やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十二日

こんにちは。その後、後輩とはどうですか。

とは言っても昨日の今日でその後も何も無いだろうと思っているだろう。俺もそう思う。だが言わずにはいられない。今日の俺は昨日よりも増してヤバさMAXである。もうてんてこ舞いのきりきり舞いである。お前には一刻も早く後輩との問題を解決して俺を手伝ってほしいと思っていたが、それももう手遅れなのかもしれない。

 

女子たちの怒りは昨日から全く鎮まる様子を見せず、小町からも「お兄ちゃんの事は好きだけどさすがにそれはちょっと…」と悲しいものを見る様な目で言われた。弁明しようにも原因の人物とは全く連絡が取れない。どうでもいい時にはすぐ連絡してくるのに必要な時に限って音信不通というなんとも厄介なお姉様である。今もきっとどこかで俺が慌てふためく姿を見て楽しんでいるのだろう。

 

また、ここが病院で身動きが取れない状況であることも精神的ダメージが大きい。この足が骨折していなかったらすぐにでも遠くへ逃げ出したい。具体的には舞浜にある運命の国まで逃げ出したい。

お前は知っているだろうか。あそこは国というだけあって日本の法律も適応しないらしい。この国では異端とみなされるぼっちも優しく迎え入れてくれる素晴らしい所だそうだ。そしてその争いの無い世界ならば俺は現在身に降り掛かる様々な喧噪から解き放たれ、取り戻した安寧とともに幸せに暮らせるのではないだろうか。

聞いた話によるとずっと子供の心を忘れないでいる人間のところには、同じく子供の心を持った青年と妖精が現れて運命の国へ連れて行ってくれるらしい。であればぼっちというのは他人との接触がないためいつまでも純粋で清い心=子供の心を持っていると言っても過言ではないだろうから、つまり俺が今ここで手を合わせて心の底から願いさえすれば窓の外から彼らがひらりとやって来きて「やっほー八幡君、迎えに来たよっ!」と言ってくれるに違いない。そして妖精の粉を振りかけられた俺の身体はふわりと浮かび上がり、足の怪我も完治し、窓から病室を飛び出し彼らと一緒に運命の国まで飛んで行くのだろう。

 

唯一の心残りとしてはお前たちがどうなるかを見届けられない事だがお前ならばきっと大丈夫だろう。自信を持っていけばきっと上手く行く。

そして全て丸く収まった後二人で運命の国に来る事があれば、その時は俺が精一杯もてなしをしよう。

 

それではさらばだ。

 

 

運命の国に住む永遠の少年 比企谷

 

本牧牧人様


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