運命は無情か厚情か   作:八ツ奈豆

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いつのまにか連載一周年じゃねえか……。ということにこれの投稿の数日前に気付きました八ツ菜豆です。
終夜「一年とは思えない話数だがな」
僕も思った。流石にこれはやべぇと思った。モンハンやってる場合じゃねぇと思った。
終夜「それにもっとはやく気付かないあたり流石だな」
やっぱ更新ペース遅いのは致命的だよなー……がんばります。
では、本編どうぞ!


抜刀

 刃と刃がぶつかる音が白玉楼に響いている。暁雅と妖夢が稽古をしているところだ。

 

 ガキン!!

 

 突然鋭い金属音と共に、暁雅の刀が妖夢の刀に弾かれる。

 

「あ、やば」

 

 暁雅は地面に刺さった刀を少しも見ることなく、これまでよりも妖夢に視線を集中させる。稽古と言えども、刀が弾かれたからと言って戦闘を中断させてくれるほど、妖夢は甘くないと知っていたからである。案の定、妖夢は刀を握っていない暁雅に容赦なく斬りかかる。暁雅は焦った様子で、でも笑顔で、妖夢の刀をひたすら避けていた。

 と言っても、暁雅は丸腰ではない。なぜなら、腰にもう一本。刀が差さっているからである。

 暁雅は打開策を考えていたが、次の瞬間、押されて少しずつ後退していたのが裏目に出て、暁雅は踏んではいけないものを踏んだ。

 そう、バナナの皮である。

 

「ちょ、ふぁ?」

 

 暁雅は左足を大きく後ろに滑らせ、一気に体勢を崩してしまった。なぜこんなところにしかも白玉楼にバナナの皮があるんだと怒りの感情をおこす暁雅だったが、よく考えてみたら、自分が買ってきたバナナを食べた後、捨てるのめんどくさいし誰か踏んだら面白いなと思い、自分が適当にそこら辺に投げたバナナの皮であった。それを思い出した暁雅は、なんとも言えない気持ちになった。

 そんな暁雅に向かって妖夢はお構い無しに刀を降り下ろす。今さらであるが本物の楼観剣であるため、このままだと文字通り真っ二つにされる。そこで暁雅は咄嗟に打開策を思い付き、実行した。

 

パン!

 

 それは、真剣白刃取り。楼観剣は左右からかかる力によって静止した。自分の両手の間で静止した刃を暁雅はすぐに左に払い、流れるようにもう一本の刀に手を添え、抜刀した。

 その刀は、獄冥・海正。ガード不可能の切れ味を誇る妖刀である。それを暁雅は、抜刀と同時に妖夢の首筋目掛けて一閃する。妖夢はこの刀の特性を知っていたので、体を横に曲げて避けようとする。妖夢の顔すぐ上を刃が通り過ぎた。すると、妖夢は楼観剣を納刀して直立の体勢になる。

 見てみると、妖夢の頬に少し深めの切り傷ができていた。

 

「ふぅ……。私に刀を弾かれたのでまだまだですが、体勢を崩してからの判断と行動の速さ。驚きました。今日はこれで終了です」

 

 真剣な表情だった妖夢の顔に笑顔が灯る。それを見て暁雅はホッとした。

 

「よかったぁ。妖夢さん強すぎですね。剣技だけではまだ遠く及びません。傷ひとつ付けるのにどれくらいかかったことか……」

「緊急時以外能力禁止でしたからね。でもまさか白刃取りをしてくるとは。今回は成功しましたが、あれは失敗する可能性の方がかなり高いらしいのであまりやらないで下さいね」

「ああ、安心してください。使ったのは今回が初めてですし、バナナの皮が再出現しない限りはもうやりませんよ」

 

 暁雅は恨みを返すように刀でバナナの皮を切り刻みながらそう言う。妖夢はその光景を、哀れむような目で見ていた。

 

「あ、そうだー、私ちょっと出掛けてきますね~。欲しいものがあるので」

 

 バナナの皮だった物を踏みまくって見えなくなったところで、暁雅はそう言って支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 さて、こちらでは孤月終夜が執事服で外を歩いている。つまり勤務中。そんなときに終夜は一人である場所に行くように言われた。

 

「ここがそうか。以外とシンプルな外見だな」

 

 緑の中にひっそりと佇む落ち着いた外見の建物。着いた建物は香霖堂。そう、単なる買い出しである。

 

「香霖、いるか」

 

 そう言って扉を開ける。店に来たのは初めてだが、店主には面識があった。

 

「終夜じゃないか。……紅茶だね?」

 

 カウンターの前に座る、落ち着いた感じの男性。店主の森近霖之助である。

 

「流石だな。いつも紅魔館に売るのはどの紅茶だ?」

「やっぱり葉を変える気はないのか。用意しよう。在庫は十分だよ」

「ほぉ。じゃあそれをいつもの量頼む」

「わかったよ」

 

 終夜は本当にいつものと言うだけで買えるんだなと驚きながら、店の中を見渡す。

 

「欲しい物はこれだけかい?」

「そう言えば、欲しい物ではないんだが」

 

 終夜はそう言って腰に差さっている終鬼を鞘ごと外し、カウンターに置いた。

 

「こいつを見て欲しいんだ。特別な刀らしいんだが、何が特別なのか解らなくてな」

「ほぉ」

 

 霖之助は準備する手を止め、終鬼を手に取った。そして鞘から刀を抜き、それを眺める。

 

「僕は別に刀匠じゃないから詳しいことはわからないんだが、そんな僕でもわかるくらい、この刀は良い物のようだね。それと、かなりの妖力を感じる。悪い力ではないようだが……。この刀の名前は?」

「終鬼だ」

「終鬼か……聞いたことは無いが……。能力で調べてみよう」

 

 沈黙。霖之助はしばらく終鬼を眺めていた。

 

「……終夜。なぜ、この刀の名前を知っているんだい?」

「なに?」

「この刀には、名前がついていないんだよ」

「なんだと……? 馬鹿な」

「本題のなにが特別なのかだが、僕の能力で調べてみたら、この刀は持っていると特定の能力をサポートする効果があるらしい。所持者が君だから、使いこなす程度の能力を強化してくれるのかな」

 

 霖之助はそういいながら終鬼をもとの形に戻し、鞘にしまって終夜に返すと、商品の用意を再開した。終夜は終鬼を腰に差すと、顎を右手で触って思考を始める。何か違う。と。

 なぜ、自分は昔から名前のないこの刀の名前を知っていて、能力は知らないのか。それも十分謎だ。だが、何か。何か引っ掛かる。一体なんなのか。終夜は深く考え始める。気付かなければならない。そんな気がした。

 

「終夜」

 

 何か気付いていないことがあるはずだ。という、終夜の思考は、霖之助に呼ばれてもしばらく解けなかった。

 

「終夜、おい、大丈夫か?」

「!」

 

 どうやらしばらく固まっていたらしいことに気づいた終夜は少し慌てた表情を見せる。

 

「ああ、すまない。大丈夫だ」

「これ、紅茶だ」

「感謝する」

 

 紅茶の入った紙包みを受け取り、お金を払う。そして、霖之助に「また来る」と伝えると、終夜は香霖堂を出ていった。

 霖之助はその後ろ姿を,真剣な表情で見ていた。

 

 

 

 

 終夜が香霖堂を出てからしばらく歩いた頃。終夜は遠くの空から何かが飛んで来ている事に気付き、足を止めた。

 

「またお前か」

「終夜さんじゃないですかぁ。偶然ですね」

 

 暁雅は地面に降りてそう言った。終夜は真顔である。

 

「何しに来たんだ?」

 

 終夜の問いに、暁雅は笑みを深くする。

 

「コーヒーって知ってます? それを買いに香霖堂へ」

「知らないな」

「飲み物ですよ。苦いやつ」

「なるほど、ウチは紅茶一択だからな。知らないわけだ」

「そうでしたね。美味しいのに」

「紅魔館と白玉楼じゃあ文化の違いはあるだろう。ま、どうせ白玉楼でそれを飲んでいるのはお前だけなんだろうがな」

「そうなんですよ」

 

 正直、こいつにしては普通なんだな。と、終夜は思った。暁雅に対して、「変」というイメージしかなかったためだ。そう考えると、なんだか怪しく思えてきた。

 

「そう言えば終夜さん」

 

 急に言って来たので、終夜は反応に遅れた。

 

「なんだ」

「何か、悩んでいることがあるようですが?」

 

 いきなりのその質問に、終夜は一瞬固まる。

 

「……なぜわかる」

「目は口以上に物を言う。ま、私が見てるのは目だけじゃありませんが」

「なるほどな」

「で、何かありました?」

 

 終夜は一瞬悩んだ。言うべきか言わないべきか。しかし、暁雅は、この謎を知っていそうな人物の一人。終夜はそう思い、話すことにした。

 

「この刀。終鬼のことなんだが、能力がわからないと言っただろ? だから香霖に見てもらったんだが、どうも、所持者の能力を強化してくれる能力があるということ。そして同時に、この刀には名前が無いことが判明した」

「なるほど、それは奇妙ですねぇ」

「俺は記憶が無いくらい昔からこいつの名前を知ってる。それも十分謎なんだが、何か引っ掛かるんだ。他に気付かないと行けない事がある気がしてな」

「助言、しましょうか?」

「……! なにかわかるのか」

「どうします?」

「一応、聞いておこう」

「わかりました。では貴方の過去についてお話しましょう」

「?」

「終夜さん。あなたが他の人達に比べて圧倒的に不十分なところってなんですか?」

「不十分なところ? 知識か?」

「圧倒的にと言いました。ので、知識は入りません」

 

 終夜は少し黙った。そんなに圧倒的に足りないものは、自分にあっただろうか。と、考えるために。

 しかし、しばらく考えても、答えは浮かんでこなかった。

 

「すまない。そんなに圧倒的なものはわからないな」

「そうですよね、私もわかりません」

「は?」

「無いんですよ。貴方には。圧倒的に足りないものなんて」

「……何が言いた……」

 

 終夜の言葉が途切れ、沈黙が訪れた。一瞬、時が止まったかのように静かになる。だが、数秒経ったとき、終夜の表情が驚愕のものに変わったことで、その静けさは消えた。

 

「まさか……」

「気付いたようですね」

「何も無いことが……最も……ということなのか」

 

 終夜の声は震えていた。嫌な汗もにじみ出てくる。

 

「その通り。山にいたはずの貴方が、そうして普通にしていること自体、大きな謎なんですよ」

 

 表情を変えず、暁雅はそう言った。実際、暁雅の言っていることは紛れもない事実だった。幼いころから山

にいた。それこそ物心ついたころには山にいたのだ。そんな子供が山での生き方を知っているだろうか。誰かと会った記憶も終夜には無かった。ので、今ここで生きていること自体あり得ないことだった。

 仮に、これを奇跡として片付けたとしても、謎は残る。知能の遅れがほとんどないことである。人の言葉を喋っているし、こうして考えることができている。さらに、終夜は普通に頭がよかった。

 終夜は、自分自身に大きな謎があることに気づく。終鬼のことも含めて、終夜の過去には謎が多すぎた。

 自分がわからない。それは、今までで一番嫌な感覚だった。

 

「何故、今まで……何故今まで誰もこの疑問を俺に投げ掛けなかった。何故隠していた……!」

「誰も隠してなどいません。気付けなかったんです」

「なんだと……?」

「最近、幻想郷に来てから変わったことがあるのではないですか?」

 

 心当たりがあった。最近よく見るあの夢である。

 

「あの夢が……この謎を解く鍵だとでも言うのか……暁雅……俺は……」

「……」

「俺は……何なんだ……?」




以上、今回はここまでです。
今回はね、悩んだ。何回も書き直しましたよ。あ、言い訳じゃないですごめんなさい。
すこしは進みましたね。これからちょっとずつですがすすんでいきますので、次回もお楽しみに。
では、また!
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