、往復でこれってけっこう速いな。

 

 「りょく、たのまれたもの、これ。ありすが、『じゃまなもの、とっととかたづけれた』いってた」

 「ん、そうかい。ありがとな」

 

 俺はコロが両手で釣り下げている大きな酒瓶を受け取って菜奈に渡す。今見ると結構懐かしい。これも神力を得て少したった頃にスイカ(変換出来ない)から貰ったけど、アルコール度数が除菌用の様に強かったからアリスに押しつ……渡したんだっけな。うん、渡したんだな。

 

 「……え? あの……」

 「あの時、菜奈を此処に無理矢理連れて来て色々質問して時間を潰したのは俺だ。これはそのお詫びだ。___あ、兎に角、それを黙って受け取ってくれ。今日だけでもそれで何とかあの男を満足させれるだろ」

 

 俺は自分の分の羊羹をコロに差し出しながらそう言って受け取らせる。最初は遠慮して酒瓶を両手を伸ばして持っていたが、最後には酒瓶を自分の元に引き寄せた。

 

 「あの、緑さん。ありがとうございます!」

 「……黙って受け取ってくれって言ったんだがな。まあ良いか。それじゃ、また」

 

 俺は羊羮をハムスターの様に両手で持って食べているコロを横から拐う様に手で掬って立ち上がり、大きく上に飛ぶ。

 

 「り、緑さん! あの、今日はありがとうございました!」

 「ん、菜奈も頑張れよ!」

 「なな、がんばる。なの!」

 

 俺だけではなく、コロも菜奈にそう言って里を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ふぅ」

 

 人里から帰ってきた後、俺は自宅の縁側で湯飲みを手で包む様に持ちながら一口一口、ゆっくりと味わって飲みながら外を見ていた。

 

 「……紫、不意打ち登場はあまり心臓に良いものじゃないから止めてくれよ」

 「あら、すっかり貴方も霊夢みたいになっちゃって……脅かしがいが無いわね」

 「脅かさんでいい、俺の寿命が3cm縮むんだよ」

 「毎回貴方の寿命の単位は可笑しいわね」

 

 後方からの境界の存在に気が付いて俺は呆れた様に声をかけると案の定、紫が出てきた。

 

 「まあ、それは置いといて……ハロー?」

 「なあ紫、どうすりゃ良いんだろう」

 「……スルーされた。で、何? もしかしてあの人の子と付き合うにはどうしたら良いか___」

 「この湯飲みを持っている右手の意味が分かるか?」

 「……わかったわよ、だから投げないで投げないで、振りじゃないわよ」

 

 右手に湯飲みを握り潰さんとばかりに握って頭程の高さに持ち上げると紫は両手のひらを振って慌ててそう言う。こんな感じだとわかっていたがやっぱり溜め息が出た。

 

 「で、本題だけど……アレは貴方が関わった事。貴方が自分の力で解決しないと駄目よ。霊夢も言っていたでしょ? ……但し___」

 

 紫の正論に思わずうっ、と声を漏らしてしまうが紫は何かを隠している怪しい微笑みを浮かべて言葉を一度止める。まるで俺の反応を伺う様だった。

 

 「___一つだけ、助言するとね。人間は極端な事を嫌う生き物よ。少なすぎる場合は納得せず、多すぎると人間はもうたくさんと言う。そんな中途半端な生き物よ。……だけど、一部の人間や殆どの妖怪はたくさんあればたくさんあるほど盛り上がるわよね?」

 「……」

 

 紫はそう言うとクスス、と笑いを浮かべる。久しぶりに見たその笑いはやはり昔と変わらない同じし印象を与えてくる。

 

 「……それじゃ、貴方がどうするのかを楽しみにしてるわよ。じゃーねー」

 

 そう耳元で告げると紫はスキマに入って閉じ、完全に姿を消してしまった。

 

 「……やっぱり、紫は何時も回りくどくて分かりにくい言い方するな」

 

 俺はそう言って欠伸を噛み殺す。鼻から新鮮な冷たい空気を吸って肺を見たし、口からその空気を吐き出す。

 

 「……周りから見たらバカらしいかもしれんが、一人の人間の為にちょっと騒いでやりますかい」

 

 俺は口元を吊り上げながらそう言って湯飲みのお茶を地面に流した。

 

 

 ……明日は忙しく、騒がしくなりそうだ。

 

 





 緑が初めて正義感の強い主人公らしい行動に出ました。と言うか今まで本人のやる気が足りなすぎてただけですねはい(ぉ

 次回からは大きく動いて問題を解決___何ですが、やはり都合上、投稿が大いに遅れます。仕方ないね。


 それでは、次回をお楽しみに!
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