東方の幻想日記 ~人間妖狐迷走記~   作:0%0%0%

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 激しくお久しぶりです。久しぶりなのに今回は少し短めです。実質、繋ぎ回なので……

 それでは、どーぞ!


〜五十九頁目(自宅)〜

 「……くそ、最後の最後にこんな壁が……」

 

 

 そうだった。この洞窟は横に掘られた物ではなく、地面にポッカリ出来上がった空間だった。つまりこの洞窟の入る時は落ちるだけだったが出る時は這い上がらなければならないと言うことだ。

 

 

 「くそ、ボロボロの体にそんな仕打ちをするとは人間の考える事じゃねぇな」

 

 

 ……もちろん、人間がこの洞窟を作った訳ではないのだが。

 それでもこんな死体蹴りの様な構造は憎まずにはいられない。俺に這い上がる程の力があるとは到底思えない___?

 

 

 「あれ、なんか力がほんの僅かに湧いてきた……?」

 

 

 物理的な力が湧いてきたのではなく、霊力の様な精神的な力が体の芯から僅かに湧いてきて不思議に思う___が、納得する。

 

 

 (……ナイスフォロー、感謝する)

 

 

 きっと聞こえてはいないだろうが心の中でそう感謝して俺は息を整えた。

 

 

 ___能力、僅かにゆとりが出来た。ほんの少しなら扱える___出口までギリギリ届くか届かないかの程度___

 

 

 「……よし、いっちょ跳ぶか」

 

 

 片足しか履いていなかった草履を脱ぎ捨てて、脚力を水増しさせる。……今更能力を使う事による頭痛もしなくなってきた。能力に慣れてきたのと葵の最後の助けのお陰だろう。

 

 

 出口まで……およそ……15mぐらい、か?

 

 ……ここから落ちてよく生きてたな自分。あの時は腹から落ちた気がするのだが肋骨の一本すら折れていない。思ったより自分にはカルシウムが足りているらしい。

 

 

 「___せいっ!」

 

 

 また酷使しすぎて頭痛がしない様に気を使いながら水増しした脚力を使って高く跳ぶ。普通のジャンプとは違ってスピードも体も浮き方も違う。これならもう一跳びで届きそうだ___

 

 

 「___うらっ!」

 

 

 ほぼ直角な壁を蹴って更に上へと跳ぶ___が、足りない。あと体が一つ分ほど届かない。

 

 

 「___っ!」

 

 

 何も考えずに咄嗟に出た右手が冷たく湿っていた岩の壁を掴んだ。それでも足が壁につかなければ跳べない___

 

 

 「しまっ___」

 

 

 壁を足が蹴るよりも右手の限界の方が早かった。右手が壁から離れた途端に俺の体は真っ直ぐと地面に落ち___

 

 

 「___緑!」

 

 

 俺の名前が聞こえたと同時に何かが俺の手を掴んだ。掴まれた腕から岩の壁にはない温かみが伝わってくる。

 

 

 「……霊、夢?」

 

 「ったく、あんたは詰めが甘いのよ」

 

 

 俺を引き上げながら霊夢はそんな痛い指摘をしてくる。完全に自分のミスだったのでこれには俺も反論できなかった。

 

 

 「……いや、すまん。思ったより余力がなかった」

 

 「むしろ喋るだけの余力がある方が凄いわよ。人間なのにタフね」

 

 「ああ、正直ギリギリだった。ぶっつけ本番で能力を使うだなんてニッパー持ったことない奴に爆弾処理させる様なもんだろ……」

 

 

 俺は霊夢に引き上げられて更に肩を貸してもらっていると言うなんとも男としては情けない事になっているが今回ばかりは誰だって許してもらえるだろう。むしろ評価しろ。

 

 「ま、あんたも疲れているだろうし一休みしましょ? ……ああ、この辺りの妖怪は片っ端から片付けたわ。時間も朝だし、結界は張っていないけど間違いなく安全の筈よ」

 

 「……本当だ、もう朝か」

 

 霊夢は俺を地面に下ろすと一人で数メートル先まで歩きながら辺りを見回してそう言った。

 深い木々に囲まれてはいるが確かに明るい。……その明るいせいで辺りに使用済みの針やら札やらの残骸がよくわかるのだが。何があったここ、どんど焼きでもしたのかこれ。

 

 

 「……さて、そろそろ良いわよね」

 

 「へ? そろそろ良いって、何が?」

 

 

 そう聞くが霊夢は無言で俺に向かって歩いてくる。

 

 

 「……霊夢? いやその、だから何を___」

 

 

 俺の問いかけにも答えずに霊夢は俺の目の前まで迫り___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「___ふんっ!」

 

 「___ウロボッ!?」

 

 

 

 

 

 ___ピチューン。

 

 文字にするとそんな甲高い音が鶏も鳴かない程の早朝の空に高々と響いて山にこだまする。その音の発生源はここ、霊夢にぶん殴られた俺の頬だった。

 

 

 「あんたはこの一晩でどんな無茶をしたかわかってるの!?」

 

 「う、うるせぇ! いきなり殴る奴がいるか! 親父にも殴られた事が無い___親父……あー、親父居なかった。くそ、セルフで地雷踏んだ」

 

 「何その迷惑な自爆!? ……じゃなくて、あんたは私が何のために札をあげたのか分かってて?」

 

 「えっと、万が一の時のために___」

 

 「……万が一の時、どうするため?」

 

 

 うわぁ、すっごい殴って来そうこの巫女さん。なんと言うか、助走をつけてグーで延髄を殴って来そうな笑顔(恐怖)だ。

 

 とりあえずまた残機を減らされるのは勘弁なので速やかにこの笑顔が(背筋が恐怖で凍りつく程に)素敵な霊夢さんに答える事にする。

 

 

 「……万が一の時、敵の妖怪を撃退したりする___」

 

 

 そこでもういいと言わんばかりに霊夢は俺の台詞を手で遮ってハァ、と神社の縁側でよく漏らすため息を今ここで漏らした。

 

 「万が一の時、逃げる時間を稼ぐための札だったのにあんたは……どうしてそう無茶をする!」

 

 「いてっ」

 

 「ったく、あんたのその無茶はもはや不治の病ね。竹林の薬師も匙を投げ出す程の物よ」

 

 

 そう怒りながらも霊夢は俺の頭のてっぺんを軽く叩くだけだった。どうやらこの件のお説教はこれでおしまいらしい。やはり素敵な巫女さんだ。

 

 

 「ほら、そろそろ帰るわよ。あんたの家まで連れて行ってあげるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___今日の出来事はまるで一瞬の事だった。

 

 

 葵の場所まで探し回った時や葵と戦った時には何時間もかかっていた筈だが、俺の脳に焼き付いて残っていたのは葵との最後の部分だけ。あとは霊夢にぶん殴られたり殴られそうだった事くらいか。

 

 

 

 

 

 

 ___あんたに私の霊体を預けておくから、幻想郷を出てからもあんたは霊力をしっかりと身につけてみなさい。そうすれば、一緒に外に出れて、一緒に居られる___

 

 

 

 

 

 脳だけでなく耳や目にもしっかりと残った葵の姿とその言葉。あの時の俺は馬鹿みたいに一緒に帰ると何度も言ったのだから、どんなに名残惜しくても幻想郷から立ち去る以外に自分の道は無い。どんなに霊夢達と過ごした日々が楽しくてたまらなかったとしても___

 

 

 「……あと二日。二日で此処(幻想郷)の未練をなくそう」

 

 

 すっかり自分の物である家の床に仰向けになりながら天井に手を伸ばしながらそう心に決めた。このままだと最後の時に迷ってしまいそうだ。偶然、と言うよりは本来起こり得ない事故でやって来たこの場所にまた来ることは間違いなく叶わないだろう。

 

 ……去ったら二度と来れない理想郷。そんな場所を迷わず後にする事が出来るのだろうか。

 

 

 いや。そんな事を考えるのは止そう。帰るその時にうんと悩めば良い。勿論、未練を無くして去るつもりでいるのだが。

 

 

 「そんな事は……また……明日にしよ……う……___」

 

 

 不意に自分の腕が力なく落ちたかと思うと瞼が俺の腕よりも重く閉ざされた。そのままあっけなくも俺は間も無く眠ってしまった。

 

 

 

 

 

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