俺とところてんのリリカル世界冒険譚   作:鷹売りのタカさん

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久しぶり。


俺とところてんの転校初日

あらすじ:魚雷~スイッチ 僕のはどこにあるんだろ~♪ 見つけ~てあげるよ 君だけの魚雷スイッチ~♪

 

 

 

海鳴市郊外の道路は酷く閑散としていた。時間帯は早朝の4時であり、辺りもまだ薄暗く、ロクに車など走っていない。そんな中でも車に乗っている者といえば、配達便のトラック、仕事関係で早朝移動をする者、もしくは旅行者である。

 

ある男がいた。男は仕事の都合で朝早くから海鳴市を出て、2つ隣の県に行かなければならなかった。仕事のためとはいえ、眠い目をこすりながら車を走らせていることに男は少し気が立っていた。めんどくさい、誰しもが同じことを思うだろうと男は愚痴りながら、眠気を紛らわせるために近くのコンビニに寄って缶コーヒーを購入していた。店を出て早速缶のプルタブに指を掛け、空けようとした所で、ある異変に気付いた。

 

 

 

地鳴りがしている。

 

 

地震が起きているわけではない。車の走る音にしては些か荒々しい。トラック野郎が乗り回す馬鹿でかいトラックですらここまでの音は出ないだろう。

 

音は徐々に大きくなっていく。道路を走っているようだ。

 

男は気になり、道路に駆け寄って音のするほうを見てみた。

 

 

大量の荷物を乗せた人力車。

 

 

車を引き、時速80kmは出ているかという速度で走るところてん。

 

 

そしてそのところてんを、鞭で叩き、高笑いしながら車の上で足を組んで座っている少年。

 

 

 

「オラオラッ!! そんなんじゃいつまで経っても海鳴に着かねぇぞ!! ハーッハッハッハッハ!!」

 

 

「風に、風になるんだ・・・・! 僕は風なんだ・・・・!」

 

 

 

「意味分かんねぇッ!!?」

 

 

 

男は驚愕した。無理もない話しである。

 

 

「ん? おい城助、そろそろだぜ!」

 

 

「分かってる! ギリギリまで走れよ!!」

 

 

その人力車はそのまま走り続け、男の近くでドリフトをかけながら止まった。地面はその摩擦で焦げ跡がついている。

 

 

ところてんは人力車のハンドルを下ろし、少年は車から降りた。そして2人は向かい合い、何かの武道の試合のように構えあった。

 

 

緊張した空気が走る。男はなにが始まるのかと、その2人の一挙手一投足に気を配った。

 

約10秒後、2人は同時に動き出した。

 

 

 

「「最初はグー! ジャンケンポンッ!」」

 

 

 

少年の手の形はグー、ところてんの方は――――パー。

 

 

「シャアッ!!」

 

 

「クソッ・・・・ここに来て俺の負けかよ・・・」

 

 

 

 

「じゃあ今度は城助が車引く番だぜ」

 

 

「ちぇー、電柱100個目で交代だからな。ちゃんと数えろよ」

 

 

「分かってるって、数ごまかしたりしないよ」

 

 

「おまえさっき10個ごまかしただろ。忘れたとは言わせないぞ」

 

 

「なんのことー?」

 

 

「きたないぞ、こいつめー」

 

 

「「はっはっはっはっはっは」」

 

 

 

 

「小学生の遠足か!!!」

 

 

男の叫びを無視して、ところてんは人力車に乗り込み、少年はハンドルを持ち車を引き始めた。瞬く間に車はスピードに乗り、さきほどと同じように自動車以上の速度で走り去っていった。

 

 

男は呆然としながらその光景を見ていた。ツッコミどころが多すぎる。ツッコミ暦の浅い男にはとても対処できるレベルではなかった。

世界は広い。世の中にはどんなにツッコミ暦が長くとも、対処しきれないボケがある。

 

 

もう一度お笑い芸人を目指そうと、男は思った。

 

 

 

 

後にこの男は、世界に羽ばたく大スターとなる。そのことを知る物はまだ誰もいない。

 

 

 

 

 

早朝のコンビニには不思議なことが起こる。コンビニの店員は静かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――っていうドラマを考えた。どう思う、天の助」

 

 

 

「って上の茶番、おまえの妄想かよッ!!!」

 

 

 

馬鹿売れ間違いなしと思っていたのだが、どうやら天の助的にはいまいちだったらしい。

 

ちなみに上のストーリーは途中までは間違っているわけではないのだ。俺と天の助が人力車でこの海鳴市にやってきたのは本当の話である。

 

実際はスピード違反という事でパトカー相手にカーチェイスをしながらやってきたのだが・・・。

 

 

ともかく、紆余曲折を経て無事海鳴市に到着した俺たちは、神に用意してもらった住居に住むこととなった。前の家で適当に半年ほど過ごしてやってきたが、まるでほんの3日前に建てられたかのような綺麗さである。ご丁寧なことに生活に必要な家具一式は既に揃っており、特に買い足したりする必要もない。食料も最大で1年はもちそうなくらいある。使命なんて忘れてニートライフを送りたいなんて欲望も湧いてきてしまう。

 

しかしそう思うことを見越していたかのように、神はある置き土産をしていた。

 

 

それは――――ある1枚の手紙。

 

 

その内容は至極単純なものだった。

 

 

 

"『私立聖祥大附属小学校』への転校の手続きはしておいた。明日にでも早速登校してもらう。"

 

 

 

実に面倒な話である。ちなみにその手紙の横には謎の箱が置いてあり、空けてみると中には白を基準としたデザインの服が入っていた。どうやら件の学校の制服らしい。

 

白が基準の制服はあまり好きではないのだが、袖を通してみるとなかなかどうして悪くない。

 

とりあえずやるべきことは分かったので、適当に明日の準備を済ませて寝ようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行ってくる。暇だろうけど、適当にのんびりしててくれ」

 

 

「気にすんなよ。久々の学校だろ。楽しんでこいよ」

 

 

「あぁ、じゃあな」

 

 

そう言って城助は自宅を後にした。天の助はそれを確認すると時計を一瞥し、ニヤリと笑った。

 

 

 

「――――さて、と・・・行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、なんだかんだで到着したな」

 

 

私立聖祥大附属小学校に無事到着した城助っは、その辺を歩いていた職員に声をかけ、職員室までの道を尋ねた。懇切丁寧に道のりを教えてもらった城助は、初めての学校にも関わらず、迷うことなく職員室にたどり着くことが出来た。

 

 

 

(さて、無事職員室に着いたまでは良かった・・・・しかし聞いてないぞ。面接なんてものがあるなんて・・・)

 

 

城助は3人の職員の視線を浴びながら、面接を受けていた。面接とは言っても高校や大学の面接みたいに仰々しいものではなく、大半はその学校の説明で、その後に簡単な質問を2、3問するというものだった。

 

堅苦しそうな学校だな、などと城助は思いながら、俯いて別のことを考えていた。

 

 

しばらくすると、ようやく学校の説明が終わった。

 

 

「ではさっそく質問させていただくよ。小学生のうちにどんなことをやってみたいかな?」

 

 

3人の内真ん中に座る、明らかにカツラを被っていると分かるようなおじさんが尋ねた。胸に着いているバッジには『教頭』と書いてある。どうやらこの学校の教頭先生らしい。

 

 

(う~ん、特に決めていることはない・・・物語の修正です、なんて言うわけにもいかんし・・・野球とでも答えておくか)

 

 

 

答えを決めた城助が顔を上げた瞬間、驚きのあまり目を見開いて固まってしまった。

 

 

 

「ふんふふ~ん♪ ふんふ~ん♪」

 

 

 

(なにやってんだこのところてんッ!!?)

 

 

 

その光景とは――――質問している教頭の頭の上にコンロを置いて、レシピを片手に器用にフライパンを動かして野菜を炒めている天の助がいるという奇奇怪怪な光景だ。陽気な鼻歌まで歌っていて実に憎たらしい。

 

 

そんな城助の顔を見て不審に思った教頭は城助に尋ねた。

 

 

 

「天野君、どうかしたかね?」

 

 

 

「あんたがどうしたッ!!?」

 

 

 

自身の頭の上でところてんクッキングが始まっていることに気がついていない教頭は、ただ首を傾げている。

 

 

 

 

(何だ、このおっさん!? 気付いてないのか!?)

 

 

 

「あ、天の助君。少し火力落としてもらえるかな? 髪にも火がつきそうで不安になってきたよ。あと塩と胡椒は多めで頼むよ」

 

 

 

「あいよ、教頭」

 

 

 

「気付いてやがったッ!!?」

 

 

 

気付いた上で無礼を見逃すとはこの教頭只者ではない、城助は純粋にそう感じた。

 

 

 

「――――で、天野君。君はなにがやりたいのかな?」

 

 

 

「あ、スポーツです」

 

 

 

「うんうん、いいねぇ。早いうちにスポーツをやっておくのはいいことだよ」

 

 

教頭はにこやかに笑いながら、満足気に頷いている。「それじゃあ次は」と言って、手元の書類に目を落とす。質問の内容でも書いてあるのだろう。さっと目を通して質問すべきことを決めたのか、顔を上げて城助を見やる。

 

 

「天野君の――――」

 

 

 

教頭の一声と同時に、天の助はどこからともなく塩と胡椒の入った小瓶を取り出した。そしてそれをフライパンに振りまいた。

 

 

「特技は――ブァックショイッ!――あるの――ハブショッ!――かな――ハクションッ!――?」

 

 

(教頭先生たら盛大に降りかかってらっしゃる!!)

 

 

天の助の振りまいた塩と胡椒は狙いがフライパンから大きく外れ、教頭の顔面に盛大に降りかかっていた。たまらず教頭はくしゃみが止まらずにいる。それでもにこやかに面接を続けるのは教頭としてのプライドが成せる業なのだろうか。

 

 

塩と胡椒にまみれ、くしゃみで顔を歪ませている。しかし言葉には出さずとも、教頭の獣のような目は雄弁に語っていた。

 

――――私は君たちが父親の玉袋の中にいたころから、こうして苦労を重ねてきたんだ。これまで積んできたキャリアが違うのだよ。そう、キャリアがねっ!――――と。

 

 

 

城助は格の違いを思い知った。前世の分を足しても、目の前の教頭の人生には適わない。

 

城助は何も言わず、教頭に敬意を表した。言葉は不要、そう感じたのだ。

 

そして同時に感じていた。

 

 

――――これが私立聖祥大附属小学校・・・こいつら、只者じゃねぇ。これからの学校生活が楽しみになってきたぜ・・・――――と。

 

 

 

これからの事を考えるだけで、城助は高まる期待に胸を躍らせていた。

 

 

 

かくして、私立聖祥大附属小学校の面接は数多の犠牲を経て終了したのだった。

 

 

 

 

余談ではあるが、天の助は完成した野菜炒めを教頭に振舞った後、「塩味が足んねぇだろうがッ!!」と怒鳴られながら教頭に蹴り飛ばされ、職員室の窓を突き破ってどこかへ飛んでいった。やはり教頭は只者ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年生のとあるクラスでは、一つの話題が生徒達の関心を全て集めていた。

 

前日、このクラスでは担当の先生に「後日転校生が来る」ということを伝えられていた。生徒たちの話題は新たに加わるクラスメートの噂でもちきりだった。

 

 

「ねー、どんな子だと思う?」

 

 

「男子って噂だぜー?」

 

 

「えー! かっこいいのかなー?」

 

 

「どうかなー、めっちゃブサイクかもだよ?」

 

 

「きっと運動が得意なんだぜー」

 

 

「今風なチャライ奴だぜ、きっと」

 

 

「ちょっと古風な大人びた子だっていう噂もあるよ?」

 

 

(どうやら生徒達の間で根も葉もない噂が立っているようね・・・)

 

 

クラスの担当を勤める女性教員は、生徒達の不安定すぎる情報ネットワークに些か不安を感じていた。

 

噂の転校生である城助は既に教室の外で先生の入室の合図を待っているところである。転校初日から生徒達にありもしない像を噂されて気を悪くしてはいけない、と気を遣ったことを考えた先生は、手を叩いて生徒達の雑談をやめさせ視線を自身に集中させる。

 

 

 

「こらこら皆、あまり適当な噂をたてないの! それじゃあ入ってもらいましょうか。――――天野君、入ってらっしゃい」

 

 

 

先生の判断は大変正当なものと言える。しかし人の口に戸は立てられぬという言葉があるように、一声で生徒達の声が止むわけもなく、今でもヒソヒソとありもしない像を転校生に抱き、話し合っていた。

 

 

「今風かな?」

「古風かな?」

「いや、明治風だよ」

「いーや縄文時代風に決まってる」

「間を取って戦国時代風だ!」

 

 

そう言ってる間に、スライド式の教室の扉は開け放たれた。

 

その瞬間、生徒達は口を閉ざし、話すことを止めた。教室の外からはまるで巨大なものが歩いているかのように、ズン、ズンと地鳴りが響いており、謎のいななきが響いてくる。

 

転校生は馬か何かだろうか。そう思うのも無理はなかった。

 

 

ズン、ズン、ズン

 

 

 

「我をここに呼んだのはうぬ等か!!」

 

 

「「「「「世紀末風な人が来たぁーーー!!!!」」」」」

 

 

 

扉から現れたのは――――黒く巨大な馬に跨り、兜と鎧を身につけ、マントを羽織った少年だった。

 

 

城助が跨っている馬は、教室を一瞥すると大きく嘶いた。

 

 

「ヒヒィーン(おまえ等も蝋人形にしてやろうか)!!!」

 

 

(((((馬は聖○魔Ⅱ風だーーー!!!)))))

 

 

城助は馬から降りると、身に着けていた兜や鎧を脱ぎ捨て、馬に乗せた。馬はそのまま教室を後して行った。

 

 

 

「天野城助ですっ! よろしくおねがいします!」

 

 

 

「この空気の中で普通に自己紹介しよった!!?」

 

 

驚く生徒達を置き去りにして自己紹介をする城助に冷や汗をかきながら、先生はとりあえず場を取り繕うために城助に歩み寄り言った。

 

 

「あ、天野君・・・? さっきの、お馬さん(?)はなんだったのかな・・・?」

 

 

 

「好きな食べ物はハンバーグです! 嫌いな食べ物は、ところてんです!!」

 

 

(無視しよった!?)

 

 

「――――ところてんです!!!」

 

 

 

(2回言った!? なんか恨みでもあるの!?)

 

 

「よろしくおねがいします!!」

 

 

『よろしくおねがいします!』

 

 

(馴染んだ!? 子供ってスゲェ!!)

 

 

先生は驚きの連続で戸惑っている間にも、生徒達は城助との挨拶を済ませていた。実に飲み込みの早い良い子供達である。

 

先生は落ち着くために咳払いをすると、城助の座るための席を探した。ちょうど一つだけ空いている席があり、その場所に目を付けた。

 

 

「それじゃあ天野君は、後ろの『高町』さんの席の隣に座って」

 

 

「はーい」

 

 

子供らしい返事――中身は大人だが――をして指定された席に向う。窓際の席で、黒板もそこそこ見やすい。日光も直撃しないような位置にあり、熱いとも感じない。中々悪くない位置だ、と城助は思った。

 

隣には、先ほど先生が言っていた生徒である『高町』という女子生徒がいた。栗色の髪をツインテールにした中々可愛らしい女の子である。

 

社交辞令程度に城助は挨拶しようと思い、高町に話しかけた。

 

 

「君が高町さん?」

 

 

「高町なのは。なのはでいいよ!」

 

 

「うん。じゃあなのは。よろしく!」

 

 

「うん! 天野城助だよね」

 

 

「城助でいいよ!」

 

 

「じゃあ、城助君!」

 

 

 

「気安く呼ぶんじゃあない」

 

 

 

「!!?」

 

 

 

こうして、城助の学校生活は幕を開けた。




本編はまだですよ。
早いとこ真拳は出したいな。
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