落第騎士の兄の戦嗜譚【一時凍結】   作:倉月夜光

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今思い返すとこの番外編、2/3以上が回想である
…タイトル詐欺じゃね?

今回は次回への繋ぎ的な回なので少し短いです


(番外?)クリスマスな休日④~回想Ⅲ~

「……んっ」

 

 イングナは久しぶりにゆっくり寝た、という感覚を持ちながら目が覚めようとしていた。

 親が死んでからこれまで、気持ちが安らぐ時間はなかなかなかったと思う。残っている唯一の肉親である妹は入院しているため、ほとんどコミュニケーションを取れていない。さらに自分が関わりを持っているのは解放軍(リベリオン)というテロ組織だけ。人と話すだけでも気がたつ毎日であった。

 だから意外とあの少年と話すのは楽しかったのかもしれない。武器の話を中心にしていたが、彼に外国の旅について聞くと自分の疑問すべてに答えてくれた。外国に旅する余裕なんてなかったので、彼の話は新鮮だったし楽しかった。

 

「……い。おーい、起きろー」

「んゃ…」

 

 意識が覚醒する。目の前には昨日初めて見た少年。ここは車内のようだが……。

 

「えっと、何が……?」

 

 寝た記憶もなければ、どうしてこの少年と車に乗っているのかも分からない。自分はどうして車なんかの中で寝ているのだろうか。

 

「えっ。…覚えてないのか?」

 

 少年、たしか将季がすごい驚いている。そこまでのことがあったとは………

 

 

 

 ――――――あっ

 

 

 

「あんたなんで!?ていうかこ「おちつけ、おちつけ」!?」

 

 ようやく気絶前のことを思い出した。解放軍(リベリオン)の支部に銃を売りに行ったら壊滅状態で、この男と戦って負けたのだった。というかこの男、何者なのだろ。あの獣軍団、通称『アニマルスタンピード』を素手で消し飛ばすとは。普通に一般人やめているのではないだろうか。いや、伐刀者(ブレイザー)は一般人ではなかったか。

 

「とりあえず、俺がイングナさん?を気絶させたところまではOK?」

「OKよ。あと、イングナでいいわよ。一歳差なんてあってないようなものじゃない」

「了解。イングナを気絶させてから、とりあえずビルの中にいる人全員気絶させて一か所にまとめて縛っておいた。あとは公衆電話から連絡。連絡した内容はガラスが何枚も一気に割れたってこと。これなら悪戯には思われないし事実だし。今頃ガサ入れされてるんじゃないか?」

 

 …この少年、意外と行動力があるというか無茶苦茶だ。なぜやることなすこと全てが前向きに天元突破しているのだろうか。あと縛るってどこから紐かロープかだしたのだろうか。

 

「そう。で、なんで私は車の中にあなたといるの?」

「会社の中で聞いたら普通に武器を売ってただけだったし、運がいいことにこの国の解放軍(リベリオン)の他の支部に喧嘩売りに行けそうだから足がほしかったしな。拷も、げふん、質問によるとイングナも訳あって解放軍(リベリオン)に銃を売り出していたみたいだしな。別に俺は解放軍(リベリオン)の壊滅とかを目指しているわけじゃないし、犯罪者全員捕えるなんて自分が犯罪者だから意味不明だしな!!」

 

 ハッハッハッハと快活に笑う将季を見ながら驚く。

 

「あんた、犯罪者ってどういうことよ?」

「ん?ああ。俺の能力が距離を操る物だってことはもう分かるだろ?それで世界中旅してたら指名手配されてな!一般には広まってないが警察上層部だと有名だぞ。あの”黒鉄”の子供が世界中飛び回ってるってな!!」

 

 またも笑っている将季を見ながら、”黒鉄”についてここで思い出す。

 

「あ、あんた!!黒鉄って”サムライ・リョーマ”の!?」

「おう、俺の祖父だったか。俺はあんまり話したこととかないんだけどな」

 

 ”サムライ・リョーマ”を知らない人はいない。なにせ第二次世界大戦の英雄だ。それならあの強さも納得できる。というかなんでパスポート取って旅していないのだろうか。それなら犯罪者で知らない理由も納得だ。どうせ”黒鉄”がもみ消しているのだろう。指名手配までは撤回させられていないが、世に広まることを止めることくらいたやすいことなんだと推測できる。

 

 色々な情報が出てきたが整理すると、

 

 1、将季はあの”黒鉄”の家の出身

 2、世界中を旅してる

 3、2の結果指名手配される(パスポートも用意してないのだから当たり前)

 

 なんだか目の前の少年がとても馬鹿に見えてきてしまう。その割にまだ逮捕されていないから悪知恵だけははたらくのだろう。

 

「とりあえず分かったわ。あそこに私につながる書類とかはなかったはずだから、一応ここで生活してても大丈夫だと思うし」

「っあ。完全に忘れてた。すまんな」

 

 やはり先行きが心配になってしまうのは仕方がないことなのだろうか。

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 車はもともとイングナの店に着けてあったので、車庫に入れ店の二階、イングナの家に二人で入る。将季は女の子の家に入るのは何気に初めてなので少しワクワクしていたが、イングナの家にはなんというか無駄なものがほとんどなかった。リビングに丸テーブルとソファー、テレビ台とその上にテレビ。イングナの私室を覗かせてもらったところベッドとデスク、去年まで使っていただろう勉強道具が置いてある本棚。まさに生活必需品しかない最低限の生活スタイルだった。見つけられたのはイングナと年下らしい少女が二人で映っている写真が入った写真立てぐらいだ。

 

「なあ、イングナ。この写真って何だ?」

 

 写真を持って聞いてみる。イングナはさっきまで寝ていたからかお腹が空いているらしく冷蔵庫をあさっていた。写真を見せると苦い顔をしたがしぶしぶといった感じで答えた。

 

「それは私と妹よ」

「え?似てないんだな」

「うるさいわよ。私が先祖返りでアジア人っぽいっだけなんだから。父や母に似ているのは妹の方なの」

 

 冷蔵庫に食べ物はなかったのかミネラルウォーターを出し、ソファーに腰掛けるイングナ。その表情は憂いに満ちている。

 

「妹は生まれつき体が少し弱くてね。親が死んじゃったときに体調を崩したんだよね。その時から入院しちゃって。今は解放軍(リベリオン)の関わってる医療施設にいるの。妹の入院費についてあいつらと交渉してね。私が銃を流したりたまに力を貸すから妹の医療費を少し勉強させてくれって。そんなわけだから私は解放軍(リベリオン)に頭があがらないのよ。結果、裏社会にどっぷりはまっちゃった」

 

 将季は眉ひとつ動かさずに聞いている。

 

「それで、暗殺なんて初めてして。最初は吐いたわ。でも、何回も殺しているうちに慣れてくる。警備は私の能力だと割と簡単に突破できるしね。まあ、そんなどこにでもあるような不幸話がイングナちゃんの実態でした。って、なんで昨日会ったばかりの人にこんなこと話してるんだろうね」

 

 イングナはミネラルウォーターを飲みほしペットボトルを捨てる。将季は壁にもたれかかりながら考え事をしていた。

 

「それで、将季はどうしたいの?解放軍(リベリオン)の基地を教えるだけならいいわよ。お金なら今まで貯めてきてるから何とかなるはずだし。これまでがズルして楽してたんだから。捕まらなかっただけ幸運よね」

 

 将季はそれまで考えていた顔をゆっくりあげてかみしめるように返事をする。

 

「イングナ。一つ聞きたいんだが、妹って両親が亡くなるまでどのくらいの病弱だったんだ?」

「えっ?…そうね、日本でいうぜんそくみたいな感じかしら?すぐに咳き込むし、一年に数回風邪で寝込んでたわ」

 

 将季はそれを聞き、壁から離れると、

 

「分かった。少し調べたいことができたからとりあえずイングナが知っている限りの支部の位置と妹さんの入院している病院の位置を教えてくれ。別に手を出すわけじゃないから」

 

 イングナは少し悩むがもとより自分は将季に見逃してもらった身だ。地図を引っ張り出してきて四か所に丸を付けた後、一か所、妹の入院している病院をマーカーでしるしする。それを将季は受け取り、

 

「じゃあ、二、三日したらくるからそれまでまっとうな商売でもしててくれ」

 

 といい出ていく。話の途中から何やら考えていたようだがイングナには分からない。とりあえず、自分と最愛の妹にくる被害が最小限で済めばいいとこの時は(・・・・)思っていた。




次で決着!!……するかなぁ
二話以内は確実なんですけどね
ここまで読んでもらうと全貌(?)が見えてきませんかね?

評価、感想お待ちしております!!
次回は今日の23:00(多分)
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