運命は無情か厚情か   作:八ツ奈豆

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今回は長めです。
戦闘メインになると言いましたがそんなに多くありませんでした…
だけど今回もできるだけ楽しんでいただけるよう頑張りました!
それではどうぞ!




どこまでも続く白い砂原。

生き物も障害物も一切存在しない無の世界。

その砂原にたった一人、今よりも幼い終夜が立っている。

その終夜は、涙を流して泣いていた。

 

 

目が覚めた。

どうやら夢だった様だ。

 

「妙な夢を見たな…」

 

終夜は変に思いながらベッドから上半身を起こす。

すると不思議なことに、終夜の目から涙が出ていた。

 

「? 別に悲しい訳でもないのにな… まいいか」

 

終夜は気にせず、涙を拭いた。

次に終夜は、肩を回したり、拳を握ったり開いたりして体の調子を確め始める。

あれから数ヶ月経ち、怪我はどうなのか確めたのだが、ほとんど完治している。

それを確認した終夜はベッドから起きた。

ここは紅魔館と言うレミリアたちが住む館の部屋で、終夜の為に用意された部屋らしい。

ちなみに時刻は朝7時くらいである。

起きたらすぐ、ベッドの下に置いてあった二本の刀を腰に差す。

前日、終夜はレミリアに、起きたら自分の部屋に来るように言われていた。

その為すぐに部屋の扉を開け、廊下を歩いてレミリアの部屋に向かった。

 

自分の部屋を出て数分後にレミリアの部屋の前に来た。

躊躇することなく扉を開け、中に入る。ノックせずに。

 

「終夜ね…。ノックぐらいするのが常識じゃないかしら?」

 

そこにはレミリアが椅子に座っていた。咲夜は居ないようだ。

 

「そんなことはいい。要件はなんだ?」

 

「常識と言うものを…。まあいいわ、まずは渡したい物があるの」

 

レミリアは部屋にある棚から執事服の様なものを取り出した。

 

「…着ろと?」

 

「そのだらしない服で働くつもり?」

 

終夜は、髪はすでに切ってあるが、服はぼろぼろのままだった。

 

「まあまだ着なくていいから一応持っておきなさい」

 

「…」

 

終夜は嫌そうな顔をしながらも仕方なく受け取った。

 

「要件はあと一つ。」

 

「なんだ」

 

「今からある場所に言ってもらうわ」

 

「ある場所?誰とだ」

 

「博麗神社と言う場所よ。咲夜を同行させるわ」

 

「そうか」

 

「その執事服を部屋に置いてきてから行くといいわ。貴方が紅魔館を出る前に咲夜を向かわせるから」

 

「わかった」

 

「話はこれで終わりよ。さあ行きなさい」

 

終夜はレミリアの部屋を出た。

 

 

支度をしてから、門を出るところまで来た。

門は閉まっているため、門番に声を掛けようとしたが、寝ているらしい。

だが開けてもらわなければ外に出られない。

どうしたものか。

終夜が困っていると、声が聞こえた。

 

「終夜ね?」

 

咲夜がいきなり現れ、後ろに立っていた。

 

「!? 咲夜か。いきなり現れるのは何故だ?」

 

「それは目的地に行けばわかるわ」

 

次の瞬間別の場所にいた。

そこは屋外。丘の上にある鳥居の前にいた。

後ろには結構な長さの階段がある。もう上った?のだが。

突然別の場所に移動したため、終夜は驚いている。

 

「ここが博麗神社よ」

 

「もう何も怖くない…」

 

終夜は驚きのあまり死亡フラg…受け入れてしまった。

そして二人は歩き、鳥居をくぐった。

すると早速、神社恒例の賽銭箱が見えた。

 

「ん? なんだこの箱は」

 

終夜は賽銭箱なんて知らなかったようだ。

咲夜は何故か何も言わず後ろで見ている。

その時終夜の頭の中で4つの選択肢が浮かんで来た。

 

1、無視する

2、壊す

3、持って行く

4、中身を確認する

 

2番はさすがにマズイと思い、没。

3番は自分でも、なぜ思い付いたのかわからないためこれも没。

1番にしようかと思ったがやはり気になる為、4番にした。

終夜は賽銭箱に近寄り、中身を覗き込んだ。

まあ当然見えないのだが、数秒間見ていた。

次の瞬間、いきなり前から気配を感じた。

 

「お賽銭入れてくれないのね」

 

「!? い、いつの間に俺の前に…。あと、誰だ」

 

終夜は反射的に後ろにジャンプして距離を取っていた。そして尋ねた。

 

「私は博麗霊夢。この神社に住んでるの。お金は大事にするタイプだから盗んだら殺るわよ」

 

霊夢は満面の笑顔で自己紹介と脅s…警告をしてきた。

 

「おお…」

 

終夜は冷や汗をながしていた。

それもそのはず。選択肢を間違えていたら見事にフラグを回収していたのだから。

 

「それで咲夜、この人間は誰なの?」

 

「数ヵ月前に森で倒れていたところを助けたの。名前は孤月終夜。」

 

「へーよろしくね終夜。とりあえず中に入って」

 

「外来人みたいね」

 

霊夢は終夜を見ながら呟いた。

ちなみに終夜は、レミリアたちから幻想郷の話はだいたいだが聞いている

 

「じゃあ原因を探るとしましょう。紫?いる?」

 

「いるわ~」

 

霊夢が誰かを呼んだと思ったら、空間が裂け、そこから誰かが出てきた。

裂けた空間からは無数の目玉がこちらをみている不気味な世界が見えた。スキマと言うらしい。

だが終夜は今さら驚いたりしなかった。

 

「私は八雲紫よ、よろしく」

 

紫は終夜に自己紹介した。だが終夜は何も言わなかった。

 

「紫、いるってことはやっぱりあんたが終夜を連れてきたの?」

 

「そうよ、能力を持ってたから」

 

霊夢の問いに紫が答えた。

 

「能力?なんだそれは」

 

終夜は能力のことは知らなかった。

 

「幻想郷では人里を除いてみんな能力を持っているのよ。例えば私は時間を操る程度の能力」

 

終夜の疑問に咲夜が答えた。

 

「なるほどな」

 

「それで?終夜の能力は何なの?紫」

 

霊夢が紫に尋ねる。

終夜は地味な能力だったら嫌だなと思いながら聞いていた。

 

「それはずばり、使いこなす程度の能力よ」

 

「へー…まあ納得だな」

 

終夜は今までの生活を振り返り、その能力があったことに納得したようだ。

 

「ふーん その能力なら弾幕とかの習得も早そうね」

 

「じゃあ霊夢、終夜に教えてあげて貰えるかしら?」

 

咲夜が霊夢に頼んだ。

 

「え?元の世界に帰るならいらないじゃない。今のはただ言っただけなんだけど」

 

「俺はいろいろあって帰れないし帰っても意味ないからここに残る」

 

「はぁ…わかったわよ…ちょっと来なさい終夜」

 

「悪いな」

 

 

 

数分後

 

 

「凄いわね。もう完璧に習得しちゃった」

 

「簡単だったな」

 

霊夢と終夜はすぐに戻って来た。しかもすでに終夜は弾幕その他を習得済み。

 

「スペルカードは余ったのをあげるから自分で作るといいわ」

 

「わかった。…面倒だな」

 

終夜は霊夢からまだ何も書いてないカードを受け取った。

スペルカードについても習得済みなのだ。

 

「ありがとう霊夢。じゃあ私達は帰るわね」

 

咲夜が霊夢に礼を言って立ち上がる。

 

「もう帰るのね。何がしたかったのやら」

 

すでに終夜と咲夜はその場に居なかった。

霊夢はそれを見て溜め息をつく。

 

「行ったわね…霊夢」

 

終夜と咲夜が居なくなったのを確認すると紫が霊夢に話しかけて来た。

 

「なによそんなに警戒して。あんたらしくない」

 

「それが…終夜についてなんだけど…あの子、二つ目の能力を持ってる可能性があるの」

 

紫は曇った表情をしている。

 

「へー珍しいわね」

 

「重要なのはここから。それで…その二つ目の能力の内容はわからないのだけど…」

 

「なによ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終夜は幼い頃に自分の故郷の町を滅ぼしているの…」

 

「!?」

 

霊夢は目を見開き、愕然としている。

 

「滅ぼしたより消したの方が適切かしらね」

 

「どういうこと?」

 

「あの子の故郷は結構大きな町だったのだけど、

その町が一夜にして何も存在しない砂原になったそうなの。

本人は全く覚えていないみたいだけど、そこに唯一存在していたのが終夜ってわけ」

 

「奇妙ってレベルの話じゃないわね…。確かに幼い頃にそれができるなら、

使いこなす程度の能力の他に別の能力があるとしか考えられない」

 

霊夢は冷や汗を流している。

当然だろう。

 

「そうでしょ?しかも確実に化け物級の能力だし、

もしまた使われたら次消えるのは間違いなくこの幻想郷」

 

霊夢はしばらく下を向いて黙りこみ、再度顔をあげて言った。

 

「この話が広まるとマズイわね…。パニックになりかねない」

 

「レミリアだけはすでに知っていると思うわよ。

まあ終夜は紅魔館に住んでるみたいだからその方がいいのだけれど」

 

「確かにあいつの能力ならすでに知っていると思ったほうが妥当ね。

…紫、終夜の監視をお願い。それでこの話は終わりにしましょう」

 

「わかったわ」

 

そう言って紫はスキマの中に消えて行った。

 

「もしかしたら厄介な異変になるかも知れないわね…」

 

霊夢は一人、険しい顔をして呟いた。

 

 

 

 

 

紅魔館にて

 

「正午になったら地下の階段付近に来なさい。それまでは自由」

 

「わかった」

 

終夜は今、レミリアから、例の最初の仕事を頼まれたのだ。

それを了解した終夜はレミリアの部屋を出て、自分の部屋へと向かった。

自分の部屋に着いたら腰から刀を鞘ごと抜き、床に置いてからベッドに寝転び、

寝たわけでもなく、ただボーッとしていた。

 

 

約束の時間になった。

終夜は刀を拾って腰に差し、部屋を出て地下へ向かった。

 

そして階段付近に着くとレミリアがいた。

 

「来たわね」

 

「それで、何をすればいいんだ?」

 

「この奥にある妹の部屋に入ってもらうこと」

 

「それだけか?」

 

「伝えておくのはこれだけ。でも貴方が死ぬ可能性もあるから気を付けることね」

 

「そうか、わかった」

 

終夜は戸惑うことなく奥へと進んで行った。

そんな終夜の後ろ姿を、レミリアはじっと見つめていた。

 

しばらく歩いたら扉を発見した。

少し不気味な扉だ。

終夜は躊躇なくその扉を開けて中に入った。

そしてさらに奥へと進む。

静寂の中、終夜の足音が数回響いた時だった。

 

「誰?」

 

声が聞こえた。

恐らくレミリアの妹だ。

 

「お前が妹か」

 

「そうだよ、お姉様に言われて来たのね。

私はフランドール・スカーレット。みんなからはフランって呼ばれてるの。貴方は誰?」

 

「孤月終夜」

 

「ふーん…。

ねえ終夜、ここに来たってことは私と遊んでくれるのよねぇ!」

 

いきなり複数の弾幕が終夜に向かって飛んで来た。

終夜は即座に黒い方の刀を抜き、それらを全て弾いた。

 

「あはは! 防いだ防いだ~」

 

「チッ レミリアは俺に何をさせたいんだ」

 

終夜はレミリアの意図がわからずにいた。

 

「じゃあ次はどうかしら?」

 

今度はさっきの倍以上の数の弾幕が終夜に襲いかかって来る。

 

「嘘だろ…」

 

終夜はそれを刀で弾いたり、避けたりして、なんとか被弾せずに済んだ。

だがギリギリだった。

 

「終夜 防いでるだけじゃつまらないわよ!」

 

「こいつは…」

 

非常にマズイ。次これ以上の弾幕をうたれたら確実に当たる。

そう思った終夜は地面を力一杯蹴ってフランに接近し、刀を振り上げた。

だが、意図も簡単にかわされた。

 

「なに!?」

 

「もっと本気で来なくちゃダメじゃない終夜」

 

次の瞬間、終夜はフランの蹴りを横腹にくらっていた。

本気で来いと言われたが、実は今のが本気のスピードである。

終夜は吹き飛び、壁に激突する。

 

「ぐあっ!!」

 

骨が数本折れた。

かなりのダメージだ。

 

「凄いわ。普通の人間ならもう壊れてるのに」

 

フランがゆっくり近づいてきた。

レミリアの時と同じである。

 

「クソッ」

 

だがあの時と違って弾幕は撃てる。

終夜は本気の弾幕をフランに放った。

終夜は撃てる数だけ撃ち、弾速は出せるだけ出した。

 

「へー弾幕も撃てるのね。でも残念」

 

フランはすらすらと簡単にかわし、終夜に一気に近づく。

そして爪を起て、終夜に向かって降り下ろした。

 

「クソッ」

 

終夜はかわそうとしたが、さっきのダメージで動きが鈍くなっていたため、

かわせず、胸のど真ん中に突き刺さった。

 

だが、なぜか痛みを感じなかった。

 

「あれ?痛くないの?

……じゃあ…これはどう?」

 

フランは右手を前に出した。

 

「キュッとしてドカーン」

 

フランが右の拳を握ったかと思った瞬間、左腕が弾けとんだ。

 

「ぐあああああ!!!」

 

今度は痛みを感じた。しかも、当然これまでに無いほどの激痛である。

 

「なんだ、やっぱり痛いのね」

 

勝てない。強すぎる。

終夜はそう思い、フランの目を見ていた。

すると、あることに気が付いた。

 

「終夜?そんなんじゃつまらな――」

「なあフラン」

 

「え?」

 

なぜ終夜はこんなに落ち着いているのか。

なぜ平然とした顔で私の名前を呼べるのか。

フランは全くわからなかった。

 

「お前、欲しいものがあるんだな」

 

「……ふざけないで…そんなもの無い!」

 

「いいや嘘だ。俺にはわかる」

 

「………何のつもり…」

 

「お前の欲しいものは、側にいてくれる人。

一緒に笑ったり、泣いたりしてくれる人。違うか?」

 

「……」

 

「図星みたいだな」

 

「…それがどうしたのよ!」

 

「いや、俺と同じだなと思っただけだ」

 

「え?」

 

「俺は物心ついたときからずっと一人だった。何故かはわからないがずっと一人、山で過ごしてた。

孤独だった。お前はそんな俺と同じ目をしてた。だから同じだなって思ったんだ」

 

「そう…」

 

「と、言っても別に助けて欲しいなんて言わねぇ

お前も吸血鬼なんだろ?だったら俺を殺すといい」

 

「…じゃあなんのために言ったの?」

 

「殺されるならせめて和解してからの方がいい。

なんて馬鹿なことを考えてたからだ。ほら、殺れよ」

 

「無理に決まってるでしょ…そんなの」

 

「は?」

 

「こんなこと言われて殺せるわけが無いじゃない」

 

フランの目からは涙が滲み出ていた。

それを見た終夜は一度下を向いてフフッっと笑い、顔を上げた。

 

「そうか」

 

「でもそのかわり」

 

「? なんだ」

 

「私の初めての友達になって」

 

「フフ…いいだろう。俺もお前が初めての友達だ」

 

「うん…!」

 

その時、フランと終夜から孤独が消えた。

そして終夜はやっと、レミリアの意図がこれだとわかったのだった。

 

「あ…でも待て…」

 

「? 今度は何?」

 

「この怪我はさすがにマズイ…」

 

終夜の左腕はすでに弾けとんで無くなっており、その付け根と胸からは

大量の血が流れ出ていた。

 

「…! 終夜!友達になるって言ったのに…!

今助けてを呼ぶから死なないでよ!?」

 

「ハハ…お前がやったんだろ。

大丈夫だ…俺は…死なないさ…」

 

終夜はそう言って意識を失った。




どうも、八ツ奈豆です。
やっと主人公の能力がわかりましたね。
でもここの主人公はずば抜けて強いわけでは無いので
単純な戦闘ではフランには遠く及びません。
あくまで今の段階では…ですが。

次回は平和な話にしようかと思います。
やっぱり平和が一番!(←タグに戦闘をつけた奴)

それでは次回もよろしくお願いいたします!
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