東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

68 / 75
 今回は緑視点、三人称視点が有ります。




~五十二頁目(魔法の森~???)~

 ___夜。

 

 

 

 「……準備はきっとOK。問題を挙げるとコロが未だに行方知らずってところか」

 

 俺は和服の袖を捲りながら家の玄関の前でそう呟いた。

 

 時間はもう夜。妖怪が活発に行動し始める時間帯でもあり、俺がある場所へ向かう時間でもある。

 

 

 俺は人間。手にした霊夢の札を握りながら深く深呼吸してそう頭に認識させた。

 

 「……霊夢の札は五枚か。兎に角、向こうが襲ってくる訳じゃないだろうから問題は無いだろうし、さっさと行って色々と聞かなきゃいかんな」

 

 もし、本当にアイツなら、自分の事を覚えているか。あの日、何処に行っていたのか。どうして幻想郷に居るのか、何故、俺をよんでいるのか___

 

 

 

 

 

 (___しっかりと一から十まで、話してもらうからな……っ!)

 

 

 俺はそう意気込んでゆっくりと真っ直ぐ魔法の森に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 博麗神社の縁側でお茶の湯飲みを両手で持ちながら霊夢は空を眺めていた。

 

 春とは言え、まだ肌寒い風が吹いてくる季節。霊夢は両手で持った湯飲みで手を暖めながら空をずっと眺めていたが、遂に溜め息をついて下を向く。

 

 「……紫、出て来なさい」

 「……」

 

 霊夢の横から出来たスキマから紫が出てくる。それでも霊夢は動じずそのまま続ける。

 

 「……あんた、緑の事、狐の事から全て知ってるんでしょ? 緑が妖怪になった理由も、この前の様に突然人間になった理由も」

 「……」

 

 目を瞑って下を向く霊夢、空に浮かぶ月を眺めている紫。お互い何を言わず、冷たい風が吹く中で最初に口を開いたのは紫だった。

 

 「……月、綺麗よね。今日の月は昔の呼び方で『立待月』って言うらしいわね」

 「紫。月じゃなくてもっと近くの事を言いなさい」

 「……あなたにも伝えてあげたいけど、私の口からは彼の事情とかについて語れないわ」

 「……どうしてよ、なんで隠そうとしてるのよ」

 

 苛つく様に霊夢はそう尋ねる。それに対して紫の顔は何時もの不気味な微笑みではなく、心配するかの様な表情だった。

 

 

 「あの子もあの子も、私の大切な家族だもの。家族の秘密はそう簡単に話せる訳が無いでしょう___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……此処、かいな」

 

 俺は目の前にある洞穴を見て生唾を飲んだ。

 

 魔法の森。洞穴。そしてその洞穴の両脇に苔の生えた狐の像。あの時の夢で言われた通りの場所だった。

 

 「……」

 

 洞穴を覗くとすぐ先で塞がっていて行き止まりになっていた。だが、下を見ると先が見えない程深い穴がぽっかりと空いている事に気が付いた。中からは少し暖かい風が吹いてきて、大きさはよくわからないが空洞が広がっているとわかる。

 

 「この穴の中に___っ!」

 

 

 不意に、俺のすぐ隣に何かが通りすぎて地面に突き刺さる。見ると黒い棘の様な物が二本深々と刺さっていた。

 

 「っ……! やっぱりこんな夜道じゃ妖怪に出会うか」

 

 俺はそう言いながら後ろを向く。その先には針鼠の様に棘の生えた妖怪だった。再発射に備えているのがわかって俺は穴の方に後退りする。

 

 『ギジャァァァァアアア!』

 

 「___フッ!」

 

 牙の生え並ぶ妖怪の口から素早く放たれた棘を俺は札を投げて空中で打ち消して防ぐ。そのまま札が棘を貫通して妖怪に当たって怯ませてた間に俺は穴に飛び込む___ところがやはり怖い。なんか落ちたら一生地面と足がくっつきそうになさそうな気がしてたまらない。

 

 「……ええい! 死ななきゃみんな軽傷だ! どりゃ!」

 

 

 俺は無理矢理勇気を振り絞って目を瞑って穴の中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「___グボァッぱり不時着したぁ!?」

 

 

 穴から飛び降りた俺は見事大の字になって体全身で地面に落ちた。おまけに下を向いて落ちたから受け身なんて取れなかった。凄く痛い。

 

 「頭が、くらくらするな……」

 

 目を瞑って感覚の狂いが治るのをなんとか立って待ち続ける。するとすぐに良くなり始めて立ちくらみの様に真っ暗になっていた視力が回復して周りが見えてくる。

 

 「……! なんだ、ここ……?」

 

 完全に視力が回復して俺は辺りを見回した。辺りは固い地面で覆われていて周りは少し青い霧で包まれていた。上を見ても横を見ても少し遠くからは薄い青色で何も見えない。

 

 

 「……煙や霧に見えるかも知れないけど、それは霊力による遮断結界。遮断と言っても場所を区切られている訳ではなくて現実世界から切り離したの。つまり、その先は延々と続いている」

 「っ!?」

 

 突然聞こえた声に俺は咄嗟に後ろを振り返る。だが、何も居ない。後ろも回りと変わらない霧に包まれている。

 

 「……今の声は何だ? 一体誰が?」

 「こっちを向けばわかる、かもね?」

 「___っ! うおっ!?」

 

 俺の呟きに対して、何者かの声がそう答えて俺はまた振り返る。振り返ると至近距離に見知らぬ少女。その顔がドアップ。こんな突然の出来事に跳び退かない奴が居るわけがない。

 

 跳び退いてまず、相手を確認。まず目に入ったのは桜の花弁が舞っているかの様な柄の女の子らしい和服。そして和風な服に対して西洋風なイメージの強い金髪でショートだった。顔は日本人っぽいので普通は外国人とのハーフだと思うだろう。だが、

 

 「……お前は誰だ。こんな所で」

 「私? 私は普通の人間だよ?」

 「へぇ、人間か。普通の人間ねぇ……お前さんは見た感じは確かに普通の人間だ。だが、何やら妖力の様な、人間じゃない気配がさっきから漂ってるんだが?」

 

 俺がそう警戒心を出しながら言うと、その少女はまるでその言葉を待っていたかの様に口元をニヤリ、と笑わせた。

 

 「……で、そこでだ。お前は何者だ」

 「……うん、やっぱり人らしい姿をしても、妖力を誤魔化そうとわかるよね。流石幻想郷歴……二年、ちょい? ま、私の方が先輩だね」

 「幻想郷歴って何だよとか、答えになってないとか、そんな質問は省いてポイする。結局お前は誰なんだ。俺は今用事があるんだよ。悪く聞こえるかもしれんが妖怪とあーだこーだ言ってる暇は無い」

 「用事?」

 

 俺がそう言うとその少女はキョトンとして、

 

 「その用事がある相手って、あの子?」

 「あの子……? ___なっ!?」

 

 俺の上の空間を指差す。その指した方向を見ると同時に何かが手のひらに落ちてきた。所々フワフワとした感触。そして体温の様な温かさ。

 

 「___コロ!?」

 

 手に落ちてきたのは昨日姿を消していた筈のコロだった。小さな手のひらに天照さんから貰った弓と矢を握っている。だが、目を閉じていて力なくぐったりしている。

 

 「なんで此処に!? おいコロ! 起きろ!」

 

 手には確かに体温が伝わってくる。式神が死ぬなんて事は聞いた事が無いが、少なくとも死んではいない筈だ。しかしいくら声をかけても目を開く様子は無い。

 

 「___お前がしたのかッ!? テメェは俺の式神に何をしやがったァ!?」

 

 喉が腫れる程に、動物が叫ぶかの様に俺は怒鳴った。強く噛み合わさった歯がギリリと耳に響き、握りしめた手のひらに爪が刺さる。頭の中は怒りで溢れていながらも何処か冷静だった。

 

 「……大丈夫だよ。死ぬような事はしていない、直ぐに目を覚ますと思うよ。ちょっと力を借りただけだよ」

 「……何、力を?」

 「うん、私は肉体が無くなっちゃったんだよね。だからこうして一時的にでも現れるのに必要だったんだよ」

 

 俺の疑問に対して笑いながらその少女は目を瞑った。そして頭と腰から何かが飛び出す。まるで狐の___

 

 

 「___! お前は、確か夢に出てきた……!」

 「よかった、私の念は上手く伝わってたんだね。まあ、私が呼んだからこうして来た訳だけど」

 

 目の前でその夢に出てきた少女が何かを言っているが、そんな事よりも霊夢は昔飼っていた狐が夢で俺を呼んでいると言っていた事を俺は思い出した。そして目の前で夢の中から俺を呼んでいたと言っている狐の耳と尻尾を生やした少女。

 

 「……うん、やっと気がついた?」

 「お前は……いや、まさか……」

 「ふふ、そのまさかだよ」

 

 その少女は腕を組んで眩しく見えそうな笑顔を見せると、今度は目を薄く開いて口を開く。

 

 

 「やっと、こうして面を向き合って話せるね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……家族、ねぇ」

 

 先程の訪問者も居なくなり、また静寂の訪れた神社の縁側で霊夢は呟いた。

 

 (……あいつは間違い無く知っている)

 

 霊夢は手にした湯飲みの中のお茶をそっと眺めた。さっきまで手を暖めていたお茶はすっかり冷めていて逆に霊夢から体温を奪い始めていた。

 

 「駆けつけに行くのは簡単だわ。でもねぇ……」

 

 湯飲みのお茶を打ち水の様に庭に放り出して霊夢はそう呟いた。彼女には勘がある。その勘があれば緑が行った場所も容易に特定して駆けつける事も出来るだろう。だが、今はその勘によって止められていた。

 

 (……今は行かない方が良い、か)

 

 霊夢は縁側にゴロンと寝転がって無意識に溜め息を吐いてそのまま目を瞑った。その時___

 

 

 ___コトッ。

 

 

 「……」

 

 霊夢は近くから聞こえた音に対して目を瞑ったまま、そっと袖から札を抜き取る。しかし、抜き取って構えるとすぐに霊夢は静かに札を袖にしまった。

 

 「……あいつが維持でも“自分の口”で言いたくないのはよくわかったわ」

 

 でも、と霊夢は言葉を続けながら起き上がり、ちゃぶだいに踏み寄った。

 

 「……これじゃあほとんど口で言ってるも同然じゃないの」

 

 霊夢ははぁ、とため息を付きながらロウソクの火を手早く着けて本を手に取る。

 

 「……日記ねぇ。名前も年号もなんも書かれてないから、一瞬古本かと思ったわよ……」

 

 霊夢はそう言いながら表紙を開く。すると中からヒラリと一枚の紙が落ちた。霊夢はそれを拾い上げると首をかしげた。

 

 「写真ね……でも、この子は誰……?」

 

 白黒で被写体の脳天辺り等が切れているが確かに見たことない少女が何処かで見たことのある気がする和服を着て写っていた。

 

 「……まあ、今はいいわね」

 

 写真をちゃぶだいに置くと霊夢は更にページを進めた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ちょっとお久しぶりです。チマチマと他の小説も書いていたのでペースが落ちていました。ごめんなさいな。

 で、次回は今回の異変のメインに入ります。最終的に良い終わりかたにしようとは考えてますが……予定通りではないかもしれません。その結末への過程がけっこうフラフラしてますので。

 それでは、次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。