ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 Anthology~【完結】 作:薮椿
今回は
『ラブライブ!平凡と9人の女神たち』
を投稿しているちゃん丸さんの『新日常』をお送りします!
ちゃん丸さんより
どうも!『ラブライブ!平凡と9人の女神たち』を執筆しております、ちゃん丸と申します。今回、ご縁がありましてこの企画に参加させていただきました。
本編とは違った良さを出せてればいいなと思います。
ちなみですが、今回の話ではμ'sメンバーは一切登場しません!笑
そのところを頭に入れてご覧ください!
それではどうぞ!
神崎秋葉。
その名前を聞いたひとは、きっとこう答える。
––– 天才と。
私自身、悪いけどそういう自覚はある。
だってそうでしょ?いろんな道具、薬とあらゆる手段を使って、愛しの愛しの...ぶっ...!!れ、零くんをいじめてきたんだから。
「というわけで今回もやっちゃうわよ〜」
ひとり、研究室でつぶやく。
薄暗い中で髪の長い女が黙々と机に向かっている。その姿だけでほとんどの人は一線を引く。
私はそれでもいい。だって余計な人間関係なんてめんどくさいだけ。
そうは思っていたけれど。
「...あんまり気が乗らないわね」
それもそう。今回の計画。それは –––
《神崎秋葉、恋する乙女化計画!》
「はぁ...めんどくさい」
そもそもなんでこんな計画を立てたのかと言うと。ターゲットである零君がある時、こんなことを言ってきたから。
『秋葉って恋とかするの?』
って。その質問には適当に「さぁね♪」なんて返したけど、本当のところ恋なんてしたくない。だってめんどくさいだけじゃない。
それに私は恋なんて抽象的なものには一切興味がないし。
だけどもだけども。
『恋とかするの?』→『恋してる秋葉って想像出来ないよな』→『恋してる秋葉見たら対応に困りそう』
零君が言いたいのはそういうことでしょ?
自分でも相手の言葉をここまで深読みする癖は恐ろしさすら感じるけど、その相手が零君なら問題なし♪
今回は内容が内容だけにめんどくさいとは思うけど、それでも実際に行動に移してしまうのが私。
というわけでわけで!
恋する乙女になる薬をまたまた作っちゃったのよね。いままでなら零君に飲ませてその反応を見て面白がるんだけど、今回だけは別。
「さて。早速始めちゃいますか」
見た目はオレンジジュースのようなその薬。だって味も香りもオレンジジュースにしたんだもの。ただ間違いなくそれは普通のオレンジジュースではないけどね。
私は何の抵抗もなくその薬をゴクリと喉を通す。味も問題ない。私の想像した通りの味。
うん、成功ね。
それだけで成功したと言い切れるのは完全に私の勘。だけど私の勘は当たるものよ。
「よぉし。早速零君たちのところに行きますかね」
荷物をまとめながらそうつぶやくが、ひとつ、疑問が浮かんでくる。
「...そもそも誰に恋するの?」
私としたことが。一番大事なことを考えていなかった。恋する乙女になる薬を作るという事実だけで、無意識に自分の中で普段気を遣うところまで手を伸ばさなくなってたのかもしれない。
「ま、いっか。恋する乙女風に薬を作ったし」
そういうこと。本当に相手を好きになるようには作ってない。あくまでそういう雰囲気を出すだけ。
ふふふふ。ちょっと楽しみになってきた。
私は荷物をまとめて、研究室を出る。時間はまだ昼。今日は土曜日ということもあって、この時間なら零君たちは学校ね。
零君♪零君♪
普段よりもなぜかウキウキした気分を抑えつつ、暖かな日差しが照りつける見慣れた道を歩く。
気のせいか、普段見慣れた道が少し輝いて見える。気のせいだと思うけど。
「さてさて...」
気づくと、私の目の前には彼らが通う音ノ木坂学院。今日はよく晴れてなかなかいい雰囲気を醸し出してる。
零君たちはきっと屋上ね。
早くこの薬の効果を見せつけたい。そして彼の困った顔が早く見たい。ふふふふ。
早く...零君に会いたいなぁ...。
.........えっ?
ふと、立ち止まる。
「何を言ってるの...?私...」
零君に会いたい?この私が?いや確かに、薬の効果を早く見たいという気持ちはある。
だけど“会いたい”とはまた別モノ。いますぐに会わないと死んじゃう!私!なんて微塵も思ってないし。
でもなんか...変ね...いまの私...。
自分のこのよくわからない感情を抱えながら、私は屋上へと向かう。
近づくにつれ、確実に大きくなっていく胸の鼓動。ドクンドクンと、まるで私の意識を何かに向けているように。
「...さて」
屋上に続くドアの前。
このドアを開ければ、おそらくμ'sのみんな、そして零君がいるはず。
「...あとワンセット!」
...どうやらいるみたいね。そんな声がドア越しに聞こえたため、もし居なかった時の対応を考えずに済んだ。気のせいか少しだけ心が軽くなる。
「はろー♪」
いることがわかったのならここで立ち止まる必要もない。そう思った私は勢いよくそのドアを開ける。
屋上には強い、だけどどこか憎めないような日差しが照りつけていた。
零君は...零君は...
「またお前か...今度は何だよ...」
居たっ♡
私の大切な大切な零君♡
...えっ?
大切な大切なって...さっきから私は何を言ってるの...。ここに来て疲れが出てきたとでもいうの?
いやそうだとしても流石にこんな考えには至らないはず。
『...そもそも誰に恋するの?』
...まさか!!
「秋葉?どうしたんだよ」
––– ドクン
「あ、あぁ...」
私は...あなたに恋しちゃったの...?
☆☆☆
「...はぁ」
からかうべき相手に恋をしてしまうなんて...本末転倒じゃない...。
でも冷静に考えてそもそも私の周りの“男”と言ったら零君ぐらいしか居ないし...。
だけど本当に好きになる、恋をするようには作っていないはず...。っていうかこれは本当に恋なの...?
「もうわけわかんない...」
自問自答を繰り返す。
だけど自問する、自答する、新たな疑問が浮かんでくる。この繰り返しでもう考えるのすら面倒になる。
というより、恋しちゃったの...?なんて言ったものの、これが果たして“恋”と呼んでいいものなのかすらわからない。
この私をもってしても。
その受け入れがたい事実が、より私のこのどうしようもないイライラ感を掻き立てる。思いっきり零君で発散したいレベル。
...べ、別に変な意味で言ったわけじゃないから。
私はそんなイライラをどこで発散すればいいかわからず、ひとりで喫茶店。
結局零君をからかうどころか、彼の顔すらまともに見ることが出来なかった。
いつもならもっとその場に居るはずなのに、そそくさとその場を離れたものだから零君だけじゃなく、あの子たちも不思議に思ったに違いない。
そんなことを考えていると。
ポケットの中に入れていた携帯電話が振動する。マナーモードにしていたことをすっかり忘れていた。
私は携帯を取り出して初めて電話着信だと気づく。相手は...楓ちゃん。
...鋭い彼女のこと。今回も私が何か企んでいると踏んで電話をかけてきたのだろう。その辺りは自分で言うのもあれだけど、私によく似てる。
...出るべきだろうか。
冷静になって考える。彼女に本当のことを話すと間違いなく私がからかわれる。姉の私ですら面倒くさいと思う彼女。普段やりたい放題やってるからなおさら何されるかわからない。
まぁそのときは返討ちにしてあげるけど...ね。
それはまあ置いといて。
このまま零君で遊ぶ前に薬の効果が切れかねない。それは避けたかった私はとりあえず、素直に電話に出る。
「はいはーい♪どうしたの楓ちゃんっ」
いつもと変わらないように。それを無意識のうちに意識していたからなのか、自分でもびっくりするぐらいに普段のような対応ができた。
『お姉ちゃん、聞きたいことあるんだけど』
楓ちゃんも零君の隣にべったりだったからね。きっと私の様子について聞いてくる。絶対に!
『今度は何を企んでるの?』
ほら!やっぱり楓ちゃんは私の妹ね。私の考えることは同じってこと。それを行動に起こすかどうかは別にして。
...でも楓ちゃんはベクトルは違っても行動力はかなりのものだからね。私が零君に同情してしまうほどに。
まあその辺はとりあえず置いときまして。私は楓ちゃんの問いかけにどう返そうかを考える。
「わかるぅ?」
とりあえずこれぐらいの返答でいいでしょ。別に本当のことを言う必要もないし。
楓ちゃんは深い深いため息をついて口を開く。
『お姉ちゃんもよく飽きないね...。私が言うのもあれだけど』
「お互い様よ♪」
楓ちゃんは少し微笑む。
...そう言えば零君。何してるんだろう。
––– ドクン
...っ。彼のことを考えるだけで胸が...苦しい...。
『そう言えばお兄ちゃんなら穂乃果先輩たちと遊びに行くって言ってたよ。場所はわからないけど行ってみれば?』
えっ...?穂乃果ちゃんたちと...?
自分でもわからないモヤモヤ感が胸の鼓動とともに私を覆い尽くす。
『全く...穂乃果ベタベタするのはふたりっきりの時にしろよ』
『えへへ〜。零くんにずっとくっつきときたいもん!』
『まぁ可愛いからいいけどな』
零...君。い、嫌...。
『お姉ちゃん?』
そんな楓ちゃんの問いかけは、私の耳に届いてなかった。それを不思議に思った彼女は電話越しに大きな声で私を呼ぶ。
『お姉ちゃんってば!』
「え、えっ?」
なんとも気の抜けた返事をしてしまった。
そう思ったときにはもう遅い。彼女は明らかに私を疑っている。
『お姉ちゃん...いい加減教えてよ。今度は何を仕組んだの...』
ここで本当のことを言ってしまうべきか。でも言ってしまったら後々いろいろと面倒くさくなるのは目に見えている。
だけど...ドクンドクンと高鳴るこの胸の鼓動がそんな私の考えを鈍らせる。
そして、
「ちょ、ちょっと...相談したいことが...」
そんなことを言ってしまった。だけどいまの私には適当にあしらう余裕すらない。
不思議なことに時間が経つにつれ、零君のことしか考えられなくなっていた。
『ふ〜ん...な〜んか怪しいけどま、いいよ』
「駅前の喫茶店いるから...」
『はーい。すぐ行く〜』
電話を終えた私ははぁ...と深いため息をつく。
今頃になってあんなことを言ってしまったという後悔の念に襲われる。
そもそも、こんなになるまで薬を作ったつもりはないのに...。
まず本当にひとを好きになるようにすら作っていない。それっぽくなるように、それっぽくなるようにと。
『穂乃果先輩たちと遊びに行くって』
...いまごろ零君は...穂乃果ちゃんたちの前でいい笑顔見せてるのかな...。
...ずるい。私だって彼の優しい笑顔が見たい...。
そもそも私が零君に構うのも私を見て欲しいからだし...って何言ってるんだろ私。あぁもうわけわかんない。
「あの〜お姉ちゃん?」
「あっ、か、楓ちゃん...。は、ハロー♪」
「もう遅いよ」
いつからそこに居たのだろうか。全く気づかずボーッとしているときに話しかけてくるものだから。
いつも通りに接しようとしても無駄だった。
まあ電話の段階で楓ちゃんはある程度察してるみたいだけど。
楓ちゃんは私の目の前に座って向き合う。
制服を着ているということは練習帰りだろう。
「それで。相談ってなに?変な相談だったら帰るから」
背もたれにもたれながら、だるそうな雰囲気を出して私の言葉を待つ。
いまにも欠伸をしそうな顔で待たれるのはいい気しないけど、私は躊躇いを思いっきり投げる勢いで話す。
「わ、私...こ、恋...しちゃったかもしれないの...」
「.....................は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする彼女。
そして。
「ぶっ...!!あはははは!!!!!もう冗談きついよ!!」
お腹を抱えてまさに爆笑する彼女。割と静かな店内に急に彼女の笑い声が響くから他のひとの注目が私たちに向けられる。
「ちょ、ちょっと笑いすぎ...!!」
「だって...!!お姉ちゃんが恋...!?そんなわけないじゃん!お兄ちゃんを虐めることが趣味のお姉ちゃんがひとを好きになるなんて出来るわけないじゃん!」
ここぞとばかりに言いたいことをマシンガンのようにぶっ放してくる彼女にかなりの怒りがこみ上げてくるがなんとか、なん!とか!堪える。
でも絶対に仕返ししてあげるんだから...。
『秋葉。そんなこと言うなよ。妹だろ?』
...っ!!零君...がそう言うなら...ちょっと考えてあげてもいいけど...?
『さすがだな。俺は知ってるぞ?実は秋葉はすごく優しい“女の子”だって』
...うふっ。ふふふふふふふ。零君ったらぁ!もう何言ってるのよっ!ふふふふっ
「...お姉ちゃんひとりでニヤニヤして気持ち悪いんだけど。というか本当なの?」
「ほ、本当よ!だ、だから呼んだのにぃ!」
「いやなんか本当にごめんね。これは本当にごめん」
私の様子を見て楓ちゃんは身を乗り出して姿勢を変える。ようやく話を聞く気になったらしい。
と言っても何から話そうか。まぁ普通に薬を飲んだところから話すのが一番だとは思うけど。
『秋葉。薬のことよりも俺の話してくれよ。そっちの方が嬉しいからさ』
うんっ!わかったよ!
「好きなひとなんだけど...」
「そう。それよ。お姉ちゃんが惚れるのもびっくりだけど、惚れられる側はまぁ可哀想」
なにこいつ。実験台にしてやろうか?あぁ?
『秋葉。やめてあげな』
うんっ。零君が言うなら。
「楓ちゃんも知ってるひとだよ」
「はぁ!?と言っても私はお兄ちゃん以外の男に一切興味ないし、そもそも男として認識してないからわかんないよ」
「世の中の男性諸君。元気出して」
それもそうか。それぐらい彼女は零君に夢中。兄妹という概念を超えて、ひとりの女性として彼を愛している。
すごくカッコつけて言ったけど、本当はダメなことなんだけどね。
「とりあえずルックスはどんなの?」
「かっこいいわね」
「すごく?」
「すごく」
ルックスは文句のつけようのないぐらいカッコいい。それは私でも思う。
「ただ」
「ただ?」
「すごく、ものすごく、変態ね」
「...なんだろ。すごく思いつくひとがいるんだけど」
興味津々に話を聞いていた彼女が、一気に先ほどのように疑いの目に変わる。
「...はぁ。どうりで変だと思った。お姉ちゃん、今度はそういうことね。どうせお兄ちゃんに恋するような薬でも飲んだんでしょ?」
やっぱりさすが、私の妹ね。
こんなわけの分からない流れでも冷静に話を聞いていたということ。
とりあえず、本当のことを言ってあげますか。
そうすれば楓ちゃんもこの計画に参加してくれるかもしれないし。
「ま、そう –––」
『秋葉?いままでの俺たちは...嘘だったのか?』
れ、零君...。そ、そんなことはない...でも薬の効果で私がおかしくなってるだけだから。
だからごめんね零君。
『待ってくれ!!秋葉!!』
やめてっ!!私にこれ以上構わないで!!もう放っておいて!!
『そんなことできるわけないだろ!!俺の...!!俺の...!!大切な姉ちゃんだから!!』
零...くぅん...。
「ぐすっ...零君...ごめんね...ごめんね...」
「お、お姉ちゃん...?ちょっと本当に怖いんだけど?」
ってあれ?私はさっきから何をやってるんだろ。心の中に零君が現れて、私にそんなことを言ってくるから本当のことなんて言えるわけないよ...!
やっぱり零君を見捨てることが出来ない...!!
「あっ、店員さんお会計です。お姉ちゃん先に帰ってるね。なんか怖いから」
『よかったな。これでようやくふたりっきりだ』
うんっ。零君...。私...零君なら...いいよ。
『俺も...ちょっと我慢できなくなってきた...』
来て...。私をあなた色に染めて...!!
『秋葉ぁ!!』
零くぅん...!!!
☆☆☆
「...う、うぅ〜ん?あれっ...?」
気がつけば、私は研究室の机にうつぶせになっていた。眠りから覚めたようだけど、瞼が重い。
カーテンからわずかに差し込む光の加減を見れば、おそらく朝だろう。
夢...?
真っ先に思ったのはそういうこと。
だけど夢にしてはかなりリアリティがあるというか、中身が濃かったというか。
現に記憶もはっきりとしている。
「とりあえず携帯...携帯...」
時間でも確認しようかと思い、携帯を手にとって開く。するとメールが何件か来ていたことに気づく。
普段は見るつもりもないけど、なぜか、ものすごく嫌な予感がしたため開いてみる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
From: 神崎楓
これ聴いて元気出してねっ!(笑)
好きなひとに届きますよーに♡
あっ!まだ誰にも言ってないからねっ!
言って欲しくなかったら私と取引しましょ♪
『今後、神崎楓には一切何もしないこと』
これが条件ねっ♡それじゃーね
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それには添付ファイルがあり、開いてみると。
『わ、私...こ、恋しちゃったかもしれないの...』
ピキリと、携帯にヒビが入る。いや、ヒビを入れてしまうぐらいの怒りがこみ上げてくる。
やっぱり...現実だったのね。ふふふふ。そう、そっちがその気なら...私は受けて立つわよ...
楓ちゃん...。ふふふふふふふ。
でも正直、恋の力をなめていた。
恋する乙女は強いなんて言うけれど、確かにその通りだと実感してしまった自分が居たから。
...案外悪くないかもね。“恋”も。
「...なに考えてるんだろ。ふふっ。さてと、作業しますか。楓ちゃんを地獄にたたき落としてあげる...お楽しみにね...」
『...やっぱり秋葉には敵わないわ』
ありがとうございました!
秋葉さんが秋葉ちゃんになる話が書きたかったんです。はい。ということで『恋する乙女になりたいの!』を書かせていただきましたが、いかがでしたか?笑
他の方のキャラを動かすのは楽しい反面難しさを痛感しました。コラボも書かせてもらったので尚更です。
この場をお借りして。
このような企画に参加させてもらって本当にありがとうございました!ほんとにいい経験になりました!笑
そして!ここまでご覧くださってありがとうございました!
まだまだ企画は続くのでお楽しみですよ!!