やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十日

拝啓

 

この間は見舞いに来てくれてありがとう。久し振りにお前の無駄に元気な顔を見たり雪ノ下の憎まれ口を聞けて少し安心した。しかし、てっきり雪ノ下と二人で来るのかと思っていたがまさか一色と小町まで一緒に来るとは……女子が四人も会いに来るなんてどんなラブコメかとも思ったが、何て事はなくただの女子会の様だった。おかげで俺の病室はかなり騒がしくなった…ホント個室でよかったと思った。

病室は確かに綺麗で良い部屋だったからな、雪ノ下に「比企谷君には勿体なさすぎるわね」と言われ少しムッとなったが自分でもそりゃそうだ思ったから何も言えなかった。お前たちは雪ノ下に乗っかって色々言っていたが、どちらかと言えばお前も一色も俺と同じ一般市民だろ。自分たちの発言がブーメランしている事に気付け。こんな場所に居ても違和感無いのは俺たちの中じゃ雪ノ下だけだ。

 

お前たちが食べたカステラは雪ノ下姉が持ってきたものだ。この間急に見舞いに来てあんなデカいカステラを置いていった。あんなの一人で食べきれる訳ないのに…。俺がぼっちであるという事を知ってるのにわざわざそんな事をするなんて意地が悪いと思わないか?

大きなカステラを一人切り分けて食べた俺の孤独感といったら言うまでもない。

だからお前たちが来て食べるのを手伝ってくれて助かった。特にお前はおいしいと言って夢中でカステラを食べていたな。小動物みたいでちょっと可愛く見えたが三切れは食べ過ぎじゃないか?四切れ目は食べなくて正解だったと思うぞ。

そんなに気に入ったなら今度雪ノ下さんにどこで買ったか聞いておこう。

 

病院でも話したが部活動説明会お疲れだったな。しかし雪ノ下が馬鹿な質問をしてきた新入生を黙らしたと聞いたときはやっちまったなと思った。雪ノ下らしと言えばらしいが、それよりも「奉仕部って事は先輩が俺の事も奉仕してくれるんですか」なんて全校生徒の前で質問できたその一年、よほど肝の据わった奴か、でなければ相当の阿呆だな。中学までならそんな事言っちゃうのも分らんでもないがさすがに高校でそれはないだろう。俺だったら絶対に言わないが、もし間違って言っちゃいでもしたら次の日から不登校決定だ。

そしてそんな一年に雪ノ下が言った「確かに私たち奉仕部は依頼があれば受けるわ。でも、それは依頼者が悩みを自分で解決する手伝いをするというだけよ。自分で努力しようとしない人を助ける気はないわ。そんなに甘えたいならあなたの母親にでも頼んだらどうかしら」という台詞は、言われた本人と少し期待した男子生徒の心を打ち砕き、全校生徒に雪ノ下雪乃という名前を改めて認識させただろう。

まぁ結果として、奉仕部に入ろうとする新入生はおそらくいないだろう。奉仕部の安寧は守られた。

 

そう言えば小町が今度依頼をするかも知れないと言っていた。何でもクラスの友達が二人からそれぞれ別の部活に誘われてどうしたら良いか悩んでいるそうだ。まだ入学してニ週間しか経ってないのにもう友達ってどういうことだ?俺なんて丸二年過ごしても友達なんて一人もいないのに…。兄妹でこうも違うとは些か悲しくなるが、小町のフットワークの軽さにはいつも驚かされる。自分の興味のある事には尽力を惜しまない。今もお前たちと一緒に奉仕部での活動をしたいと言っているが、どうやら生徒会にも顔を出している様だ。聞く所によると入院して一色を手伝えない俺の代わりに生徒会を手伝っているらしい。それ自体は別に良いんだがどうも嫌な予感がする。自慢じゃないがうちの妹もなかなかにあざとい。そんなのがベストオブあざとさみたいな一色と一緒になったらと思うと……想像しただけで寒気がする。

由比ケ浜、小町を見ていてくれ。お前だけが頼りだ。あいつが阿呆な事をしそうになったらお前の物腰の柔らかさで正気に戻してくれる事を期待している。

依頼については入部届の締め切りもまだ時間があるから慌てずに解決すれば大丈夫だろう。

 

それじゃあよろしく頼む。

 

 

 

匆々

カステラで孤独を知った比企谷

 

 

甘いもの大好き由比ヶ浜様

 

 

追伸

病室にあった小説を知らないか?お前たちの帰った後読もうとしたら何処にも見当たらない。大事なものなんだが知っていたら教えてくれ。

 

 


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