私が最新型のサイフォンを受け取っていた頃、杜宮通り沿いにある中央線のガード下で、高幡先輩はアキヒロさんと再び対峙していた。幸い前回のように異界へ落とされるような最悪の事態には至らなかったものの、異界ドラッグによる常軌を逸した力の前では、高幡先輩と言えど赤子も同然。喧嘩沙汰では済まされない程の重傷を負った高幡先輩は、その場に駆け付けた時坂君らの介入により、紙一重のところで一命を取り留めた。その後は柊さんの術式や治療薬で応急処置が施され、運び込まれた先が九重道場。外傷は目立たない程度にまで治癒が進んでいたおかげで、九重先生やソウスケさんから根掘り葉掘り問い質されることも無かった。高幡先輩はすやすやと、静かな寝息を立て続けていた。
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5月23日、午後18時半。ユウ君と二人で再度九重神社の鳥居を潜り、足元に注意を払いながら薄暗い境内に歩を進める。辺りに人気は無く、東側に佇んでいる二階建ての道場の光が境内をぼんやりと照らしていた。こういった場所は日が暮れると薄気味悪いという印象を抱いていたけど、九重神社に限って言えば、不思議と不快感が無い。独特の雰囲気と夜の静寂が重なり合い、幻想的な空間が形成されていた。
「何してんの、先輩。早いところ戻ろうよ」
「うん。今行くよ」
道場の入り口前で立ち止まっていたユウ君に追い付き、軽く扉を叩いてから場内へ入る。玄関口から向かって右側、広大な一室の片隅にある畳敷きのスペースには、時坂君ら三人の姿があった。
「お帰りなさいアキ先輩、ユウキ君」
「お疲れさま、二人共・・・・・・その様子だと、有力そうな手掛かりは得られなかったみたいね」
「だから言ったでしょ。素人が聞き込みの真似事をするだけで済む話なら、とっくの昔に警察側が辿り着いてるって。まだ誰も足取りを追えていないってことだけは分かったよ。鷹羽組も含めてね」
BLAZEの行方を突き止めるべく、私とユウ君は約一時間半前から市内を巡回し続けていた。暴力団組員が病院送りにされたという経緯もあり、至る所で張り詰めた空気が流れていたけど、目ぼしい情報や目撃証言は得られず、収穫は無し。ユウ君が言うように、素人二人では追いようが無かった。
「お疲れだったな。こんな時間だし、そろそろお前らも腹が減ってきた頃だろ。トワ姉が用意してくれたんだ、よかったら食ってくれ」
そう言って時坂君が差し出した大皿には、海苔に巻かれたおにぎりや卵焼き、お新香などが乗っていて、ソラちゃんがおしぼりを手渡してくれた。何を隠そう自転車で街中を走り回ったことで、先程から腹の虫が鳴き始めていたところだった。ここは変に遠慮せずご馳走になろう。
「余所で出される手作り感アリアリの料理って、食べるのに割と勇気が要るよね」
「またそういうこと言って。なら私が全部食べちゃうよ」
「誰も食べないとは言ってないだろ・・・・・・ちょ、一口がデカ過ぎでしょ。うっわ、女子力ゼロ」
失礼極まりないユウ君の発言を聞き流し、時坂君の背後に寝そべる男性の寝顔を見詰める。時坂君らが駆け付けた時には、高幡先輩の顔面は両目が塞がる程に腫れ上がり、上着は鮮血に染まっていたそうだ。大きな外傷は既に癒えたとはいえ、顔にはあちこちにガーゼや傷テープが貼られていて、そのどれもが血に滲んでいた。余りに痛々しい外傷とは裏腹に、高幡先輩が立てる寝息は大変に穏やかで、朝の起床の如く今にも目を覚ましてくれそうな気配すら感じた。
「高幡先輩は、まだ時間が掛かりそうですね」
「経過は順調よ。でも強力な術式や治療薬の副作用は、体質によってブレ幅が大きいの。最長で三日間以上の時間を要したという報告もある。今日は眠ったままかもしれないわね」
「そうなんですか・・・・・・場合によってはご家族、と言いますか。下宿先の蕎麦屋に連絡を入れておいた方がいいかもしれません」
もし長時間目を覚まさなかったら、高幡先輩をずっとここに置いておく訳にはいかない。病院へ運ぶ必要が出てくるかもしれないし、沢山の人間に心配を掛けてしまうことになる。とりわけ下宿先である蕎麦屋には、一番に話を通しておいた方がいいだろう。
「私もこの間アユミちゃ・・・・・・クラスの子と一緒にお店へ行きましたよ。若い従業員がいるって話は聞いてましたけど、高幡先輩のことだったんですね」
「何か意外。この人が蕎麦屋で働いてる姿なんて、僕には想像できないかな」
「筋は通す人みたいだし、真面目にやってんじゃねえのか。あそこは確か、夫婦二人で切り盛りしてる老舗って話だったっけな。本当に、間に合ってよかったぜ」
不意に思い出された、マンションのエントランスでの会話。北都先輩が言った「お二人」は、あの蕎麦屋の老夫婦を指していたのかもしれない。少なくとも悪い間柄ではなさそうだと思える一方、ここ最近は相当な気苦労を掛けていたのではないかと心配になってしまう。
そしてもう一つ。現時点で最も悩ましい問題は、残された時間があと僅かという現実だ。
「高幡先輩は別としても、異界ドラッグとBLAZEについては、今日中に何とかしないと・・・・・・高幡先輩に、何か心当たりがあるといいんですけど」
不良チーム『ケイオス』。都内でも随一の規模を誇り、名立たる他チームとの激突と吸収を繰り返してきた、単純な人数で言えばBLAZEとは桁が異なる集団。そんな大所帯を相手に、BLAZEは全面抗争を仕掛けるつもりだそうだ。真面にやり合えば単なる数の暴力と化すだけの筈だけど、BLAZE側にはあの異界ドラッグ、『HEAT』がある。BLAZEは既に鷹羽組との一件で歯止めが利かなくなり、一線を越えることに躊躇いが無い。もしそんな真似を許してしまえば、今度こそ死人が出るかもしれないし、HEATが外部へ出回る引き金になりかねない。
「最悪の場合、私達の手で強引にBLAZEを取り押さえるしかないわね。あのアキヒロという男性がHEATを使えば、おそらくソウルデヴァイスを顕現させられる状況下になると思うわ」
「へ・・・・・・先輩、それマジで言ってんの?」
「己の意思で異界化を引き起こす程の力なら、相当なレベルで現実世界への浸食が進行する筈よ。ガード下へ駆け付けた際にも手応えはあったの。一時的になら可能でしょう」
柊さんが言うのなら、可能性は高い。不意にアパートの部屋で『疾れ、ライジングクロス!』を連呼しては首を傾げた痛々しい経験を思い出してしまったけど、忘れよう。ああいう大事なことは早く言って欲しい。
(異界じゃなくても・・・・・・使えちゃうんだ)
現実世界で、ソウルデヴァイスの力を使う。それは人間に対してライジングクロスを振るうということになる。相手がただの人間ではないとはいえ、流石に気が引ける。私にできるのだろうか。いずれにせよ、BLAZEの居場所を特定しなければならない状況に変わりはない。
「ねえユウ君、ネット上に新しい情報はないのかな?」
「目ぼしいのは見当たらないね。でも新種のドラッグが関わってるって噂は、もうあちこちに飛び火してるみたいだよ」
「広まるのが早いですね・・・・・・コウ先輩、これからどうすればいいのでしょうか」
「柊、もう時間がねえ。何か手はないのか?この際何だって構わねえんだ」
「気が進まないけど、手段を選んでいる余裕はないわね。情報筋をもう一、度・・・・・・っ!?」
大きく見開かれた柊さんの両目の先を追って、振り返る。思いも寄らない光景に、私は声を失った。最長で三日間という柊さんの言葉を振り払うかのように、高幡先輩はゆっくりと起き上がっていた。たったの四時間足らずで半身を起こし、虚ろな目を私達に向けていた。
「み、ず・・・・・・みず、を・・・・・・くれ」
掠れ声の訴えに柊さんがいち早く反応し、補給食のキャップを開けながらそっと高幡先輩の下へ歩み寄る。術式や治療薬はあくまで本来の治癒力を促す物だと、柊さんは言っていた。見るからに弱り切っている高幡先輩の身体は、治癒に要した代償を欲しているのだろう。
「落ち着いて聞いて下さい。ゆっくりで構いません、これを飲めばすぐに楽になります」
「クソ、目が眩み、やがる・・・・・・何だってん、だ」
「それも副作用の一つでしょう。直に意識も鮮明になっていく筈です」
柊さんに促され、高幡先輩は再び布団上に身体を寝かせた。高幡先輩が再度意識を取り戻すまで、更に三十分の時間を要することになった。
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「・・・・・・そうか。俺は助けられたんだな」
高幡先輩が左手を握ったり開いたりを繰り返しながら、全身に刻まれた傷の具合を確認していく。次第に頭も冴えてきているらしく、意識を失う直前までの一連の出来事は、鮮明に思い出すことができたようだ。
「肘を外された感触も残ってるってのに、お前らは一体どんな魔法を使ったんだ」
「そういった術理が存在している、とだけ言っておきます。こちらから言わせて貰えば、あなたはそれ程危険で無謀な道に走った、ということです」
「よく分からんが・・・・・・お前さんも、底が知れねえな。まるで北都と話している気分だぜ」
「話を逸らさないで下さい。一歩間違えていたら、命を落としていたんですよ」
「ああ。それぐらいは理解してるさ」
アキヒロさんは今回、異界へ突き落すという手段を選ばなかった。代わりに敢えて直接その手に掛けることで、高幡先輩を完膚無きまでに打ちのめした。話を聞いた限りでは、明確な殺意が込められていたのだろう。異界に魅入られた人間の狂気と、アキヒロさん自身の意思との間にあった境界線は、最早用を成さない段階にまで来ているのかもしれない。
「BLAZEですが、後は私達に任せて下さい。一連の事件を根本から解決する為には、私達の力が必要になる筈です」
「あの奇妙な武器のことか・・・・・・」
「でも俺達には、肝心のBLAZEの居場所が分からないんだ。高幡先輩、もう時間がねえ。何か心当たりはないッスか?」
時坂君の問いに対し、高幡先輩が険しい面持ちを浮かべながら俯く。思い当たる場所があるであろうことは誰の目にも明らかだったけど、高幡先輩は進んで口を開こうとはしなかった。代わりに並べられた言葉は、拒絶を意味する物だった。
「状況は理解できたし、お前らを疑うつもりもねえ。だがそれでも俺は、その役目を他人に譲る訳にはいかねえんだよ」
「・・・・・・カズマって人の為か?」
「ああ。BLAZEは俺とカズマが立ち上げた、居場所その物だったからな」
高幡先輩は天井を仰ぎながら、遠い目をして語り始めた。
かつて日常を共にしてきた相棒と、孤児院の子供達。とある騒動をキッカケにして孤児院を飛び出し、右も左も分からない世界の中を、必死になって生き延びてきた日々。知らぬ間に寄り添い、志を共有する仲間達に恵まれ、掛け替えの無い帰るべき居場所に生まれ始めた、小さな幸せ。
そして―――唐突に訪れた、別れ。たった一つの死別によって何もかもが狂い始め、消え去ってしまった全て。後に残されたのは、抜け殻のように空っぽになった自分と、虚無感。そして狂気の沙汰に身を委ね、復讐心という焔で身を焦がす人間が一人。
時計の針は、あの日から止まったまま。高幡先輩もアキヒロさんも向いている方角は違えど、過去という一点においては、同じだった。
「これで分かっただろう。カズマの代わりにあの馬鹿野郎の目を醒まさせるのも、元リーダーとしてヤクザに手を出しちまった落とし前を付けるのも・・・・・・全て俺の役目だ。どんな力を持ってようがお呼びじゃねえんだよ、お前達は」
怒気を孕んだ高幡先輩の声に、私が思わず一歩後ずさると、板張りの床がギイと鳴った。それを境にして訪れた、長い長い沈黙。
(高幡先輩・・・・・・)
余りに一方的過ぎる高幡先輩の拒絶には、説得力も無ければ現状を打開する要素が何一つ無い。在るのは頑として退こうとしない、有無を言わさぬ重々しい覚悟だけだ。そしてその先には―――明日が、無い。覚悟の果てに、何も見当たらない。私は何かを言いたいのに声が出ず、先んじて時坂君が、閉ざしていた口を開いた。
「高幡・・・・・・いや、シオ先輩。それでも俺達は、アンタを行かせる訳にはいかねえ」
時坂君は座ったままの姿勢で、苛立ちを含んだ尖り声を隠そうともせずに続けた。
「シオ先輩がやらなきゃならねえ理由はよく分かったよ。だがアンタ一人でBLAZEを止められるとは到底思えねえぜ。少し頭を冷やしたらどうなんだ」
「何だ時坂、説教でも始めるつもりか」
「アンタは暴力団の手に余るような連中を、たった一人で相手取ろうとしてんだぜ。過去に執着して、勝手に自暴自棄になりやがって。アンタもアキヒロも、何で『今』に目を向けねえんだ」
「何を言いてえのか知らねえが、何度も言わせるな。今回の一件は俺達BLAZEの問題だ。元リーダーとして、俺がケリを付ける。それだけだ」
「カズマさんの為に、かよ?その人はただの動機ってだけだろ。いなくなっちまった人間が、アンタを見逃す理由にはならねえよな」
「・・・・・・その辺にしておけ。こんな身体でも、その面をぶん殴るぐらいの力は残ってんだぜ」
「いいから答えてくれ。今を蔑ろにして、あんな大怪我を負うことに、何の意味があるんだよ」
受け取りようによっては挑発的に聞こえる時坂君の言い回しに、高幡先輩は憤然とした面持ちで時坂君を睨み付け、視線を重ねた。何に対して怒りを覚えているのかが分からないといった様子で、高幡先輩が行き場の無い荒々しい感情を垂れ流し始める。
「お前も北都みてえな口を利きやがって・・・・・・話は終いだ。世話んなった礼は言っておく」
高幡先輩は腰を上げて、布団の傍らに畳まれていた上着に袖を通しながら、玄関へ向かって歩き出す。全快とまではいかないまでも、普段通りに動ける程度には治癒が進んでいるようだ。一方で、高幡先輩に先んじて駆け出し、先輩の行く先を遮るように立ち塞がる人影があった。
「何の真似だ。退け」
「退きません。行き先を私達に教えてくれるなら、話は別です」
ソラちゃんは仁王立ちをして、その場を離れようとはしなかった。唯一の出口を阻まれた高幡先輩は、それでもソラちゃんを押し退けて歩を進めるべく、右手をソラちゃんの左肩へと伸ばす。すると背後側からユウ君がその手首を掴み、強引に右腕を下ろそうと力を込めてくる。それが癇に障ったのか、高幡先輩は無造作に右腕を振るい、ユウ君はたたらを踏んで床面へ尻餅をついてしまった。
「ユウキ君!?」
「痛ぅ・・・・・・こ、こういうのは僕の役目じゃないってのに」
「も、もう。急に無茶しないでよ」
ユウ君は私の手を借りて、尻を擦りながら立ち上がり、眼鏡の位置を直して続けた。
「ねえ先輩。物は試しに、下らない拘りやプライドをぜーんぶ捨てて、自分を見詰め直してみなよ。びっくりするぐらい滑稽だから。経験者は語るってね」
「お前・・・・・・」
「それについ最近、似たような境遇を乗り越えた先輩がいたっけ。いい機会だから言っておくけど、アキヒロって人のことを『アキ』って呼ぶの止めてくれない。何かムカつくんだよね」
ユウ君の思わせ振りな言動に、今度は高幡先輩の視線が私へと向いた。
似たような境遇、か。過去に囚われていたという点で言えばそうかもしれない。でも私には、似ているとは思えない。死人憑きが私に憑り付いたのは、私が歪んでいたからだ。高幡先輩は私とは違う。歪んではいないけど、きっと真っ直ぐ過ぎて、周りが見えなくなっているだけなのだろう。
「何なんだ、お前らは・・・・・・何が言いてえ。いなくなっちまった奴のことなんざ、綺麗サッパリ忘れちまえとでも言いてえのか」
「そうじゃありません。時坂君もユウ君も、今と向き合って下さいって言ってるんです」
私はお兄ちゃんを忘れない。一緒に過ごしてきた日々を忘れようとは思わない。でも私が再びラケットを握ったのは、私とテニス部の為であって、お兄ちゃんの為ではない。思い出に浸っている時間があったら、一球でも多くのボールを打ちたい。過去を想う暇があるなら、今を見詰めていたいって、私は思う。今に勝る過去は無いということを、新しい居場所達が教えてくれた。
「昨日テニス部の先輩達が、高幡先輩の話を聞かせてくれました。少し怖いけど、面白くて良い人だなって。最近顔を見せないなって、みんな心配していましたよ」
「テニス部・・・・・・ああ、あいつらか」
高幡先輩は小さな笑みを浮かべて、何かを思い出すように頭上を仰いだ。
この一年半、過去の全てを捨てて生きてきたと、高幡先輩は言った。でも新しい居場所を見付けるのに、一年半は充分な時間だ。私なんて、たったの一ヶ月で見付かった。私には想像することしかできないけど、この一年半は高幡先輩にとって、空っぽなんかじゃない。
「カズマさんにシオ先輩やアキヒロがいたように、アンタにだって待っている人達がいる筈だ。もし一生モノの怪我でも背負っちまったら、苦しむのはアンタだけじゃねえ。最初から分かってたんだろ、先輩」
高幡先輩は時坂君に答えず、一度私達に背中を向けて、立ち尽くす。静まり返った道場内に私達の息遣いだけが流れ、大きな背中へ視線が一手に注がれる。やがて高幡先輩は振り返らずに、私達に告げた。
「それでも俺は、アキヒロと決着を付けに行く。こいつだけは譲れねえ」
「別に異論は無いぜ。一人じゃ行かせねえけどな」
「・・・・・・やれやれ。時が経つのも早いもんだ。お前達のような後輩が、あの学園にいたとはな」
言いながらこちらを向いた高幡先輩の表情は、初めて目の当たりにする物だった。澄み切った眼には一片の陰りも無く、優しさと頼もしさに充ちていて、温かい。容姿がお兄ちゃんに似ていることも相まって、思わず胸がドキリとする。きっとこれが、高幡先輩本来の顔なのだろう。高幡先輩の下に集った人間らが慕い、カズマさんと共に逆境を生き延びてきた、先輩の素顔。高幡先輩は今、しっかりと前を向いている。
「俺達からも改めてお願いするぜ。これ以上この杜宮で、連中に好き勝手やらせる訳にはいかねえんだ。力を貸してくれ、シオ先輩」
「ああ。俺とアキヒロの決着に、お前達も付き合って貰うぞ」
高幡先輩と時坂君は右拳を前方に出して、こつんと叩き合った。その様を眺めていた柊さんの表情が曇っていた理由が、今の私には理解できなかった。