やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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失敗書簡(其の三)

四月十五日

 

やっはろーゆきのん、八幡だよ。いぇい!

新学期始まったけどもう新しいクラスにはもう慣れた?周りに知らない人だらけって落ち着かないよね、考えただけでちょー憂鬱!ゆいゆいみたいにすぐ人と仲良くなれるのはすごいなーって思うけど、初めて会う人に自分から話しかけるなんて俺には絶対ムリっ。でもよく考えたら二年生のときもぼっちだったし、知らない人だらけのクラスから知らない人だらけのクラスに変わっただけだから結構ヘーキかもね。ちょっと安心(笑)。

 

そんな俺は今、絶賛入院中です。入院って言っても少年院とかじゃないよ、交通事故で入院しているのです。ここではベッドに寝転がってるだけで何でも看護師さんがやってくれます。ご飯も運んで来てもらえるし、呼んだらすぐ来てくれるし、まさに天国かもって思っちゃう。居心地が良すぎて、ずっとここでくらしたいなーって思うけど来月には退院しなくちゃいけないんだ、人生そんなに甘くないよね。はぁ、誰か養ってくれないかなぁ。

 

突然ですがここで問題っ!

ジャジャンっ!そんな何でもしてもらえるステキな生活なんだけど、少し不満があります。それはいったい何だと思う?

 

 

3……2……1……、はいっ、時間切れ!

これは体験した人なら分かると思うけど、ゆきのんにはちょっと難しかったかな?正解はものすごく退屈ということです。自分では何もしなくていいんだけど、逆に何もする事が無いから暇すぎて死んじゃいそーなのデス。

あまりに暇すぎて小町に何かすることない?って聞いたら紙袋を持ってきてくれたんだけど、その中身はナント便箋と封筒っ!なんでもお母さんが知り合いの人に貰ったらしくって、それを小町が貰ったんだって。それでなんで俺に持ってきたのかって聞くと「この機会に日頃お兄ちゃんがお世話になってる人達に感謝を込めて手紙を書きなさい」って言われました。正直めんどくさいなーって思ったけど他にする事もないし、小町の頼みだから仕方ないよね、だってお兄ちゃんだもんっ。

そんな訳でこうやってゆきのんに手紙を書いてるわけデス。ちょっぴり恥ずかしいけど、思い切って書きました。

もしよかったらお返事下さいネっ!

 

でわでわ、あでゅー

 

【反省】

これは恥ずかしい。ひょっとすると今世紀最大の怪物を生み出してしまったかもしれない。由比ヶ浜や一色をお手本に親しみやすさを込めて書いてみたが、これを書いた奴は阿呆かと思うほど頭の悪さが滲み出している。そしてこの手紙の最大の問題は一、読んでいる人を非常にイラつかせるという事だ。むかつく。心底むかつく。仮に由比ヶ浜や一色がこの手紙を書いていたとしてもここまで神経を逆撫でされはしないだろうから、原因があるとすればおそらく俺自信だろう。こんなものを最後まで書き上げてしまった自分が許せない。とにかくこれは雪ノ下に送るわけにはいかない。送れば確実に罵られる。

いくら親しみを込めてといっても俺が由比ヶ浜のまねをするのには無理がある。演じるにしてももっと自分にあったキャラクターがあるはずだ。他人のまねをせず、自分らしく振る舞うように心がければ、手紙も自然に俺らしくなるんじゃないだろうか。


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