真剣で執事に恋しなさい!   作:鴇鼠

2 / 2
感想をもらうと嬉しいですね!
お気に入りに入れてくれた方もありがとうございます!!

では、お楽しみください。


2話 『名前と居場所』

第2話

 

二人の男女に、一人の子供ができた。お腹の中の子は順調に育ちやがて男の子が生まれる。

 両親たちは自分たちの子供の誕生に喜ぶことはできなかった。何故なら、子供が生まれた瞬間に思ってしまったからだ。これは自分たちのいや、人間の子ではないと。

 生まれた瞬間、赤ん坊の無意識のうちに赤ん坊の内にある膨大な気が漏れ出した。その部屋にいた全ての人が息をするのを忘れるほどの濃密な気だ。だが、それはすぐになくなる。漏れ出していたとはいえ、赤ん坊が長時間に渡ってきを出し続けるのは無理なことで、赤ん坊がこれも無意識の内に気を抑えたからだ。それ以降、赤ん坊に不思議なことはなく無事に家に帰された。

 

 

その子供は、他の子供たちより早く立って歩いた。

 

 

その子供は、他の子供たちより早く言葉を覚え話すことができた。

 

 

その子供は、他の子供たちより優れていた。優れすぎていた。

 

 

両親は、その子供を育てる自信がなくなってきていた。生まれた瞬間から分かっていた、自分たちの子が普通ではないことに、気付いていた。だが、それを見て見ぬフリをしていたのだが、ある日事件が起きる。

 その子供が交通事故に遭ったのだ。車のボンネットがグチャグチャになるくらいの事故だった。両親は、子供が搬送された病院に向かう、しかし、そこで見たものは両親のわずかに残っていた親として自分の子を育てる責任感を砕くには十分な光景だった。

 子供はほぼ無傷だった。車に引かれる子供を確かに見たという証言も事故を見ていた人からされている。子供は、本能で危険を感じ自分の気で身体強化をして体を守ったので、かすり傷程度ですんだ。だがそんなことを知らない両親は、事故にあった息子が軽症だったのに喜ぶのではなく、もう恐怖しか感じていなかった。

 

 

―――もう、たえられない、あの子いや、あのバケモノを育てたくない。

両親のどちらともなく言い出したことだ。

 両親は、その日子供を捨てることを決意する。

 

 

~ ~ ~

 

きょうは、かあさんととうさんとはじめてのおでかけだ。

とうさんが、たべものをかってくれた。

かあさんが、ふくをえらんでくれた。

かあさんととうさんと、てをつなぐことができた。

3にんで、いっしょに、もりにきた。

かあさんととうさんがはじめてめをみてはなしてくれた。

 

「いい?必ず迎えに来るからこの森で待っててね?」

「この子は賢い。約束を破るわけがない。な?」

 

はじめてわらってはなしてくれた。

やくそくは、まもらないと。

でも・・・・・

 

子供は、だんだん小さくなる両親の背中を見ながら思う。

 

 

―――どうして、なまえをよんでくれないの?

 

 

少年は、自分の名前を知らなかった。

 

 

 

~ ~ ~

 

 

少年が目を覚ますと、いつもの木の枝や青空の景色ではなく、見知らぬ天井だった。

 

「おや、目が覚めましたか。」

 

少年に声を掛けたのは、温和で優しそうな白髪でメガネをした老執事だった。

 寝起きの頭を無理に起こし、優しそうな雰囲気の老執事に対し本能が告げている警告のアラームに従い、距離を取ろうとするが、少年がいるところは、部屋なのでそこまでの距離は取れない。少年はこの状況を打破するべく、思考を巡らせる。

 そこで、老執事からまた声が掛かる。

 

「そう、警戒しないで下さい。私は、あなたに危害を加えるつもりはございません。」

 

そんな言葉を聞いても少年は、警戒を解かない。むしろ、警戒が増したくらいだった。

 それもそのはずで、少年は本能で相手が自分より強ことを理解したからだ。自分を気絶さした金髪の威圧感が物凄い老執事までとはいかないが目の前の相手にも勝てないと分かり、どう逃げるか必死に考えていた。

 

 もちろん、少年は森でもヒュームには、勝てないと分かっていて最初は帝に奇襲を仕掛けたがヒュームに阻まれ、そしてヒュームと対峙して自分が逃げれないほどの力量差分かり、一矢報いるために突っ込みジェノサイド・チェーンソーの餌食となった。

 

 

閑話休題

 

 

周りを見たところ、ここはどこかの部屋で高さは分からず、窓から逃げるのは危険が伴いすぎると判断し、少年は自分の体格でもブチ破れそうなドアに向かい全力で走り出した。

 しかし、ドアの前まで来ると体が動かなくなる。手や視線など細かなところは、動くが腕や脚などはまるで何かに縛られているように動かなくなった。よく自分の体を見てみると、細い糸が幾重にもまかれている。

 

「すみませんが、あなたを逃がすな。と帝様に申し付かっていますので縛らせていただきました。安心してください。私たちはあなたに危害を加えるつもりは、これぽっちもありませんよ。」

 

老執事は、少年を縛っていた糸を解きながら微笑みかけていたが、少年はまだ逃げきる可能性を見つけようとしていた。そのとき、部屋に入ってくる人物が現れた。

 

「どうだ?クラウディオ、目覚ましたか?」

 

九鬼の当主である帝だ。少年は動きだしていた、帝を人質にするべく。金髪の老執事もコイツを守った、クラウディオと呼ばれた銀髪の老執事も『帝様』と呼んでいた。コイツを人質にすれば逃げれると思っていた。だが、少年は知らなかった。九鬼の当主たる者が護衛もつけずに出歩くことがないことを。つまり・・・・・

 

「思ったより元気そうだなぁ。赤子よ。もう一発いっとくか?」

 

・・・詰んでいるということだ。

 少年は、ヒュームとクラウディオから逃げ切るイメージがまったく出て来ず諦めた。

 

~ ~ ~

 

「さて、おまえさんに聞きたいことがいくつかある。」

 

少年は先ほどまで眠っていたベッドに腰掛け、部屋にあった椅子に座っている帝とその後ろに控えているヒュームとクラウディオと向かい合っていた。

 

「まぁ、その前に自己紹介だな。俺は九鬼帝ってんだ。」

 

笑顔で名乗る帝。それに続き後ろの二人も名乗る。

 

「ヒューム・ヘルシングだ。」

「クラウディオ・ ネエロと申します。」

 

綺麗にお辞儀して自己紹介をするのは、さっき見事に少年を捕まえたクラウディオ。彼は、何を命じても「簡単な事でございます」と言い、それをやりとげることから『万能執事』『完璧執事』と呼ばれている、九鬼家従者部隊の一人だ。

 

自己紹介を終えた帝は、少年に質問を開始する。

 

「答えたくないなら答えなくていいからな。まず、言葉は分かるか?」

 

これが、分からないと最低限のことも確認できない。

 少年は、コクリと首を縦に振る。

 

「よし、じゃあ話すことはできるか?」

「・・・できる。」

 

少年は、小声ながらも帝の問いに答える。

 

「次だ。名前はなんていうんだ?」

「・・・・・」

「答えたくないのか?」

 

少年は首を横に振った。『答えたくない』ではなく『答えられない』からである。

 

「・・・なまえは、しらない。」

「そうか。じゃあ次だ。森で鹿を仕留めて血抜きまでしてのけたのはお前さんか?」

「・・・そう。」

「どこで血抜きなんて覚えたんだ?」

「とうさんの・・・とうさんのほん、みて、おぼえた。そうしたらながもちするってかいてた。」

 

帝は、少なからず驚いてい。本を見て覚えたという記憶力もさることながらこの幼さでそれを実行する行動力もある。やはり、九鬼に欲しい人材、とても将来の楽しみな人材だと、帝は再確認した。

 

「次だ。どうして森の中で人を襲ったりしていたんだ?」

 

帝たちは最初、人を襲うバケモノがいると聞いていた。バケモノの正体が少年だから襲っていたのも少年ということになる。

 

「さいしょ、くまにおそわれているひといたからたすけた。そのときばけものっていわれた。つぎ、たくさんのひと、もりにきた。いっぱいこうげきされたから・・・」

「熊に襲われてた奴は気が動転してたんだろうな。まぁ、普通、子供が熊を倒せるなんざ思わないからな、だからバケモノか。たくさんの人ってのは、襲われた奴に話を聞いて討伐隊が組まれたってところか?これなら、噂の説明もつくだろ。クラウディオ、どう思う?」

 

帝は少年の拙い話を聞き、自分なりにまとめ、そしてクラウディオにも意見を求める。

 

「そうですね。私もそういう風に解釈するのが一番しっくり来るかと。」

「だな。じゃあ次だ。お前さんは、あの森でなにをしていたんだ?」

 

これは、最初から一番の疑問だった。少年は何のためにあんなところにいるのか。

 実は、帝もヒュームも理由を知っていた。ヒュームが少年を気絶させた後、二人は少年を九鬼に招き入れるべく少年のことを調べていたのだ。そして、全て分かった上でこんなことをしている。何故か、それは少年が自分の現状に気づいているかを確認するためだ。

 

「おかあさんとおとうさんとのやくそくだから。」

「約束?」

「うん。むかえにくるまで、もりでまってるやくそく。」

 

帝は、目の前にいる少年に本当のことを問う。

 

「そうか。なぁ、お前さん、本当は気付いてるんじゃないか?」

「・・・なにに?」

「本当は…もう迎えに来てくれないってことをだよ。」

「ちがう!!」

 

少年は、目を見開き、先ほどとは比べ物にならないくらい大きな声で帝の意見を拒絶した。まるで、自分に言い聞かせるように。

 

「本当は、俺たちお前さんの両親に会ってきたんだ。ひでぇ親だったよ。お前のことなんて知らない、バケモノのことなんて思い出したくもない、だとよ。」

「ちがう!!ちがう!うそだ!!!」

 

辛い事実を聞かないように大声で否定するが、その声はだんだん小さくなっていく。

 

「うそだっていってよ…」

 

それはもう、懇願だった。少年は分かっていた、両親が自分をみていないことを。約束が守られないことを。

 

 

 

その子供は、両親に甘えたくて、立って歩いた。

 

 

その子供は、両親の言葉を分かりたくて、言葉を覚え話すことができた。

 

 

その子供は、両親に見てもらいたくて、優れようとした、他の誰よりも。

 

 

少年は、守られないと分かっていても事実が分からない以上それに縋るしかなかった。名前も分からない、自分が誰かも分からない中で生きていくには、約束に縋るしか少年の居場所はなかった。

 だが、事実が分かった今、縋ることができなくなった。少年は、居場所を、生きる意味がなくなった。

 

 

 

「おい。赤子、九鬼に来い。お前が親に必要とされてなくとも九鬼は、お前を必要している。」

 

 

さっきまで一言も会話に入らなかったヒュームが口を開く。

 

真っ暗で何も見えないところに一筋の光が差し込んだようなそんな言葉だった。

 生まれてから誰にも必要とされなかった、どこにも居場所がなっかた自分が必要とされている、そこに自分の居場所がある。その言葉で少年は救われたようだった。

 

「くきに、いてもいいの?」

 

少年は戸惑いとほんの少しの希望をもってヒューム、帝、クラウディオの顔を見ていく。

 ヒュームは、フンと鼻で笑いながら口角を上げている。帝は、大歓迎だ!と言いながら豪快に笑っている。クラウディオは、微笑みながら頷いている。

 

「…よろしくおねがいします。」

 

少年は、九鬼に入ることを決めた。

 

「九鬼に入るにあたって、まず、教養を身につけてもらう。それと同時に従者としての基礎を学べ。それを担当するのは、そこにいるクラウディオだ。」

「ほほほ。一緒に頑張りましょう。」

 

帝が簡潔に今後のことについて説明をしていく。そこにヒュームが付け加えて説明をしていく。

 

「お前は、武の天賦の才をもっている。それを、腐らせないためにも、戦闘面は俺が鍛える。そして、お前の名前だが・・・」

 

名前…物事や人につけた呼び名

 少年が、両親から貰えなかったもの。

 

「赤子、お前には、俺の養子になってもらう。名前は祖先の名をもらって『ヴァン・ヘルシング』だ。」

「ヴァン・ヘルシング」

 

少年はヒュームからもらった、初めての名前をその身に、その魂に、刻み付ける。




ゆっくりと言っておきながら二日連続で更新している鴇鼠です!
さて二話にして本作主人公の名前がでましたね。原作までが少し遠い。でも創作で書いていくのも楽しいので十話ぐらいまで創作かも?
 まぁ、気長によろしくお願いしますね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。