The IdolMaster CinderellaGirl's + IF 作:風龍零
のんびりのびのび続けていこうと思います。
目標:UA500くらいで好きなように書いていこうと思います。
雪こそ降っていないが、その日も冬という季節に外れることなく底冷えのするような寒さがそのライブステージを覆っていた。
ライブが始まれば空調を使わずとも観客たちの熱気で充分に温まるのだが、まだリハーサルもしていない準備段階なので、貧弱な暖房器具ではこの大きなステージを観客席まで暖めるのは不可能だろう。
ましてや舞台裏など風が吹かないだけ外よりマシなだけで随分と冷え込んでいる。
その廊下を走っている少女が一人。
濃い青色をしたスタッフであることを証明する上着を着ており、その胸には大事そうにひとつの箱を抱えていた。
彼女の名前は島村卯月、後に14人のシンデレラの一人となる少女だ。
そして彼女はもちろん知りもしないが、彼女が今まさに曲がろうとしている通路の反対側からもう一人別の人間が走ってきていた。
彼女の名前は早乙女悠、本来この世界には存在しなかったはずの"もしも"の存在。
そう、彼女こそがこの物語の主人公であり、そしてとてつもない豪運ととてつもない不運によってこの世界へと紛れ込んでしまったごくありふれた神様転生経験者である。
◇◆◇
The IdolMaster CinderellaGirl's + IF
~EP1:While it is of life,I no choice but to live at best fun~
◇◆◇
ど、どうしよう、道に迷っちゃったよ……っ!
早くこのガラスの靴届けないといけないのに……初めて来た場所だし、スタッフさんともはぐれちゃったよ……
とにかく走り回ってわかる場所まで行かないと……!
あ、ここら辺さっき見た気がするよ……ということは、こっちに行けば楽屋にいけるはず。
急いで角を曲がろうとすると、私が行こうとしていた反対側から別の人が走って……って、よけられない!?
「きゃっ」
「おっと」
うっかり転んじゃうかと思って、掴めるものもないのに伸ばした手をその反対側から走ってきた人が掴んでくれました、しかも私が手放しちゃったガラスの靴まで空中でキャッチしてくれました、すごい!
「ゴメンネ、ちょっち急いでるんだ、痛いとことかない?」
「あ……はい、大丈夫です!」
その人はスタッフパーカーのフードをかぶってて顔を見ることはできなかったけど、どうやら女の人みたいです。
身長は私なんかよりもずっと高くて、体つきもスラッとしててとてもかっこいいです、憧れちゃうなぁ。
「よかった、じゃあ私行くから、仕事頑張ってね!」
そう言って手を振りながらまた楽屋の方へ走っていってしまいました。
「はい、あなたも頑張ってください!」
そして廊下には私一人だけ……って、私も急いで靴届けなきゃ!
そう思って私も走り出そうとした時に、床にひとつのブレスレットが落ちていることに気がつきました。
「これ、さっきの人のやつかな……」
拾い上げるととても大切にしてるものなのか、小さい傷はいっぱいあれどとても綺麗でした。
これも、届けたほうがいいよね!
ひとまず荷物を届けなきゃいけないので私も楽屋に急がなきゃ!
◇◆◇
いやー、いかんいかん、いくら急いでいたとは言え全力疾走はやりすぎた。
いや、だが私は悪くない、悪いのは撮影の手際が悪い上にやたらこだわりを持ってるあのカメラマンが悪い。
ひとまず怪我もないみたいだし、申し訳ないと思うけど急ごう。
「すいませーんっ、おっくれました!」
走ってきた勢いそのままにドアを開いて中に入る。
中にいた今日のライブのメンバーは既にリハーサルに向けて衣装チェンジを終えてそれぞれウォームアップを初めていた。
「今日も豪快ですね」
「いやいや楓ちゃん、それだといつもこうみたいじゃん」
部屋に入って最初に声をかけてきたのは小学校の時の友人であり、そしてまさか小学校以来の再会がアイドルプロダクションだなんて思いもしてなかった高垣楓ちゃん、私も所属している346プロ大人組飲み仲間では25歳児とも呼ばれていたりする絡み酒体質だ。
いや、普段はミステリアスだし綺麗なんだよ?お酒が入るとちょっと幼くなるけど、あとダジャレの頻度がますけど。
でもそんな内面まで知らないファンたちや346のスタッフさんからは346プロの看板として祭り上げられてるくらい今まさに時の人とも言うべき人気者なのだ。
何故か私もその対となる存在として346の二枚看板なんて言われちゃってるけど。
「いつもそうじゃないですか?」
あるぇ……そういえばいつもなんだかんだバタバタしてるような気が。
というか、私はいつも絶望的に運がないんだよなぁ……神様転生なんて普通そうそうできるもんじゃないはずなんだけど、そこでもらった能力もアレだったし……
まあいいか、どれだけ不運だろうとこの命のあるうちに、せいぜい楽しむしかないね、せっかくの第二の人生だし、なんだかんだアイドルマスターのその後の世界でアイドルなんて出来てるし。
ひとまず外で待ってるお客さんに気づかれないように着ていたスタッフパーカーを脱いでぱぱっと準備を始めよう。
「あれ、私の靴どこ?」
「なんだかひとつだけ到着が遅れちゃってるらしいですよ」
うわ、私ってマジ不運、できれば本番と同じ靴でリハしておきたかったんだけどなぁ。
まぁ仕方なし、いつも履いてるスニーカーでいいか。
というか楓ちゃんに小学校の時にもらったブレスレットも無くしてるし……不幸だわ……
◇◆◇
結局もう一度道に迷ってどうにかこうにか楽屋の前についた私はノックしてから扉を開きました。
「失礼します……」
中を覗いてみると数人のスタッフさんだけが残ってました。
「あら、どうしたの?」
「あ……えっと、早乙女さん用のガラスの靴を持ってきたんですけど……」
「あぁ、ちょうどリハ行っちゃったのよね、とりあえずそこ置いといてくれるかな」
「はいっ、分かりました」
指定された場所に箱を置いて楽屋を出ることにしました。
でも、中にはあの人いなかったなぁ……顔見てないからフード外してたらわかんないと思うけど。
もうすぐリハも終わるし、もしアルバイトスタッフさんだったら私と一緒で誘導終わってライブも終わったら帰っちゃうよね……
「これ、どうしよう……」
たぶん、これ落とした人探してるよね……
「よしっ、頑張って探そう!」
◇◆◇
結局ライブの開始までに見つけられなかった……
でも当然だよね、アルバイト以外のスタッフも入れたら100人じゃきかないもんね……
「はぁ……これどうしよう」
トボトボと廊下を歩いていると私がぶつかったあたりの場所で、一人のスタッフさんが歩いていたので、落とし物として届けようと思って近づいた時でした。
「無いなぁ……やっぱり誰か拾っちゃってるのかなぁ」
その声を聞いてピンときました、この人です!
「あのっ」
「ん?」
声をかけるとそのスタッフさんが振り返りました、相変わらずフードをかぶっていたので顔は見れませんでしたが、それでもわかります。
なんと言ったらいいか、その人独特の雰囲気みたいなのを感じて、声を聞くだけで元気が出るような気がします。
「あれ、もしかしてさっきぶつかった子?」
「はいっ、そうです……それで、もしかして探してるのってこれですか?」
「あっ、それそれ!拾っててくれたんだ、ありがとー!」
そう言ってブレスレットを見せるとその手をそのまま包むみたいに握ってそのまま上下に激しく振られました、ちょっと手首が痛かったけど、肌もとってもスベスベで、女の子の私からしてもとても羨ましいような綺麗な手でした。
大変だったけど、諦めずに探してて良かった~!
「本当にありがとね、これ小学校の時に友達にもらったものなんだ」
「そうだったんですか、とっても綺麗ですよね」
「うん、といってもまぁ安物は安物だけどね」
そう言って笑っている口元だけでもとても美人なんだなってわかるような、そんな素敵な笑顔を見ると、本当に大切なものだったんだなってわかるだけに、見つけられて本当に良かったと思います。
「あの……」
「ん、何かな?」
「あの、あなたもアイドルが好きなんですか?」
あまりにも唐突かな、とも思ったけれど、こうやって一緒にアイドルのスタッフをしているのも何かの縁だと思うし、友達になれたら嬉しいなって自然と思うような、そんな雰囲気を持った人だったので、ついついお話したくなっちゃいました。
よかったら電話番号とか教えてもらえないかなぁ。
「うん、大好きだよ、みんなキラキラしてて楽しそうだしね」
「私もそう思いますっ、私もあんなふうにキラキラ輝けたらなぁ~って思って養成所にも通ってるんですけど、中々オーディションに引っかからなくて……でも、私頑張ります!」
「へぇ、それじゃあアイドルの卵なんだね」
「はいっ、もうすぐ346プロの新しいプロジェクトのオーディション受けるんです!」
「おっ、そしたらまた会えるかもしれないね」
「ま、まだ受かるとは決まってませんし……ところで、よくライブのお手伝いのアルバイトしてるんですか?」
「いや、アルバイトじゃないんだけど……って、あぁ、そっかそっか、フォード取んなきゃわかんないか」
そう言ってそのスタッフさんはかぶっていたフードを脱いで顔を……って、えぇ~!?
「さ、早乙女悠さん!?」
その人は間違いようもなく346プロが誇るトップアイドルの早乙女悠さんでした!
すごい感激……生で会った上にお話までしちゃった……しかもさっきは手まで握っちゃった!
二枚看板として有名な高垣楓さんのような『クール』な感じとは違って悠さんは『
「そ、だからもしそのオーディションに受かったらまた会えるね、その時を楽しみに待ってるよ」
「そ、そんな、私なんて、どうにか書類審査を通っただけで……」
「大丈夫だって、あなたの笑顔とっても素敵だったよ、その笑顔があれば大丈夫!武内くん……あぁ、私のプロデューサーさんね、あの人の人選基準は基本的に笑顔だから」
なんだか、悠さんにそう言ってもらっただけでとっても勇気が湧いてきました!
「はいっ、私も笑顔はちょっとだけ自信があるんですっ、オーディション、頑張りますね!」
「うんうん、その意気だよ……っと、そうだケータイ持ってる?」
「はい、持ってますけど」
「じゃあせっかくだしメアド交換しとこうよ、これも何かの縁だからさ」
「い、いいんですか!?」
「もっちろん」
わぁ……!まさか悠さんと会話できた上にメアドまで交換できるなんて、なんだか幸せすぎて死んじゃいそうです!
「はい、送信っと」
「ありがとうございます!」
「何か相談したいこととかあったらいつでもメールしてね、それじゃあ私このあと打ち上げがあるから」
「はいっ、お疲れ様でした!」
「君も家かえってゆっくり寝るんだよ~」
そう言うと悠さんは手を振りながらフードをかぶり直して走っていってしまいました。
「そうだ、ママに自慢しなきゃ、悠さんとお話した上にメアドまで教えてもらっちゃったって!」
今までの私の人生で最も幸せだったその日は、そうやって終わってゆきました。
その後、初めて悠さんからもらったメールの件名は『ごめん、名前聞くの忘れてた』でした。
主人公がもらった能力ご紹介
『一瞬先を見通す能力』(咲より園城寺怜の能力)
その一瞬先を見た頃には時既に遅し、衝突を避けられなかったのは見て「あっ」と思ったときには既に当たる寸前だったから。
ただし受け止められたのはその分覚悟は出来ていたから。
『相手を勇気づける能力』(ジョジョの奇妙な冒険第七部SBRよりスタンド『ヘイ・ヤー』)
笑顔や応援する言葉以外にも会話をするだけで元気を出させることができる。
地味にアイドル活動で役立ってたり。
ただし、特殊能力の代わりに身体能力は周囲のアイドルと比べても圧倒的に高い。