更新、大いに遅れました。ごめんなさい。
満遍なく複数の小説を書いているので中々更新出来なかったり学校が忙しかったりとして更新が遅れましたが、続きです。
それでは、どーぞ。
「まさか、本当にお前が……」
「最初は信じられないだろうけど、本当だよ? なんだったら紫にでも聞いてみれば?」
「紫に? いや待て、と言う事は紫はお前の事を知ってたのか?」
「フフン、昔からの友人であり、飲み仲間であり、家族の様なものでもあるの」
「言ってる事がいまいちまとまってないが仲が良かったのは確かだな。紫の事だし秘密にしててもおかしくない、か」
俺はコロを抱えたまま目の前に居るアイツを見る。
「……それじゃあ、本当にお前だと言う事にして色々と聞きたい事がある」
「ん? それじゃあ一つ、ね?」
「ひ、一つ?」
指を一本だけ立ててそう言うアイツに対して俺は思わずそう聞き返してしまう。
俺が彼奴に聞きたい事は両手の指で足りるか不安な程ある。
その中から一番、俺が知りたい物は……
「___火山の噴火で俺らが避難したあの日、お前は何処に行っていた?」
俺がそう言うと、人差し指を顔に付けて暫く考えてから閃いたかの様な表情で此方を見てくる。思い出したのだろうか。
「うん、あの時は山に居たね。噴火したって言われていたらしい火山に」
「はい⁉︎ なんでそんな危険な何処に⁉︎」
「そこから先はまだ教えられないよ。一つだけ、だもん。___ただし、ある事をやってくれたら全部教えてあげるよ?」
「……ある事?」
俺がそう尋ねるとアイツは後ろに回していた右手を一瞬のうちに俺に向ける。
出された右手は素手ではなく、何か黒く金属光沢を持つ物___俺も何度か使っていた物が握られていた。
「___ハンドガンっ!?」
___ズガンッ!
「……私と本気の弾幕ごっこ、フランドールとか言う名前の子がやった様な本当の全力で戦う弾幕ごっこをやったら全部教えてあげる」
昔に俺が使っていた物と瓜二つなハンドガンを一丁構えたアイツがそう言っている間に俺は足元で煙を立てている霊力弾の着弾点から視線をあげてふぅ、とため息を吐き出す。
「___無理だね。俺は今、只の人間。今のお前さんみたいに銃は扱えないし今までみたいに刀も扱えない。それらは妖怪だったおかげであって、今の俺には出来ない。妖怪の力があったからであって、本来は敵をザクザク斬り殺す様なチート野郎じゃないんだよ俺は」
……そう、振り返って見れば今まで紅い霧が発生した時も春が訪れなくなった時もそうだ。空を飛べる様になったのも能力が使える様になったのもスペルカードもそうだ。妖怪だったから出来た事であって今の自分には出来るはずもない事。
「……お前さんについてこれ以上聞き出す事が出来なくて知りたい事がわからないのは残念だが、一度だけでもこうして会話できたのは嬉しかった。お前さんも元気そうだしな」
俺はそうつづけてその場を立ち去ろうとする。コロの事が心配だ、早く紫辺りから対処法を聞かないと___
「……はぁ、らしくないなぁ」
後方からアイツの声が聞こえて来るが俺は足を止めずに霧に包まれた中から出れそうな場所を探す。
「遮断結界を張っているから出れないよ。出るには霊力を供給している人物を気絶させるなり殺すなりしないと」
「……」
俺は無言で足を止めて、近くの腰ぐらいの大きさはある岩の影にコロをそっと置く。まだまだ目覚めそうにない。不安が膨らんで仕方ない。
「……人を遊びに誘うには」
そう言いながら俺は立ち上がって振り返り、霊夢から貰った札を一枚抜きとって構える。明らかに今からやろうとしている事は無謀だし、やりたくない事だ。だが俺は目で銃を構えたアイツをしっかり捉える。
「___遊ぶって事を相手にわかりやすく伝えなきゃな?」
「えへへ、私は不器用でそう言うのは苦手なんだよね」
「紫と仲が良かっただけはある様で」
「その皮肉、どちらかと言うと私じゃなくて紫に誤射してるよ……」
「ああそうかい。……ところで、だ。最後に俺から言いたい事がある」
「あれ奇遇、私からも言いたい事が」
肺が破裂しそうなほど大きく息を吸い込み、萎みきるまで吐き出す。そしてまた大きく息を吸い込んで、言った。
「___倒してみせるぜ! 昔の家族!」
「___力を見せてみろ! 狐の人間!」
「___っ! はっ! ぐっ!」
飛んでくる光弾を次々と岩陰に飛び込んで回避する。この辺りが平面だけじゃなくて岩だらけで助かった。一度も当たらないのはほぼ、これのおかげで間違いないだろう。
「あなたもコレを使った事があるんでしょ? それじゃあ、こんな事も出来るのもわかってのその行動よねっ!」
ズガガン、と二発の弾丸が銃口から飛び出してくる。しかし、軌道はくねくねと岩の間をくぐり抜けて来る。
「___ホーミング⁉︎」
気付いた時には左右から挟む様に弾丸が飛んで来て、俺は咄嗟に伏せる様にして紙一重で直撃を避ける。だが、それによる爆発はどうしようもなく、そのまま背中で受け止めて吹き飛んでしまう。それでも、うまく転がって受け身を取れたのが救いだろう。
(彼奴はなんで俺の使っていた筈の銃を持っている⁉︎ アレは改造されて大型の拳銃になったはず! それなのに何故、昔の小型だった時の形と瓜二つで目の前にある⁉︎)
予想外の攻撃をされた事よりもしょうもない謎が俺の頭の中でグルグルと回り続ける。
「ほら! 逃げ回るのは似合わないわよ! かかって来なさい!」
「行けるかァ! 遠距離攻撃相手に素手で挑むか普通! ___グウッ‼︎」
後ろで起きた爆発で一瞬だけ空中に放り出されるが、上手く着地を取るだけではなく、爆発の煙で視界が悪い中で岩の影に隠れる事も出来た。
「使えそうなのは……コロの弓と霊夢の札が四枚……泣けてくるな」
弓は霊力の矢を飛ばせる。威力自体は人が投げた硬式の野球ボール程度だが、これさえあれば今までの様に避けてばかりではなく相手に反撃出来る。基本はコレをメインに置いて戦う事にしよう。
そして札。コレアイツにをまともに喰らわせれば恐らく一撃で決めれる。しかし、それには至近距離でなければ難しいだろう。
「……おっ、隠れた思ったら出てきた」
影から出てくるとそんな事を彼奴に言われる。戦いとは思えないぐらいに軽かったが気にしない。今は戦い方を考えないといけない。兎に角、勝てる方法を。
(よし……まずは弓で相手をジワジワと追い詰み反撃を誘う。弓の最大の弱点は懐に飛び込まれると滅法弱い事だ。つまり、彼奴はそれを利用して近付いてくる! その隙に札を貼り付ける! これしか勝算のある作戦は無い___)
頭でフルに回した思考を固めて現実に戻る。上手くいくと良いのだが……
「……へぇ、弓を使うんだね?」
俺は弓の弦を限界まで引いて霊力を溜めてそのままアイツの前へ立つ。
「うんにゃ、あくまでこれは唯一お前に攻撃出来る武器として使うだけだ。俺がメインに使う人間の最大の武器は頭。___つまり! 俺は人間流のやり方でお前を倒す! 絶対にな!」
「フッ、面白くなったね。でも攻撃がなまくらだよ!」
そう言って俺が放った霊力の矢をアイツは簡単に避けて見せる。それもワザと当たるか当たらないかのスレスレで避けている。
(そこまでは想定内……!)
俺は弓の弦を強く引いて、これでもかと言わんばかりの霊力を流し込む。弦は棒に見える程の霊力の光を纏って輝き、矢が一本、二本、三本、四本と出来上がった。
「コイツを……くらえっ!」
放った矢は右に二本、左に二本飛んで行き、回り込む様に曲線を描いてアイツを狙って迫る。
「簡単に避けれない様にするのは中々良いけど___正面がガラ空きよっ!」
矢が迫ってくるとアイツは正面に飛んで避けてそのまま俺に向かって来る。
(……まだだ、まだ遠い。もう少し、アイツの攻撃を掠るぐらい近くまでねばらないと___っ!)
アイツは大きく腕を振り上げながら真っ直ぐ向かって来る。胴体に何も守りをしていない。隙だらけだった。つまり、これが今までの中で最高のチャンスだ。これは逃したくない。
「___そこだああああぁぁああああ‼︎」
俺は矢を正面に放った。矢は真っ直ぐとアイツに向かって胴体を貫こうとした。
「___そんな攻撃、読んでいたよ!」
アイツは尻尾を前に伸ばして矢を防ぎ、勢いを殺さず目の前まで迫って来た。
……だが、その台詞は俺の台詞だ。
俺は弦を離して後ろに回した腕をそのまま流れる様に腰に回して札を一枚抜き取る。
「何っ!?」
「一発飛んで……頭冷やせぇッ‼︎」
札を握りしめたまま、右腕を上に挙げ、前に大きく踏み込んだ左足に体重を乗せて前屈みになる勢いで拳を振り下ろして肩付近に札を命中させた___
「___っ⁉︎ な、何っ⁉︎」
今、確かに決めた筈だ。
絶対に札を当てれる距離にいた筈だ。
……だが、
「……今のは凄かったよ。普通にやってたら絶対負けてたかも」
先ほど、俺が札を当てた筈の場所よりも離れたところでアイツはそう言った。
「……なんだ、今の」
「今のが私の能力、よ。そしてその能力の名前は___……ありとあらゆる能力を扱う程度の能力」
「っ⁉︎ なんだと⁉︎ その能力は俺の__「俺の能力、でしょ?」_ぐっ⁉︎」
目の前にいた筈のアイツが突如消えたと思うと、いつの間にか後ろに回り込んで言葉を続けた。
「最初に使った能力は小町の能力。それで距離感を狂わせたの。そして今と次に使う能力は咲夜の能力___」
「___っ⁉︎」
俺は能力を使われないうちにと札を突き出したが、その腕は何も触れなかった。
___ズガンッ!
「なっ……札が⁉︎」
霊力の弾を放った音と同時に何処かからか飛んできた弾が札を貫いて燃やし、灰にしてしまった。俺は焦って札を取り出そうとするが___
「___動くな」
カチャリ、とこめかみに氷の様に酷く冷たく感じる銃口を突きつけられた。
「何で自分の持っていた能力が使われていたんだ? って言いたそうだから教えるとね、『ありとあらゆる能力を扱う程度の能力』は貴方の能力じゃないの。簡単に言うとそう、貴方と私で存在する能力なの」
「俺とお前で存在する……?」
「そう、私の本来の能力は『相手の技を真似る程度の能力』だったの。実際に、貴方の力___能力を貴方の式神から間接的に貰った事によって始めて使えたの。なんで二つの能力でこんな能力になったかはわからないけどね」
「おい! よくわからんが、だったら俺は何故今までその能力を扱えて来た⁉︎」
俺がそう尋ねるとアイツは指先に力を込めて、静かに呟く様に返事した。
「……わからないなら、せめて思い出してよ」
最後に聞こえたのは耳元での大きな炸裂音だった。
そして俺の目の前はブレーカーが落ちたかの様に真っ暗になり、そのまま何かを手放した___
___ピシッ!
「っ⁉︎」
その頃丁度、博麗神社の縁側から突然そんな音がした。
「湯飲み……?」
霊夢が読み進めていた本を一度閉じて近付いてみると、そこには綺麗に割れてしまった湯飲みがあった。縦に割れた湯飲みは中のお茶で水溜りを作っていたが、霊夢は突如、嫌な予感が頭を横切った。思わず汗が噴き出して破片を拾おうとする手が震える程の予感が。
「……緑」
霊夢はそう小さく呟きながらお茶の水溜りに映る立待月を見た。