落第騎士の兄の戦嗜譚【一時凍結】   作:倉月夜光

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また遅れた(´・ω・`)
本当にごめんなさい

※作者の桐原の印象は普通です。好きでも嫌いでも。
理由は何となく、中の人は同じで黒の剣士はめちゃ好きですね

それでは一巻最終話、どぞーー


一輝vs不遇なあの人

 さて、これは将季と寧々とのエキシビジョンマッチが終わってから数日後の話である。

 

 当然のように始まる選抜戦、自身の能力に自信のある生徒たちがその力を競い合っている。将季と寧々は近接戦、遠距離戦と両方ハイレベルな争いをしていたがこれは学生同士での戦い、あのレベルの戦いがそう簡単に始まるはずもない。実際に一年生の実力者に絞って戦闘の様子を見てみよう。

 

 

 

 

 

①ステラ・ヴァーミリオンの場合

 

 

 

 ステラは会場に入ると自分に大きな注目が集まるのを感じた。その中に自分を侮っている物が多く存在することも分かっている。実際、

 

『いけぇ、桃谷!!お前が生意気な一年生に現実を見せてやれぇ!!』

 

『桃谷!そいつはAランクなんていうがあの落第騎士(ワーストワン)にも負けてるんだぞ!!勝てる勝てる!!』

 

 と言ったようなやじが辺り一面から飛んできてる。

 まあ、自分が一輝に負けたことを否定する気はない。あれは自分も一輝も全力を出して出た結果である。その結末に騎士として、背を向けるようなことは決してできない。そして、外国のお姫様だという点でこの学園の生徒は自分より強いと認めたくないのだろう。日本は第二次世界大戦時から勝者だった。それは黒鉄龍馬の活躍や数人の有名な、それこそあの南郷寅次郎のような騎士の活躍によるものである。そんな常勝の国に生まれ自分も特別であると、外国人には負けないという偏見が働いているのだろう。それはしょうがないことでもある。ステラも一輝と勝負するまで自分の努力は誰にも負けていないと思い込んでいた。人間の視界というものは誰かに補ってもらわない限りなかなか広がらない物なのだから。

 

 その点、今日の相手は自分の実力をよくわきまえている。いや、自分が魔力などのプレッシャーを与えているのが主な原因かもしれないが。

 

「アンタは後ろの連中と違ってわきまえているようね」

 

 ステラが話しかけると甲冑姿の三年、桃谷武士はピクリと一回身震いしステラに改めて向き合う。その結果、

 

(こんな化け物にどうやって勝てばいいんだよ……!!)

 

 桃谷は動けない。理由は単純明快、自分が焼き尽くされる未来しか見えないからである。今十分な距離をとっていても甲冑を焦がし、中に熱を伝えてくるほどの炎。まだ具現させてもいないのにそこまでのプレッシャーを受け桃谷は怯む。

 

「これは実戦よ、試合が開始されて突っ込んでくるんなら丸焼きにされることを覚悟するのね」

 

 そのステラの言葉に、

 

「………参った」

 

 桃谷は降参した。

 

 

 

 ステラ・ヴァーミリオン:勝因・相手の降参

 

 

 

 

 

②黒鉄珠雫の場合

 

 

 

 ―――試合が始まる。

 

 

 

「悪いな超新星(スーパールーキー)!俺の能力はお前のような『水』の天敵の『雷』だ!相手が俺で残念だったな!――《白雷刃》!!」

 

 先手を取ったのは珠雫の相手、菅茂信三年生。自分の『雷』の能力の刃を飛ばす。それを見て珠雫は、

 

「《障波水連》」

 

 水で壁を使って防御の姿勢をとる。それを見た菅はニヤリと笑う。水は電気をよく通す。よって自分の攻撃は相手に届き試合終了だ、と――――――思っていた。

 

「なに!?」

 

 菅の驚きはただ単純に自身の必殺だと思っていた攻撃が防がれたから出たものである。そして、その反応からも分かる通り、珠雫の水は雷を完全にシャットアウトしていた。

 

「なんで!?」

 

 菅は意味が分からずもう一度叫びながら斬撃を飛ばすが、それも先ほど同様に水に阻まれる。

 

「分からないんですか?」

 

 珠雫はその様子を見て少しあきれたように言う。

 

「水という物は元々絶縁体なんですよ。それに不純物が混ざるから電気が通る。それを取り除いてあげただけです」

 

 菅はそれを聞いて驚愕する。いや、なまじ実力があったため分かってしまう。

 

「ま、まさか、そんな魔力制御をしているって言うのか!?そんなもの砂漠の中から砂金を探し出すようなものだぞ!?」

 

 菅が驚愕していることに興味もなさそうに珠雫は告げる。

 

「そういうことですので、ごきげんよう」

 

 次の瞬間、菅の目の前には水の玉が。

 

「ゴボッ!?……ガッ……」

 

 そのまま、菅は意識を失ってしまう。それを確認した珠雫は審判の判定を聞かないまま菅に背を向けて歩き出した。結局、珠雫は試合開始から結果が決まるまで一歩も動くことは無かった。

 

 

 

 黒鉄珠雫:勝因・相手を水没

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、現実などこんなものでそんなに都合よく強者どうしの戦いなどそんなに都合よく起きることはない。

 しかし、そんな中にも面白い組み合わせはある。第七訓練場、ステラの試合が行われた会場でステラの試合後、一輝は控室で試合の時を待っていた。その姿はさながら、歴戦の戦士のようである。当然、過度な緊張もしていなければ行き過ぎたリラックスもしていない。強いて言うならば自然体の状態で一輝は自分の出番を待っていた。これには当然いくつか理由もあるが、それは試合中に語ろう。

 

『一年、黒鉄一輝君。二年、桐原静矢君。試合の時間になりましたので入場して下さい』

 

 そのアナウンスが聞こえたとき、一輝は静かに瞼を開いた。

 

 

 

 

 

「やあ、逃げずに来たようだね」

 

 桐原が一輝に向かって蔑むような笑みを向ける。当然、その表情には自分が負けるという結末はあり得ないというような自信と慢心が混ざっている。どちらかといえば慢心の方が過多な気もするがそれもしょうがないだろう。桐原の能力は広範囲に攻撃できる能力を持った騎士以外に破られたことが無いのだ。近接や近距離の攻撃手段しか持たない騎士に対しての戦闘では無敵、無敗、全勝。どれも同じような意味だが、それらが一概に表していることは一輝が桐原に勝つということは極めて困難であるということだ。当然、桐原は負けるだなんてこれっぽっちも思うことは無い。

 

 その態度に対して一輝は心中で苦笑する。桐原は自分に負けることは今のところ無いだろう。一輝自身もそう考えている。実際、桐原の能力は近接戦において最強の一角と言っても過言ではない。姿を消すということは相手に気付かれず初手の一撃を入れることが出来るということだ。そのアドバンテージは桐原自身が考えているよりも(・・・・・・・・・・・・・)大きい。もし、一輝がその能力を持っていたらとてつもない恩恵を一輝に与えただろう。だがそれは所詮、考えても無意味なことだ。一輝が持つことは実際には無かったし、現実にはその能力は桐原静矢という人間に与えられたものだった。

 

 

 

「桐原君も、今日は試合前からやる気みたいだね。」

 

「当然さ、この僕の今年初めての晴れ舞台なんだぜ?少しはいつもよりも気分もいいってもんさ」

 

 髪をかき上げながらいう姿はまさしくナルシスト、多分別の世界ではワカメヘアーになっているかもしれない。

 

 その姿を見て一輝は苦笑するが特に変わることは無い。いつも通りの態度で桐原と接する。

 

「でも、今日はきっちり負けていってもらうよ桐原君」

 

 一輝は表情を引き締め桐原に正面から言う。それは冗談でもなんでもなく、ただ一輝の本心を告げたものだった。

 

「……。っふ、ふふ、あはははははは!!」

 

 それを聞いて桐原は笑いだす。

 

「君は本当に僕に勝てると思っているのい!?だとしたら君の脳みそは随分とご立派だな!君には僕を捉えることなんて出来ないさ!何もできず、惨めにこの『狩人』に狩られていくんだな!!」

 

 

 

 ――――試合が始まる。

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 さて、分かっていると思うが、この世界の一輝は桐原に相対して緊張は過度にはしていない。初の公式戦とはいえ、さすがの一輝でも、いや、この場合一輝だからこそ緊張するだろう。

 まず初めに、この一輝も緊張はそれなりにしている。それをある程度調節、管理しているとはいえゼロにしているわけではないということは忘れてはいけない。

 しかし、原作ほどに緊張していることも無い。理由は簡単、こんなことと比較にできないほどのプレッシャーと何度も向き合っているからである。確かに一輝の公式戦への思いは人一倍強い。それはこの世界でも変わらない事実だ。だが、KOKリーグ世界ランキング第三位に勝利する人物との立ち合いよりかはよっぽど緊張しない。あの本気のプレッシャーは凄い。というよりも凄まじいという言葉がしっくりくる。いつもは好戦的なくせに本気なんてまったく出さない将季の本気のプレッシャーを受けた人物なんてそういないのと思われる。多分、一輝の兄の双子の弟、つまり一輝のもう一人の兄と一輝くらいの物なのではないだろうか。

 そして、将季はいつも一輝を受け入れてくれたということも大きい。原作の世界では一輝は珠雫以外全て(・・)の人から拒絶されたということが大きかったのだろう。それに、将季に様々な場所に連れていかれて知り合いもたくさんできた。つまり、"1人"という意識が少なくなった。

 

 そんなこんなで一輝はベストコンディションで試合に挑む。

 

 

 

 だが、それで桐原の透明化(ステルス)能力が解けるわけではない。今現在、一輝が桐原を捉えられないというのも事実なのだ。

 

 ――――それがどうした。

 

 持ってないのが当たり前。

 

 相手のアドバンテージは数え切れないほどにある。

 

 自分の全力で、自分の土俵で戦えない。

 

 

 

 そんなこといつものことだろう。いつも、自分は一人。アウェーで、不利な状況で勝つしかなかった。今回もそれと全く変わらない。自分が真っ向勝負に持ち込めない騎士。そんな騎士はどこにでも、いくらでもいる。兄さんなんて自分が戦ったら極論距離を離して銃の連射で試合終了だ。剣速が鈍るまで体の疲れは少なくともちょっとずつ出て来てしまうのでそこを打ち抜かれてしまう。

 そんな負け方は嫌だ。勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。

 

 今は勝てない。―――

 

 なら、今の自分を超えろ――――――――

 

 

 

 

 

 その結果、今現在。

 

 

 

 

 

「なんで、なんで僕の位置が分かるんだよ!?黒鉄ぇ!!???」

 

 矢を放つ。当然それは透明、しかも一発や二発ではない。しかも自分の気配すらも消しているはずなのに弾かれる、避けられる、斬り伏せられる。

 

 こんなことは経験したことが無かった。彼は常に勝者だった。自分が狩る側で、相手は狩られる側。自分は強いと信じて疑わなかった。

 

 しかし今回の相手はただの獲物じゃなかった。牙、己のうちに鋭い牙を潜めた獣。

 はじめは自分の位置も全く分からず、気配を消すと何発も矢が刺さった。

 しかし、それだけだった。その後はどうやってかは全く分からないが自分の位置を補足してきいる。放つ矢の数、位置、全てを見抜かれてしまっている。

 

 自分が獲物だと思い込んでいたモノは実際には自分を狩れる方の存在だと認識してしまった。

 

 認められない。自分はエリートなんだ。落第している騎士なんかに負けるわけにはいかない。なによりも自分のプライドが、能力が、全てが否定されるような感覚が嫌だった。

 

 以前の、いや、相手が一輝ではなかったら桐原は試合を降りていただろう。しかし、今回は一輝が相手だ。自分が負けるなど認めるわけにはいかない。桐原は自分のちっぽけな自尊心を守るために、

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!」

 

 

 

 

 

 最後まで戦い続けた。




最後にちょっとカッコよくなった桐原君
正直こんなことになるとは思っていなかった

さらに折れたステラフラグ
淫乱オヒメサマの・明日はどっち!?
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