オーバーロード 両剣の担い手   作:忌味

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そして伝説は始まる

2つの奔流に世界が白く染まった。

強すぎる力がぶつかり合い、爆発をしたのだ。

 

その爆発は二人のプレイヤーを巻き込み、部屋全体を覆う。

 

PVPで発生した攻撃は周りのプレイヤー、NPC、モンスターにはダメージを及ぼすことがないのでメイドやアルべドといったものにダメージを与えることはない。

まぁ仮にダメージが通るのであったらレベル100のアルべドはともかくとして、メイドたちは一瞬にしてそのHPを全損させていたことだろう。

 

超位魔法に真正面から切り込み、爆発の中心地に一番近いところにいた細波は大きくふっ飛ばされ入口近くの地面に体を強打する。

 

一方、後衛職であり、ある程度爆発からの距離もあったモモンガであったが、やはりこちらも爆発によって壁にたたきつけられる格好となった。

 

「………ははっ!たのしいなぁ…」

 

モモンガがたたきつけられた壁からそのまま地面に落ち、思わず言った一言。

それを聞いた瞬間に、細波はここまで来た甲斐があったのだと満たされた気持ちになった。

 

時刻は23:59:02

残り時間は約60秒。

先の1撃をもってこの戦いは終焉を迎えた。

理由は単純だ。

二人とも満足したからだ。

話すべき話題はもう尽きた。

だから残るのは別れの挨拶のみ。

 

「モモンガ、今までありがと、結局時間内にこのギルド攻め落とせなかったけど…約束破っちゃったかな?」

 

「何言ってるんですか、約束した時に自分はこういったはずですよ『そもそも誰にも落とさせるわけないですよ』と、俺とサイさんの約束はあくまでも後者の『誰にもこの城を落とさせない!』ってことだけのはずです」

 

「そっか…」

 

「そうです……」

 

残り30秒ほどしかない貴重な時間だが3秒ほど空白の時間が生まれた。

二人にとっては何もない、空白の時間すら掛け買いのないものであったのだ。

 

「サイさん、ありがとうございました。異形種である自分と初めてptを組んでくれた人があなたでよかったです」

 

「こっちこそ、pkとかいろいろある中で信用してptを組んでくれたんだからお互いでしょ?」

 

当たり前だといった風に笑いながら言い返す細波。

それもそうですねといった風に脱力するモモンガ。

ゲームのつながりなんてものはとても希薄なものだ。

片方がゲームにINしなければもう切れてしまうし、ゲームのハードが壊れてしまえば引退したと勘違いされてしまう。

だが、いや、だからこそそんな希薄な関係性を維持し、ゲーム終了までつなげてきたのだ。

間違いなく彼らは『本物』であると言えるだろう。

 

「じゃあね、モモンガ」

 

「はい、これでお別れです、サイさん」

 

また会おう、とは言わなかった。

リアルでの連絡先はもちろん知らず、会えないことは目に見えているだろうし、何よりこの世界でのつながりであり、絆だったのだから、この世界に残していくべきだ。

二人とも心の中でそう感じていたのかもしれない。

 

残り20秒となり、モモンガは彼のすべてといっても過言ではないギルド武器《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を掲げた。

意図を察して細波も己の相棒である両剣《ツイン・ゲイヴァルガ》をアインズの杖に合わせる。

 

残り時間は15秒と無い、すぐに現実に引き戻されると分かっていながらも、この二人は最後までこの世界に酔っていたいと感じていたに違いない。

 

「サイさん…いや細波よ、我、アインズ・ウール・ゴウン41名が統括、モモンガが認めよう。貴様はこの私が信用にたる、素晴らしき人間であると」

 

「じゃあモモンガ、俺が、1度だけど人間種最強を関した俺がお前を認めてやる、お前は俺が全力を出して戦うに値する最高の敵であり、背中を任せられる最高の友であったと」

 

きっと現実世界の互いの目には涙がとめどなくあふれていることだろう。

だが、そこにいる骸骨と人間の姿にはまったく悲しみはない。

あるのはただの感動だけである。

好きだった物語が終わりを迎える。

そんな時誰でも感じるだろう。

終わって欲しくない、という気持ちが結末の感動に押しつぶされるのを…

そうしてたどり着いた終わりには、満足感さえあれど悲しみは生まれえないのだ。

 

そうして時刻は23:59:58

 

23:59:59と時を刻み…

 

 

 

 

 

 

 

00:00:00へとなり、すべては終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一番最初に異変に気が付いたのはモモンガだ。

あれほど感じていた感動が一瞬の違和感を持って10分の1程度にまで減少してしまった。

時間が感動を薄めることは往々にしてあるがさすがにこれは異様だと思う。

現実に引き戻されるという意識が最後の最後に戻ってきて水を差しているのだろうか?

モモンガは首をひねる。

 

「ねぇ、モモンガ…」

 

そんな彼に細波は問いかける。

 

「ん?どうしたんですかサイさん?」

 

「時間すぎてるんだけど…………ってうをぉ”!?」

 

モモンガに話しかけた言葉は突然襲い掛かってきたアルべドによって中断された。

 

「ちょ、急になにすんだよ、モモンガさん!」

 

NPCは命令されたりしない限り、もともとプログラムに記された行動しかしないのはこの世界の常識である。

だから細波がモモンガに叱責するのは当たり前のことであった。

 

「あれ!?俺は何もコマンド出してないですよ!?」

 

再び武器を構える純白の悪魔。

 

「先ほどまでは『ひれ伏して見よ』、と言っておりましたがさすがに我慢の限界です…」

 

どこからか声がする、モモンガが発したのでなければもちろん細波が発したわけではない。

ではこの言葉の発生源はどこなのだろうか?

それに同時に気が付いた二人は声をそろえて言った。

 

「「NPCがしゃべったぁぁぁぁl?」」

 

「耐え難い、えぇ耐え難い、モモンガ様に認められるのがうらやましいわけでは決してありませんよ?我が主が人間ごときに同格に見られるのが実に気に食いませんね」

 

嫉妬心前開である。

モモンガはふと先ほどアルベドの嫉妬をしているような言動から彼女の設定を『実はビッチである』からあるものに書き直したことを思い出したが、結局のところ正確な現状判断はできなかった。

 

「あ、アルべド落ち着け!」

 

そんな状況でも静止の声をかけるのだからさすがはトップギルドの長というものだろう。

命令が素直に受け入れられるかどうかは置いといて…

 

「えぇ私は落ち着いております。落ち着いて、冷静沈着に、この下等生物を処理いたしますので少々お待ちください」

 

落ち着くとは何なのだろうか?

つい問いたくなるモモンガなのであった。

だが、モモンガは大事な事実を忘れていた。

そう、アルベドの持っている武器は《世界級(ワールド)》アイテムなのだ。

 

「あ、えっと…アルベドだっけ…?その武器はちょっとまずいんじゃあないのかな…?っておま、マジやばいって!?《剣付加(ソードエンチャント)黄金の輝き(アブソリュートシャイン)》!!」

 

アルベドが持っていた武器に異様な光が宿ったため細波は急いでスキルを発動させる。

 

「すべてはモモンガさまのためにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!」

 

「怖い、あと怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!どうにかしてくれモモンガぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

顔面崩壊という言葉がこれほどしっくりくる場面は生まれてから1度もなかったであろう細波は涙目になりながら悲鳴を轟かせていたのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…

ナザリック地下大墳墓、6層《円形闘技場》

 

普段あまり使われておらず、閑散とした状態が長らく続いたであろうその地には10人ほどの人影…半分以上は人ではないのだが…が集まっていた。

全てとはいかないが各階層守護者、ナザリックの支配者モモンガ、そして人間である細波と彼のNPCヤイバとマナである。

だが会話は1つとしてない、いや、正確に言えば音を使った会話は1つとしてない。

 

『モモンガ、、、なにこの空気は!俺こういう空気耐えられないんだけど』

 

伝言(メッセージ)>といわれるユグドラシルプレイヤーが全員使うことのできる基本スキルの1つによって回線をつなぎ念話をするモモンガと細波。

これならばこの異様な空気の中でも周りの目を気にせずに意思疎通をすることは可能なのだ。

 

『いや、俺だっていやですよ!それにまさかこんな事態になるなんて想像できなかったから何がなんやら…』

 

『それにしては堂々たる演技だったよね?さっきの…』

 

『やめてください…ゲーム時代ならともかく、こんな状況になった今あんなことをするとなったら結構精神的にくるものがあるんですから』

 

先ほど、公式サービス終了時間である00:00:00になってもゲームからログアウトさせられなかった件、NPCであるアルベドが言葉を発し細波に襲い掛かってきた件、そしてその後に発覚したコンソール呼び出し不可能&ログアウト不能…

彼らは正確に情報を認識できないまでも1つの結論だけは導き出した。

それは100年以上前に1部の若者たちに大人気であった小説のジャンルと同じ。

………つまり異世界転生だと。

 

『だね、俺だったら恥ずかしすぎてあんなこと大真面目にできないもん…』

 

先ほど、荒れ狂うアルべドをとめ、この後の方針を立てるため闘技場にみなを集めようとした際、ガチの支配者…いや、魔王RPをしたモモンガに向かって言う細波。

 

『遠回しに馬鹿にしてません?」

 

『いやいや、尊敬してますとも…』

 

状況が変化したときその状況に合わせて使い分けができる人間はそう多くない。

魔王RPをしっかり演じたモモンガに本気で尊敬していたりするのだが、もちろんのごとくモモンガには伝わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「発言よろしいでしょうか?」

 

そろそろ静寂の時間が10分になろうとしていたときにその声は円形闘技場にて響いた。

声の主は7階層守護者デミウルゴスだ。

 

「よい、申せ」

 

モモンガはRPであろう、言葉を短く、それでいて的確に絞り出す。

余計なことを言ってRPが無駄になってしまうのは絶対に避けなければいけないためこのような回答はベストであった。

 

「いまだ私には、なぜこのような下等生物が3匹もいるのか疑問であるところですが…」

 

もちろん下等生物とはNPCも含めてこの場にいる人間3人のことだ。

面と向かって下等生物といわれたところで細波は彼らは人間をそういう認識しているという事実を知っているため別段心を乱したりはしない。

しかし、彼の連れである二人は違う。

ヤイバとマナ。

それぞれが名前のままであるが近距離職と魔法職のNPCであり、ダンジョン攻略をメインに遊んでいた細波の相棒である。

 

ヤイバのほうは面白くないなぁといった顔をし、マナのほうは逆に「お前らのほうが下等生物だろ」といったような目で見ていた。

 

そんな二人の様子に気が付いていないのか、気が付いたうえでなのか、それとも興味すらないのか、デミウルゴスは言葉を続けた。

 

デミウルゴスは7階層階層守護者。

10階層の《玉座》にまで行った細波はもちろん7層も通っていてそこで何も話すことのないデミウルゴスと戦った。

しかし、細波が《玉座》にまで行ってることから分かるようにその結果はデミウルゴスにとって芳しいものではなかった。

だからなのだろう、デミウルゴスがこのようなことを言うのは。

 

 

「取り合えずそこの人間ともう1度戦闘の機会を与えてはくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 




疲れた~
最後なんか変な終わり方になってしまった…
ちなみにこの作品はプロットとか何も書かずに書こうと思ったことを書いてるときに変えたりなんかいろいろしてます。
だから自分でも「何でこうなった…」的なことがあったりしますがまぁ気にしないで呼んでくれると幸いです。
それではみなさんおやすみなさい








忌味の戯言




00:00:00となり、全ては終わりを迎えた。






~Fin~




↑をちょっとやってみたいと思いましたまる

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