ボクが転生してからもう、九年ほど経った。
前世ではこの歳で教師になったのかと思うと、自分のことだけど、どれだけ無茶で大変なことをしているんだと、あの頃の自分に桜花崩拳を叩き込みたくなる。
まぁ、そのおかげでかけがえのない仲間と出会えたんだけど。
さっき、たまたま休みだった父さんが母さんを迎えに行ったから、家の中にボク以外に誰もいなくなった。
この隙にこの九年間のことを纏めておこうと思う。
この九年間は、こんなに日常は楽しく過ごせたのかと思うほど充実した日々だった。
同年代の友人と過ごすのは新鮮で楽しかった。
前世では同年代の友人なんてアーニャか小太郎君ぐらいしかいなかったから、一緒にはしゃいでみたり、運動会とかで一致団結して行動したり。
そんな当たり前のことがすごく真新しく感じて面白かった。
父さん、母さんとはたくさん旅行に出かけた。
日本各地を観て回り日本の歴史や文化に触れたり。
遊園地でいろいろなアトラクションに乗って叫んだり。
動物園で様々な動物の生態を見て驚いたり。
それだけじゃなく、何気ない日常も楽しかった。
本当に、家族と共に過ごすのはこんなに幸せだったのかと感じ、ジンテツに仕事ばかりで全然かまってやれなかった前世が、胸を締め付けられるようだった。
やりすぎたらきちんと叱られたけど、それでも前世からは考えらんないほどいろんなことをしたし、それを楽しめた。
もちろんこの世界の情報も調べていた。
まず現在の日付、2089年3月14日。父さんが持って行った小包は、つまりそういうことだろう。
ボクが死んだはずの年よりかは少し後だけど、転生なんてしたんだから今更十数年間ずれているのを気にしても仕方がない。
次に、この世界の状況について。
まず工業技術が発達している。
さすがに軌道エレベーターや完全義体サイボーグ、『カシオペア』や『渡界機』はないみたいだけど。
何よりインフラの発達がすごかった。
前世では地方の過疎化が深刻でインフラが成り立たなくなってきてたせいで、インフラ環境が全然進歩しなかったからか、この世界のインフラに驚いた。
四人乗り一車両の電車が無数に行き交う鉄道とか、無料の無人タクシーみたいなコミューターとか。インフラ網の充実さが、前世と比べ物にならないぐらいすごかった。
歴史としては、百年ほど前まではボクの知っている世界と同じような歴史を歩んできたらしい。魔法技術が世間に対して秘匿されていたところまで同じだった。
……ただし、前世でボクが使っていた「魔法」は、調べられた限りだと中世の百年戦争期ごろを境に大きく衰退していっている。理由としては、
しかし、20世紀の
また世界中で、超能力や魔法などを研究し、学び習得する機関として、多くの学校(日本だと国立魔法科大学とその付属高校九校)が創設されたとのことだ。
ボクは解剖や実験動物とされる可能性があったのに、多くの人のためにその異端の力を衆目に晒した警官は、
まぁそれはそれとして。
こうして生まれた
現に、急激な寒冷化に伴う食糧問題から起きた、今世紀中盤の大戦争時代では、戦力として世界各地で活躍し、世界地図を一変させるのに大きや役割を果たしたらしい。
個人的には、あまり、戦争で戦力として魔法を使うのは納得できないけど、理解できなくはないし世界の違いだと思うしかないのかな。
さらに、この世界の魔法について。
少し複雑でわかりずらかったが、前世の言葉で考えると、この世界の魔法とは、『
またこの定義から、『あくまで魔法とは状態を変化させるだけであり、空間自体を広げたり、実際に時間を操作したり、瞬間移動したり、物質を作り出したり作り替えたりすることはできない。』とされている。
つまり前世での「魔法」はすごく異質だということだ。
大元が錬金術から派生した技術のため、物質変化はお手の物だし、「
この世界では『できないこと』なのだから。
魔法の種類としては、一般的にその成り立ちから、大きく分けて現代魔法と古式魔法に分かれているそうだ。
まず、古式魔法とは『伝統的に受け継がれてきた、現代魔法の確立以前から存在する魔法』が定義らしく、幻覚や飛行魔法など例外はあったり、精霊を使役してそれを介していたりなどの違いはあるが、その多くが曖昧ながらも現代魔法の理論で説明できる、とされている。
また、古式魔法を伝える家系は伝統を重んじることが多く、自分たちの技術を解析することで新しくできた、現代魔法やそれを使う家系を毛嫌いしていることが多いらしい。
それに対して現代魔法とは、『近代の魔法の再発見以降、超能力を多くの人が等しく使えるように理論、体系付けられた魔法』とのことで、先の説明の通り超能力の発展系になる。
物質的変化を起こす「系統魔法」、
〔加速・加重〕
〔移動・振動〕
〔収束・発散〕
〔吸収・放出〕
の四系統八種に分かれているらしい。
この分け方は、今までと全く違う。
例えば「
ここは注意してかなきゃならない。
また、現代魔法の家系では、五十年ほど前に存在した国の魔法研究機関「魔法技能師開発研究所」出身の二十八の家系が頭一つ出ており、四年に一度その中でも特に
そして、これら全ては、まとめて「
魔法考察はとりあえずこれぐらいにして、最後にこの家、
1900年代初頭、外国からこの地にやってきた怪物を、イギリスからきたご先祖様が封印して、その封印術式の管理のために、この地を恩賞としてもらったことがきっかけで、ここに住むようになったらしい。
実際に今も家の離れにその封印があるのを見たことがある。
現在は戦争や御家騒動の影響で、父さん(七代目当主)、母さん、ボク(八代目当主候補筆頭)しかいないらしい。
他の家との関係性については、魔法技術の秘匿を条件に、現代魔法の研究拠点の土地を提供した(後の第七研究所)ことがあり、それがきっかけで、現代魔法師、特に十師族と比較的良好な関係を築いている。
しかし、代々赤毛の髪であることと、外国から来た家系ということもあり、一応古式魔法の家系とされているのに、伝統を重んじる古式魔法の家系とは、対立とはいかないまでも折り合いが悪い。
また、
実際、今まで父さんは、十師族の人たちから、
「やれ、もっと良い人と結婚しろ(母さんは
だの
「やれ、次の子供を早くつくれ(どうやら父さんは子供ができづらい体質らしく、弟や妹ができるかどうかはむずかしいそうだ)」
だのと、いろいろ言われてきたらしく、父さんが言うには、
「ご先祖さまがしてきたことは尊敬してるし、この家のことは大好きだし誇りに思ってるけど、お小言はちょっとね……」
という感じらしい。
まず、
古式魔法の使い手や一部の百家からは「最弱の家系」などと、陰口を叩かれているらしい。
でも、
実は、
おそらく前世では、この一族が
いや、正しくは、『口頭で伝えられてきた魔法が少なく、ラテン語や古代ギリシャ語の暗号化された文書は残っているが、解読ができる人もいなく、家の方針のため外部の機関の解読もできないので、ほとんど失っているといってもいい』という状態らしい。
実際に、父さんが封印を調べるためにつかっていた始動キーは「プラ・クテ・ビギナル」だったし、使える魔法は片手の指でも余るそうだ。
また『【魔法】は誰でも扱える』という情報は伝わっており、現代魔法の家系の報復や社会的な混乱のことも考え、原則として秘匿していくことになっているらしい。
父さんもこの方針には賛成らしく、ボクには、きちんと考えた結果ならば好きにしなさいと言いつつも、
『目の前で人の命がかかってない限り使わないし、利権や権力が魔法と関わっている間は公開しない』
が父さんの方針だと伝えられた。このことについては、僕ももうすこし考えてから決めようと思っている。
いろいろ調べてみると、『精霊魔法』は、もともと衰退していたのに、現代魔法の発展もあって、つぎつぎに断絶。どうやら使い手は世界的に見てもボクと父さんも含めて十人、いや下手をすると五人もいないかもしれない。
ボクがそんな家に生まれたのはなんらかの運命だろうから、今後のためになるような付き合い方をしていきたい。
◇ ◇ ◇
「ふぅ。けっこう書いたな」
ボクは目の前のノートに書かれた、この世界についての情報を見る。
やっぱり、前の世界と全然違うけれど、少しでも早く慣れなくちゃ。
たった九年じゃ、七十年近く関わり続けてた前世の常識に引っ張られちゃうからなぁ。
っと。父さんたちが帰ってくる前にこのノートを隠しておかなきゃな。
「そういえば父さんたち遅いなぁ」
いくら何でも、遅すぎる気がするけれど。
——この時、たまたま時間を潰すためにつけたテレビで、
『皆さん、ご覧いただけるでしょうか。あちらが犯人が人質を取って立てこもっている喫茶店です。
魔法科第一高校の前にあるあちらの喫茶店は普段高校生で賑わっているらしく、今日も・・・きゃあ!?』
——この瞬間を持って思い知ることとなる。
『爆発です!今、事件の起きている喫茶店で爆発がありました!!人質は無事なのでしょうか!?』
———
『本日18時過ぎ頃、都内の喫茶店で、男が人質を取って立てこもり、爆弾を爆発させる事件があり、この事件で、この喫茶店に勤める
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英雄は平穏に愛されない。
英雄とは、様々な悲劇を乗り越えていく者。
ゆえに英雄の周りは
————数多くの不幸が降りかかる。