落第騎士の兄の戦嗜譚【一時凍結】   作:倉月夜光

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長くなった!! 遅くなった!!
すいません!!

次回で番外編は完結します(の予定)ので、どうかご容赦ください

P.S.この話をクリスマス・年末特別編にしました
  ……ということにしといてください( ̄▽ ̄;)


(番外?)クリスマスな休日⑤~回想Ⅳ~

 将季と戦ってから二日、イングナは特に変わることのない日常を送っていた。もとより銃の店なので、頻繁に客が来るなんていうことは無く二、三丁の拳銃を銃弾と共に売ったくらいである。なお、買った客はいずれも二十歳くらいの男性で、銃という武器を玩具かなにかと勘違いしていそうな男どもだったが客であることには変わりないので、ちょっとふっかけて売った。

 テレビを見ていると私が教えたビルの名前が挙がっていたが私は何も知らない、いいね。

 解放軍(リベリオン)の支部がどうたらこうたらで、国際騎士連盟は発見した人物を特定できていないなどの報道があった気がするが、何も関係ない。

 

 そんな何も変わらない日常の一時を過ごしていたイングナだった。が、そこに一人、変動を促す人物が店に入ってくる。

 

「将季、手は出さないんじゃなかった?」

「なんだ?俺がテレビにでも出ていたか?俺は知らない(・・・・・・)な」

 

 真顔で言い切っているが、明らかにこの男の仕業である。イングナは少しイラッと来るが、今はそこが重要なのではない。

 

「それで、あなたは何か気になることがあったんでしょ?アタシに関わるのか知らないけど、報告に来るってことは何かあるんでしょう?」

 

 イングナは話を進める。実際、足が必要だなんだと言っていたが将季は位置さえわかれば移動手段はいくらでもある。車を運転していたから免許は取っているのだろう。あとは電車やタクシーでもいい。人目につかなければ彼自身の能力で移動することが可能なのである。いや、よく考えてみればパスポートを取らずに世界旅行しているくらいなのだから免許なんて持っているはずがなかったか。

 それはともかく、将季がイングナに関わる話があるのは明らかなのである。

 

 将季は持っていた茶色い封筒(B4サイズらしきもの)をイングナに投げ渡す。

 

「それが真実だ。イングナの話には不自然なところがあったからちょっと潰しながら調べてみた」

 

 将季は顔を歪めながら言い捨てる。イングナはそれを不自然に思いながら封筒の中身を取り出す。中には何枚かの紙。

 

 それを読み進めていき、

 

 

 

 ―――――――――イングナは事実を知った。

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 解放軍(リベリオン)のアメリカ本支部であるニューヨークにあるとあるビルの地下では、黒衣に身を包んだ数名が焦った様子で会話していた。

 

「また支部がやられたそうだぞ!」

「犯人は分からんのか!?」

「次はどこが狙われるやら」

 

 男たちは解放軍(リベリオン)の幹部である。いずれの人物も伐刀者(ブレイザー)であり、国際騎士連盟の基準ならば魔力は最低でもCランクはある。さらにこの中の一人に至ってはAランク相当であろう魔力をその身に秘めている。

 

「落ち着け」

 

 一際体の大きな人物が言い放ったその一言で場が静まる。どうやらその男がこの中で一番大きな影響力を持っているらしい。

 

「相手はまだわかっていないが、警察組織が本気で討伐した人物を探していることからそういう組織に所属している人物ではないことが分かる。上層部に行くほど手柄の取り合いになる愚物の集まりだからな」

 

 警察とは民の安全を守るという言葉を掲げている組織ではあるが、そこに権力、利権がからんでくると人間やましいことがでてくるものである。末端の人員は真面目に職務に励むのに対し、上層部は下の者たちを働かせるばかりで、自分たちは責任の擦り付け合いやさらに上に上るために賄賂を流すようになるのである。組織という形をとる以上仕方ないことである。だからこそ解放軍(リベリオン)という組織が管理してやろうと考えているのだ。

 

「ということはだ、相手は少数である。私がやろう」

 

 大男がそういうと場が安心したように弛緩した空気に包まれる。つまるところ、皆我が身がかわいいのである。

 

 が、次の瞬間、

 

 

 

 ――――――ピカッ!!

 

 

 

「うぐっ!?」

「なんだ!!」

「うわっ!?」

 

 一瞬、この場に光が満ち視界が遮られる。そして、

 

「ガフッ!!」

「ギャッ!?」

「ヘアッ!?」

 

 何人かが首から血を流し倒れる。首筋に一撃、即死である。

 その中で大男は、

 

「ふんっ」

 

 自分の能力である”硬化変質”で後ろからくる首元の攻撃をはじく。

 

「っち」

 

 攻撃した本人は大男から距離を取ると姿を現す。

 

「…《貌無き婦人(フェイスレス・マダム)》か。これはどういうことだ……」

 

 そこにいたのはイングナ。当然、このアメリカ支部を統括する立場である大男からすれば見たことのある顔である。

 

「今忙しいのだが。そして、どう弁明するつもりだ」

 

 大男からすればなんでこのタイミングでこの女が動いたかが不思議である。これまで特に何か彼女に反逆されることをした覚えはない。

 イングナは片手に持っていた資料を床に投げ捨てる。

 

「それ。アンタ、身に覚えがあるんだろう」

 

 大男がその紙を見ると顔がゆがむ。

 

「…ばれてしまったか。それで、今回こんな暴挙に出たと」

 

 大男が動じないことを見てイングナはキレる。

 

「バレた…。ああ、ようやく知ったよ。アンタらがゲスの集まりってことにな!!なんで妹を巻き込んでいる!!!契約と違うだろうが!!!」

 

 イングナの投げ捨てた紙には、妹であるエレナに投与されている毒薬(・・)の種類、量が載っている。その薬は体に積極的に影響の出る薬ではないが中毒性を含んでおり、体の機能を徐々に停止にむかわさせる効果があると記されている。

 

 つまり解放軍(リベリオン)はイングナと契約したことを違え、エレナを投薬による薬漬けにしているということである。

 

 大男は少し間を置き話し出す。

 

「…。お前、《貌無き婦人(フェイスレス・マダム)》は自由にしておくには危険すぎた。お前ほどの能力を持つものを国際騎士連盟の勢力につかせるわけにはいかん。妹はその楔だ」

 

 イングナは簡単に光学迷彩という人の目を欺く能力を使っているが、透明化の能力など便利で優秀すぎる(・・・・・・・・)のだ。今のように暗殺に利用すれば相手に気付かれず殺すことができるし、他にもさまざまな用途が考えられる。特に裏社会、犯罪側では察知されてはいけない取引をするときなどに是が非でもほしい能力なのである。そのような能力を持った人材をフリーにしておけない。

 つまり解放軍(リベリオン)は、イングナを縛り付けておくために妹であるエレナを使ったのだ。

 

 

 

 そのことを知りイングナの脳内は後悔に満ちていた。そういえば思いつく節はいくつもあった気がする。

 両親が死んで一時期体調を崩すことはあり得るにしてもその後の回復がいくらなんでも無さ過ぎた。さらに、解放軍(リベリオン)の誘導だろう仕込みで面会できる機会が少なかったのだ。

 

 ―――もっと、エレナのことを考えてあげていれば

 

 ―――もっと、自分の立場を自覚していれば

 

 そんな考えをしていたからか、大男がこちらに突進してきていることに気付くのが少し遅れた。

 

「あっ、きゃあ!?」

 

 大男の能力は”硬化変質”。自身の体を鉄のように変質させる能力である。そんな能力を発動している人のタックルを受け止められるほど、イングナは力がない。吹き飛ばされ、壁に激突する。大質量を持っての突進は、魔力によるブーストも加えとてつもない威力を持っていた。

 イングナが飛びそうな意識を必死に保っていると大男は話し出す。

 

「それよりいいのか。貴様が反逆すれば妹は無事ではすまんぞ」

 

 そんなことは知っている。だが、ここで自分がこの男に敗北すればもう自分たちは明るい人生を送れない。自分は解放軍(リベリオン)に利用され続け手を血に染めるようになるだろうし、妹も薬の効果がどうなるか分からない。さらにひどいことになるかもしれない。そんな未来は、

 

「認め、られない、ん、だよぉ…!!」

 

 壁から体をはがしやっとの思いで立つ。さっきの衝撃で大半の魔力を持っていかれたうえ、体も何か所か骨折しているかもしれない。いや、骨折しているだろう。腕から出血もしているしこれは長く持たない。

 せめての反撃で光の弾を全方位360度から打ち出す。男ごと煙に包まれるがこれくらいで倒せるとは思っていない。自分の姿を消し、手にデバイス、『光剣(フォトンブレード)』の柄を握りこむ。イングナのデバイスは普段は柄しかないが、イングナが魔力を込めると光の刃が出てくるのだ。気分はライトセイバーである。

 煙が晴れないうちに大男に向かって走る。今度は正面から、人体である以上構造上柔らかい部分があるはずなのである。ならばっ―――

 

「はぁ!!」

 

 煙が晴れ、自分をとらえらえれていない大男の目に向かって光剣を突き出す。男は防御姿勢も取れえていなければ、回避行動もとっていない。

 

 ―――とった

 

 男の目に、光の刃が突き刺さ―――

 

 

 

 らなかった。

 

 この男の伐刀者(ブレイザー)としての能力は、簡単にまとめれば”硬化”である。それが、全身に及んでいる(・・・・・・・・)に過ぎない。この男に硬化していない部分はないのだ。

 

 男は自分の目に攻撃があったのを察知し蹴りを入れる。イングナに接近戦の心得があるはずもなく、なすすべもなく吹っ飛ばされる。

 多分、あばらの骨はほとんど折れてしまったかもしれない。

もう立ち上がれない。

魔力での防壁があるとはいえ、相手も魔力をまとった攻撃をしているのでさして防御面にプラスになるわけではない。しかもこの男の魔力はまだつきることはなさそうだ。この地区の解放軍(リベリオン)の人員の中で唯一のAランク相当ということはイングナは知らないがAランク相当の実力であることは分かった。自分ではかなわないことも。

 

だが、

 

「…だ。…まだ、た、たか、える……」

 

 イングナは口させまともに動かせないのを自覚しながらあきらめることをできない。

 今まで自分は、妹に対して姉らしいことをしてあげられていない。それだけではなく自分のせいで迷惑までかけてしまっていたのだとやっと分かった。

 だから、(エレナ)の自由のために、そして、自分の未来(じんせい)のために…!!

 

 大男は器用な方ではない。

 どちらかと言えば自分が不器用な方だと理解している。解放軍(リベリオン)に所属しているが、チンピラのような人員が増えていることに彼は不満があった。

 

 もともと解放軍(リベリオン)は今の腐った社会を変えるために作られた組織だ。決して、テロや虐殺などのために作られた組織ではないのである。

 そんな中、久しぶりに人間として尊敬できる人物に出会えたかもしれない。

 妹のために敵うはずもない相手に向かって、動けないほどのけがをしながらあきらめないその精神力。称賛に値する。

 このあと、自分が他の解放軍(リベリオン)支部に移動し監禁することになるだろうが、大男は久しぶりに手ごたえのある戦いだったと感じた。

 

 大男がイングナに近づく。そして、その手がイングナに触れようとしたとき、

 

「―――っふ」

 

 大男は衝撃を受けながら何らかに吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 さて、イングナに資料を渡した後の話なのだが、将季は自分がイングナの妹の救出に向かうと言った。

 

「でも、いいの?あなたは…」

「もとよりテロリストなんて気に食わないし、今回みたいな下種のやり方はもっと気に食わないだけだ。それより、一人で突進なんて無謀だぞ。解放軍(リベリオン)にも強いやつはざらにいる」

 

 将季は戦いを愉しむのが一番の目的だったが気が変わった。

 今回のような外道なことを見逃しておけないし、なによりその妹さんとイングナはよくある暗部に巻き込まれた人なのだ。

 自分から染まっていった人との命のやり取りをすることに愉しみを覚えるが、巻き込まれた人と戦いたいと思ってなどいない。

 

 問題はイングナが一人で支部に突撃するという点だ。このアメリカ・ニューヨークに存在する支部に伐刀者(ブレイザー)がいないことはあり得ない。

 将季が潰した支部には高くてもBランク相当の人物しかいなかったが(Bランク相当な時点でおかしい)、Aランク相当の人物がいてもおかしくないのだ。それほどに解放軍(リベリオン)という組織は大きくなっている。

 だが、

 

「問題ないわ。一撃必殺は私の得意分野だし、それに、」

 

 イングナは手を血が滲むほど強く握りしめる。

 

「自分の不始末は自分で片付けるわ。もう、決して間違えないように」

 

 イングナが折れないことを知った将季は、せめての条件を付け足す。

 

「なら、俺が送って行った三十分後に襲撃を開始してくれ。そのくらい待ってくれてもいいだろ?」

 

 三十分では妹の場所までたどり着けないかもしれないが、猶予がないよりましだ。

 

 イングナは渋々だがそれを承知した。

 将季が自分のことを心配してくれているということは分かっているのだ。だから、その気持ちをくんだだけ。

 

 その気持ちをくんだことが(・・・・・・・・・・)イングナの助かった理由なのだから、天はまだ姉妹を見逃してはいなかったということだろう。

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 将季はほう、と息を漏らす。

 

 三十分、この時間でここまで来るのは自分でも大変だった。最も、自分の能力はこういうことに向いていることは分かり切ったことなのだが。

 

「しょ…う、き。え……れな…は?」

 

 イングナは霞む視界で将季に問いかける。

 

「ああ、お前から借りた車の中にいる。多分病気の類はもう患っていないが、薬の禁断症状が出るかもしれんからちょっと気絶してもらっているが、無事だ。」

 

 イングナは全身から力が抜けるのを感じた。

 妹は助かったのだ。まだ薬などの効果はあるかもしれないが、一歩普通の生活に向けて進むことができたのだ。

 

 

 

 がらがらと瓦礫をどかす音がする。

 

「お前は何者だ…」

 

 大男は将季に向かって問いかける。

 支部の壊滅はイングナが行ったことかと思ったが、自分を吹き飛ばすなどただの伐刀者(ブレイザー)にできるとは思えない。

 

「なに、通りすがりのお節介だ。気にするな」

 

 将季と大男は相対する。将季は相手の能力がなんとなくであるが分かった。

 蹴った時に返ってきた反動が普通の人とは違ったのである。おそらく、何らかの方法で体重を増やしているか自身の体を変化させる能力なのだろう。

 将季は攻略法が見いだせない。自分の体を純粋に強化する能力なら吹っ飛ばした時点でけがをしているだろうが、相手に負傷は見られない。

 そして、自分が銃を撃ったり剣で切ることはできるが、漫画見たく斬鉄ができるわけではない。もちろん、ただの鉄なら斬り裂けるが伐刀者(ブレイザー)の能力なのだからさらに強度は増していると思われる。将季はまだ鉄で鋼鉄を斬り裂ける技量は持っていない。銃で撃っても無効化されそうだ。

 さらに、八極拳は無意味だろう。先ほどの蹴りは浸透勁を打ち込んでいたが、大男は全く堪えた様子がない。

 

 つまり、将季は決め手に欠けている。

 

 

 

「そうか。では、お節介は消えてくれ」

 

 大男はチャージを仕掛ける。

 もとよりこの身は全身が硬化している。文字通り全身余すところなく(・・・・・・・・・)、体の表面はもちろん体内も硬化しているのだ。だから将季の蹴りも効いた様子はない。

 そして、アドバンテージは大男にある。将季の能力は分かっていないが未だに使ってきてない時点で自然干渉系ではないだろう。他にも攻撃的な能力は除外される。となれば、補助系の能力か攻撃には利用しがたい能力なのだろう。そんな人間はありふれているし、男に敗北という二文字はなかった。

 

 将季は当然、大男の攻撃を避ける。ためしに銃弾打ち込んでみたがすべて弾かれた。魔力でできているので通るかと思っていたが、相手の防御能力はなかなか高いようだ。

 

 大男はチャージをさらに仕掛ける。攻撃が一発決まればこの大男の勝ちだ。将季が身体能力を増強させる能力を持っていたらとっくに使っているだろう。それがないということは相手は自分を受け止めるための力がないということ。つまり自分の攻撃は相手にクリティカルに効くということだ。

 今まで多くの騎士を打ち取ってきた男にはそれが分かった。だからひたすら攻める。相手に選択できる札の種類を限定させるためにも。

 

 

 

「しかたない…か……」

 

 将季も覚悟を決める。

 目の前の男に浸透勁が効かない以上《矛盾破壊(コンフリクト・ブレイク)》程度の衝撃では意味がないだろう。あれは防御不能という点は長所だが、金属を破壊するほどの威力はない。人間の身に対しては有効だがこういう手合いにはまったくもって無意味な攻撃だ。

 

 もとより強者との死合いは将季自身が望んでいたことだ。イングナには不謹慎だが笑いがこみあげてくる。

 

「なにがおかしい」

 

 大男も将季の空気の空気の変化を感じ取る。

 

「いや、こんなところでこんな強者と出会えるとは思って無くてな」

 

 将季が能力を発動し距離を引き離す。この時点で相手に能力が割れたが問題ない。

 

 

 

 将季が自身の体にかけている封印を解き放つ(・・・・・・・)

 

 その瞬間、

 

 

 

「…な!?」

 

 

 

 推定Aランク相当の男が驚くほどの魔力が、将季から発せられた。




次回、将季君の真の能力発動!?

今までの話で分かった人はかなりすごいと思う。

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