短編集by???second   作:???second

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ウルトラマンオーブ無双~乙女大乱~(5)

マガバッサーは鈴々の住む山の隣の山の中に隠れ、その身を休めていた。

本来なら、この旧時代の文明の段階で、マガバッサーほどの怪獣を滅ぼせる者も技術も存在しない。故に容易く村ひとつは愚か、国だって滅ぼしつくすことができた。

しかし、昨日関羽が絶体絶命の危機に瀕しておきながら命を拾い、村も無事で済んだ。

村に止めを刺す前に、邪魔をされたのだ。その際に負ったダメージを回復するために、どこかで身を隠していたのである。

そして今、マガバッサーは目覚めた。今度こそ…その本能に従って『破壊』をもたらすために。

 

「奴め、また村を襲うつもりか!」

村の方へマガバッサーが飛んで向かっていくのを見て、関羽は怒りを見せる。

「みんな…!!」

同じようにそれを見ていた鈴々が即座に駆けようとしたところで、関羽は彼女の肩をつかんで引き留める。

「待て、鈴々!村へ行くのは危険だぞ!」

「だから鈴々が行かないといけないのだ!あそこには山賊団や村の皆が残っているのだ!」

確かに今の自分には家族がいない。だからこそ、村の人たちや、一緒に遊んでくれている子供たちは大切な存在だった。わずかなつながりである彼らまで失ったら自分には何も残らない。鈴々は関羽の腕を振りほどいて走り出す。

「あ、こら!!待たぬか!!」

関羽は再度引き留めの声を上げるが、鈴々の勢いあるダッシュには追いつけ切れず、結局鈴々は村に行ってしまった。

「まったく、無謀なことを考える…!!」

「そういう君も、村へ行ってみんなを助ける気満々って感じだろ」

後ろから一刀に指摘され、関羽はう、と息を詰まらせる。明らかに図星である。最も彼女の性格を考えればすぐに考えつくことだが。

「その考え自体は俺も納得こそしているけど、関羽。正直君はここにいた方がいい。俺があの子を連れ戻してくる」

「ほ、北郷殿こそ無謀ではないですか!あのような怪鳥が襲っているのですよ!ご覧ください!」

村の方を指さす関羽。マガバッサーが現れてたった2分ほどしか経っていないにも関わらず、昨日と同じくマガバッサーが村上空を占領し、その翼を羽ばたかせるたびに発生する暴風によって村を破壊し始めている。

「あのような嵐の中に飛び込むのは危険です!ですが鈴々や村人たちを見捨てるわけにもいかないのも事実…なれば、私一人で助けに行けば、あなたも巻き込まれずに済みます!」

「関羽…」

全滅という最悪の事態を想定すれば、彼女の案も間違いではない。だが、どちらにせよ同じことだ。

「では北郷殿、私は村人と鈴々たちの救助に向かいますので…くれぐれも!!村に向かおうとは思わないで下さい!あなたの護衛任務、私自ら引き受けたことお忘れなき用に!」

そう言って、関羽もまた村の方へと駈け出して行った。

すっかり忘れそうになっていたが、まだ護衛任務続けてる気だったのか…と一刀は内心突っ込みたくなる気持ちになる。まぁ、自分も彼女の立場だったら念押ししていただろう。たとえミイラ取りがミイラになるとしても。

(…彼女らしいけどな)

…まぁ、最も一刀にとってある意味ちょうどよかった。

関羽の姿が見えなくなったところで、彼は服の下に隠していた、輪のついた奇妙なアイテムを取り出していた。

 

 

鈴々がたどり着いたとき、村はすでに台風以上の暴風に見舞われていた。関羽と一刀が世話になっている女将もかなりまずい状況にあった。暴風の影響で何人もの人たちが煽られていた。建物や木々にしがみつこうとする者もいたが、先日のマガバッサーの起こした災害ですでにしがみつけそうなものさえ減少していた。しがみつくのにちょうどよさそうなものもなく、多くの村人たちが次々に風にあおられていく。中には、鈴々山賊団の子供たちも混ざっていた。

「お…オヤビいいいいン!!」

「いやあああ!!助けてええええええ!!」

「み、みんな!今助けに…!」

鈴々がたどりついたとき、すでに山賊団の皆が風によって宙に舞い上げられていた。鈴々は無謀にも、彼らを助けようと飛び出そうとするが、直後に後ろから襟をつかまれた。

「だから行くなと言っただろう!」

関羽だった。また邪魔をされたことに鈴々は顔を歪める。

「は、離すのだ!!このままじゃみんなが…!!」

「お前まで行ってはこの突風の犠牲になるぞ!ただでさえこうしてしがみつくのもやっとなのに…!!」

今の関羽は、偃月刀の刃を地面に突き刺す形でマガバッサーの風から飛ばされないように耐え忍ぼうとしていた。だが長くこの状態が持てるとはとても思えない。現に鈴々の小さく軽い体は風に乗りやすく、こうして捕まえておかないとすぐに風に飛ばされてしまう。

「いらないお世話なのだ!早く話すのだ!」

しかし鈴々は構わず関羽を振りほどこうとする。だが関羽は決して離そうとしない。

「…張飛、と言ったな。お前のことは…女将から聞かせてもらった」

少し目を伏せてから、関羽は鈴々に向けて語り始めた。

「な、なんなのだ突然…」

「…私も同じだ。幼い頃に故郷を賊に滅ぼされた。父も母も…兄も…何もかもを失った」

「え…!?」

それを聞いて鈴々の、関羽を見る目が見開かれる。

「だから、私は誓ったのだ!あの時のような悲しみを繰り返さない世を目指すためにこの刃を振るうと!」

「そ、それがなんなのだ!?鈴々に何の関係があるのだ!?」

「張飛、お前は変えたくないのか?たとえあのような怪物の間の手がなかったとしても、今の世は戦に乱れ、賊に襲われ、罪もない人々が傷つけられるこの世を…あるべき平和な世にしたいと思わないか!?お前のおじい様がこの村を救ったように!!」

「そ…そんなのわからないのだ!」

鈴々は訳が分からなくなったのか、がむしゃらに頭を横に振り回し始める。

「鈴々は…ただ…父様も母様もいなくなって…おじいちゃんもいなくなって…寂しくて…でも…どうしたらいいのかわからなくて…!!」

ずっと長く孤独に苦しめられてきた鈴々は、その寂しさを思い出し、そして泣き出した。いたずらをするのも、彼女の寂しい気持ちの表れ。誰かにかまってほしかった…ただそれだけなのだ。

すると、関羽は強引に鈴々を引っ張り、そして腕の中に抱きしめた。いきなり抱きしめられて動揺した鈴々だが、関羽の抱擁を受けて、自然と大人しくなっていった。

彼女の温もりが、祖父に出会う前に感じた…父と母の温もりのそれと似ていた。

「…辛かったであろう。私とお前は同じ痛みを持つ者同士…こうして一人ではないことを知ることができる。だから…自分のことも大事にしてやれ。お前は…一人じゃないのだから」

「…う…うぅ……うあああ……」

ついに涙が止まらなくなった。もはや遠い記憶となった、泣いたときに親が胸を貸してくれた時のように、鈴々は泣いた。

しかしその時だった。ついに関羽の偃月刀は二人を支えたまま暴風を受け続けたことで、地面を支えにすることができなくなり、地面から引っこ抜けてしまう。

当然、それは二人を再び宙へと舞い上げる。

「「うあああああああああ!!!」」

そんな中でも、関羽は決して偃月刀と鈴々を離さなかった。あそこまで啖呵を切ったのだ。絶対に守って見せる。そう強く誓って彼女は先ほどよりも鈴々を離さずに抱きしめ続けた。

しかし、このままでは今度こそ自分も助からないだろう。

先日のような、二度目の奇跡などないかもしれない。だが…それでも…願わずにいられなかった。

ふと、その時…彼女の脳裏に一人の男の姿がよぎった。

それは、振り返って自分に微笑みかけてくる一刀の姿だった。

(なぜ、こんな時に…北郷殿の姿を…?)

…なぜだろうか。彼とは数日前に出会ったばかりのはずなのに……とても懐かしくて暖かくて…そして、胸が切なくなる。まるで、昔から想いを交し合った…恋人のような…。

思えば一刀を地上に残したままだ。もしかしたらあの怪鳥に、今度は一刀が狙われるのでは?そんな胸を裂くような悪い予感を抱いた。

(…兄者…どうか北郷殿を…一刀様を守って…!!)

 

それと同じ時だった。

 

地上にいた一刀は取り出した光の環、『オーブリング』を前に突出し、光に身を包む。すると、彼は黒いタイツのような服のみとなり、不思議な光の空間の中にたたずんでいた。

「諸先輩方…『今度こそ』彼女たちを守るために…一緒に戦ってください」

すかさず一刀は、一枚のカードを腰に下げていたホルダーから取り出す。

そのカードには、銀色の体に赤い模様を刻んだ光の戦士の絵柄が描かれていた。

 

「ウルトラマンさん!!」

 

『ULTRAMAN!』

 

それを輪の中に通すと、カードは光の粒子となり、絵柄に描かれた戦士の姿を象り、一刀の左に立つ。

さらに一刀はもう一枚のカードを取り出す。そこにはさっきの戦士と違う姿の、赤と紫のストライプを持つ戦士が描かれている。

 

「ティガさん!!」

 

『ULTRAMAN TIGA!』

 

それをさっきと同じように輪の中に通すと、輪の中に通したカードが、今度はその赤と紫の戦士に姿を変えて一刀の右隣に立った。

「光の力…」

二人の戦士に挟まれ、一刀はオーブリングを頭上に掲げた。

 

「お借りします!!!」

 

『FUSION UP!』

 

オーブリングのウィングが開かれ、一刀の隣に立っていた二人の戦士がそれぞれ金と青のオーラに身を包む。一刀の姿もまた、白いオーラに包まれた戦士の姿へと変わり、『ティガ』と『ウルトラマン』の二人の姿が彼と重なり……その姿にさらなる変化をもたらした。

 

 

『ULTRAMAN ORB SPACIUM ZEPERION!』

 

 

 

マガバッサーは、自らは起こした風によって引き寄せた村の人間たちを食らおうとしていた。目を開くと、鈴々を抱き寄せたままの関羽にも、マガバッサーの鋭いくちばしが迫っていた。強く目を閉じる関羽。だが…その直後だった。

「シュワァ!!!」

「ギィィィ!!?」

突然マガバッサーは、どこからか飛んできた光の拳によって殴り飛ばされた。その光は関羽たちや、宙に舞い上げられた村人たちを包み込み、地上へと降り立つ。

光は人の形をなし、その手から関羽たちを地上へそっと優しく下した。すでにその時、マガバッサーが起こしていた風は止んでいた。

目を開けた関羽は、周囲と、真っ先に抱き寄せていた鈴々を見る。

「け、けがはないか!?」

「う、うん…」

鈴々も関羽や、同じように宙に舞い上げられた村人、そして何が起こったのか理解できずにいる。

「オヤビン!」

すると、山賊団の仲間たちが鈴々の元に駆け寄る。

「みんな、無事だったのか!?怪我はない?」

「うん!!」「でも、あたしたちどうして…」

子供たちもまた同じだった。どう考えても、あの怪鳥に食い殺されるのを待つだけだと思っていた。だがこうして生きている、何事もなかったかのように…とは言えないが、それでも五体満足で無事でいる。

「あ…みんな、見て!」

山賊団の一人の少女が頭上を指さす。

関羽、鈴々、そして村人たちは驚愕する。自分たちの目の前に、自分たちの何倍もの巨体を誇る、黒や紫の模様をその身に刻んだ巨人が立っていた。

「もしかして、あいつが俺たちを助けてくれたのか…!?」

巨人を見て村人たちは恐れおののいた。だが、巨人は自分たちを襲う気配さえなかった。それどころか、自分たちをあの怪鳥から守ってくれていた。

巨人は、村人たちを…関羽と鈴々の二人を見た。彼女たちが無事であることを確認すると、優しく頷いて見せた。

まるで人間そのもののようなしぐさに、関羽は戸惑う。

巨人は背を向けて、空から降りてきたマガバッサーと対峙し、静かに身構えた。

「ゼア…」

 

その戦士は、彼方の世界から人々の…世界の平和のために誕生した戦士の一人にして、北郷一刀の真の姿。

 

その名も…

 

『ウルトラマンオーブ』!!

 

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