あのはぐれ悪魔討伐から数日たつ。
俺は身勝手ながら、オカ研の活動を休んでいた。
はぐれ悪魔との戦闘、俺は何一つも出来ずにただ戦いを観戦する事しか出来なかった。
食われそうになっても、何も出来ずに突っ立てるだけだった。
剣道部の片瀬さんや村山さんに頼んで、竹刀の一本を借りてひたすら竹刀を振っていた。これ以上オカ研の皆に迷惑をかけたくないから
けど、俺がそんな身勝手な事をしている間に、色々ととんでもないことが起こっていることに、俺は知る由も無かったんだ……
数日ぶりに俺はオカ研へと向かった。今日のイッセーはずっと上の空だったし、何か思い悩んでいるようだった。俺が聞いても曖昧な返答しか返さなかったから、俺は何かあったのだろうと直ぐに解った。イッセーが何も言わないと言うのは滅多にない事だから。
俺は早足でオカ研に向かうと、イッセーがリアス部長に平手をされていた。
「……イッセー、何があったのか話してくれないか?」
俺が何があったのか尋ねると、イッセーは重い口調で話し始めた。
始まりはイッセーの小猫ちゃんの召喚依頼のダブルブッキングから始まった。
今度こそ契約を貰おうと意気込んでいたけど、待っていたのは惨殺された召喚依頼主だった。
召喚以来をした家の主を殺したのは、フリードと言う狂った神父であり、はぐれエクソシスト。
そしてフリードの助手としてアーシアちゃんと再会したイッセー。最悪な再会の仕方だ。
イッセーが悪魔と分かっても、アーシアちゃんはイッセーを庇おうとした。
けどフリードはイッセーの目の前でアーシアちゃんを辱めて暴行した。イッセーはアーシアちゃんを助けようとしたけど、フリードの持つ光の剣や悪魔に有効となる銃により返り討ちにあってしまったそうだ。
間一髪にオカ研の皆がイッセーを助けに来て、すぐさま撤退したみたい。イッセーはアーシアちゃんを助けようとしたけど、出来なかったみたいだ。
そしてその翌日、イッセーは偶然にもアーシアちゃんと再会したみたいだ。
イッセーは再会したアーシアちゃんをハンバーガーショップやゲーセンに連れて行ったみたいだ。ゲーセンではプリクラ撮ったり、UFOキャッチャーのぬいぐるみをアーシアちゃんにプレゼントしたようだ。
アーシアちゃんはイッセーに語った。自身の過去を。
小さい頃に怪我した者を癒す力に目覚めて、大きな教会のシスターになって来る、信者達の傷や病気を癒していたみたい。彼女は本当に聖女と言われていたそうだ。
だけど、傷ついた悪魔を癒した途端に魔女だ異教徒だと罵られて教会を追い出されたようだ。そのアーシアちゃんを堕天使が拾ってくれたみたい。
アーシアちゃんには夢があって、友達を一杯作りたいと言っていた。イッセーはアーシアちゃんとはもう友達だとそう言った。
だけど楽しい会話は続かず、夕麻ちゃんいや堕天使のレイナーレがアーシアちゃんを連れ戻しに来た。夕麻ちゃんはやはり堕天使だったみたいだ。アーシアちゃんは堕天使の支配下であったあの教会を逃げ出してきた。
アーシアちゃんを護ろうと、イッセーは神器を出現させる。イッセーの神器を見てレイナーレはイッセーの神器を知っているようだった。
イッセーの神器は力を倍加させる能力があるらしく、その能力を使おうとしたけど、レイナーレにあっさりとやられてしまい、アーシアちゃんを連れ戻されてしまった。
そして今に至るみたいだ。
「成程よく分かった。イッセーそれでどうするんだ?」
「アーシアを助けにいく。例え一人でも」
「駄目よ。貴方はもうグレモリー家の眷属、勝手な真似は慎みなさい」
リアス部長はイッセーに強く言った。今のイッセーは無断で身勝手な事は出来ないんだ。
「だったら俺を眷属から外してください。例えはぐれになってもアーシアを助けに行きます」
イッセーの外して欲しいと言う事にリアス部長は呆れかえって
「馬鹿な事を言わないで。出来るわけないでしょう」
「俺って兵士の駒なんでしょう?一つの駒が消えたって。大したことは無いでしょう?」
イッセー、お前は自爆特攻でアーシアちゃんを助け出そうと言うのか?それは無謀だし、身勝手すぎる。
「お黙りなさい!」
リアス部長の御怒りの一声で、イッセーは委縮する。
「イッセー、貴方はポーンを一番弱い駒だと、そう思っているわけ?」
イッセーは無言で目線を逸らす。それをリアス部長は肯定と受け取り、説明をする。
「悪魔の駒はチェスの駒と同様の特徴を持つと言ったはずよ」
「ポーンの特徴って……」
「プロモーション、ですよね?」
「そうよ。よく知ってるわねユウマ」
「一応チェスの事について勉強しましたから」
プロモーション、それはポーンにおける最大の特徴。ポーンを敵陣の最奥まで駒を進めれば、キング以外つまりクイーン・ビショップ・ナイト・ルークの駒へと昇格できると言うかなり強い特徴を持っている。
「俺が皆と同じような力を持てるっていう事ですか?」
「主である私がその場所を敵陣地と認めればね。例えば教会のように。ついでに貴方の神器の事だけど」
「力を倍にするんですよね?夕麻ちゃ……堕天使から聞きました」
イッセーは夕麻ちゃんの名を口走ろうとして、慌てて堕天使と言い直した。イッセーはまだ心どこかで夕麻ちゃんの事を……
「想いなさい」
リアス部長はイッセーの頬を優しく撫でながら
「神器は持ち主の想う力で動くの。その想いが強ければ強いほど、必ずその想い応えてくれるはずよ」
さっきまで厳しかったのに、今は優しくイッセーの事を思っている。大切な眷属には優しい。やっぱりリアス部長はいい
イッセーが自身の神器への想いを再認識していると、どこかへ行っていた姫島先輩が戻ってきて、リアス部長に耳打ちをした。
「急用が出来たわ。私と朱乃は少し外出します」
「部長!話はまだ終わって……!」
「いいこと?プロモーションを使っても、駒ひとつで勝てるほど堕天使は甘くないわ」
それだけ言うと、リアス部長と姫島先輩は魔法陣でどこかへ飛んで行ってしまった。
部室に残ったのは俺とイッセーに木場君と小猫ちゃん、そしてエクスカリバーだけだ。
イッセーは黙って部室を後にしようとする
「行くのかい?」
木場君はイッセーを呼び止める。イッセーは行くつもりだ。例え無茶で無謀だろうと
「殺されるよ?」
「例え死んでもアーシアは絶対に助け出す」
「いい覚悟だ……と言いたいけど、やっぱり無謀だ」
イッセーの覚悟に対して木場君は無謀だと否定する。
「うるせえイケメン!」
イッセーはムキになって言い返そうとするけど、木場君はまた魔法で剣を取り出した。
イッセーを斬ってでも止めるつもりか?……いやそうじゃない。
「僕も行くよ」
「木場お前……」
イッセーはどうして木場君が一緒に行くのか不思議そうにしているけど
「部長はたとえ君がプロモーションを使ってもっておっしゃてたろ?」
「あぁそれが?」
イッセーはまだ気づいていないみたいだ。
「イッセー、リアス部長は教会を敵陣地へと認めた。これがどういう意味か分かるだろ?」
「木場、お前……」
「同時に、僕らで兵藤君をフォローしろって言う指示でもあるからね」
「僕らもって事は小猫ちゃんも?」
「不安ですから」
小猫ちゃんから辛辣ことを言われた。
これで役者はそろったと言う所かな。
「ユウマ、お前も一緒に来てくれるよな?」
「当然……と言いたい所だけど、イッセー、少し頼みがあるんだ」
俺はイッセーと面を向きあう。
「イッセー、俺を殴ってくれ」
「おッおいユウマ!?行き成り殴れって……」
行き成り殴れって言われれば戸惑うのは分かっている。
「俺はイッセーやアーシアちゃんがひどい目にあっている中で、これ以上オカ研の皆に迷惑をかけないと思っていて鍛えていた。アーシアちゃんが大変な事になってるって知って、じゃあ助ける……なんてそれじゃあ身勝手な野郎だ。だからこれは示しだ」
「でもユウマが責任を感じる事は」
「責任云々じゃないんだ。殴ってもらいたいんだ。だから頼む……」
俺が折れないのを分かったのか、イッセーが分かったと折れてくれた。
「本気で頼むよ。殴り方、知らないわけないでしょ?」
「あぁ……本気で行くぜ。後で文句」
イッセーは拳を大きく拳を振り上げ
「言うなよ!!」
振り下ろした拳は俺の左頬を抉るように入った。小猫ちゃんは一瞬だけどビクッとした。木場君は笑っている。男の友情だと思ってるのかな。
悪魔化したイッセーの拳は結構効いた。一瞬意識が飛びそうになったけど、踏ん張った。
「納得したか?」
「あぁ改めて気合が入ったよ」
ありがとうイッセー。行こうかアーシアちゃんを助けに!
「……よく分かりません」
「これが男の友情ってやつかな?僕は仲の良い男友達がいないから、羨ましいな」
小猫ちゃんと木場君が言っているけど、木場君とはもう友達だよ?
「行こうぜ皆、アーシアを助け「アーシアを助けに行こうではないか!」っておい!言いたい事をかぶせんなよ!」
イッセーがカッコよく言おうとしたのに、エクスカリバーがセリフを被らせて、なんとも締りのない出撃になってしまった。
教会に到着したけど、びりびりとした空気を教会から感じる。これが殺気ってやつなんだろうな
「神父も相当集まっているみたいだね」
「マジかよ。でも来てくれてマジで助かったぜ」
イッセーが木場君に礼を言うと、仲間じゃないかと笑いながら言う木場君。
「それに、個人的に堕天使や神父は好きじゃないからね……憎いと言ってもいい」
目を細めて堕天使や神父に怒りを見せている木場君、彼の過去に何があったのだろうか?憎いと言いうのは相当の恨みがあるはずだ。
様子をうかがっていると、小猫ちゃんが扉に近づき。
「向こうもこちらに気づいているでしょうから」
そう言いながら扉を蹴破った。まさに殴り込みだ。
教会の中に入ると、中は静かすぎて逆に不気味すぎる。それに砕かれた聖母の像や十字架を見ると、教えに背いていると言うのが分かる。
警戒をしていると、ゆっくりめの拍手が教会内部で響く。
「おやおやぁ~?性懲りもなく来たんですかぁ?このクソ悪魔ども」
奥から出て来たのは銀髪の神父、コイツがフリードって奴か?確かに狂ってるな。
「ん?あらあらそこに居るのは、あのクソシスターを助けようとして、僕チンにボッコボコにされた悪魔君じゃあぁりませんかぁ!あのクソシスターを助けに来たの?カッコイイねぇ痺れちゃうねぇ!」
フリードがクソシスターと言っているのはアーシアちゃんだと言うのは直ぐに分かる。
イッセーが今にも飛び掛かろうとしているのを、俺が何とか制す。
「アンタ、アーシアちゃんがどこに居るのか知っているんだよな?」
「おやぁ誰だいチミは?初めて見るねぇ?アレ?でもアンタ人間っしょ?何?クソ悪魔の仲間のクソ人間ですかぁ?」
「いいからアーシアちゃんはどこにいるって聞いてんだよ」
クククとフリードは愉快そうに笑いながら
「悪魔に魅入られたクソシスターは、この祭壇から通じている地下の祭儀場にいますですぅ。今地下じゃあのクソシスターの神器を取り出すための儀式の真っ最中なんですよぉ」
アーシアちゃんの神器?まさかとは思うけど、あの怪我を治した癒しの力ってヤツか。
「神器を抜かれるっつうのは、その神器の持ち主も死んじまうすよぉ。それもかなり苦しいって話だぁ。あのクソシスターが苦しみ、悶えて死ぬ。あぁ……さぞかしいい声で泣くんだろうなぁ。あのクソシスターの悶える姿見たら、おっ立ちもんでっせ!」
フリードは興奮しながら悶えていたが、神器が亡くなってしまうと、死んでしまう。だったら急がないとアーシアちゃんの命も危ない。だったらこんな狂った神父の相手なんかしてられない。
俺は近くに転がっていたソフトボール位の瓦礫を、フリードの顔面に思い切り投げた。160キロは出ているだろう豪速の瓦礫は、油断しているフリードの頭に直撃した。
「ガぺッ!?」
変な悲鳴を上げながら倒れるフリード。
「だったら今ここでアンタの相手なんかしてられないよ。さっさと通してもらうよ。クソ神父!」
時間は残されてない。俺は剣道部から借りた竹刀を、イッセーは神器、木場君は剣を小猫ちゃんは拳を構える。
瓦礫を喰らっても死にはしないと思っていたけど、ゆらりと立ち上がるフリード。だけど直撃したみたいだから、頭から血を流していた。
「この俺に血を流させたな……!調子に乗ってんじゃねぇぞクソ悪魔にクソ人間!テメェらゴミカスをここから生きては返さねぇ!……お前達やぁっておしまいなさい!」
フリードが言ったのが合図だったのか、教会の扉から光の剣を持った神父がぞろぞろと現れた。その数、ゆうに50は超えている。
「かなりいる。さっき木場君が相当集まっているって言ってたけど、結構いるな……」
「ヴぁかめ!この数程度で臆するでない」
エクスカリバーは動じていないけど、こいつ等全員を相手するのか……
けどこんな大人数とあのフリードを相手にしていたら、アーシアちゃんの元へ間に合わない。
「イッセー、ここは食い止めるからお前だけでもアーシアちゃんの所へ!」
「ユウマ!?けどお前を置いて行くわけには……」
「僕は浅尾君の意見に賛成だ。兵藤君、僕達がここへ来たのはこいつ等を打ち取るためじゃない。アーシアさんを助けるためだろ?」
「早く行ってください」
でもと渋っているイッセーに俺はサムズアップをする。
「こっちには最強の聖剣があるんだ。絶対に負けはしない。だから先に行っててくれ」
「……分かった!けど絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」
イッセーは地下室がある祭壇へと向かう。
「行かせるわけねぇだろクソが!」
フリードは懐から悪魔用の銃を手に取り、イッセーに狙いをつけた
「邪魔しないで」
小猫ちゃんが教会の椅子を持ち上げて、フリードめがけて投げた。
イッセーに狙いをつけていたフリードは紙一重で避けた。けど避けられた椅子はそのまま祭壇を破壊して、地下室への入り口の姿を見せた。
「クソ!あぶねぇだろクソちび!」
「……ちび」
フリードにチビと言われて小猫ちゃんは顔をしかめた。どうやら気にしているみたいだ。
地下室へと降りて行くイッセーを見て舌打ちをするフリード。頼むイッセー、間に合ってくれ!
「まぁいいよ、いいですよぉ。まだ残っているクソ悪魔2匹とクソ人間をぶっ殺さないと、俺っちの面目丸潰れグシャッと!最悪首と胴体がさよおなら~なんて事はなりたくないしねぇ。だから素直にぶっ殺されろ!」
フリードが俺達に突っ込んできたけど、フリードの光の剣と木場君の剣がぶつかり合った。
「お前の相手はこの僕だ」
「おうおうイケメン君ですねぇ。イケメン君を見てると、その顔を切り刻んであげちゃたいですよぉ!」
フリードと木場君は互角の戦いを見せている。銃も使うフリードに対して木場君は剣1本で対応している。
「悪魔に加担している人間め!断罪してやる!」
神父の何人かが俺に迫ってきた。神父の光の剣が俺に振り下ろされるけど、俺にとっては神父達の攻撃がゆっくり見えている。
俺が難なく躱すと、神父は驚愕の顔になり
「馬鹿な……がぁッ!?」
「悪いけどアンタ達の剣は止まって見えてるよ」
ホントは止まってないけど、言って見たかったセリフの一つだ。
躱されて判断が鈍った神父に本気の突きを喉に喰らわせる。
本気でやったから一発で失神してくれた。
「小癪な……!一気に掛かれ!!」
俺の攻撃を見て数人の神父が一気に迫ってきた。
俺が持っている竹刀じゃ、光の剣なんか防げない。俺は神父たちの攻撃を躱してから、カウンター技で次々と無力化していく。
小猫ちゃんやエクスカリバーはどうしているのか、他の状況を見てみる。
小猫ちゃんは椅子を振り回して神父たちを蹴散らしている。アクションスター顔負けの戦い方だ。
「ヴぁかめ!」
「何だコイツは!?」
「貴様等のような雑魚如きが、私を倒そうなど12世紀から早いのだ!」
「何を言っているんだコイツグアァァァァッ!!」
エクスカリバーは杖で光の剣を防ぐと、次々と神父を倒していた。アイツの周りには倒された神父達がゴロゴロと転がっていた。
本当にアイツだけでも強いんだな……
状況は俺達の方が有利で、俺は反射的な速さで神父達の光の剣を奪うと言う技を披露した。
そして50人も居た神父達も、気が付いたら全滅していた。俺は十数人しか倒してなかったから、殆んどが小猫ちゃんやエクスカリバーが倒したみたい。イッセーに食い止めるって言って置いて、殆んどを倒してもらうのは申し訳ない。
木場君も決着が着きそうだった。木場君も神器を使えるみたいで。剣を黒い魔剣へと変えて、光の剣を吸い込んでしまった。
「ってあらぁ?もしかしなくても、僕チンピンチですかぁ?」
自身の旗色が悪いと判断したフリードは一目散に逃げ出した。
「勝ち目のない戦いは、俺っち好きじゃないのよねぇ……てことで、ほなサイナラ!」
フリードは何かを地面に叩きつけると、眩しい光が、閃光弾ってやつか!
光が消えた後には、フリードの姿はどこにも無かった。
「逃げたか……でも今はイッセーに追いつこう!」
倒れている神父はほっといて、俺達も地下室へ向かう事にする。
地下室に向かう道中、神父が何人も転がっていた。イッセーが無力化したんだろう。
漸く祭儀場に着いた俺達。
「イッセー!アーシアちゃん!」
俺が祭儀場の扉を開けて見た光景は……
ぐったりしているアーシアちゃんと、そのアーシアちゃんを抱きしめて涙を流しているイッセー、そしてそのイッセーを嘲笑っているレイナーレの姿が。
この光景を見て、俺は分かった。分かってしまった。起こってほしくなかった現実を今目の当たりにしている。
「ま……間に合わなかった……」
次回!遂にエクスカリバーの真の実力の一部を目の当たりにする!
こうご期待!