東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

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 自分なりに熱くさせようとやや苦労した回。変な感じになってないと言いけどなぁ……

 それでは、どーぞ!


〜五十七頁目(___)〜 前編

 「……………っ、うぅ……」

 

 

 白い光が目に焼き付いたかの様な暗さの中、俺は地面を這う様にして立ち上がろうと試みる。目を見開いているのに辺りが暗いのは本当に目に光が焼き付いているせいかもしれない。

 

 

 「……あー、地面冷ぇ……体痛い……」

 

 「いやいや、起きて第一声がそれなのはどーなの……」

 

 

 身体中に鉛を括り付けられたかのような重さを感じながら目の前の存在___一人の狐に目を向ける。

 

 

 「……で、どう? お目覚めは」

 

 「……寝ながら真剣に考えてたんだ、頭が痛むし身体も至る所が痛い。体調を尋ねてくるんだったら、せめて親切にベッドの上に寝かせるぐらいはして欲しかったな」

 

 

 ……いやこれ本当に。皮肉とかそういった物なしにガチでそうして欲しい。お陰でインフルエンザにでもかかった様な痛みが至る所からする。

 

 

 「そう。私の尻尾を使うってのもあったけど、生憎今は戦ってる相手だしね?」

 

 「昔はよく枕にして寝ていたのに冷たいなぁ」

 

 「……ねえ、アレってすっごく痛いからね? 人で言うと膝に岩石乗せてる様な物だから。本当に痛かったからアレ」

 

 「あー……いつか、気を付ける」

 

 

 無表情の圧力と言ったところか。過去の辛さを今ここで訴えかけられてなんとも言えない気分になる。ちょっと反省。

 

 

 「……なあ、ここで一つ良いか?」

 

 「何? 何か聞きたいの?」

 

 「いや、提案だ。……ここでもうやめないか。やめて、一緒に帰らないか? おじいちゃんもおばあちゃんも、昔と変わらず元気に働いているから、久しぶりに帰ってみないか。お前は身体を無くしている。だが紫や霊夢がなんとかする方法を考えついてくれる筈だ。だから___」

 

 「………………ねえ、貴方はどうやって帰るつもりなの? 名前も無いのに」

 

 「っ…………」

 

 「……それに、名前が分かっても貴方は生きて帰れない。私と同じ事になる」

 

 「え___?」

 

 「あの池の主みたいな生き物は……妖怪? 怨念? ……まあ、そいつらは死んだ化け物の塊みたいな存在で生きてる存在を引きずり込もうとするねちっこい連中でね……いやー、あの時はビビったよ、池に落ちたと思ったらこう、電流が……ビビッ! って流れてさー」

 

 

 あはは、と笑いながら過去の出来事を懐かしむ様に話し、笑いが収まると一度気を落ち着けて此方を睨む様に見る。

 

 

 「……もちろん、一度引き込んだ獲物を連中がそう簡単に逃がさないだろうね。帰る途中に追いかけられて捕まる。私は運良く紫の助けれる場所まで逃げ切れたから捕まった後もこうして霊体として生き永らえてる。つまりね、___あんたは死ぬ。捕まって取り込まれてお終いよ」

 

 「……ちょっと待て、神社の池の主は神の類じゃないのか? こっちは祟りで名前を忘れさせられて此処(幻想郷)にいる。妖怪は『祟る』と言うよりは『呪う』だろ?」

 

 「えっ、何その地味に豪華な厄介事。ま、それでも同じよ同じ。むしろ神様___まあ、やってる事からして祟り神っぽいけどさ、その気性の荒い神様の気まぐれでやった事に背いたら尚更危険だね。私より危ない」

 

 

 冷静にそう告げる狐を今度は此方が可能な限りギッ、と強く睨み返す。

 

 

 「……生憎だがもう既に決めた。引き摺ってでもお前と帰るんだと。それだけは、絶対に譲らない」

 

 

 冷静に考えてみると自分の言っている事は後先考えない馬鹿の思考そのものだろう。だがもう乗りかかった船だ。あの狐を意地でも連れ出そうとしてるのだからこの勢いでこれから先も突き通す事しか頭にはない。対策を練るとか脱出の方法を考えるとか、そんなまどろっこしい考えは無く、ただやると言ったらやるの精神一つだ。まさか常に安全を第一にしている自分がこんな根性論を出すとは夢にも思わなかった。

 

 

 「……私も、あんたをそんな危険に晒すぐらいなら……2度と帰るだなんて思えなくさせる」

 

 「……結局、平和に終わらせようとしてこうなるのか……だが、今回はこっち完全にもやる気だッ!」

 

 

 俺はそばに落ちていた弓を素早く拾い上げ狙いを狐に定める___が、向こうも銃を取り出し此方に銃口を向ける。

 

 

 「___チッ!」

 

 

 可能な限り素早く放った矢は向こうの撃ち込んだ弾丸によって容易に砕かれる。あの狐は迎え撃とうとしたのではなく、最初から此方が射った矢を狙うつもりだったのだろう。

 

 

 「まだまだ弱い弱い、そんな程度じゃさっきの天丼だよ?」

 

 「うるせぇ、スペックから不利なんだよ!」

 

 「そう、じゃあ諦める?」

 

 

 此方の実力など、たかがしれている。そんな言葉が聞こえそうな程に冷たく投げ捨てるかの様な台詞。

 

 

 「……アホか、譲らないって言ったそばから諦めるかよ」

 

 

 札を腰から抜き取って右手の薬指と小指に丸めて持たせる。そして弓を引き絞り放つ___と同時に弦を掴み直して更に放つ___

 

 

 「っ! ___ふっ、と」

 

 

 俺の放った一本目の矢は銃弾で撃ち落とされ、二本目は撃ち落とせないと見たのか、無難にも回避した。

 

 

 「___危ない危ない、それじゃあ、こっちも___ね!」

 

 

 狐は銃のマガジンを地面に捨てると新たにマガジンを取り出し新たな弾丸を装填させる。無駄ひとつ無い動きで装填された銃の銃口からは青白い光が見え隠れし___

 

 

 「___っ! レーザーか!」

 

 

 そう分かっても、もう遅い。銃口から放たれたレーザーは俺の足元に当たり足場の岩ごと爆発させた。

 

 

 「うぐッ___!?」

 

 

 勿論それをまともに喰らった俺は後ろに跳ねる様に飛ばされる。身体中に足場の岩の破片を浴びて身体の表面が鋭く痛むが、これならまだ問題ない。問題があるとすれば、人間と言う立場で妖怪に挑むことが余りにも無謀で絶望的だと言う事か。

 

 

 (……どうしたら良いんだよッ……!)

 

 

 相手と自分には泣きたくなるほどに差がある。スペックの差。武器の数。霊力の熟練度。妖力。そして___……

 

 

 

 

 

 

 (……能力。いや、あったのか)

 

 

 「……あれ、もうお手上げ?」

 

 

 

 向こうからそんな声が聞こえてきたがたった今、頭をフルに回している自分には届かない。

 

 能力。確か狐は俺の能力と彼奴の能力で「ありとあらゆる能力を扱う程度の能力」が出来たと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺の能力。

 

 

 

 

 

 (……どんな物なんだ…………?)

 

 

 能力とは自分が一番知っている物。そう聞いていた。それなら、自分に本当に能力があるのなら___

 

 

 「ねえ、どうするの? もう私を連れて帰るなんて考えは___」

 

 「……まあ、そのなんだ。少し黙ってろ」

 

 

 俺の腹の底からの言葉に狐は喉を詰まらせる。

 

 

 「お前のヒントのおかげで、もしかするとこの逆境を変えられるかもしれないんだ」

 

 「……?」

 

 

 目を瞑り、意識を深く潜らせる。深く___深く___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (……まだだ。記憶の深い所に___もっとだ___)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しずつ自分に向き合って行くが、それでもまだ自分の能力には届かない。自分の手だけで能力を知ると言うのはここまで難しいのか。

 

 

 瞑った目から見える景色は瞼の裏よりも暗く黒い。その先に潜れば確かに分かると信じて少しずつ意識を進ませる。

 

 

 

 

 

 「______」

 

 

 

 

 

 

 ……狐が、何か言っている、気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (______)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識がかなり深くに来たらしく、自分の考えてる事すら届かない。それでももう少しだけ進んでみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『______』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何か、見えてきた。自分の知りもしない単語が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『___を___能_』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の、能力が見えてきた。あと少しで手を伸ばせば届きそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『素_を__し__程_の能_』

 

 

 

 

 

 

 能力を______掴んだ___!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「___何も言わず戦う意思を持ちながら棒立ち……なら、情けは要らないね!」

 

 

 一気に意識を浮き上がらせてる最中にそんな言葉が聞こえて目を開けた時、ちょうど狐の持った銃口から青白い光が見えた。それを見て俺は弓を持った手を水平にヒュン、と振る。

 ……ただ振るだけでなく、その途中に弓の弦を右手で引いて絞り、放って。

 

 

 「___えっ!?」

 

 

 放った矢は真正面から放たれるレーザーの側面を削る様に狙い、見事俺より少し左に軌道を逸れさせた。

 

 

 「___してやったり(仕返し)、だ。どうだ、自分の攻撃を撃たれるのは割と悔しいだろ? ______なあ、()?」

 

 「___っ!!」

 

 

 能力を手に掴む時、記憶の奥らしい場所から抜き取る事の出来た名前。残念ならが自分の物で無いが……確かに今この場で一番、思い出したかった物の一つだ。

 

 

 「……名前と能力がくっ付いてるみたいだった……だから能力が合わさった、とかかな。……まあ、今はそんな事は良いよな」

 

 「……びっくりした。まさか、私の攻撃を逸らすだけじゃなくて突然私の名前を思い出すんだから」

 

 「いや、まだ早い。今から更に驚かせてやる」

 

 

 まだ気ごち無い動作で得たばかりの能力を使う。イメージするのは自身のとある部位。

 

 

 「はっ______!」

 

 「なっ___ぐっ!?」

 

 

 一歩、二歩、三歩と足を地面に沈み込ませる勢いで踏み込み、相手の裏に回る。そのまま引き絞っていた矢を背中に命中させた。

 

 

 「い、威力がそこまで無くて助かった……もしかして、あんたの能力って身体強化?」

 

 

 狐___葵は背中を摩りながらそう尋ねてくる。

 

 

 「どうかな、俺の能力はそんな代物じゃない」

 

 

 俺は弓を構えて強く引き絞る。イメージするのは矢。その放たれた瞬間。

 

 

 「___え」

 

 

 葵の呆気を取られた声が漏れる。銃を構えて飛んでくる矢を撃ち落そうとした葵のすぐ真横を雷の様な速さで矢が突き抜けて行った。

 

 

 「……ふ、ふん! そこまで出来るとはね……だとすると、貴方の能力は霊力や物質にまで働く強化能力かしら?」

 

 

 葵が頬の冷や汗を拭いながらそう言ってくる。

 

 

 「……だから言っただろ、俺の能力は身体強化だの、霊力やら物質の強化だの、そんな大層立派な代物じゃないってばさ」

 

 

 強化。そんな心強い能力なら素直に喜べただろう。

 

 だが、自分の能力はそれに近いのか遠いのかイマイチわからない程度の能力___

 

 

 

 

 

 

 

 ___素質を水増しする程度の能力。

 

 

 

 

 

 

 

 ただ単に、体力であればその素質を水増しさせて体力を増やす。ただそれだけの能力。

 これは自身に働くだけでなく、他人や物質、霊力などと働く対象を限定しない使い道が多いと思われる能力。

 

 だが、純粋な身体強化と比べると劣る。自動車に例えて、身体強化が自動車の力を最大限に引き出せる様に内部の機械を改造する物だとすると、この能力は平凡な車に能力を最大限引き出せる高品質な燃料を注ぐ様な物だろう。

 

 しかも、元から燃料の入っている(ある程度の素質がある)機械(身体)違う種類の燃料(能力で加えられた素質)を注ぐのだ。下手すると機械自身が故障してしまう可能性もある。更に、能力を使っても自身の体力は多少ながらも消耗するし能力を解けば水増しした分は当然無くなる。つまり、使い方よっては自分の首を絞めてしまう。

 

 

 それ程に微妙である能力。だがそんな能力でも今は最高の能力だ。

 

 

 

 「……でも、それ自体に攻撃力はない様ね」

 

 「ああ、結局は自分の力で戦う事になる。だが、甘く見るなよ?」

 

 

 今まで右手に握りしめていた札を手に持ち直す。

 

 

 「……おじいちゃんが言うには、人間の強みは知力、適応力、そして成長力なんだとさ。___今の俺には穴だらけな方法だが、それらを強める能力がある。今ならお前にだって勝機がある」

 

 「……あんたの顔を見る限り、さっきみたいにお気楽には出来なさそうだね。一筋縄じゃいかなそう」

 

 

 葵がさっきまでとは違った顔になる。強敵を見る様な、厄介な相手を見る様な目。

 一方、此方にはとびきり強力な手札が増えてた。弓、札、そして能力___これなら、彼奴だって___!

 

 

 

 

 

 

 「覚悟しておけ。一筋縄じゃ済まさない___」

 

 

 

 恐らく決着前の最後の会話。その言葉を合図に俺は前に出た_____

 

 

 

 

 




 次回で決着予定。
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