──おや、いらっしゃい。
わざわざこの私に用とは……一体何をご所望かな?
……850年前の大戦争?
あぁ、君はまだ聞いたことがなかったんだね。
いいよ、教えてあげるよ。
そう……あれは850年前、私達の先祖は人間とこの世界『レイピレス』の絶対支配を巡って戦争をしたんだ。
これが今に伝わる過去最大の大戦争『クロメリス戦争』だ。
戦況はもちろん私達魔の者が優勢だったよ。
だって私達には人間にはない『魔』の力があるからね。
当時はただ大砲や剣とかの武器を使うだけでなんの力も持ってない人間は私達に歯が立たなかった。
それでも人間達は意地とプライドでなんと6年も粘った。
理由としては何らかの方法で手に入れた『魔石』を、武器や鎧に組み込んで自分達の戦力を強化していたから。
あとは人間側に寝返った輩も協力したからだね。
それでも私達魔の者には敵わず、人間達は敗北した。
そして戦争を起こした元凶である人間達を全て捕まえたんだ。
もちろん女、子供、お年寄りも皆ね。
なぜなら魔の者の独裁的支配を唱う魔軍の中心である、強硬派が『レイピレスを完全に支配するには、人間なぞ不要!』という理由で人間全てを処刑するためだ。
しかし、その野望は1体の魔狼によって打ち砕かれた。
レイピレス最強にして最凶の魔狼。
その名は『フェンリル』。
もともとフェンリルは強硬派としてクロメリス戦争に参加していた。
そして最初の頃は人間を全て滅ぼす事しか考えていなかった。
けど、“何らかの理由”で彼はたった1人、強硬派から人間との共存共栄を唱う穏健派に寝返ってね。
たった1人で“1本の剣”で強硬派軍を相手にして、処刑寸前だった人間全てを救い出したんだ。
そしてフェンリルは人間と魔の者との共存共栄を実現させ、レイピレスの英雄としてその命が尽き果てるまでレイピレスを護り続けた。
これがクロメリス戦争。
同時に英雄フェンリルの誕生秘話でもある。
彼のその後?
今話した通り、その命が尽き果てるまでレイピレスの英雄として、この世に君臨し続けたよ。
フェンリルの最後は今からちょうど320年前、レイピレスを見渡せる自身が建造した城の上で立ちながら息を引き取ったそうだ。
その姿はまさに威風堂々。
死んでもその存在感は今も深く私達に受け継がれている。
そして……今年はクロメリス戦争が終結して850年経つ。
ずっと続いていた平和にもとうとう、終わりが来たようだ。
フェンリル亡き今、レイピレスに生きる者達は……この終焉を回避できるのかな……?
さて……新たな扉が今開くね。
さぁ、君のその目で確かめてくると良い。
この新たな物語をね……。