やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十八日

拝啓。

こんにちは。先週末雪ノ下たちが病院に来ました。大体の事情は陽乃さんから聞いたので理解したと言われたので、陽乃さんがちゃんと雪ノ下に話をしてくれたみたいで安心しました。結局あいつらには最低だの節操がないだの八幡だのぶちぶち言われましたが、誤解が解けていたという事もありとりあえず無事に解決することができました。まぁ原因自体も陽乃さんなので素直に感謝できないところもありますが俺ももう高校三年生、四捨五入すれば立派な大人です。陽乃さんの様な人にもしっかりお礼が言えてこそ立派な大人の男と言えるでしょう。どうもありがとうございました。

 

予想だにしない事態に大いに振り回されましたが日が経つに連れて大分落ち着きを取り戻す事ができました。そうなるとだんだん頭も働いてくるので、俺は何故陽乃さんがこの様な事を仕出かしたのかを改めて考えてみる事にしました。面白そうだったからと貴女は言いますが、本当にそれだけでしょうか?確かにそれも理由の一つかも知れませんが陽乃さんは意味のない事はしない筈です。ならば真意は他にあるのではないかとも思いましたが、きっと陽乃さんは聞いてもちゃんと答えてはくれないでしょう。雪ノ下に聞いてみても知る訳が無いと一蹴されましたし、陽乃さんが何と言って誤解を解いたのかについても何故か教えてくれませんでした。ひょっとすると雪ノ下に関係する事なのかとも思いましたが考えても謎が深まるばかりです。

俺は個人情報をこんなにも開示しているのに自分の知りたい事は知れないというこの不条理さは何なんでしょうかね。

しかし、それでもひとつはっきり分かった事があります。それは陽乃さんが事を起こせば起こすほど俺の人間関係が崩壊していくという事です。ぼっちのくせに人間関係を語るとは何事だこのやろうとお思いでしょうが、俺は常に非接触の人間関係を築いているんです。自分から波風を立てる様な事はしません。なのに陽乃さんが辺り構わず火の粉を振り撒くもんだから俺は雪ノ下たちから謂れの無い罵詈雑言を受ける事になるんです。今の過酷な状況は全て陽乃さんの活躍の賜物と言っても過言じゃありません。

本当なら直ぐにでも止めて欲しいところですが、こんな事を言っても陽乃さんのやることは変わらないでしょうし、むしろ今まで以上に嬉々として跋扈するまである。そうなってはひとたまりもありません。なので俺はこれ以上事態が悪化しない様に、あえて陽乃さんのやる事に口出しはしません。ですがもし、それにも拘らず陽乃さんが俺の人間関係を完膚無きまでに崩壊させる様ならその時は責任を取ってもらうしかありません。お世辞にもまともな人間関係を築いているとは言えませんがそれくらい望んでも罰は当たらないでしょう。

ですので陽乃さんはその事を心に留めて、これからも活躍して下さい。事態がこれ以上悪くならなければみんな幸せなのです。

 

今週末に退院することになりました。手紙を書くのもこれが最後になるでしょう。陽乃さんとの文通は期間こそ短かったですが毎回何が書いてあるのか分からないという恐怖に怯えながら読んでいたので、やっと解放されたと胸を撫で下ろしています。そして、もうひとつの事案である雪ノ下への手紙ですが相変わらず何を書いていいか分かりません。陽乃さんから雪ノ下の話は結局少ししか聞けませんでしたし、この文通生活で得た物は無く、逆に色々と大切な物を失ったとさえ思います。しかしこんな状況でも、雪ノ下には手紙を渡すと言ってしまった以上書かなければいけないので、俺としては罵られる覚悟でとりあえず思った事を書いていくしかありません。書かなければより怒られるでしょうしね…。ですが手紙から受ける恐怖への耐性は陽乃さんとのやり取りで十分過ぎるほど身に付いたので雪ノ下についても多分大丈夫でしょう。それについては陽乃さんのお陰と言えます。ありがとうございました。

 

それでは、俺のこの気持ちが変わらないうちに手紙を書き始めようと思いますのでこのあたりで失礼します。

 

 

恐惶謹言

決意を固めた比企谷八幡

 

俺史上最高厄介なお姉様へ


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