短編集by???second   作:???second

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ウルトラマンオーブ無双~乙女大乱~(3)

「『愛紗』!起きろ!」

青年の呼びかけに、小さな黒髪の少女が目を覚ます。

「…兄者?どうしたのですか?」

眠たそうな目をこすりながら、少女は兄と呼んだ男に尋ねる。

「村が襲われている!」

「ええ!?」

「今すぐ寝台の下に隠れろ!」

兄に言われたとおり、彼女は寝台の下に隠れる。

絶対に声を出すな。そう言い残して兄は外へ飛び出していく。

外からは、何かの声が聞こえる。

賊の声だろうか?その割には、…どこか獣じみている。グルアアアア!!とほえる声が聞こえていた。

兄の無事を必死に祈る少女。だが……

「ぐはあ!!」

兄の悲鳴が聞こえた。さっきまで兄の無事を祈り目を閉じていた少女だが、少女の身を隠していた寝台が、突然大きく吹き飛んだ。

「きゃ…!」

突然のことに開けかけた目を再び閉ざした少女。そして恐る恐る目を開ける。

自分の家が、まるで嵐に見舞われたかのように粉々に、…上部を中心に吹き飛ばされていた。

だが、それ以上に少女にとって恐ろしい現実がすぐ近くにあった。

 

絶対に見たくなかったおぞましいものだった。

 

少女が見たそれの正体は…

 

 

 

顔を不気味に発行させている黒い怪物と…

 

 

 

全身をズタズタにされ血達磨となった、兄の変わり果てた姿だった。

 

 

 

----兄者あああああああああああああああ!!!!

 

 

 

少女の叫びが轟いた。

 

 

 

 

「はあ!!」

関羽はガバッと体を起こすと同時に目を覚ました。

「おぉ、お嬢ちゃん!目が覚めたのかい!」

傍には、いつの間にか昨日世話になった店の女将がいた。

「いやぁ~、お嬢ちゃん本当に運がいいもんだね。村がこんな有様なのに、あんたはあの高さまで吹っ飛ばされたのに傷一つないなんて」

「え…?」

関羽は女将の口からそれを聞いてキョトンとするが、周囲を見渡してその意味を理解した。

村は、酷い状態になっていた。

建物はいずれも崩れ落ち、昨日まで村として機能していたとは思えないほどボロボロだった。何より、村人たちの顔に不安と絶望が漂っている。親しい人たちや愛する人たちを蹂躙され、奪われた人たちの強い悲しみが漂っていた。

「一体何があ……ッ!」

そこまでいいかけたところで彼女はこの時思い出した。昨日の夜、突然巻き起こった竜巻によって村が…。そうだ、自分もあの時、竜巻に飲み込まれ、あの化け物に…!

「女将、あの化け物は!?」

関羽は血相を変えて女将に詰め寄る。

「お、お嬢ちゃん落ち着いとくれ!」

女将に対して礼儀を忘れ詰め寄ってしまった事に気づき、我に返った関羽ははっとなって落ち着きを取り戻した。

「…申し訳ない。取り乱してしまった」

「いや、いいさ。普通あんなことがあって冷静でいられるわけがないからね」

女将は落胆していた。自分の店ももはや見る影もなく、外観は屋根が完全に吹き飛び、壁もひび割れた個所が多くていつ崩れ落ちるかわかったものじゃないほどだった。

「……あの、結局あの化け物は?」

「山の方に姿を消したよ。なんではかよくわからないけどね」

村の近くの裏山を見上げてながら女将は言った。

「もう、この村は終わりかもしれないね…あの時の化け物がまた現れたってことは…」

大事なものを壊された、奪われたという点ではこの女将もまた同じようなものだ。幼い頃、故郷を賊によって滅ぼされた関羽にはその気持ちが痛いほどわかる。

が、下手に声をかけても相手を慰められるとは限らない。これまで旅を続けてきて、何度も経験してきたことだ。自分があと少しで助けられず、賊に大切な人を殺されてしまった人から罵声を浴びせられたこともあった。関羽は、今の女将に何と声をかけるべきか迷った。

こんなとき、一刀なら何か言えたのでは…などと憶測を浮かべたところで、ようやく彼女はあることを思い出す。

「女将、北郷殿はおられないのですか?」

「ほんごう?あぁ、あんたと一緒にいたあの男の子かい?」

「はい、そうです」

「あの子なら、『関羽のために薬になりそうな薬草探してくる』とか言って裏山の方に行っちまったよ」

「薬草を、ですか?」

姿が見えないと思ったら、自分のために薬を…度々自分が彼に対して借りを作っている事態に、関羽は一刀への申し訳なさを募らせる。

「はは、羨ましいもんだねぇ。あんな嫁思いの素敵な旦那様と出会えて」

「なぁ!!?」

恋色沙汰とかそんな話に耐性がない関羽は、一刀と夫婦扱いされて顔を真っ赤にして全否定した。

「ち、ちち違います!私と北郷殿はそんな関係じゃありません!!」

「そうだったのかい。いい男と女二人組だったからてっきり…」

タチが悪いものだ。彼とあったのはつい昨日のことだ。そんなことになったら兄に「気が早すぎる!」と怒鳴られたと思うし、

自分でも恋色沙汰に現を抜かすなど軟弱だと思っている。

…まぁ、あの人がそこらへんの男性よりどこか悪い気はしない、とだけは思う。一刀と出会って間もないがそれだけはなんとなくわかる気がした。

って、何を考えているのだ私は!!

「もうしわけない女将、ちょっと彼を探しに…」

まるで今の話から逃げるかのように、関羽は一刀を探しに向かおうとしたが、そんなとき、妙な騒ぎ声が関羽たちの耳に聞こえてきた。

「鈴々のせいだ!あいつがきっとあの化け物をこの村に呼び寄せたんだ!いいか貴様ら、鈴々を見つけ、即刻殺せ!!」

「庄屋様、落ち着いてください!鈴々があの化け物を手引きしたなど、いったいどんな根拠があって…!!」

庄屋が、半壊している自分の屋敷の門の前で自分の雇っていた部下たちによって暴走気味に喚き散らしていた。庄屋たちも、あの怪鳥が数年前と同様に、昨日の暴風の元凶であることに気付いているようだ。

「あの庄屋、まだ生きてたのかい。全く、ああいうのに限ってどうしてしぶといのやら…」

女将が庄屋に対して呆れるばかりに思った。やはり庄屋という、一般の村人よりも破格の待遇と安全対策をさせてもらっているのだ。もしかしたら5年前にも村を襲ったという災害の再発を考え、地下避難場所の設計などの対策を講じていたのかもしれない。だから彼や彼の護衛兵たちが無事だったのだろう。

「あの小娘の祖父とやらがあの化け物を追い返したそうではないか!ならあの鈴々が関係しているに違いない!」

「そんな、相手はたかが子供…!」

「ええい黙れ黙れ!私は漢の臣下なのだぞ!私の名を使えばこの村に止めを刺すなど容易いのだぞ!」

「あの男…!」

鈴々がいたずら好きなのは昨日のことでもすでに知っているが、それを強引に村を破壊した怪鳥と結び付け悪人に仕立て上げようとする庄屋。関羽は、権力を利用して脅してきた庄屋の何とも身勝手な言いぐさに怒りを覚えた。それに身を任せて、一歩踏み出して一発痛い目を見せてやろうかと一歩踏み出したところで、女将が後ろから関羽の肩を掴んだ。

「おやめ!あの男は漢から派遣されたれっきとした臣下なんだよ。少しでも手を上げたら、それだけで重罪扱いなんだ」

「……ぐ」

女将から差し止められ、彼女は今すぐに爆発させたい怒りを抑え込んだ。

しかし、庄屋の命令で何人もの兵士たちが派遣されていく。逆らえないことをいいことに、庄屋は鈴々の抹殺命令を下したのだ。

こんなことよりも、昨日の竜巻の被害状況の確認と、傷ついた村人たちへの手当てを優先すべきだというのに。これもこの国…『漢』が腐敗し始めた証拠ということか。

「あ~ったく、どうしようもない男さね。子供相手に権力乱用して…そんなに鈴々に落書きされたのが気に食わないのかい」

女将もさっきは庄屋に殴りかかりそうな勢いの関羽を差し止めようとしたとはいえ、自分もさすがに庄屋にアツアツのお湯でもかぶらせてやりたい気分になった。しかし、ここで庄屋に手を出したらかえって後で厄介なことになる。かといってここでじっとしていたら、鈴々が庄屋にあらぬ濡れ衣を着せられて殺されてしまう。

一度天涯孤独となった身。鈴々も、あの時の自分と同じ傷を負ったはずだ。

関羽には唯一の肉親だった兄がいた。だが、夢で見た通り自分が幼い頃に…。彼女は兄を失ってから、当時親しかった村の人たちの援助を得ながら武芸の心得を培い、こうして独り立ちするまでに成長できた。だから家族がいない鈴々に対して、どこか放っておけない気持ちが沸き起こっていた。

なんとかしてあげたい。そんな気持ちが起こる。

だが、関羽にはもう一つやることがあった。一刀の護衛である。まだこれといって護衛らしいこともできていない。

ならばせめて…伝言だけ残そうと思って女将の方に向きなおる。

「女将、すまないが…一刀殿がここに戻られたら伝えておいてくれないか?『関羽は鈴々を探しに行った』と」

 

 

 

 

その一刀はというと…。

「へっくし!!」

関羽と女将が話している時と同じタイミング、森の中でくしゃみをしていた。

「…うぅ、誰か俺の噂でもしてんのか?」

鼻をさすりながら、彼は森の奥へと足を踏み入れる。彼が今歩いている場所は、村のすぐ近くの裏山だった。

一刀にはどうしても気になることがあった。女将から聞いた、5年前にあの村を壊滅させたという『恐ろしい鳥』。そして、それを鈴々の祖父の奮闘によって姿を消したという事実。

しかし鈴々の祖父は武芸の心得を持っていたわけではなかったらしい。つまり戦いにおいてはど素人だったことになる。そもそも、村を破壊するほどの『鳥』を相手に、そんな人間が立ち向かえるはずがない。

その謎を、おそらく鈴々が握っている。一刀はそれを確信していた。

(けど、思ってみれば意外だったな。俺はてっきり、鈴々が彼女と最初から一緒に旅をしていたとばかり思ってたんだが、ここではそもそもまだ出会ってもなかったのか…)

意味深な思案を続けている一刀。すると、彼の顔に向けて石が一つ飛んで彼の顔に当たった。

「痛ッ…いきなりのご挨拶だな」

なんだ、いきなり石が飛んできたが…誰かこっちを狙ってきたのか?顔を上げて石が飛んできた方を確認すると、木の枝の上にまだ10にも満たない小さな少年が、両手の中にたくさんの石ころを持ってこちらを睨んでいた。

「どうやら昨日の突風から無事に生き延びれたみたいだな…」

昨日の夜に起きた竜巻、子供たちにとっても容赦のない災害だったに違いない。一刀は目の前の子供が昨日の災害を受けてなお無事だったことに安堵したが、次に少年は一刀に向けて身に覚えがないことを言い放ってきた。

「ついに来やがったな、オヤビンを襲った悪者め!」

「オヤビンを襲った…??」

何のことだと言いたげな一刀の反応に少年は「とぼけるな!」と一刀に怒鳴った。

「昨日、オヤビンがじいさんから託されていた大事なものを盗まれたって言ってたんだ!あいつ、お前と同じ白い色の服着てたんだ!またオヤビンを襲うためにここに来たんだろ!」

じいさんが託されたもの?それについて興味を覚えた一刀だが、とりあえず少年に向けて弁明する。

「待てよ。俺はまだ鈴々と会ってもいない」

「まだとぼけるのかよ!だったら謝るまで、こいつを食らえ!」

どうも一刀が、鈴々を襲撃しておきながらとぼけていると思い込んでいるようで、少年は一刀に向けて石をだらに投げつける。

「…ふぅ、大人げないけど、君たちに時間はかけられないからな」

この子から、なぜ鈴々を自分が襲ったという認識があるのか聞きたいが、別に問いただす相手がこの子でなければならないという理由はない。すぐに鈴々から詳細を聞いたい方が手っ取り早い。

それにいつ、昨日村を破壊したあの鳥が襲ってくるかもわからない。その前に、鈴々になんとしても会わなければ。

石を避けながら、一刀は少し身をかがめ、陸上選手のスタートダッシュのような構えを取る。何をするつもりか気になった少年だが、構わず石を投げ続けるが、次の瞬間、思いもよらないものを目にする。

一刀が、駈け出したと同時に、一瞬にして姿を消してしまったのだ。

「なぁ!?」

少年は夢でも見たのかと思った。だが、さっきまですぐそこにいたはずの男の姿が影も形もない。一体どこへ消えた?少年は周囲を見渡してみるも、結局一刀の姿は見当たらなかった。

なので木から降りて、一緒に罠を張った山賊団の子供たちに訪ねるも、誰も一刀の姿を見なかったらしい。

ただ聞いたのは、風も吹いてなかったのに、たった一瞬だけ『白くてすごい風』が駆け抜けた、という。

 

 

 

さて、少年の前から姿を消した一刀は、既に鈴々が住んでいる小屋の前に来ていた。あの場からここまで一瞬のうちにたどり着いていたのだ。

ここに鈴々がいるに違いない。一刀はさっそく、ここにいるであろう鈴々を呼んだ。

「『張飛』!!ここにいるんだろう!?出てきてくれ!」

しかし、彼は『鈴々』ではなく、なぜか別の呼び名を呼んでいた。

 

少し説明を入れよう。

『張飛』もまた鈴々の名前の一つである。

この世界の人間は、家族や恋人、親友など心を許した人間にしか呼ぶことを許されない真の名前『真名(まな)』というものが存在する。『張飛』とはそれに当てはまらない人間でも呼んでも構わない通称である。

もし相手の許しなくそれを呼ぶことは何にも勝るほどの無礼であり、首を斬られても文句を言う資格がないといわれるほどなのだ。何とも物騒で面倒…とも考える人もいるだろうが、この世界では常識なのである。

 

ちなみに張飛とは、史実においては『関羽』『劉備』と共に『黄巾の乱』で立ち上がった、古代中国の勇猛果敢な武将の武将の名前である。酒好きゆえに失敗もあったが、彼は刃が蛇のようにくねくねと曲がっている長柄武器『蛇矛(ダボウ)』を振るい、その武勇で主である劉備を支え続けたとされている。

 

この世界では『鈴々』が、史実における張飛その人に当たる。

史実ではトラ髭を生やした大男なのだが、この世界ではどういうわけか、赤毛の小柄な少女になっている。…なぜかと疑問に思う人もいるかもしれないが、とりあえず流してほしい。

 

では話を戻そう。

一刀の呼びかけに応え、鈴々が小屋から勢いよく飛び出してきた。史実の張飛同様、その肩には蛇矛が担がれている。

一刀の顔を見るや否や、彼女は一刀を親の仇でも見るような鋭い視線を向けてきた。

「お前は…おじいちゃんの形見を盗んだ奴!!」

「またか…」

さっきの少年も自分が鈴々を襲ったとか言っていたが、昨日の怪鳥騒ぎといい、一体昨日までの間彼女の身に何が起きたというのだろう。

「なぁ、張飛。聞いてくれ、俺はここに来たのは今が初めてなんだ」

「とぼけるななのだ!おじいちゃんの形見をさっさと返すのだ!とりゃああああ!!」

頭に血を上らせ、彼女は蛇矛を担いで飛び上がり、頭上から一刀に向けてそれを振り下ろしてきた。

「うおぉ!!」

咄嗟に避ける一刀、だがすかさず鈴々は蛇矛を突き出す。

「うりゃりゃりゃりゃ~~!!」

それもただ突き出しただけではなかった。一瞬の間に二度三度…いや、何発も突き出してきている。しかもすべての一撃が受け止めるだけでもかなりの重みがある。ただでさえ蛇矛は武器の中でもかなり重い。鈴々の小さな体では本来持ち上げることさえ困難なのだ。これは相当鍛錬を積んだ武人でも会得できるものではない。鈴々にはそれだけの才能と技術が備わっていた。

だが……そんな彼女の蛇矛捌きに対する一刀も相当だった。

あれほどの素早い蛇矛捌きに対して、『一撃も受けずに避け続けて』いた。

「ううううぅぅぅ!!避けるななのだ!!おとなしく当たるのだ!!」

「無茶言うな!!」

とはいえ、一刀も必死だった。かなり集中して鈴々の腕、蛇矛の動きを見極めないと突き刺さってしまう。

(ったく、相変わらず気の短い子だな…)

しかしあまり時間をかけることは、一刀には許されなかった。

(いつ…あの鳥が…『マガバッサー』が動き出すかわからない。…悪いな鈴々、すぐに話を聞かせてもらうぞ!)

一刀は鈴々の蛇矛を避けつつ後ろに飛び退いて一旦距離を置く。

鈴々は彼が一度後退したのが気になったが、特に気に留めなかった。今度こそ一刀に止めを刺すため、改めて蛇矛を構え直す。

「…お前、今のうちに降参した方がいいのだ。でないと、今度は痛い目を見る程度ではすまなくなるのだ」

相手が嫌いな奴とはいえ、警告を入れてくる。そんな鈴々に一刀は、彼女なりの気遣いを感じとる。

「………」

すると、一刀は地面に自ら胡坐をかいて座り込みだした。当然彼のとった選択に鈴々は絶句する。

「な…ど、どういうつもりなのだ!?」

「張飛、俺には君と戦う理由はない」

「お、お前になくても鈴々にはあるのだ!」

「…だったら俺をその蛇矛で刺せよ」

武器もなく、構えさえも取らず、ただ地面の上に腕を組んで座っているだけの一刀。鈴々は、明らかに無防備な彼に刃を向けることに、ここにきてためらいを覚えつつあった。

「どうした?早くしろよ。俺を刺してしまえば、お前のじいさんの形見とやらを取り戻せるんだろ?」

鈴々に視線を向け、やれよやれよと一刀は鈴々を挑発し続ける。避けるそぶりさえなく、それどころか武器を隠し持っているような仕草もなかった。鈴々がその気になれば、首が飛ぶことだって容易に考え着くというのに、恐怖を感じているようにも見えなかった。

鈴々は蛇矛を構えたまま、一刀を睨み続ける。何かしら罠を張っているのではと疑惑した。油断したところで、自分を不利な状況へ追い落とすのでは?

だが…待ち続けて一刀は一向に動かない。じっとまっすぐ、鈴々を見据えたまま動こうとしなかった。

すると、さすがに観念したのか、鈴々は蛇矛を下した。

「…無抵抗の奴を傷つけるほど、鈴々は落ちぶれた覚えはないのだ。そんなことしたらおじいちゃんに怒られるのだ」

そういいながら彼女は、どこか納得しがたそうに言った。

何とか武器を下してもらえたようなので、一刀は立ち上がって鈴々に話を伺うことにした。

「なぁ、張飛。どうして…」

と、その時だった。一刀は空を切るような音を一瞬だけ耳に拾った。

「鈴々!」

「わぷ!?」

思わず真名で鈴々を呼びながら、彼はダッシュして鈴々を抱きしめる。一瞬いきなり抱きしめられて鈴々は何が何だかわからなかったが、その意味をすぐに理解した。

一刀の肩に、どこからか放たれた矢が突き刺さっていた。

「ッ!」

目を見開く鈴々と、肩に矢を刺され苦痛の表情を浮かべながら矢を引き抜く一刀。振りかえると、茂みの中からぞろぞろと、武装した兵士たちが姿を見せてきた。

「村の役人か…」

彼らを見て一刀は悟る。庄屋が鈴々を捕縛するために兵を差し向けてきたのだ。

「やはりここにいたか、鈴々」

「悪く思うなよ、これも庄屋殿の命令だからな。お前を捕まえるか、難しかったら殺害しろ…だとよ」

いきなり自分を対象とした捕縛命令および抹殺命令を聞いて鈴々は絶句する。なぜなのか理解できない。命を狙われるような行為に走った覚えはない。あくまで子供のいらずれ程度に済まされていたはずなのに、庄屋が自分の身柄を狙ってきた。

「さて、悪いが我々に着いて来てもらうぞ」

捕まってしまったら何をされるかわかったものじゃない。兵たちが逃がすまいと取り囲んでいる。蛇矛を構えて身構える鈴々。

「目を閉じろ、鈴々!」

しかし、一刀が鈴々の前に立ち、腰から一枚の札を取り出し、兵たちに掲げる。鈴々は何が何だかわからなず、え?と声を漏らす。

すると、その札からまばゆい光が放たれ、兵たちの視界を塗りつぶした。

「うわあああ!」

「こっちだ!」

眩し過ぎる光で兵たちの視界を奪ったのを確認し、一刀は鈴々の手を引っ張る。

兵たちの視力が回復し、一刀と鈴々の二人の失踪を確認したのは、それから5分もの時間を要した。

 

 

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