「ただいま戻りました、
ボクが
今日の夜に
でも、
「ん。戻ったか。こんな日までどこに行ってきてたんだ?」
「
「ああ、そういえば前にめずらしい奴がいるとか言っていたな。それ関連か?」
「そうですよ。どうにかならないかと依頼を受けたのもありますし、
本当に、最初知った時は驚いた。
たまたま同い年で、話しているうちに仲良くなったのもあったから個人的に引き受けたんだけど、そのおかげで十三束家とも良好な関係を築けているから結果オーライかな。
「さすがは『
「……どこで知ったんですか、それ」
『
他の家と関わらない
「ほら、お前がこの前取材を受けていた雑誌の中に書いてあったぞ。『魔法力はなくとも交渉力がある
「……褒められてるのかバカにされてるのか、判断に困りますね、それ」
「なに、こういう時は褒められてると受け取っておけばいいだろうさ」
「そういうものですか。ところで
「ん?私か?大したことはしてないぞ。他の魔法師とやらの家系について少し調べていたぐらいだ。意外と私好みの内容もあったしな」
「どんな内容なんですか?」
「ふむ。ぼーやも『
「当たり前じゃないですか。むしろ知らない方がおかしいですよ。
たしか、
「そうらしいな。私が気に入ったのは四葉の先先代当主の
2062年、当時一二歳の現当主が、七草の狸親父とともに『少年少女魔法師交流会』とやらに出席した時、
「そうですか、七草さんも関係があったんですね」
七草さんが、なぜ治せるのに怪我のあとを治さないのか疑問だったけど、助けられなかったことを忘れないためにあえて残してあるのかな。
「続けるぞ。拉致された現当主は女として耐え難い陵辱を受けて、助けられた頃には子供が産めない身体になっていたそうだ。
それに激怒した当時の四葉家当主である
「……ある一族の、しかも一部だけで国を一つ滅ぼしたって言うんですか!?」
そんなバカな!?
どれだけの戦力差をひっくり返したと言うんですか!?
「私も、都市国家とはいえ一人で国を滅ぼしたこともあるが、戦力差はこちらの方が上だろうな。
とはいえ、実際にそれが行われたことは事実だ。
当然、そんなことをしでかしたんだ。真相を知るものたちは『四葉に下手に触れたらどうなるかわかったもんじゃない』と恐れ、それ故に四葉は『
たしかに、そんなことがあったんならひどく恐れられるはずだ。
同時に、
譲れないもののために、悪評と畏怖を受けることを覚悟の上で、命を懸けて復讐をしたというその生き様は、まさしく『誇りある悪』だから。
でも、それよりも……。
「
「気にするのはそこかっ!」
え、だってそんなこと聞いたことなかったんですよ!
「……中世のヨーロッパで、宗教の皮をかぶって非人道的な人体実験を繰り返していたからな。
まぁ、女子供は殺さなかったし、そもそも国と名乗っていただけで実質的には街だったからな、あれは。伝わってないのも無理はあるまい」
「そんなことがあったんですか」
なんというか
「んんっ!私のことはどうでもいい。
とにかくそんなことがあったからか四葉も秘密主義になったようでな、日本で一番使用する魔法の情報が少ない家系の一つといってもいいだろう。ぼーやが『春原家の魔法』を
「まぁ、観測できる範囲内では、『精霊魔法』の異常性はわかりませんからね」
「クククッ!それはそうなんだろうけどな。
『精霊魔法』は、『精霊と同調して使役する』のではなく、『精霊の力の一端を借り受ける』魔法。
『始動キー』で周囲の精霊を見境なく活性化し、
『呪文』で『どのような魔法を使うのか』と『どの精霊を使うのか』のイメージを固め、
魔法演算領域を
「そして
このプロセスゆえに、魔法演算領域の内部を観測できない現在では、使う魔法さえ気を付けておけば危険視される理由は無くなりましたから」
そう、これが『精霊魔法』を必要以上に隠さなくなった理由の一つ。
『現在の技術で観測できる部分では、他の古式魔法と大差がない』
「そもそも『精霊』とは、独立情報体などと呼ばれているが、突き詰めて言ってしまえば『世界の法則』そのものだからな。
簡単に言ってしまえば、
『現代魔法』とは、
『古式魔法』とは、
それらに対して『精霊魔法』とは、自分で組み上げたイメージを
しかも、計算するわけじゃないから、人が多かれ少なかれ持っている
これが精霊魔法を『誰でも使える』理由だ。
同時に、おそらくこれが『春原家』が魔法を使える家系なのにもかかわらず、魔法力の弱かった理由だと思う。
使われないものは退化する。その原則どおり、春原家では魔法演算領域が狭くなっているんだ。
「でも、『使用者の精神状態に非常に大きく左右される』こと、その性質上『起動式が存在しない』こと、そして『精霊が存在しない土地ではほぼ無力である』こととか現代魔法と比べて色々弱点はありますけどね」
「だが、精霊の活性を抑えることでできる『
デメリットをメリットが上回っていると思うんだがなぁ?」
「だからですよ。こんな技術が一気に知れ渡ったら、世界の基盤が揺らいで大戦争が起きます。
だから、結果だけ先に見せておいて、過程を推測してもらって少しずつ社会に根付かせないと」
そう、それが二つ目。
過程をいきなり公開せずに結果だけ見せることで興味を持たせ、解析されることで違和感を持たせる。
そして、『何かがおかしい』ことが広く浸透してきたら、真実を公表する。
そうすれば被害を最小限にできるはずだ。
「まぁ、頭のいいぼーやが考えたことだ。そこに口は出さないさ」
「ありがとうございます。
さて、話し込んでいたら遅くなっちゃいましたね。早く封印を解いてしまいましょうか」
「そうだな。
それにしても今日のを解いても、完全解呪まであと十二年もあるのか。先は長いな」
「でも今回の解呪で、出歩ける範囲が、この街のなかから関東地方ぐらいまで広がるはずですから少しは観光ができますよ。ヒマな時間のつぶし方はマシになるんじゃないんですか?」
「そうだな。今のままではニートだしな……ってやかましいわ!!
……まぁ、それもすべてぼーやにかかっているからな?失敗などするなよ?」
「わかってます。それじゃあ行きましょうか」
さて、これから約二時間、頑張らなくちゃ。
◇ ◇ ◇
翌日、ボクは都内にある魔法競技の練習施設にいた。
「あっ、いたいた!おはよう、
「おはようナギくん……ってどうしたの、その顔!?ゾンビみたいなんだけど!?」
そ、そこまでなの……?
「あはは……。実は昨日離れで荷物の整理してたらなかなか終わらなくて……」
「まさか徹夜したの!?
もうっ!、そんなことだったら来なくても良かったのに!」
「約束だからそういうわけにもいかないよ。
そういえば
いつもなら真由美お姉ちゃんの訓練に付き合わされてヘトヘトになっているんだけど、あたりを見渡しても見当たらない。
「そう?無理はしないでね。
あの二人だったら今日はお稽古よ。来週はウチの用事で北海道に行くから、その分ね。二人とも会いたがってたわよ」
「そうなんだ。真由美お姉ちゃんは『
「そうよ。ナギくんに教えてもらった技だもの、これを使って負けられないわ。……二つ名は恥ずかしいけれどね」
「べつに教えてはないんだけどなぁ。『
だいたい
「そんなこと言ったって、あれを見て思いついちゃったんだもの、しょうがないじゃない!
あの弾を作る様子が銃の台座を作っているように見えちゃったんだから!」
「それでもまるっきり違うものだと思うんだけど。まあいいや。それで、いつもの部屋でいいの?」
「あ、今日は二人がいないからべつの部屋よ。あそこの角を左に曲がった突き当たり」
「りょーかい。じゃ、今日は二人の分まで厳しくいくね」
「……お手柔らかにお願いね?」
いちおう善処します。
◇ ◇ ◇
「じゃあ、今日はここまでにしようか。ありがとうございました」
「はぁはぁ、あ、ありがとう、ござい、ました」
いつも鍛錬の最後にしている組み手を終了して、フラフラしている真由美お姉ちゃんのほうにいく。
「はい、お水」
「あ、ありがと。……ふぅ、生き返るわ〜。
それで?今日の私はどう、ナギ師匠?」
「師匠だなんて恥ずかしいからやめてよ。
そうだなぁ、八卦の基礎は出来てるし応用も出来てきている。護身術としては十分過ぎるレベルだけど、実戦で使うのはまだちょっと厳しいかな?」
隔週で日曜日に中国拳法、特に八卦掌の鍛錬を三人とするようになってから、今日でだいたい一年半ぐらいだから、普通に考えたら十分早いペースだと思う。
だけど、真由美お姉ちゃんはそうは思わなかったみたいだ。
「つまりまだまだってことね。はぁ〜、一体いつになったら追いつけるのかしら」
「ボクもまだまだ修行の身だけど、小さい頃から鍛錬してきたんだ。そうそう追いつかれはしないよ」
「十師族相手に
そうだ、この鍛錬が始まった理由はボクが真由美お姉ちゃんとの模擬戦で魔法を使わずに体術だけで勝ってしまったことが原因だったけ。
その模擬戦の後に七草さんに体術について聞かれたから、『春原家の魔法や現代魔法は中・遠距離戦がメインで、接敵されたら弱いと思ったから、小さい頃から映像資料で中国拳法を学んだ』と、嘘をついたんだ。
そしたら三人とも納得して、『私に教えて欲しい』となったから二週間に一度、集まって鍛錬することになったんだった。
「あはは、そうだね」
「それにしても、私が一度も勝てたことのないナギくんが、まさか二科生になるだなんてね。十師族の定義がわからなくなっちゃうわ」
そう、この前発表された一高の入試結果でボクは二科生だったんだ。予想はしていたけどね。
「春原家の魔法は使えるけれど、現代魔法はあまり使えないからね。入試の実技が現代魔法なんだから仕方ないよ。
二科生とはいえ受かったことで十分だと思わないと」
「そこが問題なのよね。今の魔法科高校の入試方法じゃ古式魔法師の人が不利だもの。
そこも現代魔法師と古式魔法師の確執になっているのに、偉い人は変えようともしないんだものね」
「そうだよね。ボクも、現代魔法師にお世話になっている古式魔法師として、確執を取り除くために動いているけど、なかなかうまくいかないよ。
そういったことから歩み寄ってもらわないと、そのうち内乱が起きそうでこわいかな」
内乱なんて、悲しい結末が待っているのが目に見えるし、そこにつけこまれてスパイなどを許してしまうから、どうにかしなきゃいけないのに。
「特に今年は、筆記ではトップテンに二科生で合格した人が三人も含まれていたんだから、学校としてのあり方が問われてると思うわ。
しかもそのうちの一人は文句無しのトップだし」
「へぇ、それはまた大変だね」
「……三人のうちの一人はナギくんなんだからね?人ごとじゃないんだから」
「あ、あははは……」
筆記ではそれなりに取れていたと思ってたらそんなに高かったんだ。
そして生徒会っていうのはそんな情報までわかるんだ。
「さて、私もこれから用事があるから帰るわね。今日はありがとう。
じゃあ次会うときは学校でかな?」
「そうだね。じゃあまた来週に、学校で」
「ええ、学校で。それじゃあね」
◇ ◇ ◇
真由美お姉ちゃんとの鍛錬からの帰り道、ふとボクの目に一高がはいった。
「本当に、合格できただけでも良しとしなきゃな」
そう、ボクが一高への受験を決めたのには目的がある。
一つ目は『春原家当主』として、将来の魔法師や魔工師(魔法関係の技術者)との人脈を作っておくこと。
二つ目も『春原家当主』として、自分の経歴に箔をつけるため。
そして三つ目、『精霊魔法の起動式』の開発。
「そのための資料をやっと閲覧できる」
現在の魔法師と非魔法師の決定的な差は『魔法演算領域』の有無だ。
だが、『魔法演算領域』はそういうことはない。
1と100の差ではなくて、0と1の差なんだ。
そこで、もし必要な
そのための『精霊魔法の起動式』なんだ。
前世では『アプリ』っていうものが開発されてたけど、あれも結局は個人の資質に左右されていた。
だから今回は、本当に誰が使っても同じように使える『魔法』、その開発をするんだ。
大丈夫、ボクならできる。ラカンさんも唸らせたボクの真骨頂は、『開発力』なんだから。