落第騎士の兄の戦嗜譚【一時凍結】   作:倉月夜光

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原作読んでください、面白いですよ(説明がめんどくさいなんてことはない(震え声)



ステラと一輝、そして将季

「………ん、っ」

 

 学生寮一室で一人の少女が目を覚ます。

 

「目が覚めたか。ヴァーミリオン」

 

 その少女に声をかけるのはベッドの側に座り、煙草をふかしているスーツ姿の黒乃だった。

 

「理事長先生………ここは?」

 

「君の部屋だ。倒れた原因は《幻想形態》の固有霊装(デバイス)に殺傷されたことによる極度の疲労だからな医者やiPS再生槽(カプセル)を使うような事態ではないから、自室で休ませていたんだよ」

 

 少女、ステラは現在の状態を寝ぼけた頭でようやく理解し始めた。

 

「……ということは、あれは現実にあったことなのね」

 

 ステラは気分が重くなった。

 

 当然だろう。自分は、Aランク騎士なのだ。十年に一人の天才と言われた自分がよりにもよってFランク騎士に負けたのだ。それも、言い訳も思いつかないほどの惨敗を喫した。気が重くならないわけがない。

 

「はぁ。久しく忘れていたわ。負けるって……こういう気持ちなのね」

 

「まぁ気に病むな。黒鉄はハンデ戦とはいえこの私にも勝っている男だ。現時点でお前が勝てる相手ではないよ。」

 

「元世界ランキング三位の《世界時計(ワールドクロック)》にも勝ってるって……。なによそれ」

 

 あの男は化け物か。

 

 いや、それも今更かとステラは思い至る。

 

 一分で自分を使い切る。それはどんなに過酷で、尋常ではない集中力が必要なことだ。その有様はまさに修羅。化け物そのものだ。

(あっ)

 そこでステラは思い至る。

 

「理事長先生。あいつは、——無事なの(・・・・)?」

 

 黒乃はその言葉に頷く。

 

「大丈夫だ。お前よりは重傷だが、命に関わるようなことではない。」

 

 当然だが、人の体は一分間で全力を使い切る(・・・・・・・)なんて風にできていない。そんなことをすれば体にかかる負担が半端なく大きいのだ。

 

 ベッドの上にはかすかな寝息のみ分かる一輝がランニングシャツ姿で寝ていた。

 

「まぁ、自力で部屋に戻って、制服を脱ぐくらいには余力を残していたよ。」

 

 黒乃はあきれた風につぶやく。

 

「理事長先生。この男は一体何なんですか?」

 

「何、とは?」

 

「とぼけないでください!これほどの男がFランクの留年生なんておかしいでしょう!?どういうことなんですか!」

 

「そうはいってもな、Fランクは妥当な判断だぞ。何しろランクは伐刀者(ブレイザー)としての能力を評価している。実践力……つまり剣術や体術は評価項目に存在しない。なにしろ本来これらは超常の力の前に無力なものなのだからな。それが世間一般の考え方だ。だから現状、黒鉄を評価できるシステム自体が無いんだ。まぁ、その項目を省いた黒鉄は……最低だ。こういうのはあれだがここまで出来の悪い生徒も珍しいくらいだよ」

 

「……まぁ、それは分かりますけど……、でも『留年』は納得できません」

 

「どうして?」

 

「アタシは皇族です。国家に強い魔導騎士がどれほど大切な物か、良く知ってます。そしてこんなに戦える人間を単位が足りないなんて理由で留年させるなんておかしいです」

 

 その言葉を聞いて黒乃は苦笑いを浮かべ、語る。

 

 曰く—— 一輝の実家は大戦の英雄である『サムライ・リョーマ』、黒鉄龍馬の家であると。

 

 曰く—— 黒鉄本家が学園に『黒鉄の家を出奔したはぐれ者、黒鉄一輝を卒業させるなと圧力をかけたと。

 

 曰く―― 前学園長が承認し、ありもしない実践教科を受ける最低能力水準などというありもしない規定を勝手に作り、一輝を授業から閉め出したと。

 

 

 

 ステラは焼けるような怒りを覚えた。”それが親のやることなのか”と。

 

 黒乃は同意を示し、そしてそれでもあきらめなかった一輝を褒めたたえた。

 

「まぁ、それが黒鉄一輝という男だ。……さて、あと話したいことがあったんだが」

 

「はい、なんですか」

 

 ステラは純粋に疑問に感じただけだったがこれはかなり大きな問題だった。

 

「お前、学校を破壊するつもりだったのか?お前の伐刀絶技(ノウブルアーツ)、スタジアムどころか周辺一帯を焼き尽くす勢いだったんだが?国際問題でも起こしたいのか?」

 

「あっ………」

 

 ステラは思い出す。自分の使った焔の剣は100mを越える長さの炎だと。そんなものを学園の中で振り回すとどうなるか……、想像もしたくない。

 

「はぁ、今回は何もなかった(・・・・・・)からよしとするが、今後気を付けろよ。直せるは直せるが、大変なんだぞ」

 

「すっ、すいません!」

 

 ステラは慌てて頭を下げて、気付く。

 

「え?何もなかったんですか?あ、学園長がやってくれた?」

 

「いや、今回は観客が自分の判断で能力を使ってくれた」

 

 そんなことが可能な伐刀者(ブレイザー)がいるとは、さすが日本の学園、レベルが高い。

 

 ステラが一人感心してると、

 

「りじちょーー、どうっすか?」

 

 一人の男が部屋に入ってきた。

 

「ああ、今お姫様が目覚めたところだ。で、煙草は?」

 

「ほいほい、俺が買うのって店で色々まずいと思うんだけどなあ……」

 

 そう言いながら黒乃へ煙草を投げる男を見てステラは、

 

「あの、あんたは?」

 

「ああ、俺?黒鉄将季ってんだ。そいつの兄貴。三年生。よろしく、オヒメサマ」

 

 ステラはそこで疑問を持つ。

 

「あれ?さっきの話だと一輝は本家から嫌われてるんじゃなかったっけ?」

 

「いや、子供までそんな思想にそまってどうするのよ。俺は俺だし、弟を邪険に扱うかよ」

 

 確かにその通りである。

 

「ステラ・ヴァーミリオンです。よろしく、センパイ」

 

 ステラも分かったところで黒乃が言葉をはさむ。

 

「そいつがお前の器物損害を防いでくれた男だ。礼くらい言っておけよ。」

 

 言うと、煙草に火をつけふかし始める。どこまでもズレ無い女である。

 

「ああ、そうだったの。ありがとう、助かったわ」

 

「いいや、いいよそんなこたぁ。俺もあの勝負は最後まで見たかったからな。ま、そんなに悪く思うってんなら強くなってくれや。俺、強い奴と戦うのが好きなのよ」

 

「へぇ、弟と同じで強いのかしら?」

 

 ステラは挑発的に返すが、黒乃が煙草の煙を吐きながら答える。

 

「そいつは一昨年の七星剣舞祭(しちせいけんぶさい)優勝者だぞ。強いに決まっているだろう。しかも、圧倒的すぎて出場停止扱いだ。」

 

「………はい?」

 

 ステラは耳を疑った。

 

 七星剣舞祭(しちせいけんぶさい)とは日本にある伐刀者(ブレイザー)の学園に通う騎士の卵たちがその学生騎士ナンバーワンを争いあう大会である。当然、日本各地から選りすぐりの猛者が集う。そこで出場停止(・・・・)なんてどういうことだろうか。

 

「いやぁ、楽しくてちょっとテンション上がっちゃってね、腕斬り落としたり体に風穴開けちゃったりして、今では反省しているけどな!!」

 

 はっはっはと笑いながら話す内容は思ったより生臭かった。少なくともステラが引くくらいには。

 

「ま、今のお前では勝てる相手ではないよヴァーミリオン。そいつは《比翼》と千日手に持ち込める男だ」

 

 ステラは息をのむ、ビックリ、驚いたなんて言葉で表せないほどの衝撃を受けた。

 

 《比翼》とは強すぎる(・・・・)ため指名手配されながら捕らえられるのをあきらめられた(・・・・・・・)犯罪者のことだ。世界各国が逮捕は無理とあきらめた相手に引き分けに持ち込むって……。

 

「まあ、能力の相性がいいからな。流石に真正面からぶつかり合ったら勝てねぇよ。ま、実際に負ける気はねぇけどな」

 

 笑いながらそんなことをいう将季の顔には隠し切れないくらいの戦意が浮かんでいた。

 

「なんていうか、黒鉄家って、化け物の巣窟なのかしら……」

 

 一輝と同室になるにあたり、さっそく不安になってきたステラであった。

 

 

 

 

 

 

 その後、黒乃と将季が部屋からいなくなり少しばかり経ち、一輝とステラが原作通りの対面をした。つまり天井に頭をごっつんこ、床にズドーンである。

 

「ステラさん、頭は大丈夫?」

 

「大丈夫だからその聞き方はやめて、あたしがおかしい人みたいじゃない」

 

 ステラはため息をつきながら頭をさすり、

 

「その、一輝のこと理事長先生から聞いたわ」

 

「僕のこと?」

 

「一輝が今まで家からどんな扱いを受けていたのか、っていうこと」

 

 一輝は黒乃に文句を言いながらもそんな中で努力する理由を話す。

 

 一輝は幼いころから居ないものとして家族に扱われてきた。

 そんな中、ある元旦の日、家に一家全員が集まっていたがその中に一輝の居場所はなく、家にいることも辛くて家を抜け出し裏の山に入っていった。

 そこで一輝は遭難、だが誰も助けに等来ない。悲しんでくれるのはただ優しくしてくれた兄と妹の二人くらいである。もう、いっそ—―――

 そんなときに出会ったのが『サムライ・リョーマ』、黒鉄龍馬であった。

 彼は一輝に、『その悔しさを捨てるな。その悔しさは、まだ一輝が自分を諦めていない(・・・・・・)証拠だから。』――と言った。

 

「そんな、彼みたいになりたくて、僕は魔導騎士になろうと思ったんだ」

 

 ステラはその思いを尊敬した。

 自分は才能があったから努力出来た。強くなれた。そして認められた。だが、目の前の一輝はどうだ?才能が無い、周りからも見放される、存在さえも認めてもらえなかった。それでも、自分は強くなれると信じて、努力,修練を積み重ね、今の境地に至ったのである。

 

「そうね、あたし以上の負けず嫌いがいるなんて知らなかったわ」

 

 そしてステラは聞きたいことがあることを思い出す。

 

「そうそう一輝のお兄さんの将季ってどんな人なの?」

 

 その瞬間、一輝の顔が強張った。

 

「に、兄さんかい?もしかして勝負を挑まれたりした……?」

 

「い、いや。強くなれとは言われたけど…」

 

「ふぅ……良かった。いや、兄さんは基本いい人なんだけどいわゆる”戦闘狂”なんだ。強い人とは片っ端から戦いたいみたいな。僕なんかを認めてくれている人でもあるんだけどね。いい、人…なんだけどね……」

 

「そ、そうなの……」

 

 その様子にかける言葉が見受からないステラであった。

 

「そ、そういえば!!将季の能力ってどんな能力なの?」

 

「ああ、兄さんの能力は分かりやすい”距離”を操作するのさ」

 

 距離とは皆が知っている概念である。この地点Aから目標の地点Bまでの離れている度数。それをいじることができる。つまり、自分と相手の距離を離したり、逆に縮めて一瞬で接近することが可能なのである。

 

「だから兄さんは基本的に攻撃を喰らわない(・・・・・)。それに加えて本人の固有霊装(デバイス)での攻撃、武術も修めている。本当に強い人だよ」

 

「距離を……、だから今日は助かったのか……」

 

「ステラさん、どうかしたの?」

 

「いや、今日観客席とか天井をぶち抜きそうになったんだけど将季のおかげで被害が出なかったのよ。今度改めてお礼言わないと」

 

「兄さんがか……」

 

「どうかした?」

 

「いや…、また勝負を仕掛けられるかなと考えていただけだよ……」

 

 黒鉄一輝の受難は、まだまだ終わりそうになかった。




というわけで、オリ主の軽いプロフィール

黒鉄 将季 man 17 ランクB

能力”距離操作”

固有霊装”???”

伐刀絶技”???”

黒髪黒目、実は一輝より女顔だが性格などのおかげで完全に男と認識される。
一輝の兄、王馬の双子の弟。
破軍学園の三年生。裏話的な感じだが実は学院には入学する気はなく、奨学金と多少の交渉(一人部屋、能力の行使許可)を経て入学。
一昨年の七星剣舞祭の設定はオリジナルです。

 まだまだあかされていない設定もありますのでお楽しみに(´・ω・`)
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