俺とところてんのリリカル世界冒険譚   作:鷹売りのタカさん

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同時投稿です。


先に注意しておきます。

今回の話は少し時系列をいじって、既になのはとユーノは自己紹介を終えた状態という事にしてあります。十分お気をつけください。


では、楽しんでいただけたら幸いです。




俺とところてんと魔法少女

あらすじ兼説明:家に帰ってフェレットのことを家族に相談したところ、なんとか了承を得ることができたなのはは、就寝の直前でまたも不思議な声を耳にする。内容は依然と同じ、助けを乞うもの。しかし以前よりも切羽詰まっているようで非常に慌ただしい。その声を発している存在が例のフェレットだと推測したなのははその身を案じ、日が落ちて夜の闇が覆う街を駆け出していく。件の医院の前で違和感を感じ、違う世界に迷い込んでしまったかのような不思議な錯覚を覚える。そして医院に目を向けると、フェレットが真っ黒な怪物に襲われており、大変危険な状況にあることは一目瞭然。なんとかフェレットと共に怪物から身を隠すことができたなのははフェレット改め、ユーノから魔法の力のことを聞かされる。どうやらなのはにはその力を扱う才能があるらしく、ユーノは力を貸してほしいと懇願する。了承したなのははに教わりながら長たらしい呪文を唱えて変身。見事魔法少女としての力を覚醒させたなのはは、目の前にまで迫った怪物との激しい攻防の末、これの無力化に成功するのだった。

 

 

 

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシードシリアルⅩⅩⅠ――――封印!!」

 

 

なのはの叫びに呼応して、魔法の杖ことデバイスのレイジングハートが、ジュエルシードの思念体めがけて桜色の光を放つ。光は思念体を貫き、まばゆい光が周囲を覆う。やがて光が収まると、思念体がいた場所には小さな宝石、ジュエルシードが置いてあった。それに歩み寄り、デバイスの中に収めると、なのはは一息ついた。

 

 

その時だ。

 

 

「なんだ、もう終わってんじゃねーか」

 

 

謎の声がなのはとユーノの耳に届いた。慌ててその声の方角に目を向けると、2人の男と一匹のペンギンが空中からこちらを見下ろしていた。2人の男の内の1人は甲冑のようなものを身にまとっており、もう一人の中央に立つ男は色違いの鎧を装着し、マントを羽織っている。そのマントにはでかでかと『G』という刺繍がされていた。そして左にはペンギンが腕を組んでいた。

 

 

「空…飛んでる……」

 

 

なのはは空を飛んでいることに驚いて、目を見開いていた。

 

対してユーノは、全く別の驚きが胸中を占めていた。

 

 

「バカな……『毛狩り隊』がなんでここに……!!」

 

 

「ほう、そこの動物は俺たちのことを知っているか。見たところそっちのガキはこの世界の人間みたいだが…おまえは別の世界の出身だな」

 

 

「ね、ねぇユーノ君…『毛狩り隊』って、なに……?」

 

 

ユーノは恐怖で全身を震わせながら、不安そうに尋ねるなのはに説明した。

 

 

「こことは違う、別の世界には……『マルハーゲ帝国』と呼ばれる国が存在していて、その世界を総べているんだ。そしてそのマルハーゲ帝国軍の実動部隊、それが『毛狩り隊』だよ………そして奴らは、度々別の世界に遠征して武力を行使する毛狩り隊の中でも戦闘慣れした部隊、『Gブロック』の連中だ……! しかもあの真ん中の男はGブロックの隊長だ」

 

 

ユーノがなのはに説明している間に3人は地上に降り立っていた。ルーラーはユーノに対し感心のしたように「ほう」と言った。

 

 

「中々詳しいな、小僧。お前の言うとおり俺は毛狩り隊Gブロックの隊長、ルーラー様だ」

 

 

「俺は副隊長のクラップだ」

 

 

「同じく、ペングウィン」

 

 

 

なのはは強い恐怖を感じていた。生まれて初めてその身に受ける『殺気』というものに。他人の悪意すらまともに感じたことのないなのはにとって、殺気なんてものは理解できない。3人の放つ殺気は、強烈なプレッシャーとなってなのはを襲っていた。

 

そんななのはの様子を見て、ルーラーはニヤリと笑う。

 

 

「さて、ここでおまえらに言っておく。今すぐそのジュエルシードを渡せ。そうすればおまえたちは見逃してやろう」

 

 

「バカな……ジュエルシードがどれほど危険なものか分かってないのか! これは今すぐ封印して厳重に保管しておかなければならないものだぞ!!」

 

 

「そんなことは俺たちの知ったことではない。それにそこのガキを見てみろ。見たところ戦いすら今回が初めてだろう。しかも魔導師になりたてで既に疲れ切っている。そんな奴が俺たちを前にして無事でいられるはずがない。おまえが変に長引かせれば、そのガキはプレッシャーでおかしくなっちまうぞ、いいのか?」

 

 

「くっ…! マルハーゲ帝国の動きは逐一管理局に監視されている。おまえたちは隠れて動いているようだけど、君たちがこれを持ち帰ろうとすれば管理局にも気付かれる。そうなれば逃げられないぞ……!」

 

 

「何をバカなッ。我々について知っているならば当然『真拳』のことも理解しているだろう! 管理局の魔道師程度じゃ束になっても毛狩り隊には適わない。それは既に証明されていることだ! そら、こうしている間にもそこのガキは苦しそうにしているぞ」

 

 

ユーノとて、なのはの状態に気付いていないわけではなかった。ユーノ自身、強烈なプレッシャーを感じている。ルーラーの言うとおり、なのははこれまで戦いを経験したこととがない。ゆえにその身に受けるプレッシャーはユーノの比ではない。

 

 

「なのは、ジュエルシードを出して」

 

 

「ッ!! でも、ユーノ君……」

 

 

ユーノは自分の都合で巻き込んでしまったなのはにこれ以上負担はかけたくないと思い、なのはにレイジングハートからジュエルシードを出すよう促した。

 

 

 

「いいから出してほしい。これ以上はなのはがもたない」

 

 

 

「賢明な判断だぞ。それでいいんだ――――むっ!?」

 

 

突如、ルーラーに向かって何かが高速で飛来した。いち早くそれに気がついたルーラーは飛来する物体を拳を振るって弾く。しかしそれは弾かれることなく、ルーラーの腕にべっとりとこびりついた。

 

それはパイだった。

 

ルーラーは腕にこびりついたパイを拭い、それは飛んできた方向に目を向け、イラついた口調で言った。

 

 

 

「誰だッ!!」

 

 

 

「あ、あれは……城助くんと、天の助くん…?」

 

 

 

目を向けた先にいたのは、ユーノとなのは――――の恰好をした城助と天の助だった。

 

ユーノそっくりの着ぐるみを着た城助がグラサンをかけ、天の助の肩に腕をかけて、風船ガムを膨らましている。天の助はなのはと同じ服装で、城助と同じグラサンに加えてマスクもつけており、その手にはレイジングハートの代わりとして釘バットが握られている。そして二人とももう片方の手にパイを持っていた。

 

2人は同時にパイを持った腕を振るう。するとパイはすさまじい速度で飛んでいき、クラップとペングウィンの顔面に直撃した。

 

3人は激怒した表情で城助と天の助を睨みつける。そしてルーラーが再び2人に言った。

 

 

 

「てめぇら……何者だ?」

 

 

城助と天の助も額に青筋を浮かべて、激怒した表情で指をバキバキと鳴らしながら、目の前の3人に向かって言った。

 

 

 

 

「「魔法少女だよバカヤロー…!!」」

 

 

 

 

城助達が言った直後、ペングウィンが城助達に向かって走り出した。

 

 

 

「無礼が過ぎるな、キサマ…!」

 

 

城助と天の助は向かってくるペングウィンに対して身構える。しかしその直後、ペングウィンは加速し、その姿が見えなくなった。

 

 

 

「くッ! 速いッ!!」

 

 

「『ペンギン真拳奥義』――――『皇帝の刻印』…!!」

 

 

その声が聞こえた時には、ペングウィンは既に城助達の後ろにいた。

 

 

 

「かろうじて致命傷は避けたか……この技を喰らった者は、その胸に『ペンギン』の刻印が刻まれて死ぬ。殺すには至らなかったが、刻印は確かに刻んだぞ…!」

 

 

ペングウィンが言った直後、城助と天の助の胸に『ペンギン』という文字が刻まれた。2人は「ゴフッ!」と呻いて吐血した。

 

その様子を見て、ペングウィンは鼻で笑った。

 

 

「ふん、他愛ないな」

 

 

「――――それはどうかな…? 自分の胸を見てみな」

 

 

「なに……なッ! こ、これはッ!!」

 

 

ペングウィンが自分の胸に目を向けると、そこには『タイムセール開催中! ペングウィン 980円!』と刻まれていた。

 

 

「こんな…い、いつの間にッ!!」

 

 

「『鼻毛真拳奥義 特売の刻印』」

 

 

「ッ!!! 鼻毛、真拳…だと!!?」

 

 

その時だった。

 

遠くから強い地鳴りが響いてきた。まるでヌーの大群が走っているかのような、強烈な地鳴りが。

 

 

 

「な、なんだ、この音は……!? ち、近づいてくるぞッ!!?」

 

 

 

「さぁ、タイムセールの時間だぜ」

 

 

 

城助の言葉が聞こえたと同時、その地鳴りの原因が姿を現した。

 

 

おばちゃんだ。

 

 

ヌーの大群を連想させる程の地鳴りを響かせて全力で突撃してくるものは、ありとあらゆる情報網を駆使し、様々なタイムセールの情報を嗅ぎつける一家の諜報員、家庭のCIA、地上最強の生物、主婦の軍勢だった。パーマのカツラを被り、エプロンを身にまとった主婦スタイルの天の助が彼女たちを先導している。

 

主婦達はペングウィンを発見すると、「いたわ」「特売商品よ」と叫び、突撃してきた。

 

 

『AAAAALALALALALALALALALALALALALALAI!!!!!』

 

 

 

「グハァッ!!!! (このオレに痛みを感じさせることなく印を刻み、加えてこの威力の攻撃…コイツ、できるッ!!)」

 

 

主婦の軍勢による強い体当たりを受けながら、ペングウィンは城助に心の中で賛辞を送った。

 

 

「『三角定規真拳奥義 線対称移動』」

 

 

城助とペングウィンの戦いを見ていたルーラーが呟いた瞬間、主婦の体当たりを受けていたペングウィンの姿が消え、いつの間にかルーラーの隣に移動していた。

 

 

「無事か、ペングウィン」

 

 

「ハァ、ハァ、グッ……油断していました」

 

 

「ペングウィンにここまでダメージを負わせるとは…それに――――」

 

 

ルーラーは城助と天の助に目を向ける。先ほどのおばちゃんたちは既に消えており、視線の先にいたのは鼻毛を自在に操る城助と、おばちゃんの波に呑まれて身動きが取れずにそのまま地面に倒れこみ余す所なく踏まれまくってボロボロの天の助だ。

 

少し考えるような仕草をしたルーラーは、城助に対し興味と感心を含んだ視線を向けた。

 

 

「キサマ、『真拳使い』とはな……そこのところてんも同じか」

 

 

「今の瞬間移動は、おまえか?」

 

 

「ご名答、俺は毛狩り隊Gブロックの隊長、ルーラーだ」

 

 

「毛狩り隊……因果律のズレで生じた問題とはこれのことか」

 

 

城助たちが話しているのを少し離れた所で見ていたなのはは、少し気になったことがあり、ユーノに尋ねた。

 

 

「ねぇユーノ君、『真拳』ってなに……?」

 

 

「真拳っていうのは、使用者の個性を象徴する唯一の能力のことだよ。稀に複数能力を持ってる人もいるらしいけど、話に聞くだけで実際に存在しているかは知らない」

 

 

「さっき、あの人は魔道師じゃ真拳に適わないって言ってたけど…そんなに強い力なの?」

 

 

「桁違いだよ。あの力は人知を超えている。無から有を生み出し、物理法則をいともたやすく捻じ曲げる。能力によっては世界すら破壊できる……科学の延長線みたいな僕達の魔法じゃ到底太刀打ちできない。何人もの強い魔道師が毛狩り隊の隊長に戦いを挑んだこともあるけど、苦戦を強いられた末に勝つことができなかったという実例もあるんだ……」

 

 

「そんなに……でも、なんでそんな力を、城助君が……?」

 

 

「分からない…でも見たところ、非常に強力な真拳みたいだ。あのGブロックの副隊長にあそこまでの傷を負わせた人はいない。……もしかしたら、勝てるかもしれない…!」

 

 

ユーノは期待の篭った目で城助と天の助を見る。しかし当の2人はメガネをかけてすごい速さでルービックキューブを解くことに勤しんでいた。

 

「遊んでるッ!!?」

 

 

「す、すごい余裕だ! それほどの勝算があるのか!!」

 

 

「勘違いしないでユーノ君!! あの2人は純粋に遊んでるだけだよッ!!」

 

 

なのはが突っ込んでいる間にルービックキューブを解き終えた2人はストップウォッチを見て「新記録だ」「最速だ」などと喜び合っている。

 

それを見ていたルーラーの額には、再び青筋が浮かんでいた。

 

 

「クソガキが…なめやがって……。おいキサマ、ここで一つ提案がある」

 

 

「ん、なんだ?」

 

 

「人数もお互いに3人はいる。ここでオレは『3狩リア』での戦いを提案しよう」

 

 

「『3狩リア』だって…! 聞いたことがあるぞ。互いのチームから代表者を3人ずつ出して戦うバトルロワイヤル。チームワークを駆使して先に相手の3人を倒したチームが勝利となるマルハーゲ帝国の伝統的決闘法…!」

 

 

「やっぱり知ってたッ! ユーノ君詳しいね」

 

 

「だが、この法式はマルハーゲ帝国の伝統的な決闘法であると同時に、毛狩り隊最強の連携布陣でもあるはずだ。明らかにそっちが有利な提案じゃないか!!」

 

 

「嫌ならばそれでもいいぞ? しかし、その時は我が隊の総員を結集し、キサマらを始末し、ジュエルシードを持ち帰らせてもらうがなぁ。この提案はキサマらにとっても有利な条件だぞ」

 

 

ルーラーの言うことに反論できる要素をユーノは持っていなかった。確かに現状で他のGブロックの隊員を呼ばれたら、一切の勝ち目がなくなる。城助の力量がどれほどのものかは分からないが、隊長格を前にしてなのはを無傷で済ませることができるとは思えない。かといって『3狩リア』には3人の人員が必ず必要だ。城助と天の助は問題ないが、まだ力が完全に回復していないユーノと、魔法も戦闘も初めて経験して既に精神的に限界のなのはの2人では、到底最後のメンバーとしての役割は果たせない。すぐに殺されて終わりだろう。

 

 

(なのはを戦わせるわけにはいかない…ここは僕が――――)

 

 

「『3狩リア』による決闘…受け――――」

 

 

「待て、少年」

 

 

そして、ユーノは自身を含めた3人で『3狩リア』による決闘を受けることを言おうとした瞬間、肩を城助に掴まれた。

 

 

「おまえが行く必要はない」

 

 

「でも、なのはを戦わせるわけにはいかない! 真拳は使えないけど、囮くらいはやってみせるさ!」

 

 

「違う、別に面子は呼んである」

 

 

そう言って城助は手に持った携帯の画面をヒラヒラと見せる。そこには「送信中」という文字が書かれていた。

 

 

「もうそろそろ来るはずだ」

 

 

城助が言った直後、2人のすぐそばの空間がぐにゃりと歪んだ。

 

 

「結界に侵入!? 一体誰が!!?」

 

 

「来てくれたか。お待ちしておりましたよ――――教頭先生」

 

 

歪んだ空間から姿を現した人物とは、以前城助が入学する際に面接官を勤めた私立聖祥大附属小学校の教頭先生だった。

 

 

「やれやれ、天野君、高町君も。小学生がこんな時間に出歩いてはいけませんよ。物騒な人に遭遇したら危ないでしょう」

 

 

そう言って教頭はルーラー達を一瞥する。

 

その一部始終を見ていたルーラーは側に控えるクラップに声をかける。

 

 

「おいクラップ、ちょっと確かめてみろ」

 

 

「了解です。ルーラー様」

 

 

 

その瞬間、クラップの姿は消え、いつの間にか教頭の背後まで移動していた。

 

 

「『覇王拳』!!!」

 

 

そして凄まじい速さで振るわれた拳が、教頭の頭を捉えた――――かと思われたが、クラップの手にその感触がない。クラップの拳は、教頭の頭に当たる直前に、何かで阻まれていた。

 

 

「こ、これは…『カツラ』、か…?」

 

 

「やれやれ、最近の若者はキレやすくていかんね。手を出してくる相手にこっちも黙ってはいられん――――『カツラ真拳奥義 教頭パンチ』!!!」

 

 

「グハァッ!!」

 

 

教頭のから目にも留まらない速さで放たれた拳は、クラップの腹に直撃した。クラップは大量の血を吐いて、ルーラーのいるところまで殴り飛ばされた。

 

 

「や、奴も真拳使い…凄まじい威力……!」

 

 

「実力は申し分ないな。さぁクソガキ、『3狩リア』を受けるか! 否か!!」

 

 

「望むところだ!! てめぇら全員血祭りにしてくれる!!」

 

 

 

城助の怒号と同時に、全員が一斉に駆け出す。

 

 

毛狩り隊と城助たちの戦い火蓋は今切られた。




私「弟、いま思いついた単語を言いなさい」
弟「なんだよいきなり」
私「いいから答えなさい」
弟「うーん、三角定規」

こうして三角定規真拳は生まれた。

他の2つもその場の思いつきでやってます。
何か使って欲しいオリジナル真拳のアイデアがあれば、感想、メッセージ等で言ってください。

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