結構風変わりな箇所もあります そういう書き方をしてるので
では第一話 どうぞ
さあ、物語を始めようじゃないか。
この物語に理由や正義は存在しない。
本能に生き、我欲に頼り、願望に臨み、信念に従い、感情に任せる。
そうして生きるもの達に、決められた筋書きなど必要ない。
舞台は、自由と束縛を、希望と絶望を、夢と現を、全てを解放する閉じられた箱庭。
主役は、その人となり。
例えば、感動を求める異端児。
例えば、挑戦を求める令嬢。
例えば、友情を求める動物愛者。
例えば、興奮を求める殺人鬼。
例えば、感情を求める人間兵器。
誰もが、中心の存在となりうる。
世界は、その人のものだから。
さあ、前置きはお仕舞いにしよう。
未来溢れる少年少女達。彼らの新たなる物語に祝福と喝采を。
そして、面白く愉快で、美しく残酷な出会いに称賛を。
これより、開演――――。
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[第一幕 落下]
『人間一秒あれば死ぬ。人生は常に走馬灯』
気づくと、彼らは落下していた。
太陽から。4000mの高さからの自由落下。
パラシュートや命綱なんて存在しない。
投身自殺だって、ここまで手を込めたりはしないだろう。
そんな、常識はずれの展開によって、五人の少年少女は天空から放り投げられた。
「わっ」
「きゃ!」
「オオっ!」
その高さから見る世界は、断崖絶壁の地平線に、巨大な天幕に覆われた未知の都市。
所謂、異世界と言ったところか。
「ど………何処だここ!?」
五人は同様の感想を以て同様の言葉を口にする。
………否、性格には四人である。
ただ一人の少年だけは、冷静に、冷やかに、この状況を把握していた。
「高度確認。現在座標、地表3461m。地表に衝突した際の損傷確率予想、甚大。直ちに然るべき対応を行う」
自らの状態を把握した少年は、背面から所謂戦闘機の有するものと同じ滑空翼を展開。
そして翼の内面に着けられている左右計六基のジェットを噴射。
落下を減速。そのまま空中に停滞した。
他の四人のうち、三人はそんな少年に驚愕の表情を浮かべたが、一人は目もくれず、壮絶な笑みを浮かべ、魚雷のごとき速度で他を追い抜き、眼下の湖へと突撃していった。
長いような短いような、人生は振り返ることが可能な数秒の後、盛大に水飛沫が舞い上がり、最初の少年が湖に着水――着弾した。
続けて三つ、小規模な一つの水飛沫が舞い上がる。
最後に湖から5m程離れた岸辺に翼の少年が舞い降りる。
「損傷皆無。飛行状態を解除。他存在の確認を行う」
そう分析した少年は翼を格納してから他の四人に歩み寄る。
少年は灰色のツナギを身に付けており、背丈や顔立ちは15や16の齢と見受けられる。
整えられた黒髪や端整な顔立ちは一見美青年と言っても差し支えない。
故に、チカチカと点滅する左目が際立って見えた。
そんな彼の目が捉えたのは、二人の少年少女が湖から上がる様子だった。
残る二人のうち一人は共に落ちてきた三毛猫の身を案じ、最初に突っ込んだ一人は湖の底に沈んだまま浮上してこない。
そんな少年の身を案じたりすることはなく、上がってきた少女はスカートが含んだ水を絞りながら毒を吐く。
「し、信じられないわ!! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!!」
少女はブラウスとロングスカートを着ていた。
赤いリボンを巻いた黒いロングヘアから水が滴る。
一方の少年はよく見る学ラン姿で不良のような顔立ちとヘッドホン、金髪が特徴的だった。
その少年も少女の愚痴に応えて吐き捨てる。
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
確かに身勝手だが、この少年が石の中で無事なことについてのツッコミは無いのだろうか。
しかし、それは無粋とでも言うところだろう。
そんな二人をツナギの少年はじっと見ていた。
その間に溺れていた三毛猫を救出したスリーブレスジャケットの茶髪少女が上がってくる。
最後の一人は未だに浮かんでこない。
「此処……何処だろう」
「さあな。まあ世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「記憶データを確認。巨大な亀が存在する可能性。0%」
「…………冗談にくらい合わせろよお前。ノリ悪いな」
まあ少年も適当に言っただけなのだが。
適当に服を絞り終えた彼は他の三人を見渡して質問する。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な"手紙"が?」
その言い方が気に食わなかったのだろうか。
黒髪の少女はムッと眉間に皺を寄せて不機嫌になりつつ答える。
「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して。――私は『久遠飛鳥(クドウ アスカ)』よ。以後は気を付けて」
少女、飛鳥がそう告げると金髪少年は手を軽く挙げて了承した。
「それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「………『春日部耀(カスカベ ヨウ)』。以下同文」
自己紹介としてはいくらか短い気がしないでもない。というか明らかに短すぎるのだが、そこは人それぞれである。
「そう。よろしく春日部さん。じゃあ、野蛮で凶暴そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な『逆廻十六夜(サカマキ イザヨイ)』です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
挑発に近い売り言葉を笑って返されたのが不服なのか、飛鳥はつい、と顔を背ける。
そんな様子を面白そうに眺めていた十六夜だったが、意識の先を変更した。
「で? 初っぱなから面白い事をしでかしてくれたそこのお前は何者だよ」
期待割増でツナギ少年に声をかける十六夜。
自己紹介を求められていると認識した彼は自らの正体を名乗った。
「極東、大亜帝国。軍事政府直轄軍、『極軍』第一軍、一番隊通称『伊ノ隊』所属。試作対国家戦争侵略用改造兵器、『龍鵬機兵』十号機。フルナンバー『DF1010・χ』」
「「…………は?」」
スラスラと飛び出てきた言葉に思わず奇妙な反応をしてしまう二人。
無関心だった耀すらDF1010・χを見ていた。
そして最後の一人はまだ出てこない。
「………再度の報告。極東大亜」
「分かった分かった!! 分かったからやめろめんどくせぇ!! 名前だけを言え!!」
「承認。正式ナンバー、DF1010・χ」
「は、はあ………」
やはり理解が追い付いていない飛鳥。
十六夜もガリガリと頭を書くと、
「ややこしいから呼び方はこっちで決めるぞ。お前の名前は『カイ』だ!!」
「承認。本機の三人呼称に『カイ』を登録。……完了」
どうやらそれで落ち着いたらしい。
十六夜はやれやれと苦笑いで首を振った。
「………まあとりあえず。よろしくねカイ君」
「了承。同意」
これでなんとか解決したらしい。
飛鳥とカイの挨拶が完了したところで十六夜は周囲を見渡す。
「ところで………俺の記憶違いか? 確かもう一人、真っ先に落下していった奴が居たと思うんだが」
「………まだ、湖の中」
耀が三毛猫を撫でながら湖を指差す。
確かに中心から泡が浮かんでいた。
「………もしかして、溺れてる?」
「あら。意気揚々と飛び込んだのに早速おしまい?」
「救助の必要性を検証」
「あ~。いいからいいから。ちょっと見てくる」
そういうと十六夜はザブザブと湖へと入っていく。
そして泡の浮かび上がってくる場所までやってくると水中に手を突っ込む。
「………お、居たな。そ~ら……よっと!!!」
バッシャン!! と鮪一本釣りがごとき豪快な引き揚げ。
引っ張られた少年は空中をクルクルクルと三回転。そして見事に岸に着陸した。
無駄に金メダルものの華麗さだった。
「おっとっとぉ!! ギャハハ!! 普通に助けるどころかぶん投げてくれやがるとはな!! 驚いて笑っちまったぜ」
「ヤハハ。意外性には定評があるんでな。それより名前、教えてくれよ」
「それもそうだな」
赤と黒という悪趣味かつ派手なジャケットに迷彩柄ズボン、白髪に左目を眼帯で隠した少年。
彼は、愉しそうに笑って答えた。
「俺は『斬鮫死人(キリサメ シド)』だ。よろしくな人間達」
ギャハハ。と彼は笑った。
そんな五人を物陰から見ていた存在は思う。
「(うわぁ……なんか問題児ばっかりみたいですねぇ………)」
青っぽい髪とウサ耳を生やし、扇情的な衣装を纏った少女――黒ウサギは彼らを見つめ、陰鬱そうな重いため息を吐くのだった。
そんなことはさておき、やがて十六夜が不機嫌に言う。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと招待状に書かれていた箱庭とか言うものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「……………………」
「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」
「その言葉そっくりそのままブーメランだぜ嬢ちゃん」
「(貴方もですよ!!)」
心中でツッコミを入れる黒ウサギ。
早く登場すればいいものを、場が落ち着き過ぎてタイミングが掴めないようだった。
まあ土台、彼らがパニックになるようなことはそうそう無いだろうが。
「(………まあ悩んでいても仕方ないデス。これ以上不満が出る前に…………?)」
と、彼らのうちの一人――先程死人と名乗った男が懐から何かを取り出した。
日の光が反射し、ギラリと銀色に輝くそれは、
「(………ナイフ。ですよね?)」
それも果物を切ったり紐を切るような日常品ではない。
完全な殺傷用の投擲ナイフだった。
何故このタイミングで取り出したのか……と、直後。
「そこだな!!」
ビュッ!! と、人を容易に傷つけるそれを黒ウサギに向けて投げつけた。
「びゃっ!!?」
優れた反射神経で即座に身を伏せる黒ウサギ。
頭上を通過したナイフは背後の木に突き刺さった。
「へえ。お前も気づいてたのか」
「獲物の場所なんざ目を瞑っても分かるね。お前らは分かってたのかよ?」
「当たり前よ」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
一人、カイはその問いに答えず、飛び出してきた黒ウサギに右手を向けた。
その手は、敵を撃ち抜く銃へ変化している。
「……あ、あわわわ!!」
無論、慌てて立ち上がる黒ウサギ。
彼女とて銃弾は致命傷となるのだから当たり前である。
「そ、そんな物騒な物と狼みたいに怖い顔を向けるのはやめてほしいのデスよ? ちょっと登場するタイミングが分からなくてですねぇ。一先ず御話を聞いていただければ嬉しいのでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「交渉の提唱を確認。警戒レベルを引き下げ」
「ウサギって鍋にするとウマイんだよなぁ」
「あっは取りつくシマもないですねってウサギを食べるなど言語道断です!!」
「ギャハハ」
そんな風におどけつつも―最後は本気だが―黒ウサギは彼らを冷静に値踏みしていた。
「(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。……二名ほど判別はしづらいですが……まあ理性はそれなりにあるみたいですけど………)」
ヒュン!!
「ひうっ!?」
顔の横、スレスレをナイフが通過した。
投げたのは無論、死人である。
「人を鑑定すんなよ気持ち悪い。どうせ俺みたいな奴を理解するなんて誰にもできやしねぇんだからよ」
ニヤニヤと中身のない笑みでそう告げる死人。
「あ、う………」
黒ウサギはまともに返答ができない。
恐怖に弱いと言うのは本当のことらしい。
しかし、そんなことは他の者達には関係無いわけで。
「えい」
「フギャ!」
放心中に背後に回り込んだ春日部耀が彼女のウサ耳を根っこから引っ張った。
割と全力で。
リアルな痛みで覚醒した黒ウサギは即座に抗議する。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますがまさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
猛抗議をする黒ウサギだがこれは悪手である。
耀に匹敵する自由な人物が他にもいるのだから。
「へえ? こなウサ耳って本物なのか?」
「………じゃあ私も」
十六夜が右の耳を、飛鳥が左の耳を鷲掴む。
嫌な予感を感じた黒ウサギだが時すでに遅し。
両者が思いっきり綱引きが如く引っ張った。
「フギャアアアアアアアアアアア!!!」
声にならない悲鳴が響き渡る。
「…………なあ。俺にもやらせてくれや」
「お前にやらせるとこの耳が切り取られそうだからやらねぇ」
チッと舌打ちする死人。
カイは無関心そうに自分の体を調整していた。
哀れな兎はその後一時間に渡って耳を好き勝手される羽目になった。
×××××
一時間後。
ヘタヘタになった黒ウサギは地面に座り込んでいた。
「――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
シクシクと滝のような涙を流す黒ウサギであった。
ちなみに十六夜、飛鳥、耀が彼女をいじり倒している間に死人はナイフの点検、カイは何やら交信のようなものを行っていた。
「……分かりましたよう。説明すればいいんですね……」
ユラユラと立ち上がり、黒ウサギは説明を始めた。
それは、なんとも魅力的で愉快な話だった。
現世では存在を否定されている不可思議な力、――この箱庭では"恩恵(ギフト)"と言う――を使い、修羅神仏と競いあうギフトゲームが行われる世界だった。
この箱庭ではそのゲームは絶対。
勝てば全てを得られる。
金品・土地・権利・名誉・人間・そしてギフトまでも、賭けたものは全て、本当に全てを入手できる。
そして何より。
「この世界は……面白いか?」
十六夜が黒ウサギに問いかけた純粋かつ、順直な質問。
それに対して彼女はこう答えた。
「YES。『ギフトゲーム』を人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
その答えに、彼らは喜色を浮かべた。
機械的なカイを含め、五人が一斉に、である。
この世界は、大いに楽しめそうだ。と。
小説タイトル あらすじ タグなどはおいおい更新していく予定です
新たなスタート 頑張っていきます