取り敢えず出来たけど、絶対理解不能な部分が出てきそうな予感ががが。完結後にもっと分かりやすく話を纏めた説明回でも載せようかねぇ……
それでは、どーぞ!
___博麗神社。
「…………」
……緑が飛び出して数時間経つ。私は本を片手に寝転がって、不安で仕方ない意識を無理やり明日のご飯やお賽銭の事に逸らしていた。
「……でも、この日記。結局の所一体誰のなのかしらね」
この本の中身。これが誰かの日記だと言う事はわかったが誰の物かは分からない。持ち主らしい名前は出て来ていないし、一人称も序盤は時々「俺」で大抵は「私」で特定は不能。……語尾に「ぜ」とか付けば分かりやすいのに。
で、そんな日記の内容を纏めるとこうだ。
……幻想郷に何故かやってきてしまった妖狐が紫に拾われて生活し、様々な妖怪と関わりながらも問題を起こした妖怪を退治しながら暫く幻想郷に滞在し___
「___家族に会う為に故郷へ帰ろうとしたが、帰ることが出来ず、瘴気にやられて衰弱してこの世を去った……」
そんな物語が本人の視点で少々雑に書かれていた。妖怪は退治されてナンボだと思っている私でもこれは見ていてあんまり気分のいい物ではない。見ていると心が暗くなる。妖怪が書いた本だから、と言う理由ではないだろう。
「……あー、結局これがどんな関連性を持っているかすらわからないし……紫のやつ、こんな回りくどい事しないで素直に教えなさいよね」
ロウソクの火をフッ、と消して私はため息をまた吐き出した。解けない問題を考える以上にめんどくさい物は無い。取り敢えず、今は緑の事を素直に待って___
「___っ! な、なに!?」
私が冷たい床の上に寝転がった途端、顔を覆いたくなる程の強風が神社の中を走り抜けて私は思わず声をあげた。しかし、それも一瞬の出来事で寒い風が体に纏わり付いて流れ去った後にはしん、と静かになっていた。
「あっ……」
顔を覆った腕を下ろすとそこにはつい先ほど緑が使っていた湯呑み___それも、無残にも縦にヒビが入って飲み残したお茶が漏れ出ている状態で目に入った。
それが目に入って数秒も経たないうちに私の勘が何かを知らせた。人間の里に妖怪が現れた時よりも不吉な___より生死に関わる気がする予感が___!
「緑……っ!」
お茶の水溜りに映る月を定まらない視線で見つめていたが、直ぐに我に返って私は立ち上がりだらけきった体に喝を入れる。
そのまま箪笥から札と針を乱暴に取り出し___ついでに日記も懐に入れて___縁側へ駆け出して飛び立っていた。
「あの馬鹿っ! 絶対に、絶対に死なずに待ってなさいよ!」
冬の池水の様に冷たく暗い夜の空を私は飛びながら虚空に向けて言い放った。
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『……ドーモ。ゲンジツ=サン。ヤクモ=リョクです。……一体何が起きた?』
池の中に飛び込んで、そのまま流されて___と、思ったら池の周りに打ち上げられていたらしく、俺は打ち上げられた昆布の様に地面に倒れていた。そして今に至る訳だが……
『いや、まさか此処って……守矢神社!?』
薄っすらとだが確かに此処を知っている。何度か訪れた事のある神社。それが何故今出て来たのだろうか?
『って、うわっ!? じ、自分が……死んでいる! ……って訳ないよな? うん』
起き上がった所から少し離れた所に自分だと思われる人が打ち上げられていて俺は思わず声をあげた。……自分の前に自分が陸に打ち上げられて倒れているって、凄くシュールだ。なんだか幽体離脱した気分。
「……あーうー、何でこんな所に妖怪が?」
(……ん? あれは……諏訪子か?)
「諏訪子様、何を……あれ? 誰でしょうかこの妖怪は?」
向こうからピュー、と飛んできた諏訪子が倒れている自分の前にしゃがみ込む。遅れて早苗が駆け付けて来て俺はちょっと距離を置いた。たとえ見えてなくても何か邪魔になりそうだし。
少し離れた所で過去の自分が目を覚ましたらしくゆっくりフラフラと起き上がった。
「___うわっ、こいつ動くぞ!?」
「……未だにガ○ダムが好きな事は分かりましたから……」
諏訪子め、記憶喪失した自分を前にそんな下らないネタを言ってたのか……あの時は気にしなかったが今なら直ぐに突っ込んでやってる所だが……と、諏訪子を睨み付けていたが、ふと『記憶喪失』のワードが耳に引っかかった。
(___そうだ、確か……記憶喪失の原因は池の主にあるって聞いた。だが、それなら俺を突き落とした影は? その影も池の主に関わる存在なのか? それとも、それ自体が今回の事に関わっていたりするのか……?)
『___そう、あなたは偶然、その主に触れ、それが原因で名前を忘れて妖怪になった___』
……紫は確か、俺が幻想郷に来て間もない頃、そう言っていた。だがそれは本当なのか? 本当にそんな単純な理由だけなのか?
(……変化したのは名前と妖怪になった事そして幻想郷に飛ばされた事。名前を忘れたのは
思考を張り巡らせていると、ふと、先程の映像___何かの影が俺を池に突き落とした場面が鮮明に浮かび上がる。何か心当たりがある場面はそこなのだが……もしかしたら、あの俺を突き落とした影も関係あるのかもしれない。いや、もしかすると全てあの影が原因で起きたと言う可能性も___
『___こいつには妖怪しか持たない妖力、そして人間が多く持ち、妖怪にはほとんどない筈の霊力。そしてその祟りの物だと思われる神力があるわけね___』
(……いや、だったらあの時の霊夢や諏訪子の言葉が矛盾する……『池の主に祟られた』ってのは確実な事だよな……駄目だ、くそッ)
ヒントが足りな過ぎて結論にまで辿り着けない。紫は『祟りが原因で妖怪化し、名前を無くした』と言った。霊夢は『祟りによる神力がある事、妖怪の証拠として妖力を持っている事』を判明させた。当時は胡散臭いと思ったが、長く付き合えば霊夢がその程度のことを軽々とこなす事は容易に分かる。そして諏訪子は『池の主が原因』と言った。
霊夢の発言は本当の事だと置いといて、紫と諏訪子の発言には何かがありそうだ。ありそうなのだが___駄目だ、痒い所に手が届かない不快な気分だ。
「……もうすぐ日が暮れます。今、山を下るのは色々と危険でしょうし……狭い部屋しかありませんが、よかったら家に泊まっていきませんか?」
「あ……ではお言葉に甘えさせてもらいます」
答えのない計算を解き明かすなどと言う無謀な事を頭の中で繰り返していると、ちょうど早苗と諏訪子が過去の俺を招き入れている場面だったらしく過去の自分は少し緊張した様子でゆっくりと早苗達について行っていた。俺にもこんな初初しい時期があったのか……今じゃもう大違いだな。周りが女性しか居ない環境には残念ながらとっくの昔に慣れた。
……と、
(…………? 何か、今……気のせいか?)
ふと、早苗と会話をしている過去の自分がチラッと此方を見た気がした。それだけなら気にはならない。ただ、その瞬間だけその初初しい表情が違うものに変わった気がしたのだが……?
「……あ、早苗さん、諏訪子さん。ちょっと先に行ってもらえないでしょうか?」
「はい、何か落としたのですか?」
「うぃ。早苗、行くよ」
「わっ、ちょっと諏訪子様! 引っ張らないで……あの! 何かあったらすぐに私達を呼んで下さいね!」
『……ん? あれ、俺ってこんな事言ってたっけ?』
早苗達を先に行かして残るという過去の自分の行動に俺は首を傾けた。確かあの時は早苗について行って……茶の間でロボの魅力を(早苗が一方的に)話し合っていた気がするのだが___
「……なあ、まだ分からんのか?」
…………。
「……ほら、お前お前。ちゃんと見えてるぞ」
『……え?』
突然、過去の自分が虚空に向かってそう言ったと思うと、今度は虚空の先___俺を指さしてそう告てきて俺は目を丸くした。
「今お前が見ているのは過去に起きた自分の行動の回想。自分の事なんだから別に不思議じゃ無いだろう?」
『…………お前は、誰だ? つーか急展開過ぎて凄いビビった』
「何者? ……あー、……まあ、今は記憶や精神とかの奥に居る『俺』___まあ、バッサリと纏めて言うとそんな所かな。
突然、自分の存在を事を
『……なあ、お前はこのようわからん映像が流れ続ける変な状態がなんなのか分かってるのか?』
「……そんな事、お前にゃ関係ない」
『…………あ、はい。そうですかいな……』
……なんか自分が自分に冷たい。こんなドライだっけ俺。何時もの自分はもうちょいウェットな感じだと思うのだが。
「ただ、こうして話が出来ているのはお前が意識が深いところに来るほどの気絶をしてるお陰だろうな。あの狐はお前を殺しちゃいない___俺の勘じゃ、何かを分かって貰いたいんだと思う。だからあいつの過去が伝わってきたんだろな」
「何かを……分かって貰いたい……?」
「ピンと来ないか……それじゃあ、最初に出てきた無鉄砲者の狐と紫と会った狐。そして今お前が現実で向き合っている狐はどういった関連性が?」
向き合っている……? ああ、あいつの事か。しかし、関係と言えば……どれも狐___
『……まさか、どの狐も「あいつ」ご本人、とかか?』
その自分は返事しない。だが、首は縦に振った。
『……おい、嘘だろ? 故郷で噴火があった時のはまさか妖怪の仕業で、『あいつ』が消えたのはそれが……』
……故郷の火山の噴火。
行方の知れない親の代わりに俺を育ててくれたおじいちゃんもおばあちゃんも、思い出を手放す覚悟で故郷から避難したあの日。確かに
火山は噴火したが奇跡的に故郷への被害は無かったと俺は当時聞いた気がする。俺が火山の噴火のその後について知っていた事は、地面が揺れて近所のおじさんの盆栽を地面にブチまけられていた事と狐がやはりいなかった事だった。
あの時は動物の勘で先に逃げたのだと。またいつもみたいに脱走したのだと思った。いつもみたいにひょっこりと泥まみれになって帰ってくるのだと思った。……けれども、結局あのまま帰って来なくて、それが不安で不安で仕方なくなって何日と何週間と泣き続けても帰って来なくて___
「……
『……そう、か。なんだ、最初はよくわからない狐が無鉄砲な事してるって思っちまった。……考えてみりゃ、あの蒼色のスカーフ、あいつのだったな……もっと冷静になれよ自分……』
顔に手を当てて呆れる様に自分に吐き捨てる。だが、心は呆れていない。下らないギャグを言い放った芸能人を軽く笑う様な感じだ。
『そしてあの狐耳の女の子との関連性も気が付けよ、自分。誰でも考えてみりゃ、まず思いつくだろ』
ふぅ、と溜まっていた濁りを吐き出すかの様に息をついて俺は目の前の自分に向かい直す。
『……大体、分かった。だが、ここで最後に一つだけ質問をさせてくれ。___どうして、あいつは俺に会おうとした?』
俺がそう尋ねると、その自分はフッ、と少し小馬鹿にする感じで表情を変えて、
「……さあな。ただ、文字通り死ぬ程会いたかったんだろうな」
……と、返事をした。
……そうだ、考えるまでもなかった。そんな単純過ぎる答えすら考えつかない程に俺の頭は悪いらしい。これではこの自分に馬鹿にされても文句は言えないな。
……突然居なくなった
『……………………』
…………何故だろう。
……俺が何か得体の知れない感情がどこか硬かった表情を綻ばせた。そんな俺を見た冷たい方の自分は呆れ半分に、
「……お前さんがさっき、変に悩んでいたから少し助言をしようと思う。___こう考えてみろ、お前が名前を失ったのと妖怪になったのは一緒に考えずに別々なんだ、と。狐も、池の主もどれも関係ある。だが、どれか一つでも欠けていたらこんな事になれなかった。幾つかの偶然が重なって、お前はここに来れたんだ」
……と、語りかけるかの様な目で言い、もう一つの謎をまるで算数を解くかの様にいともたやすく氷解させた___
___
『…………』
「……なあ、俺はただお前のイメージとして出来た存在だ。だからアレコレと考えていても行動には移せない」
『ああ、わかってるさ。……それにしてもお前は本当に自分なのかと疑いたくなるな。つかそのIQよこせ』
「……ったく、それに関しては後で分かる事だ。……そんな事よりも頼む______あいつを、救ってやってくれ」
その言葉と同時に背景が輝き始める。次第にそれは白くなって思わず目を瞑りたくなる光に変わる___が、俺は限界が来るまでしっかりと目を見開いて、俺に託した自分(?)に拳を握り締めて口を開く___
『____任せな。こんなに何も出来ない自分だけれども、きっとやってみせるから___』