やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十七日

拝啓

 

買い物楽しかった様でなにより。しかし丸一日とは…よく雪ノ下の体力が持ったな。そんなに見て回る所があったとは知らなかったが、俺なら一時間で用事を終わらせられる自信がある。

マグカップを買ったそうだがお前を含め女子はお揃いとかペアとかいうのが好きだな。仲が良い事は分かるがコップなんて部室にあるのになぜ買う必要があるのかと聞きたくなった。しかしそれが小町の入部祝いも兼ねてという事だから、なるほど確かにいい考えだと思った。そういう所に気が付くとはさすが由比ケ浜。

それと、ひとつ聞きたいことがある。買い物中にお前が送ってきたメールについてだ。「今ゆきのんと買い物中だよっ‼︎可愛いの見つけたんだけどどうかなぁ〜似合ってる?」という本文はいい。だが添付された画像はなんだ。雑貨屋の様な所で買い物をするお前たちが写っている…お前の手の角度から自撮りしたんだろう。そして犬耳を着けて楽しそうに笑うお前と、猫耳を着けて恥ずかしそうにこっちを見る雪ノ下。思わず変な声が出た。てっきり服とか選んでるのかと思ったら獣耳とか予想外にも程がある。…似合うか似合わないかで言ったら「まぁ似合わなくもない」だ。しかし目立つ事はしない様に言ったつもりだったんだがなんだこれ。

雪ノ下を二十分かけて説得したそうだがそこまでして撮る必要があったのか?まさか、俺が陽乃さんの写真を気にしていた事への当てつけか?

 

金曜日に何の連絡もなしに雪ノ下たちと来ただろう。その時陽乃さんの事は雪ノ下から聞いたからとりあえず俺の事を信じてくれるって言ってたのはのは俺の聞き違いかだろうか…。

まぁ、あの様子じゃまだ納得していない感じが伝わって来たが、お前だって陽乃さんに睨まれたら言うこと聞いちゃうだろ。下手に反論すれば何倍にもなって返ってくるうえ、結局言うことをきかされる…抵抗するだけ無駄だ。それなら嫌々でも最初から言う事を聞くのが賢い判断じゃないだろうか。

そう思っていた……だがそれは誤りだった。今回、お前と雪ノ下と一色を怒らせると陽乃さん並に厄介だという事が分かった。手紙を読んでるとお前たちが俺を罵倒しにやって来た時の姿が思い出される。陽乃さん程的確に急所を突く訳じゃないが冷たい目線で侮蔑の言葉を言い放つ雪ノ下。あざとさいっぱいに可哀想な後輩を演じぎゃあぎゃあ騒ぐ一色。そしてお前は散々俺に文句を言った後ふと哀しそうな顔をして「…ホント、そういうの嫌だな…」なんて目を潤ませながら言ってくる。一色はおそらく泣きまねだろうがお前は本当に泣いちゃいそうで居たたまれなくなる。

しかし、言う事を聞かなければ陽乃さんに睨まれ、言う事を聞けばお前たちにどやされる…どう転んでも大けがだ。

俺の人生はいつからこうも過酷になったのか。何とかしないといけないと思ってもいい方法が浮かばないし、目を背けてはいけないと思っても些かか見るに耐えない。

これは責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。至急解決案の提出を求める。

 

 

早々

過酷もいいとこな比企谷

 

犬耳が似合う由比ヶ浜様

 

 

追伸

怪我の容態だが、医者の話ではもう殆ど治っているそうだ。来月の頭には退院するから学校へはゴールデンウィーク明けから登校できるだろう。


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