一応ゲーム版の要素も含めて書いてます。
外史。それは私たちが生きる正史と異なり、人の思いや願いを具現化した可能性
を現実のものとした世界。
正史と似て非なる文化や世界が広がり、それはまさに物語の世界といっても差し支えない。
その世界は、かつて三つに国が分かれていた。少女たちはそれぞれの国の将として互いに争っていた。
白い服を着た一人の少年が、その外史で生きていた。彼はその世界で、世を正そしようと生きる少女たちと絆を紡ぎ、共に生きてきた。
どちらかが先に滅ぶか、それまで戦乱が続くに違いなかったはずだった。
だが、少年の存在を中心とし、三国は異民族の侵攻をきっかけに一つとなった。
少年は、理想に燃える少女、国のために覇道を進む少女、そして愛する家族と台地を守るために戦う女性が納める三つの国を一つにし、平和をもたらすという偉業を成し遂げたのだ。
こうして平和な世が、国にもたらされた。将たちは一人の女性としての平穏を歩み、少年との思いを紡ぎ、国のために働きながら、平和を謳歌していた。
まるで、永遠にも思えるひと時だった。
だが、それはある者たちの出現で、突然潰えることになる…
少年は、気が付いたら火の海の中にいた。
自分がさっきまで歩いていた街が、建物の全てが燃やし尽くされていた。
人も、たくさん死んでいた。老人から子供まで。
さっきまであんなに笑って楽しそうに過ごしていたのに、誰も生き残っていなかった。
そして、少年の傍らにも…
「あ、ああ…」
ウああああああああああああああああああああああああ!!!!!
さっきまで共に、平和な世のために同じ道を進んでいた少女たちの、
変わり果てた姿が横たわっていた。
ウルトラマンオーブ無双~乙女大乱~
それは、とある外史のことだった。
その世界は、今から1800年ほど前の中国、正史における『三国志』の時代を色濃く映し出していた世界だった。
この時代の中国は漢王朝の腐敗に伴い、辺境の地から貧しくなっていき、それに伴って賊が多発、国が乱れ始めていた。
そんな世を、一人の長く美しい黒髪をなびかせた少女が武装した服装の上に、身を隠すほどのボロボロの外套を羽織って旅をしていた。
彼女の手には、竜をあしらった長刀が担がれている。素人から見ても、かなりの業物に見て取れる。
今、少女はある村を訪れていた。
村の道を歩くと、道の傍に生えている木が目に留まった。桃の花が咲いていて、花びらが空に舞っていく。
「桃か…ん?」
少女は木の根元に、小さな石がおいてあるのが見えた。
「これは…?」
花も添えてある。もしや、墓だろうか?
すると、それを通りがかった老婆が、重たそうな籠を背負ってやってきた。
「最近このあたりにも賊が出るようになったのじゃ。身包みをはがされて殺されたのもおってな。その花はせめてもの手向けなのじゃよ」
「そうなのですか…」
少女はそれを聞いて、胸を痛めた。何の罪もないのに殺されてしまう。そんな勝手があっていいのだろうか。いや…許せるはずもない。もしこの墓の人たちが襲われたときにこの村に自分がいたら、その賊共に天誅を下すことができたものを。
「お役人様がしっかりしとったらこんなことにもならなかっただろうに…」
ならば自分もせめてと、少女は墓の前で手を合わせた。せめて安らかに眠り、来世では平和な世で幸せに暮らすことを願う…
♪~♪♪~♪~♪~
ふと、少女の耳に何かの音色が聞こえてきた。
(なんだこの音色は…?笛?)
いや、笛の音色にしてはずいぶん変わった音色だ。どこか物悲しく、そして美しい音色だった。
だが、少女はその音色を始めて聞くはずなのに…
(この笛の音…どこかで聞いたことがある)
懐かしい気持ちを抱かされた。
笛を吹いていたのは、少女と同じか1つ上の年齢に見える少年だった。
光っているようにも見える白い服を羽織り、なかなか端正な顔立ちをしている。
笛を吹き終わると、少年は目を開けて笛を服のポケットにしまった。
「まぁまぁ…なんて綺麗な音かしら。あなた、笛吹きなのかしら?」
老婆も少年の笛の音色に惹かれたらしく、感動の言葉を口にした。
「いや、俺は通りがかりの風来坊ですよ。お話は俺もちょうど聞いてましたから、せめてと思って…」
少女と老婆の話を聞いていたらしい。結果的に二人の話を盗み聞きしてしまったことを詫びるが、老婆は首を横に振ってそんなことはないと言った。
「あなたの笛を聞いて、ここで眠っている人たちも安心して眠っていられるわ。ありがとうね…」
「そう言っていただけて嬉しいです。
じゃあ、俺はそろそろ行きます。村は、この先ですか?」
「ええ。旅先、お気をつけてね」
「おばあさんも」
少年は少女と老婆に頭を下げて歩き去っていった。去っていく少年の後姿を、少女は静かに眺めていた。
が、すぐに首を横に振る。旗から見たらまるで彼に見とれてしまったようではないか!と自分に喝を入れた。
そういえば、村はこの先だと言っていたな。
少女も村を訪れようと先へ進み始めたときだった。
「おらおらあああ!!金目のものを置いていきがやれ!!」
旅先で何度も聞いた声だ。ここにも賊の手が入り込んだということだろう。
「世も末だな…」
ため息を漏らしながら、少女は羽織っていた外套を脱ぎ捨てて駆け出した。
駆け出した先では、先ほどの少年が三人の賊に絡まれていた。
脂肪の塊のような巨漢、ちびの男、そして中央にはひげの生えた中年男だ。三人とも黄色の巾をバンダナのように頭に巻いている。
「待たれよ!その方に手を出すことはまかりならん!」
少女は長刀…『青龍偃月刀』を構え、賊と少年の間に立ちふさがった。
「なんだ姉ちゃん?この餓鬼の女か?餓鬼の癖にずいぶん色気づいてるじゃねえか」
中央の中年男がいきなり現れた少女に目を細め、少年に口汚く茶化してきた。
「い、いきなり何を言い出すのだ!この無礼者!」
根も葉もないことを言われ、少女は顔を赤らめた。堅苦しい口調と、女の子が持つとは思えない長刀を持っていることから、恋色沙汰には慣れていないようだ。
「…ん?アニキ、こいつもしかして、噂の『黒髪の山賊狩り』じゃないっすか?」
するとチビが少女を見て、アニキと呼んだ男に言う。
「あぁ?なんだそりゃ?」
「知らないんですかい?あちこちの山で襲い掛かった山賊を返り討ちにしてきた女武芸者がいるって。巷じゃ話題になってるっすよ」
「知ったことじゃねぇ。だったらこの女に俺たちの恐ろしさを思い知らせてやりゃいいのさ!」
「やれやれ…」
いきなり見ず知らずの少年の女として扱われるわ…ため息を漏らしながらも、少女は偃月刀を構えなおし、高らかに名乗った。
「我が名は関羽!乱世に乗じて民草を苦しめる悪党共め!これまでの悪行を地獄で詫びたくば、かかってくるがいい!!」
勇ましくほえながら、偃月刀を振り回して少女は三人の賊に立ち向かっていった。
その一撃目が、デブの大男に向かってくる。
「お、おでにかてるとおもうなど~…」
デブは少女が自分に向かって来ると同時に剣を構える。自分の腕っ節には自信があった。脂肪だらけがだが、両腕の筋肉だけはがっちりしており、まして女に遅れを取るほどやわではない…
…と思っていたのだが。
「せええええいい!!」
バキィ!!
「ぐへぇ…」
偃月刀の一振りにて、持っていた剣がたたき折られてしまい、そして偃月刀の刃の峰で脳天をぶっ叩いた。その一撃でデブは一撃でノックアウトしてしまう。
「で、デブ!?」
「くそ、この怪力女め!!」
動揺するアニキとチビ。しかし、チビの言った一言が…更なる悲劇を彼らにもたらす。
「…怪力女?」
「あちゃ…」
こいつら死んだな、と少年は思った。
少女のこめかみの血管がピクピクしている。明らかにキレてしまっている。武芸に励んでいるとはいえ、彼女もまた女の子なのだ。不愉快じゃないわけがない。
その怒りの一撃が、今度は彼女を怪力女呼ばわりしたチビに入る。わき腹に偃月刀のみねが、目にも留まらぬ速さで食い込んだ。
メキョ!!
まるで骨が砕けたような音だった。血反吐もセットで吐いてしまい、チビは気絶した。
「さて、残るは…」
「お、おい女!こっちを見ろ!」
ちょうど少女がアニキの方へ振り返ろうとしたときだった。アニキが少女に向かってわめきだした。
「俺に近づくな!この餓鬼がどうなってもいいのか!」
アニキは、少年の首下に短刀を突きつけていた。
「ぬ…!人質とは卑怯な…」
これでは、さっきの二人をあっさりのしたほどの少女でも迂闊に手を出し切れない。
「卑怯?馬鹿が、最後に勝てばいいんだよ!だから俺たちは今まで生き残ってこれた!さあ、こいつの体に傷を入れられたくなかったら、その得物を捨てろ」
「く……」
少女はやむを得ず、偃月刀をその場に捨てた。
「へへへ…いい子だ。じゃあ次は、そのまま服を脱ぎ捨ててもらおうか」
「な…!!」
いきなり服を脱げといわれ、少女が絶句する。
「あんたも結構いい体してるみたいじゃねぇか。ほらどうした?早くんがねぇとこいつの首から血しぶきが飛ぶぜ?」
「下衆が…!!」
非常に屈辱を覚えアニキと呼ばれた男を睨みつけるも、手を出せない少女は、偃月刀を捨ててしまう。アニキへの怒りと自分の肢体が露にされる恐怖で震える手で、自分の服の留め金を外そうとする。
「そうそう、そうやって…がふぁ!?」
しかし、その直後だった。
「え…?」
少女が服の留め金を外し掛けたところで、アニキは急に腹を押さえて悶絶する。
「…ったく、隙だらけだぞおっさん。人質が歯向かわないと思ってたのかよ」
そう言い放ったのは、人質にされていたはずの少年だった。肘打ちでアニキの腹を殴りつけ、続けて手刀を首筋裏に叩き込み、アニキを気絶させた。
「ふぅ…大丈夫か?」
「あ、はい…」
少年の身を案じる言葉に、少女は外しかけた服の留め金をつけなおし、偃月刀を拾い上げる。
「申し訳ない。助けるつもりが逆に助けられてしまうとは。私もまだ未熟だ…」
「いや、二人とも無事だったし、構わないよ」
少年は屈託ない笑みを返してくる。さっきは命の危険にさらされていたというのに、そのことをまったく恨んでいるように見えなかった。
「それより、君こそ大丈夫か?さっき…その…」
「え…あ、ええ!!大丈夫です!怪我もないですし、あなたがあの男をのしてくれましたので」
「そっか…よかった」
少女がなんともなかったのを確認し、少年はほっと安心した。
「本当に良かったよ…○○」
「?今、何かおっしゃいましたか?」
「え、あ…!いや、なんでもないさ!!」
少年は聞かれたらまずかったのか、少女に尋ねられてやたら慌てた様子を露にする。
「じゃあ、俺はこれからこの先の村に行くから」
まるで何かを誤魔化すつもりのように、少年は村の方角へ足を運ぼうとするが、少女が「待ってください!」と少年を引き止めた。
「先ほどは不覚を取られましたが、この『関羽』…二度も遅れは取りませぬ。この先ももしかしたら先ほどのような賊が現れるかもしれません。
よければ私が村まで護衛をいたしましょう」
「護衛なんていいさ。一応、それなりに俺も修羅場を…」
少年は護衛を断ろうとしたが、少女は食い下がろうとしなかった。
「いえ!一度の失敗を次の成功で注ぐのが武人というものです!それとも…やはり、私のような賊に不覚を取るような者では信用なりませんか?」
食い下がりはしないものの、最後の最後でさっきのことを引きずっていたのか、少し落ち込み気味になってしまった。
泣きそうにも見えるその憂い顔を見て、少年は罪悪感を覚える。
「わ、わかった!わかったから!護衛やってくれるんだね?
そうだな…一人より二人の方が、油断さえしなければ安心だし、頼もうかな?」
「ありがとうございます!」
さっきの汚名をそそぐ機会を得ることができて、少女は落ち込んだ状態から立ち直った。
「そういえば、まだ自己紹介をしてませんでしたね?
我が名は『関羽』、字を『雲長』と申します。あなたの名前は?」
「俺?俺は…」
「『北郷一刀』、よろしく」
こうして、ほぼ押しかけ気味に一人の護衛『関羽』を得た少年、『北郷一刀』は村へ向かうことになった。
三国志を知る人なら、一つ疑問に思った人もいるかもしれない。
なぜ関羽が女の子なのか?と。
それもそもはず。これも外史の可能性。
本来なら美しく長いひげを持つ大男…それでいて三国時代における有名な武人であったはずの関羽が、長い黒髪の美少女として存在している世界なのだ。