オーバーロード~夢幻の刻~   作:820

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第1話 終わりの始まり

「‥こちら、ファントム1…どうぞ」

「ザザッ‥ファントム2オールクリア‥どうぞ」

 

「取り敢えず全員は撤退完了したの?」

 

「隊長!後は隊長だけです。」

 

「そう…よかったわ」

「じゃあ、宿営地まで撤退ね」

「了解」

「…あっ!隊長…確か今日じゃなかったですか?最終日って?」

「そうね、さっさと終わらせて、挨拶に行かなきゃ」

 

私は、瓦礫の影で光学迷彩を展開し姿を隠していた。

 

今日、あと数時間もすれば、ユグドラシルも終了してしまう。

急遽特殊部隊である、私たちの部隊に出撃命令が下ったのだ

同盟軍の部隊の撤退支援が任務内容であったのだが、

同盟軍の撤退確認後後詰めで警戒していた私達の部隊にゲリラが人間爆弾よろしく突撃をかけてきていた。

出撃前に、ユグドラシルにログインしてるだろう、モモンガさんにはメールでメッセージは送ってあった。

 

現在の状況としては、私のみが戦場に取り残されている。

 

確かこの後、24:00にこの一帯に空爆が予定されている。

 

「もう一回だけ、メールしておこうかな?」

 

私は、現在パワードスーツと直結している、ダイブマシンのコンソールを意識操作して

モモンガさんにメール送信をする。

 

この軍事用ダイブマシンは、大脳に直接周囲の状況や自身の肉体・精神状態を確認できるものだ。

ゲーム用のダイブマシンの数倍高性能なものだ

 

元々この軍事システムをダウンサイジングして開発されたのがDMMO-RPGシステムだから出来る芸当なのだが、

「また、懲罰対象かな?」

 

 

 

同時刻

ナザリック内円卓の間

「お久しぶりです。ヘロヘロさん」

「おひさーです。モモンガさん」

 

モモンガとヘロヘロの会話は現実社会での事や、会社の愚痴など

昔と変わらない、ナザリックではありふれた会話だった。

 

「あ、そうそうモモンガさん、さっき円卓に来る前に各NPCのAI弄っときましたので、最終日ですけどログイン出来なかった時に思いついた設定なんか入れさせてもらいました。」

「有難う御座います。お疲れ様です。AIといえば、ファントムさんが、シズのAIを褒めてましたよ。」

「お!ファントムさんにですか、それは嬉しいですね~。彼女の知識はぷにっとさんなんかも一目おいてましたからね。」

ファントムの軍事知識や作戦立案力は、≪アインズ・ウール・ゴウン≫の軍師と謳われた、ぷにっと萌も尊敬していたのだ。

 

 

「さっきもメールが来てまして、緊急事案が発生してるみたいですよ。」

「いや~最後に彼女にも会っておきたかったですね。眠気がマジヤバイですが。」

「無理しないで下さいね。ヘロヘロさん」

「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰って。モモンガさんユグドラシル2なんてあったら、またそちらで遊びましょう。最後までナザリックを維持して頂いて有難う御座いました。そしてお疲れ様でした。」

「お疲れ様でした。そして有難う御座いました。ヘロヘロさん」

 

ヘロヘロがログアウトしていった。

 

時間を確認したモモンガは、ギルド武器である≪スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン≫の前で逡巡したが、その杖を手に取り、円卓の間から移動する。

モモンガは最後に円卓の間を一周し、この一週間でログインしてくれたギルメンの椅子を触りながら、心の中で感謝の言葉を紡いでいき、ファントムの椅子の前テーブルに羊皮紙を1枚置いた。

 

 

「さて、行こうか、我が、いや我らギルドの証よ」

 

 

円卓の間を退出する、モモンガの背には悲哀はなく満足感で溢れていた。

 

 

 

 

23:58:00

 

私の状況は

[変化なしか…この時間じゃ、味方の救援も期待できないし。取り敢えず最後の悪あがきでもしときますかね]

 

既に上空から迫って来ている爆撃機の轟音を察知しながら

ゲリラの特攻部隊の後ろに控えていた本隊に攻撃をかけていく。

 

 

23:59:00

 

 

[あ~も~絶対最後は玉座の間で終わりましょうって、モモンガさんと約束したのに]

バイザーの片隅に表示させていた、日本時間の数字が1秒・1秒と時を刻んでいく。

 

23:59:30

 

 

大脳に直接響く警報音とともに目の前のシステムメッセージ画面に警報表示が出る。

私は、背後を確認した。

 

[あれは、なに?]

 

背後の空間にドス黒い靄の様なものが見える、その靄は底なし沼のような恐怖を抱かせて、それでいて人を引き付ける魅惑さがあった。

 

空爆が開始され廃墟と化している都市を更に蹂躙していく

 

 

 

0:00:00

 

 

爆風に飛ばされた私は、その歪に広がる靄の空間の中に落ちてしまった。

 

その空間の中で、私はなぜか安心感に包まれていた。

 

[あ~、私、死んじゃったのかな?]

 

この職業についた時から、遅かれ早かれこの瞬間がくる覚悟はあったが、この感覚は

ユグドラシルにダイブする時の様な浮遊感だった。

 

どこまでも落ちていってるのか、浮いているのか、感覚がなくなり、意識も無くなろうかとした時

 

目の前に浮かんだ風景は。荘厳な宮殿の玉座に座っている、死神?魔王?

 

死そのものを体現したかのような姿が見えた。

 

[あれは?モ・モ・ン・ガ・さ・ん?]

 

その風景が、最後に私に見えたものだったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い眠りから目覚めたような感覚がある。

 

瞼を開けた私は、周囲を確認する。

 

[草原?]

 

森の外れの草原だった。

 

[夢?それともこれが、死後の世界?]

 

感覚として現実に感じることが出来る。

意識がはっきりとしてきた、手足を動かし一つ一つ確認していく

 

[生きてる!?]

 

取り敢えず自分の装備を確認する。

 

「装備のロストはなしっと」

「パワードスーツも機能に問題無し」

 

腕に装着した大気組成解析装置を確認すると、[え?異常組成探知不可?]

この装置は対BC兵器用であったが、現在の地球の大気自体がBC兵器以上の劣悪さの為に

常にレッド表示だったのが、グリーン表示だったのだ。

 

周囲レーダーでも確認するが、敵味方とも表示はないが、付近に敵が現れる可能性があるので、機械の故障も考慮して、パワードスーツの大気浄化機能・光学迷彩機能は維持したまま移動する事にする。

 

身を隠せる森の中の小川の近くで、再度安全を確認して、全ての機能を停止して、ヘルメットを脱いだ。

 

[空気に味がある]

[おいしい]

 

[でも、ここは何処なんだろう?]

[なんとなく、ユグドラシルのフィールドと似てるわね]

 

 

小川の水の安全を確認して、珈琲を飲む。

 

「あの、空間の中で最後に視たの、モモンガさんだったのかな?」

 

心地よい風が吹き、鳥の鳴き声が聞こえる。

 

「仮想空間の中や映像でしか見たことの無い、景色が目の前にあるってのがいいわね」

 

再度、あの黒い靄の中で見た最後の景色を思い出しながら、ここで野営する準備を始める。

 

背嚢からテントを出し設営いていく。

 

キラキラと輝く星空を見ながら、携行食を食べる。

 

「ふわ~!この景色、ブループラネットさんに見せてあげたいな~」

 

自然をこよなく愛していたギルメンの事を思い出しながら、夜空を鑑賞し、そのまま眠りについてしまった。

 




なんとなく、最終日モモンガさんには、ほっこりとして貰いました。

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