やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月十五日

拝啓。

一色が無事生徒会に来る様になってなにより。大した事はしていないが、一色もちゃんと生徒会に顔を出すと言っていたから多分大丈夫だろう。まぁ奉仕部へ行く為にちょくちょく抜け出す事はあるだろうが息抜きだと思って大目に見てやってくれ。あいつもなんだかんだでお前の事は頼りにしてる〜みたいなことを言っていたぞ。

 

そんな事より、まさか小町が俺の代わりに一色の手伝いをしているとは思わなかった。どうりでお前と面識がある訳だ。けどなんであいつらはその事を俺に言わないんだろう?何か言えない様な事を企んでいるのだろうか。

確かにうちの妹は可愛いし協調性もあって周りに気がつかえる…俺と違ってな。生後間もない頃の小町は純粋無垢の権化であり、その名の通り小野小町の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、邪念のかけらもないその笑顔は郷里の山野を愛の光で満たす程であった。それが今はどうだ。いつの間にか身につけたあざとさを遺憾無く発揮し父親や兄をジャグラーばりに手玉に取っている。

そんな小町があざとさマスターの一色と一緒に行動しているなんて考えただけでも気が滅入ってくる。このままでは学校中の男子生徒があいつらのあざとさに惑わされ無益な争いを生む事になるだろう。生徒会副会長よ、今こそお前の出番だ。あいつらの事をさり気なく見守り、意味不明な事をしそうになったら阿呆な事は止めろと諭しれくれ。俺はお前の頼みを聞いたから、今度はお前が俺の頼みを聞いてくれる事を期待している。

 

それとこれだけは言っておくが、いくら可愛い後輩の兄からの頼みだからと言って小町に変な気を起こすんじゃないぞ。お前の役目は一色と小町のなだめ役及び小町にまとわりつく羽虫の駆除だ。一緒になってブンブン飛んではならない。お前の事だから心配はしていないが、かと言って小町のあざとさを思えば必ずしも安心とは言えない。

そういえばいつだったかお前が学校の女子と一緒にカフェから出てくる所を見かけた事があったな。確か三つ編み眼鏡の生徒会書記だっただろうか。どんな関係だとか詮索する気は無いが、もしお前が入学して間も無い一年生にうつつを抜かす様な事になったらあの眼鏡書記はさぞかし悲しむ事だろう。悲しみのあまり泣いてしまうかも知れない。もしくは雪ノ下さながら侮蔑の眼差しと共に罵詈雑言を浴びせてくる事もあり得る。ああいう一見気弱でおとなしそうなやつこそ何を仕出かすか分からない。そうなればお前は生徒会副会長を解任され、残りの高校生活を辛く哀しい思いで過ごす事になるだろう。

そんな事態にならない様に本牧よ、心を強く持て。決してあざとさに屈してはいけない。総武高校の安寧はお前の双肩にかかっている。

 

 

早々

比企谷八幡

 

本牧牧人さま

 

 

追伸

小町は学校での出来事を教えてくれるが都合の悪い事は言っていないかも知れない。おかしな行動を見かけたら逐一教えて欲しい。


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