ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 Anthology~【完結】 作:薮椿
今回は
『ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク』
を投稿しているレイヴェルさんの『新日常』をお送りします!
レイヴェルさんより
はじめまして。
ラブライブ! -彼はどう変わる?-【リメイク】を執筆しているレイヴェルと申します。
私の書いている作品と、椿さんの作品の方向性が違う為、少し違和感があるかもしれませんがご容赦ください。
椿さん。ハーメルン一周年及び、新日常100話突破おめでとうございます。
ヒュン....トスッ
「...ふぅ」
夏の弓道場に長い黒髪を腰の高さの所で結いている袴姿の女性が一人、弓を引いていた。
「なにか違いますね…」
彼女の名前は園田海未。音ノ木坂学院3年生、生徒会副会長であり、廃校の危機に瀕していた学院を救ったスクールアイドルグループ、μ’sのメンバーだ。
そして、弓道部の部長でもある。
そんな彼女がなぜ、期末考査も終わり、後数週間で夏休みとなるような日に学院の弓道場にいるのか。
それは8月の下旬に開催される弓道の都大会に向けて練習をしていたからだ。
ヒュン....トスッ
「…やはり納得いきません」
しかし、都大会に出場できるほどの腕を持つ彼女は家柄か癖となっている丁寧な言葉使いで、ポツリと不満を口にする。
ヒュン....トスッ
何度も何度も、自分の感じる違和感がなんなのか。それを確かめるために弓を引くが、満足のいく結論は出てこない。
「…はぁ。少し休憩しましょうか」
根を詰め過ぎるのもまた問題。ここは精神統一をして自分を落ち着かせましょう。
そう考えた海未は弓を壁に立て掛け、射場の中央に正座をし、瞑想を始める。
だが、それも長くは続かなかった。
ここは都会のど真ん中にある学校とはいえ、中々に敷地が広く、外の喧騒はあまり気にならない。だから案外足音や話し声などがわかってしまうのだ。
そして海未は誰かが弓道場に入ってきたことに気が付き、瞑想をやめる。
すると、意外な声が海未の耳へと入ってきて振り返る。
「あら?そのまま続けてても良かったんだが」
「れ、零!?どうしてここに...」
他の弓道部員だと思い込んで振り返るとそこには思いもよらない想い人、神崎零が申し訳なさそうに頭を掻いていた。
「いや、暇になったから帰ろうとしたんだけどよ。そういえば海未を見かけてないと思って探してんだ」
「私を?」
「穂乃果とことりはキャイキャイはしゃいでたからいいんだが、お前の姿がなかったからよ。穂乃果達もお前がどこにいったか知らないようだったし」
「...ごめんなさい。どれくらい探されましたか?」
「ん?3分」
「へ?」
「ん?聞こえなかったか?多分3分だ」
「えっと...私を探していたんですよね?」
「あぁ」
「それで真っ先にここに?」
「あぁ」
「...すごいですね。この学院も広いのに」
「だって海未はここにいるってわかってたし。なんせ俺の彼女だからなっ!俺くらいになれば探すくらい朝飯前だぜ!」
当たり前だろ?なんてドヤ顔で言ってくる零に海未は呆れながらも恥ずかしくなってしまう。
「もぅ...からかわないでください」
「お気に召さなかったか?...まぁ、真面目に言えばお前が一人だけで抜ける用事なんて大会が近い弓道しかないだろ?だから真っ先にここに来ただけだ」
それにそんな堅いこと言ったら俺じゃないだろ?なんてことを付け足す辺りも零らしい。それでカッコイイセリフも台無しだ。
声を出さずじっとしていれば顔もよく、成績も良い好青年な零なのだが、何かと言動や行動で幻滅することも多い、だがやるときはキッチリやるから困り者。
自分自身もそんな彼に惹かれて惚れてしまったのは今でも不思議に思うこともあるくらい。
「それよりもなにかあったか?」
「え?」
「なんか悩んでるっぽかったから寄ったんだが」
「悩み...ですか?特にありませんが」
「本当か?にしては珍しいな、練習中に瞑想なんて」
「...え?」
「お前はいつも瞑想してから弓を引き始めて、終わって片付けたら仕上げに瞑想って感じだろ?それともあれか?あれで今日はもう切り上げるつもりだったか?」
「それは...」
別に今日に限った話ではないが、零は情報分析や状況判断に秀でている。普通なら気が付かないようなちょっとした変化も嗅ぎつけて、ズバッと原因を言い当てる。
そんな常人にはできないことをサラッとやってのけてしまう所にも惹かれたのかもしれない。
「バッサリ否定しないってことは、少なからず引っかかるところがあるんだな。相談ぐらいなら聞くぞ?」
そして彼はやると決めたら最後まで貫き通す男。もう...下がれない。
「実は....」
----------------------------
大雑把にだが、海未は思うような結果にならないことを告げると、零は顎に手をあてながら唸った。
「なるほどな。....一度見せてくれないか?」
「わかりました」
真剣に考えてくれる零も久しぶりです。と感謝しながら海未は躊躇いもなく頷く。
零は今までに何度も弓道場を訪れ、海未が弓を引く姿を眺めていたり、ちょっとした知識を元に、上手くいっていない弓道部員にアドバイスをするなど、結構出没している。
そして零の観察力。それに頼れば日頃と何が違うのかを教えてくれるかもしれない。そんな希望を抱きながら海未は弓を構え、的を凝視する。
「(....いつもどおりにやればいいのです)...ふっ」
ヒュン....トスッ
弾き出された矢は軽い放物線を描きながらも的へ向かって突き進んでいく。
しかし、思い描いていた場所とは違う場所に矢は刺さった。
「...外したか」
「...先程からこの調子です」
またも狙っていた位置よりも少し右にズレてしまった。
今までは集中すれば、思うとおりに当たっていただけに、この連続して外れてしまう事実が辛い。
「...なぁ、もう一度射ってくれないか?」
「もう一度ですか?」
「あぁ、少し気になることがあるからさ」
と言いながら零は徐ろに立ち上がり、海未の右斜め前に移動する。
「...どうしました?」
「気にしないでくれ。さ、やってくれ」
「?....わかりました」
海未は零のとった行動がよくわからずに首を傾げたが、深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
「(もう一度です)...ふっ」
ヒュン....トスッ
「.......」
結果は同じ。的の中心を狙っているはずなのに、落ちる場所はそこから少し右下。無意識にだが海未は顔をしかめる。
「またですか...」
「なるほどな」
「っ! わかりましたか!?」
「ひとつ言えることがある。海未、取り敢えず落ち着け」
「...どういうことですか?落ち着いていますけど?」
「いや、お前弓を引く直前に目が泳いでいたぞ」
「え?」
しかし、そんなことを言われても
「自覚がありません....」
「んーなんだかなぁ。スランプってわけではなさそうなんだよな。変に力が入っているようにも見えねぇし。....やっぱりココか?」
と零はトントンと自分の胸を叩く。
「...また心ですか」
海未も零も、前に同じことを話したのを覚えていた。
「それしかないだろ。目が泳ぐっってのは、疲れか動揺している時に起こるもんだ。......大会が怖いか?」
「怖い...ですか?」
「怖いっていうか...あれだ!緊張とか。...でもラブライブに出ておいて今更緊張もねぇよな」
その言葉を聞いて海未はハッと目を見開く。
「...何か気がついたか?」
「そうですね。...もう緊張なんて言葉とは無縁になってきていましたから」
「緊張してんのか?」
「そりゃ私もしますよ。ライブと違って、隣には誰も居てくれないんですよ?」
ライブは隣にメンバーがいて、自分と同じ信念を持って歌い、踊る仲間だ。でも弓道は違う。ライブと違い、不正や減点すべき点がないかをキツく監視される。とても楽しんでできるようなものではない。
「まぁ...確かにそうか」
「それに私は弓道部の部長です。今回の大会で引退するとはいえ、この部の名前を背負っている以上は醜態を晒すわけにもいきません」
「なるほどな。外部のプレッシャーか」
「今まではできるだけ気にしないようにして過ごしてきました。スクールアイドルの時もそうでしたから」
「それで今回も同じようにいこうとしたら躓いたのか」
「...こればっかりは私自身でどうにかするしかありません。ありがとうございます、零。おかげでモヤモヤしていたモノがわかってよかったです」
「おいおい、まだ解決になってねぇのに礼なんて言うなよ」
「しかし....」
「なぁ海未、お前は勘違いをしてるぞ!」
そう言いながら零はビシッ!と勢い良く人差し指を海未に向けた。
「勘違い?」
「そうだ!俺はお前の何だ!」
「え?零は...そ、その...私の....」
「ハッキリとだ!」
「う、うぅ....私の恋人ですっ!」
は、恥ずかしいです!? そう海未は顔を真っ赤にしながら手で顔を覆うが、零はそんな海未を見ても表情1つ変えずに近づき、優しく抱きしみた。
「あっ....」
「そうだ、俺と海未は恋人だ。それは何があっても覆らない」
零はあやすように優しく海未の背中を叩く。すると海未は一瞬こわばったが、安心したのか力を抜いて零をそっと抱きしめ返す。
「俺はいつもお前の隣りにいる。勿論、大会にだって観客席から見るぜ?それぐらい恋人としてやらないとな」
「恥ずかしいですね、それはそれで...」
「去年は見れなかったんだ。今年こそは海未の勇姿を見たい」
去年は海未が大会のその日までずっと黙っていたのだ。そのせいで気がついた時にはもう大会は終わってしまっていた。しかしそれは去年のこと。今年こそは何があっても海未を見に行く。そう零は心に決めていた。
「それではますます緊張してしまいます」
「別に変に頑張る必要なんてないだろ?いつも通りでいいんだよ、いつも通りで」
「それができれば苦労しませんよ」
「大丈夫だ、海未ならできる」
「...無責任ですね」
「んなわけあるか、俺が好きになったんだ。それくらいできるだろ?」
「...それを無責任と言うんですよ。でも...なんかスッキリした気がします」
「ならよかった」
「...もう少し、こうしていたいです」
そう小声で呟きながら海未はギュッと顔を零の胸に埋める。
「いいぞ?俺で良ければいつでもウェルカムだ」
「...でも汗の臭いがついちゃいますよ?」
「それこそウェルカムだ。海未の汗とか最高じゃないか」
「...やっぱり零は変わってますね」
「変態、とは言わないんだな?」
「それは元々でしょう?」
「ははっ 違いない。でも、海未はそんな変態と付き合っているんだ。海未も変だぞ?」
「貴方がそれを言いますか?....もぅ、私が変になったのは零のせいなんですからね」
「おぉ、俺は堅物の海未でさえも懐柔してしまう程の力を!っていてぇ!?足踏むなよ!?」
「貴方が調子に乗るからです!...はぁ」
足を踏んだことにより、反射的に海未から零が離れると、海未はもう一度ため息をつきながら矢を2本持って構える。
「ん....やるのか?」
「はい。零のおかげでスッキリしましたから」
「そうか。...いいか?俺だけじゃない。μ's全員がお前の隣にいつもいる。だからそれを忘れるな、自分に自信を持て」
「...今日はいつもと違いますね、零」
「んなことわかってる。俺自身むず痒いわ、こんなお硬いセリフ。もっと気楽にいきたいっての」
それがわかっていても、親身に助言をくれる。そんな彼に海未は頭が上がらなかった。
「ふふっ.....すー はぁ.....っ」
ヒュン....トスッ
「お見事。ナイスだ」
パチパチと拍手をする零を横目に海未は射った的を見る。すると、
「今度は当たりましたね」
狙い通り的の中心に矢はシッカリと刺さっていた。
「よし、これで海未のお悩みは解決だな!」
「はい、ありがとうございます」
「いや~良かった良かった。海未の汗滴る髪に袴姿っ 目の保養だわ」
「貴方は....心の中に留めておくという選択肢はないのですか...」
これだから零は...と海未は内心呆れる。すると零は目を見開いて狼狽える。
「え゛!?俺...また声に?」
「えぇ。目の保養とバッチリ言ってましたね」
「ははっ...はははっ!...お、俺は帰るぞ!」
どうやら今のはワザとではなく無意識に言ってしまったようで、さっきまでの堂々とした面影は鳴りを潜め、軽く海未にビクビクしながらも急いでスクールバッグを持ち上げると、零は脱兎のごとく弓道場から去っていった。大方、海未からなにか言われるなら一発物理が来るなり思ったのだろう。
「あっ ....もぅ。今更目くじらなんてたてませんよ」
だが零の本心の呟きに慣れてしまった海未はただただ、小さくなっていく彼の背中を消えるまでじっと眺めていた。
ようやくして零の姿が見えなくなると、海未は深呼吸をして気持ちを再度切り替える。
「あそこまで言われてしまっては、いい成績を残さなければなりませんね」
音ノ木坂学院はスクールアイドルだけが取り柄でないことを、ここで証明しておきたい。
そして何よりも、好きな人に応援して貰えるのだ。これはどんなものよりも....力になる。
そう海未は決意すると、新たに矢を用意し始め、射場で再度構える。
ヒュン....トスッ
今度も的のど真ん中。これだ、これがいつもの海未である。調子が戻ってきた。
「待っててくださいね、零!絶対に勝ちにいきますっ!!」
閲覧ありがとうございます。
如何だったでしょうか?自分なりに雰囲気は崩さないようにしたつもりではありますが、中々難しいものなんですね。
初めて他作品のキャラを動かしたので、面白さ半分怖さ半分でした。
ですが、それ以上に楽しかったです。
勿論、最初は私の様な人間が椿さんの作品のキャラを動かして良いのかとビクビクした面もありました。
しかしいつもは味わえない充実感や、作品ごとに違うキャラの考えや行動にクスッとした所もありましたね。これは中々経験できるものではありません。
こんな機会を下さった椿さんを始め、私と交流をしてくださっているラ!作者さんの方々、そして閲覧して下さっている読者さんに感謝申し上げます。