オーバーロード~夢幻の刻~   作:820

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第5話 仲間

聖堂の壁一面に描かれた、スルシャーナ(モモンガ)のフレスコ画を見ながら、

仕出かした事の重大さを噛み締めている、私。

 

この地も、国家としてはまだまだ未熟ではあるが、各神官長が合議制で人間の為の政治を行っている。

 

「レイファ」

私の数歩後ろに控える少女の名を呼ぶ。

「この地での、私の仕事は終わりました。」

 

「お待ちください、今貴女様が居なくなれば、私たちの最後の心の拠り所が…」

レイファと呼ばれた少女が慌てて答える。

 

「その甘えが、人間の衰退に繋がったとは思いませんか?」

 

元の世界の歴史が証明している。

人は力ある者に憧れる、その力ある者を英雄・神と奉り上げて従属する。

 

「だからと言って、力を持つ一人の人間の気分だけで、この世界を好き勝手にしてよいとは、私は思いません。」

 

より強き者に淘汰されるだけならばまだしも、国家果ては人類を破滅させる。

 

「それは…そうですが…」

 

「だから、私はこの地を捨てなければならないのよ。」

 

「この先、もしかすれば私たちの様に力を持つ者が現れるかもしれない。」

 

「神が、再誕されるのですか?」

 

「神とは限らないわ、人間に対して。」

 

「ま・魔神…?」

 

「そうよ、私達プレイヤーは、あなた達が言う神にも魔神にもなる存在、だからこそ私自身が見付けなければならないのよ。」

 

「ぷれいや?」

 

「レイファ、その言葉はあなただけでもいいから覚えていてね」

 

「はい。」

そう答えたレイファの瞳から涙が溢れた。

 

私は、レイファの方に振り返り

「一週間後出立します。」

 

 

出立の日

 

レイファだけの見送りの中、私は街を離れる。

 

数歩歩き、振り返れば深々とお辞儀をしたレイファの背後の街の外壁を見て

この数十年の想いが……

 

「もう人間ではないのね…私は」

 

年齢を重ねない事に気付いてからの、私は肉体・精神がアンデッド化してる様だった。

 

その為であろう、感慨深く思う事もなかった。

 

街道は使わず、真っ直ぐ森の中へ歩を進める。

 

どうしても最後の戦闘で見たドラゴンの事が気になるのだ。

 

ユグドラシル時代のドラゴンとは、どこか違う感じがしたのだ。

 

そのドラゴンの事を知りたいと思い、あの戦場へ向かった。

 

戦場跡を辿り、森の奥へ向かう。

[なにか?雰囲気が変わった。]

纏わりつく空気が濃密になった気がした時

 

「そなたは、迷子でござるか?」

「…ござる?」

「これよりは、某の領域でござる、大人しく出ていくなら何もしないでござるよ」

 

頭の中に直接語りかけてくるような感じだ。

 

あの時のドラゴンかと、警戒しながら

「姿を見せたらどうなの、もしかして恥ずかしがりやさんなの?」

 

「むむむ、某の姿を見て驚愕するでござるよ」

 

目の前の木々の間から現れたものは…

 

体長2m程の4足の獣らしき姿をしている。

 

月明かりが当たり、その獣の姿が確認出来た、私は脱力した。

 

その獣はクリッとしたつぶらな瞳をした。

どうみても大きなジャンガリアンハムスターだ。

 

思わずその獣にダッシュした私は、その獣を抱き締めていた。

 

「いやー!可愛い!なにこのモフモフ感。」

「な・な・動けないでござるよ、くすぐったいでござるよ」

モフる事10分

「た・助けて欲しいでござるよ、某の負けでござるよぅ。」

我に返った私は、少し名残惜しいが、そのハムスターから離れた。

 

「め・目が怖いでござるよ、お主は何者でござるか?」

 

「私の名は、ファントム。であなたの名前は?」

「某に名はないでござるよ。そなたが言ったジャンガリアンハムスターが、某の名前でござるか?」

「う~ん、種族名かな?」

「なんとお主、某の仲間を見たことがあるのでござるか?」

 

「そ~ね、見た事があるかと言われればあるけど、あなたみたいに大きくなくて掌に乗る位の大きさよ。」

 

「そうでござるか。某とは違うのでござるな。やはり、某は一人ぼっちなんでござるな。」

つぶらな瞳がウルウルしだした。

 

「そ・そんな悲しまないで、どこかに仲間がいるはずよ。」

 

「そうでござるな、諦めるのは早すぎるでござる。」

立ち直りは早かった。

 

「ここは、あなたのテリトリーなの?」

「そうでござるよ、少し奥に行けば某より強い生き物がいるでござるよ。」

 

「姫は、こんな森の奥まで何をしに来たでござるか?」

「姫って、奥にいる強い生き物ってドラゴン?」

「違うでござるよ、なにかおっきなバジリスクでござる。」

 

「最近そのバジリスクが、某のテリトリーを侵略して来て困ってるでござる。」

「姫は、凄く強そうでござるな、某をもっと強くして欲しいでござる。」

 

ハムスターのお願いごとなど無視して、質問をしてみる。

 

「あなたは、昔この先で人間とモンスターの戦闘があったの知ってる?」

「う~む、確か某がもう少し小さかった時にあったような?」

「そうその戦闘でドラゴンが居たんだけど、そのドラゴンの住処って知ってる?」

「む~、住処までは知らないでござるが、よく飛び回ってはいたでござるよ」

 

「じゃあ、もっと奥へ行って、そのバジリスクとかなら知ってるのかな?」

「どうでござろうかな?この森は沢山強い生き物がいて、テリトリー争いをしてるでござるから知ってる者がいるかも知れないでござるよ。」

 

「ふ~ん、解ったわありがとうね。」

更に奥へ進もうとしたら、

 

「待って欲しいでござるよ、姫。」

「某も一緒に行くでござるよ、案内もいるでござろう?」

「それに某を強くして欲しいでござる…ござるよ。」

 

「ふ~、分かったわよ。じゃあ案内よろしくね。」

 

「承ったでござる。」

全身で喜びを表現するハムスター…可愛すぎる。

また抱き着いてモフリ始める、私。

 

「うお~!くすぐったいでござる~」

 

「と・取り敢えず、こんな夜更けでござるから、某の寝床に案内するでござるよ」

 

「じゃあ、行きましょう。そうそうあなたの事を、これから[チョコ大福]ね」

「某に名を頂けるのでござるか。」

「チョコ大福!ありがとうでござる、姫。」

 

こうしてチョコ大福の寝床へ向かう私。

 

「冒険には、やっぱり仲間がいるわよね。よろしくねチョコ大福。」

 

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