ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 Anthology~【完結】   作:薮椿

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薮椿より

今回は
『ラブライブ! 本物を追い求めて』
を投稿している、xLOVExさんの『新日常』をお送りします!


零くん(♀)とμ'sたち

それは、休日のお昼頃の出来事だった。

休日はいつも楓の奴がまるで犬の様に......いや、あいつの場合は飢えた狼(性的な意味で)の様に俺に執拗に絡んでくるのだが、今日は雪穂や亜里沙と仲良くお出かけらしく、家にいるのは俺一人だけだ。

しかし......。

 

「なんだこれ?まーた秋葉の発明品かなんかか?」

 

リビングに設置されたテーブルの上に置かれている、少し大きめの見た事もない機械。もう大体察しはついた、見た事ない機械が俺の目の前にある時は100%秋葉の発明品.....いや、不良品だ。

しかし、どうすっかなぁ。これ。

今までの経験からして、処分しようとその発明品に触った瞬間に機械が作動して、俺やμ'sのみんなが巻き込まれるのはもはや予想できる。しかも、放置しようとしたりその場から離れようとしても結局巻き込まれるし。もしかしたらそういう星の下に生まれたのかもしれないな。秋葉の発明品の実験台になるだけの人生なんて絶対に嫌だ......。

うーん......本当にどうすれば良いんだ、これ?

考えてるだけじゃ埒があかない、動物でも無機物でもなんでもバッチコイだ!まあ、出来ることならこの機械が作動せずに処分したいものだが。

 

「よっ.....と、結構重いな、これ.......」

 

抱え上げるとずしりという重い感触が腕に伝わってきた。そして、それと同時に機械が眩しい光を放った。今回はどんな発明品なんだ.....。本音はもう巻き込まれたくない思いでいっぱいだが、こうなってしまえばもう諦める他ない。覚悟を決めて、俺はこの光を受け入れることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ......俺、寝てたのか?」

 

床に体を預けた状態で周りを見回すが、見慣れたリビングテーブルに、床に落ちている秋葉の発明品くらいしかなかった。

そして、床で眠っていたせいなのか、身体中が少し怠い。あと胸のあたりも重い気がする。

 

「取り敢えず、何も起きてないみてないだし......いや、あいつの発明品で何も起きないはずが......」

 

ゆさっ

 

「ない……。」

 

起き上がると同時に胸の部分の何かが揺れた。いや.....これは......。

 

「ないっていうか、ある!?」

 

俺の胸にぶら下がっている二つのそれ。即ち.....胸。女性のおっぱいだ!!

 

「今回は女体化かよ……今の俺はどんな姿をしてるんだ?」

 

鏡で自分の姿を見ようと思ったが、こう言う時なぜかタイミング悪くμ'sの奴らが来るんだよなぁ。もう慣れっこだ。なんなら穂乃果やことりの反応を予想してこれから対策を練るまである。

 しかし、こんな事を考えていると本当にタイミング悪くあいつらが来るわけで。

 

「零くーん! 遊びに来たよ!」

 

 インターフォンのチャイムが聞こえ、穂乃果の声も聞こえた。外に取り付けられたカメラを通じてテレビ画面に映し出される外の景色には、穂乃果とことり、海未の3人の姿が見えた。

……せめて電話かメールで一言くれても良かったのになぁ。アポ無しで人の家に突撃してくるとか、突撃!となりの何ご飯だよって感じだ。

 そして今気づいたが、今現在の俺の恰好がヤバい。こんなスイカやメロンの様なおっぱいがあるのに男物の服を着ているせいで、へそ出しスタイルになってしまっている。しかも下はパンツだけだから鏡で自分の恰好を見てみるとなんかエロかった。流石に自分の体に興奮するなんてことは無いが。というか、なんでパンツだけ女性用下着に変わってるんだよ!!

 そしてさらにもう一つ、声が変わっている。まあ、あの秋葉がこんなところで手を抜くとは思っちゃいないが、女体化した上に声まで女になっちまうのか……。

 とりあえず、驚かれるかもしれないが事情を話せばあいつらも納得するだろうと思い、俺は玄関まで向かい、扉を開けた。

 

「……誰!?」

「もしかして……零くんの新しい彼女とか!?」

「そ、そんな筈はありません!ただでさえ9股しているのに、もう一人増やすなんて……」

 

 扉を開けた瞬間、それぞれ好き放題言ってくれる。この野郎……いや女郎か?どうでもいいや。確かに9股しているのは認めるけどもさぁ。

 

「いや、俺だよ。神崎零だよ」

「嘘……!」

「穂乃果、嘘じゃないんだ。もう察しはついてるかもしれんが、また秋葉の仕業だ」

「あ、なるほど」

 

 納得するの早すぎるだろ。俺の身に何かあった時は大体秋葉のせいで納得させられるとか、こいつらもう慣れてるな!

 

「取り敢えず中入っていいぞ」

 

 俺が言うと穂乃果達はお邪魔しますと言い、俺に続いて家に上がる。

 穂乃果はキラキラとした目で俺の事を見て、ことりは何やらスマホを弄っている。お触りも撮影も禁止だぞ。一瞬でも隙を見せたらすぐさまことりのおやつにされてしまう。

 

「それにしても零くん、背ぇ高いね! 絵里ちゃんより大きいんじゃない? おまけにおっぱいまで……ジュルリ」

「おい! 涎垂れてんぞ!!」

 

 涎をすすってもまた垂れてくるとか、どんだけ唾液の分泌量やばすぎだろ。

 そして、横を見ると穂乃果以上に顔を赤らめ、女の子がしちゃイケない顔になってる奴が一人。

 

「ことりもう我慢できないよぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

「やめろぉぉぉおおおお!!お前のそれは洒落にならん!!」

 

 穂乃果とことりに捕まったら絶対におやつにされる程度じゃ済まない。体の隅々を弄りまわされ、着せ替え人形として遊ばれるおもちゃになってしまう!! もしかしたらその中ににこも加わる可能性もあるし、希には絶対ワシワシの刑にされる! やり返してでも抵抗しなければ!!!

 キスが出来そうな程近づいてくることりの方を掴んでなんとか抑える。この状況で頼れるのは1人しかいない!

 

「海未! 助けてくれ!! もう頼みの綱はお前しかいないんだ!」

「お前しかいない……! 分かりました!!」

 

 嬉しそうな顔で元気に返事をする海未。ああ……。救いはあったのか……。

 

「あなた達……」

「ひぃっ!!」

「いつもいつも言っているでしょう! 破廉恥な行動、言動は抑えろと! スクールアイドルとしての自覚を持ってください!!」

「「ご、ごめんなさーい!」」

 

 おお、いいぞ! それにしても、破廉恥な事を『やめろ』じゃなくて『抑えろ』と言っている辺り、こいつらの性懲りの無さを見て海未なりにも譲歩した方なのだろう。

 そして、謝ってはいるもののこいつらは前から海未に怒られてもなおす気配がない。という事はつまり……。

 

「で、でも海未ちゃん! この女の子になった零くんすっごく可愛くない!?」

「そうだよ! すっごく可愛いでしょ?」

 

 確かに今の俺は見た目は女だが、中身は男だ。可愛いとか言われるとなんか複雑な気分だ……。

 

「確かに可愛い……というより綺麗だとは思いますが……。それは今関係無いでしょう!!」

 

 穂乃果達の話を逸らす作戦は失敗に終わったか。そして代わりに海未のお説教がヒートアップする。

 うわぁ……今日の海未は一段と厳しいな。怒られる側じゃなくてよかった~。

 

「そもそも零にも問題があります! 毎度毎度こんなトラブルを引き起こして……!」

 

 怒られる側になってしまった。というか俺が悪いのか!? すべての元凶はあの秋葉だろ!!

 俺も穂乃果達と同じ様に正座させられそうになっているところに、再びチャイムが鳴った。

 

「わ、悪い海未。ちょっと見てきてくれないか?」

「まったく、分りました。お説教の続きはまた後でちゃんとしますからね」

 

 まだ続くのかよ……。勘弁してくれ。

 海未が戻ってくるのを待つこと約一分。リビングと廊下を繋ぐ扉が開かれ、海未が戻って来た……って。

 

「なんで絵里達まで来てるんだ……」

 

 海未の後に現れたのは絵里、希、にこ。大学生組の三人だった。

 

「ハラショー……!」

「おおっ! 零くん可愛いやん♪」

「くっ……スタイル良過ぎじゃないの……!」

 

 俺が女になっていることに驚いていない。つまり……。

 

「この中に、俺が女体化したことを教えた奴がいる! さっきまで携帯を弄っていたのはことりしかいない。ことり! お前が犯人か!!」

「正解で~す♪」

 

 『正解で~す♪』じゃねぇよ! いや待てよ、大学生組の三人に教えたって事は……。

 

「もしかして……花陽や凛、真姫にもこの事を……?」

「その通りですっ♪」

 

 だから『その通りですっ♪』じゃねえ! ああ……穂乃果やことりの対応をするだけでも大変なのに、九人全員が集まったら……俺にもう勝ち目はない! このままおもちゃにされるなんて嫌だ~~~っ!!

 

「今花陽ちゃんから連絡があったんやけど、あと五分くらいで着くみたいよ?」

 

 くっ……。九人の中で真面目(普通)な奴は真姫、花陽、海未の三人、本当なら絵里も入れたいところだが、最近のあいつは賢さがまったく無い! PKEも良いが、今の状況的にはKKEの方が断然良い!

 そして変態組は穂乃果、ことり、にこ、希の四人……。凛は真面目でも無いしこいつら四人に比べれば変態でもないし……。絵里と同じく無所属組って事で。

 纏めるとこうだ。

 真面目(普通)組:真姫・花陽・海未の計三人。

 変態組:穂乃果・ことり・にこ・希の計四人。

 無所属組:絵里・凛の計二人。

 駄目だ……。三対四で変態組の方が優勢だ……。無所属組が真面目組に加わってくれれば勝ち目はあるが……絵里なら可能性は五分五分くらいだろうが、凛は望み薄だろう。これじゃあ互角にしかならない!

 

「それより零くん、こんな美人さんになってしもうて……羨ましいなぁ~」

「私より背が高いなんて、165cm以上……もしかしたら170cm行ってるんじゃない? ハラショー!!」

「ぐぬぬ……こうなったら腹いせに着せ替え人形にしてあげるわっ!」

 

 なんかにこがものすごく恐ろしい事を言っているが……確かにこいつらに比べれば背は高い方だな。それでも元の身長よりは縮んでいるが。自分自身の事だから気にならないが、女性で背が高いってのはコンプレックスになったりするんだろうか。そりゃあモデルだったり外国人だったら背が高くてもさほど驚きはしないが、高校生で身長170cm以上とかの女子を見かけたりするとちょっと驚いたりする。穂乃果やにこはこの身長を羨ましがっていたが、背が高すぎるのもちょっとな……。それに小さい方が可愛いし、にこは今のままの方が体系に合っているというか……ゲフンゲフン。なんでもない、背が高いのに胸がつるぺた、なんてのより幼児体系の方が良い、なんて考えてないぞ。本当だぞ。

 そうこうしているうちに花陽達が来たらしい。またもやチャイムが鳴った。花陽達はこの事をもう知っているのだし、誰かに行ってもらう必要もないだろうと思い、俺が三人を迎える事にした。

 

「こ、こんにちは~……本当に零君なんだよね?」

「ああ、そうだぞ」

「良かったぁ~。見たことも無い背の高いお姉さんが出てきたからびっくりしちゃたよ」

 

 これ、これだよ。俺が求めていた癒しは! それにしても、俺の姿を見て驚いたって事は、ことりはさっき撮っていた俺の写真をみんなにはまだ見せていないって事なのか。……はっ! もしや、その写真を使って今後俺の事を脅して、ことりのおやつにする気なんじゃ……。だからみんなには渡さない、なんてな。あるわけない、あるわけない……よな?

 

「零くん背が高いにゃ~。羨ましい~」

「そうね。脚もすらっとしていて綺麗だし、女の子なら誰もが羨むスタイルなんじゃない?」

 

 ほぉ~。μ's一と言って良い程のスタイルを持つ真姫でさえそう思うのか。成程、どうやら女の子はスタイルの良い女性と背の高い女性を羨む傾向があるらしい。

 

「取り敢えず中入れよ。遊びに来たってのも目的の一つなんだろ?」

 

 俺が言うと三人は頷いて家に入ってくる。さて、これで九人が揃ったわけなんだが……。

 

「そういえば、楓や雪穂、亜里沙はいないの?」

 

 リビングへとやって来て、辺りを見回した真姫が不思議そうに言った。

 

「ああ、今日はなんか三人で出かけるらしくてな」

「グループチャットの方も、三人だけ返事がないし、楽しんでるって事じゃ無いかな?」

 

 多分ことりの言う通りだろう。兄として、妹が同じ学年の、しかもμ'sのメンバーの娘と仲良くしてるのは嬉しい事だ。

 今日は楓がいなくて静かで少し寂しい休日になると思ったが、騒がしい休日になりそうだ。一応、秋葉のおかげ……って事なのか?

 

「それじゃあ今日は雪穂たちの分も楽しもうよ! ……それで、何しよっか?」

 

 相変わらずの無計画っぷりだな! 思わずギャグマンガみたいなずっこけ方しそうになったぞ。

 しかし、遊ぼうと言っても、家の中ではやる事は限られているし、テレビゲームも最大四人で遊べる物しかないしなぁ。となると、残るは人生ゲームとかそれくらいしか無い。

 いや待てよ……大人数で遊べて、しかも不可抗力で女の子に触れるゲームがあるじゃないか! それは……。

 

「ツイスターゲームとかはどうだ? うちにあるのは5、6人くらいでも全然平気な大き目の奴だし、多分全員で遊べると思うぞ」

 

 分からない人のために説明しておこう。ツイスターゲームってのは、プレイヤーと指示する人で役割を決め、指示係は一人だけ、残りは全員プレイヤーとなる。

 四色の○印のあるプレイマットで、プレイヤーは指示係が出した色に、更に指示された手、足を置き、出来るだけ体が倒れないようにするというゲームだ。

 このゲームは異性同士がやると、お互いの体が接触したり、場合によっては胸やおしりを触ってしまったり、スカートを穿いてる人がやるとパンツが見えてしまう、なんてこともあり、このゲームを嫌う人も中にはいるだろう。

 が、こいつらの中にはそんな人間はいないらしい。

 

「いいね、楽しそう! それじゃあ早速始めようよ!!」

 

 

 

 

 というわけで押し入れにしまわれていたツイスターゲームのプレイマットを取り出して床に広げる。

 

「それじゃあ指示係は誰がやる?」

 

 皆に聞いてみるが、当然俺は指示係などやる気は無い。なぜなら、それだと皆の体に触れないからだ! 皆がもみくちゃになり、服装が乱れる姿を見るのも良いが、ここはやはり皆をもみくちゃにし、服を乱す側になりたいんだ!!

 そして手を挙げたのは海未だった。

 

「私がやります。私、このゲームは少し苦手で……」

「そうなのか?」

「はい、中学生の時、穂乃果達とやったことがあるのですが、すぐにバランスを崩してしまって……」

「それ、俺も見てみたかったな」

「恥ずかしいので駄目です!」

 

 連れないなぁ……。だったら今度、穂乃果達三人だけを呼んでこのゲームをやる事にしよう。その時に頼み倒してやってもらおう。

 

「それじゃ、始めるか」

 

 俺の言葉を合図に皆が準備をする。

 海未の一番最初の指示は……。

 

「左手を赤に」

「ここだ!」

 

 まずは出来るだけ安定した体勢を取れるように近くの場所に手を置く。横をちらっと見てみると皆も大体同じようにしていた。

 

「次、右手を黄色に」

 

 くっ、少し遠いな……。けど、まだ大丈夫だ。

 こうして俺達十人のツイスターゲームはどんどん進められていった。

 

 

~※~

 

 

 ゲーム開始から約10分、段々と今の体勢が辛くなってきた。

 この10分間の間で脱落したのは真姫、花陽、にこの三人。残るは穂乃果、ことり、絵里、希、そして俺。

 

「穂乃果ちゃん……そろそろ苦しくなってきたんじゃない……?」

「こ、ことりちゃんこそ、息切らしてるけど……もうギブアップじゃないの?」

「ことりは零君が今着てるダボダボTシャツからおっぱいが見えて興奮してるだけだから……はぁはぁ」

「おい!!」

 

 なんかことりの顔がやけに赤いと思ったらそういう事だったのかよ! できるだけ体をことりに向けないようにしておこう。

 

「ああっ! 零君それじゃあ見えないよぉ!」

「見るな!」

「いいんだよ! 零君の恥ずかしい所、ことりにもっと見せて!!」

「ほ、穂乃果にも見せて!」

「ゲーム中に発情してんじゃねぇぇえええ!!」

「……あなた達、次に進みたいのですが、いいですか?」

「「「……はい」」」

 

 ったく、二人のせいで海未に怒られてしまった。この万年発情期どもめ!

 

「……ゴホン。では次、緑の右手」

 

 ん、これはどうやら俺だけでなく皆にとっても移動しづらい場所を指定されたらしい。穂乃果やことり達が悩んでいる。

 よし、じゃあ俺は……。

 

「あんっ♪」

 

な、なんだ今の! むにょんって……やわらかい感触が……。

 

「もう、零くんのえっち♪ そういうのは二人の時に……あ、でも皆に見られながらっていうのも……」

 

 ほ、穂乃果の胸の感触かよ! 

 

「零……あなたも穂乃果やことりと同じですね。後で覚えておきなさい」

「ま、待ってくれ! 今のは不可抗力……って誰だよ俺の胸を触ってるのは!」

「ウチや♪」

 

 あーーーーーーっ!!!!! 希に捕まってしまった……。もう、ワシワシからは逃れられな……。

 

「おい……俺の尻に頬ずりしてる奴、今度は誰だ?」

「ことりでーす♪」

「希の次はお前かよ!」

「零くんの……零ちゃんのお尻、柔らかくていい匂いがするよぉぉおお~~っ!!」

「や、やめてくれ……。零ちゃんとか言うのも、尻を撫でまわすのも匂いを嗅ぐのも……」

「零ちゃん……それいいね!」

 

もはや涙目での懇願になってしまっている。あと、穂乃果。お前は嬉しそうにいうな!

もう、頼みの綱は注意役の海未しかいない!

 

「……次、行きますよ」

 

 遂には見放されてしまった……。仕方ない、PKEになるか、KKEになるか、どうなるかは分からんが、もう絵里しかいない! 

 

「絵里! 助けてくれ!」

「わ、私っ!? ええっと……」

「青の左足」

 

 強引に進めようとするなよ!

 ことりと希から逃げる事、絵里に助けてもらう事、テンパりすぎて適当な方向に左足を動かしてしまった。

 

「零君っ、ことりの胸を足で蹴ってるよっ!」

「わ、悪い!」

「わわっ! 絵里ちゃん、くすぐったいよ!」

「ご、ごめんなさい穂乃果!」

「絵里ち。あ、危ない!」

 

 俺ら五人がもみくちゃになり、遂には全員で転んでしまった。これは、引き分けって事でいいのか?

 

「いてて……」

「みんな、大丈夫ですか?」

 

 海未が心配そうに俺らを見てきて、俺たちは大丈夫、と苦笑しながら伝える。

 

「みんな~。飲み物持って来たよ~」

 

 いつの間にやっていたのやら、花陽が飲み物を持ってきてくれたらしい。しかし……何故全部が飲むヨーグルトなんだ……。

 

「あ、花陽。そこ段差あるから気をつけ」

「ほわわっ!?」

 

 ろ……。と言おうとしたんだが、遅かったか。って、なんてこと考えてる場合じゃねぇ! ヨーグルトが俺の方に向かってきて……。

 

「零ちゃん! ……こ、これはっ!」

「零ちゃんの体に白いのがかかって、なんだか卑猥な感じに!」

「零君。ご、ごめんなさいっ!」

「いや、いいんだ花陽……。こんなの洗濯すればすぐに落ちるさ」

「洗濯……!?」

 

 穂乃果が何かひらめいた様な顔をした。なんだか嫌な予感が……。

 

「服以外に体も汚れたって事は、お風呂に入らなくちゃいけないっ!」

 

 ことりもそれにつられる様に言う。あ、もう駄目だ。察しが着いたし、逃げられる気がしない。

 

「「零ちゃ~ん?」」

「やめろ、お前ら来るな! にじり寄って来るな!」

「一緒に……」

「お風呂……」

「「入ろ?」」

 

 も、もう駄目だ~~っ!! どうせ風呂場でおやつにされるんだ~っ!

 

「ウチも一緒に入りたいな!」

「にこも!」

「ま、待てっ! 男の時ならまだしも、今お前らと一緒に風呂に入ったらどうなるか分からんし、俺んちの風呂はそんなに大勢で入れないぞ! 頑張っても三人か四人が限界だ!」

「そこでこのお姉ちゃんの出番ってわけだ!!」

「秋葉!?」

「秋葉さん!?」

 

 突然俺達の前に現れた秋葉。というか、いつ、どっから入って来たんだよ。

 秋葉は俺の体を上から下まで見て、にやりと笑った。

 

「中々の美人さんになってるじゃない? 零ちゃん?」

「零ちゃんはやめろ……」

「それより秋葉さん、さっきの言葉はどう意味ですか?」

「実はね……ここに温泉の招待券、十人分があるのだよ!」

「ええっ!?」

「本当ですか!?」

「おいまさか……」

 

 驚く穂乃果とことりに秋葉は更にドヤ顔で言葉を続けた。

 

「しかもここ、混浴風呂があってねぇ~。貸し切りにしといてあげたよ!」

「「あ、ありがとうございます!」」

「本当は別の機会にプレゼントしようと思ったんだけど、折角のチャンスだし、今あげる。さあ、今すぐに温泉に行ってくると良いよ♪」

 

 プレゼントか……発明品以外のプレゼントなんて、秋葉にしては珍しい事もあるんだな。

 さて、穂乃果達変態組は行く気満々だし、他の奴らも嫌そうではないし、仕方ない、俺も行ってやろうじゃないか! 温泉に!!

 変態とアイドルと女体化した男の、混浴風呂。いざ行かん!!

 

 

 

~※~

 

 

 

「結構広いな……」

「おお~っ! 零ちゃん、すっごく広いね!!」

「それは同感だけど、零ちゃんはマジでやめてくれ……」

「じゃあ、『零』にさんずいをつけて『澪』ちゃん、なんてのはどや?」

「もはや別人なんだよなぁ……」

 

 普通に話している様にも思えるが、俺達が今いるのは混浴風呂。つまり、俺の後ろには生まれた時の姿の皆がいて……。

 何故だ……。男の時なら絶対に後ろを振り返っただろう。しかし、今は振り向いてはいけない気がしてならない。

 

「ひゃっ!?」

 

 突然、後ろから胸を揉みしだかれた。というかなんだ今の声!? もしかして……俺の声か!? 段々と体と精神が馴染んできたのか分からんが、こんな声まで出せる様になってしまったのか……。

 

「ほ、穂乃果! やめろ!!」

「だってこんな無防備な後ろ姿を見たら、誰だって襲い掛かりたくなっちゃうよ! ね? ことりちゃん?」

「うんっ♪」

「『うんっ♪』じゃねぇ! 何当然の様に言ってんだ!!」

 

 穂乃果の腕をほどき、急いで別の場所へと逃げる。しかしそこにはにこと希が……。

 

「ふっふっふ。零ちゃ~ん?」

「零……その体、にこにも味見させてもらうわよ!」

 

 こわい、こわすぎる! 味見するってなんだよ!!

 更に別の場所へと逃げ、その向かった先にいた絵里の後ろへと隠れる。

 

「え、絵里っ! 助けてくれ! あいつらこわすぎる!!」

 

 と、絵里の後ろに隠れながら言うと、突然絵里に抱きしめられた。

 

「……は?」

「零がこんなに可愛いのがいけないのよ……」

「ま、まさかお前まで……!」

 

 絵里まで変態組に加わってしまったら、俺は、俺は……。

 

「そんなの、俺がツッコミ死する運命しか見えねぇぇぇええええ!!!!」

「零!?」

 

 涙を腕でこすりながら絵里のもとから逃げ出す。まあ、実際は泣いてないけど。

 腕で目を隠していると、当然前は見えないわけで、足元にあった石鹸を踏んで転んでしまった。

 

「おわっ!」

「「わわっ!?」」

 

 転んだ先にいたのは穂乃果とことり。そして、今の状況は俺が二人を押し倒しているような状況で。

 

「零くん……」

「大胆……♪」

「わ、悪い! 怪我はないか!? って体が……もしかしてこれは!」

 

 もとに……戻る。

 その考えが脳裏に浮かんだ瞬間。俺の体から発せられる光が皆の視界を遮った。

 

「うわぁっ!?」

「れ、零君!?」

 

 俺の一番近くにいる二人が一番つらそうな声を上げた。そして、俺はもとに戻り……どうせいつものオチが待ってるんだろう……。

 

「零…くん……?」

「もとに……戻ったの?」

 

 そして二人の視線は俺の下腹部へと向かい……まさかこいつら、この場で発情したりしないよな!?

 二人は顔を赤らめ、突然大声で騒ぎだした。

 

「れ、零くんの零くんがその、あれになって……!」

「零くんの大きいのがこんな目の前にあって手を伸ばせば触れられそうなぐらい近くにフフフフフ」

 

 二人が狂った!? ことりの方が重傷だし!

 

「がふっ」

「ちゅんっ」

 

 き、気絶した……。変態組の中で最強クラスの二人を始めて倒した瞬間かもしれない。

 

「は、ハハハハハハラショーーーーーッ!!! ガクッ」

「れ、零! ははは破廉恥ですっ! ……きゅう」

「凛ちゃん~っ!」

「かよち~ん!」

「私はナニモミテナイナニモミテナイナニモミテナイ」

 

 皆まで狂った……だと!? そして次々に悲鳴をあげて気絶していく。どうなってんだ……。

 

「零く~ん?」

「れ~い~?」

「ま、まさか……」

 

 希とにこ、こいつらは生き残ってたってのか!?

 

「「さあ、終わらないパーティ、始めよう?」」

「それは真姫のセリフだろ……って近づいてくるな!!」

 

 じりじりと詰め寄ってきた後、急に走りだす二人。こいつら、浴場で欲情してやがる! というか浴場で走るのって危ないだろ。

 

「「あっ!?」」

 

 そして案の定、俺がさっき踏んで転んだものと同じ石鹸を踏み、転ぶ二人。

 

「「きゅう……」」

 

「浴場で九人が気絶している光景って、かなりカオスだな……」

 

しかも、穂乃果とことりは鼻血出てるし……。

この浴場の対応はここの温泉で働いてる人に頼んで、俺は一先ず退散させてもらおう。

 

 

この後、俺が女体化した事を忘れた皆が、その時の写真を見て「この人誰だろう?」などと言っていたのはまた別の話。




今回、薮椿さんの企画に参加させて頂きました。
書いてみて分かったのですが、精々R-15程度の私が書いた微エロ(?)な新日常、とても難しいものでした。これ以上の<R-17.9>なお話をかなり早いペースで書かれている椿さんは凄い方なのだなぁ。と思いました。
さて、ラ!作家が書く新日常は今回で12日目。この後も他の方の書く新日常が読めますので、お楽しみください。
それではここらへんで筆を置くとします。
読了ありがとうございました。
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