ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 Anthology~【完結】   作:薮椿

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薮椿より

今回で企画小説はラストとなります。

ラストは
『それは、やがて伝説に繋がる物語』
を投稿している豚汁さんの『新日常』をお送りします!


豚汁さんより

はい! 今回の企画で、なんと大トリを務めさせていただくことになりました、豚汁と申します!
 大トリなので、皆様から繋がれたバトンを、なんとか綺麗な形で締める事が出来るように頑張って書かせていただいたので、是非見て頂けると嬉しいです!

 ――では、どうぞです!


執事☆パニック☆

 ――――どうして、こんなことになってしまったのでしょう。

 

 

 

 

「えへ……えへへへ………れいく~ん………ダメだよぉ、いくら……さんでも、そこまでしたらエッチだよぉ……えへへへへへへ……」

 

 

 テーブルの上で突っ伏しながら、そんな事をブツブツ呟くことり――その姿からは、もう再起は不可能なのではないのかと思えてしまいます。

 

 

 

 

 ――――もしかしたら、初めからこうなる事は既に分かり切ったことだったのかもしれません。

 

 

 

 

「なんでも良いならぁ……穂乃果のこんなお願いでも、聞いてくれるよね……? えへへ……断るのはダメだよ……これは、お嬢様からの命令で~す………ふ、ふふふふふふ……」

 

 

 ことりと同じようにテーブルの上で突っ伏し、だらしない笑顔になりながら、心ここにあらず状態の穂乃果――この様子では、もう現実に帰ってくるかどうかも怪しいかもしれません。

 

 

 

 

 ――――でも、今ハッキリわかる事は、今この場で生き残っているのが私だけという事

 

 

 

 

「私は……私だけは絶対に負けません……!」

 

 

 そんな決意を新たにし、私は口元をキュッと引き結びます。

 

 

 

 

 ――――そう、私だけは生き残ってみせる。

 

 

 

 

「お嬢様、ご注文の品をお持ちしました」

 

 

 

 

 私の後ろから聞こえる、私の――いえ、私達の愛しい彼氏の声。

 

 でも、すぐに振り返るわけにはいきません……私は覚悟を決めてそちらの方を向きます。

 

 振り向いた直後、そこには――とても彼に似合うカッコイイ黒い執事服姿で、トレイを持つ零の姿がありました。

 

 そんな零の魅力に、私は思わず持っていかれそうになる意識を、強引に自分の唇を噛みしめて耐えます。

 

 そう、これから始まるのは、私と零の最終決戦。

 

 

 

 

 ――――私は生き残ってみせます……この“執事喫茶”から!

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 事の起こりは、最近零が練習終わりの放課後に、こそこそと1人で何処かに行っていることから始まりました。

 そんな零が、放課後何をしているのか気になった穂乃果は、私とことりを連れてこっそりと零を尾行する事になったのです。

 

 

「あっ……いたいた……! こんな所で何やってるんだろう零君は……」

 

「穂乃果、こんな事しなくても直接、零に何をやっているか聞けば良いじゃないですか」

 

「海未ちゃん、ダメっ! そんな事したら、もし零くんがことり達に内緒で他の女の子と会ってたりしたら、すぐ誤魔化されちゃうよ」

 

 

 ことりはそんな事を私に言いますが、私はその可能性は無いと考えていました。

 ――まさか、零がそんな命知らずとは思えませんからね。

 

 

「それにしても……穂乃果、この服装はどうにかならなかったのですか?」

 

「これは仕方ないのっ、部室にある目立たない他の服っていったら、これぐらいしか無かったんだから……」

 

 

 私は今の自分の格好をもう一度見つめなおします。

 

 暗い色のコートに、赤い縁取りのサングラスを掛け、ベレー帽を被る――正直、にこのセンスと変わらないレベルの目立つ変装です。

 いくら突発的な行動とはいえ、穂乃果にはもう少し計画性というものが必要だと思うのですが……こんな姿では、逆に零に気付かれてしまうかもしれません。

 

 

「あっ……穂乃果ちゃん、海未ちゃん! 零くんがお店に入って行ったよ!」

 

「えっ? あ……ホントだ! 行こう二人とも!」

 

 

 私がそんな事を思っている時、ことりの知らせにそう言い、穂乃果はその店の前まで走って行ってしまいます。

 私とことりもそんな穂乃果の後を追い、そしてその店の名前を確認します。

 

 

 

「「「……執事……喫茶?」」」

 

 

 

 執事喫茶……弓道部の後輩から、話だけは聞いたことがあります。

 どうやら、メイド喫茶の男版みたいなものだとか――しかし、可愛い女の子が居そうなメイド喫茶ならともかく、この執事喫茶に零は何の用事があるというのでしょうか……?

 

 

「ようし……! 中に入ってみよう二人とも!」

 

 

 そう言って、穂乃果は私たちと共にその店の中に入ります。

 

 すると――

 

 

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 

 

 黒い燕尾服をきた執事の男性が、そんな事を言いながら私達を出迎えました。

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

「わぁ……綺麗な内装……ことり、話には聞いてたけど、実際に来るのは初めてかも……」

 

「わぁ! みてみて海未ちゃん、ことりちゃん! シャンデリアだよ! すごーい!!」

 

「穂乃果、あまり店の中では騒がないで下さい……」

 

 

 入り口で出迎えてくれた執事の方に連れられ、席の方に丁寧に案内された後、私達はそんな事を話していました。

 

 でも、二人がはしゃぐ気持ちも分からなくもありません。

 店内の内装は、色も落ち着いた感じで統一され、店の中のあちこちにある小物も可愛らしく、まるで私たちは、お城の中の一室に案内されたお姫様になったような気分でした。

 

 

「ご注文はいかがですか? 本日のメニューでお勧めなのは、マンゴーのタルトケーキになっています。美しいお嬢様達の口にきっと合うと思いますのですか……どうでしょう?」

 

 

 そんな事を言いながら、五つぐらい年上の落ち着いた雰囲気の男性の執事が、私達に優しく微笑みます。

 恐らく普通の女性であれば、それだけでその執事の魅力にやられてしまうのでしょうが――私達は違いました。

 

 

「あっ、じゃあ、穂乃果は苺のショートケーキで!」

 

「ことりは……あった! このチーズケーキをお願いします」

 

「私はこの、白玉あんみつをお願いします」

 

「――――かしこまりましたお嬢様方、できましたらすぐにお持ちしますので、少々お待ち下さい」

 

 

 褒め言葉に何にも反応一つ見せず、お勧め以外のメニューを平然と頼む私たちに、執事の男性は、若干ショックを受けたような様子で厨房の方にメニューを伝えに行きます。

 

 ――執事の方には悪いのですが、例えあなたがどれだけ魅力的でも、私達は零の彼女で、零一筋なのです。じ、自分で言ってて、少し恥ずかしいのですけどね……。

 

 

「それにしても、零君はどこなんだろう……? 他の席に座ってる訳でもないし……」

 

「――零くん、もう何処か他の所に行っちゃったのかなぁ?」

 

 

 注文を頼んでしばらくして、穂乃果とことりがそんな事を言い始めます。

 

 確かに、店内に零が居る様子はありませんね……。

 もしかしたら、普通に私たちの尾行に気が付いて、何処かに行ってしまった可能性が高いかもしれません――

 

 

 

 ――私がそう思ったその時でした。

 

 

 

「お待たせしました、お嬢様――ご注文の品をお持ちしました」

 

 

 

 聞きなれた声に反応して、私達はそちらの方に顔を向ける――すると、そこには神が居ました。

 

 

「「「―――っ!!??」」」

 

「どうしましたか、お嬢様方? 私の顔に何か付いているのでしょうか?」

 

 

 そう言って、首をかしげる神――じゃないです! あれは零です! 落ち着いて下さい私っ!!

 

 そんな、普段とは違って礼儀正しい口調の零は、真っ黒な燕尾服に白いワイシャツを合わせ、いかにも高級なお屋敷で働いてるかのような、立派な執事のような恰好をしていました。

 

 その姿は、普段の変態でだらしない様子の零からは、考えられないほどの上品さとカッコよさがあって――正直、私の理想の男性像に一番近いものがあります。

 

 その瞬間、私は零がこの執事喫茶に何をしに来ていたのかを悟りました。

 零は……この執事喫茶で執事のアルバイトをしていたのです。

 

 でも、それにしては――零、キャラを作り過ぎではありませんか!?

 

 そして、零は何も反応が無い私達を気にせずに、ことりの方にチーズケーキの乗ったお皿をそっと置きます。

 

 

「はい、お嬢さま――チーズケーキにございます」

 

「は……はいっ……!」

 

 

 ちょっと……ことりっ!? あなたの大好きなチーズケーキなんですよ!?

 なんでチーズケーキの方に目もくれずに、零の方を見つめ続けてるのですか!? 変装がバレてしまいますよ!?

 

 

「――おやおや、お嬢様……そんなに見つめられては、照れてしまいますね」

 

「ごっ……ごめんなさい……!」

 

「――いえ、良いんですよ……私の事を見つめていたいのでしたら是非どうぞ。私は執事ですから――お嬢様の願いには、出来る限り応えて見せるのが仕事です。

 ですからもし何かございましたら、何でも私に申し付け下さい――可愛らしいお嬢様。では、残りの品もでき次第お持ちします」

 

 

 そう言って綺麗な動作で私達に向かって一礼し、執事服姿の零は厨房の方に行ってしまいました。

 

 

「――ことりちゃん!? ことりちゃん!? しっかりしてぇ!!」

 

 

 穂乃果の声に、私は零の方を向いていた視線をことりの方に戻します。

 

 すると、ことりは焦点の合わない瞳で、何処か別の幸せな世界に飛んでしまったかのような笑顔を浮かべていました。

 

 

「し、執事さんの零くんが何でもって……じ、じゃあ零くんの■■■で、ことりの■■■に■■■して貰ってぇ……そして……そしてぇ……ちゅ、チューーーーン!!!」

 

「ああっ!! ことりちゃんがっ!! ことりちゃんが妄想のし過ぎで倒れちゃったぁーーー!!」

 

「くっ……ことり……! あなたの事は忘れませんっ……!」

 

 

 私は心の中で、机の上に突っ伏したまま動かないことりに対する黙とうを捧げます。

 仕方ありません……普段から零に対する態度がアレなことりには、零のあの発言は刺激が強すぎたのです……!

 もう……ことりの意識が現実に帰ってくる事は無いかもしれません……!

 

 

「どうしよう海未ちゃん! ことりちゃんが起きないよぉ……!」

 

「穂乃果、とりあえず今分かった事を整理しましょう……でないと、私達は二人とも、ことりの二の舞です!」

 

「そ、そうだね……とりあえず、零君のさっきの様子だったら、私たちの事はバレてないよね?」

 

「ええ……きっと気づいていないとは思いますが……まだ確証はありませんね。とりあえず、それよりも零が後二回、私達の注文した料理を持ってくるのが問題です。少なくとも、私達はあと二回あの零の魅力に耐えなければいけないのです……!」

 

「あの執事服姿のカッコイイ零君に耐える……む、無理だよぉ……! それにしても、まさか零君が執事さんのアルバイトをしてたなんて……それだったら、最初から穂乃果たちに教えてくれたらよかったのに……」

 

 

 そんな穂乃果の言葉に、私は納得してしまいます。

 確かに……何故零はここで隠れてアルバイトなんてしていたのでしょうか……?

 

 私がそんな事を思ったその時、また誰かが近づいてくる気配がしました。

 

 ま、まさか……もう!? 

 

 

「――失礼しますお嬢様、次の品をお持ちしました」

 

 

 そう言って、苺のショートケーキを持った零が現れます。

 

 次は穂乃果の註文した品ですか……穂乃果、耐えて下さい!

 

 そして、穂乃果の前にショートケーキの乗ったお皿を、音を全く出さないように静かに置きました。

 

 その一連の、恐らく相当特訓したと思われる零の綺麗な動作を、穂乃果は黙って見て、零が去るのを待つ――かのように思われたのですが。

 

 

 

「あの~……ごめんなさい。 出来たら、ショートケーキ食べさせて貰っても良いですか?」

 

 

 

 ――――穂乃果っ!!??

 

 私は、穂乃果の自分から自滅しに行ったその行為に、心からの驚愕を覚えました。

 でも……良く考えたらそうですよね……あの穂乃果が、こんな執事の魅力に溢れる零に対して、なにもせずに耐えるなんて、あり得ませんよね。

 

 

「――かしこまりました。では、僭越ながら……あーんして下さい」

 

「うんっ! あ~ん……」

 

 

 そう言って穂乃果は口を開け、零が一口大に切ったケーキをフォークで口に中に運んでくれるのを待ちます。

 

 くっ……羨まし……って、私は何を考えているのですかーーーー!!??

 

 そして、穂乃果の口に零の運んできたショートケーキが入ります。

 穂乃果はそのショートケーキを、幸せそうな顔をしながら咀嚼しました。

 

 

「う~ん! おいしい~! 幸せ~!」

 

「――あっ……お嬢様、申し訳ございません。口元にクリームが付いてしまいました……少々お待ち下さい」

 

「えっ……!? あわわっ!」

 

 

 そう言って零は、おもむろに人差し指を伸ばし、穂乃果の口元のクリームをそのまま指で拭います。

 そして、なんと零は……その指に付いたクリームを、そのまま舐めてしまったのです。

 

 

「――――っっ!!??」

 

「あっ……すいません。つい舐めてしまいました……私としたことが、お嬢様の魅力にやられてしまったみたいです。どうかこのことは、執事長には内緒にしておいてください」

 

 

 そう言って零は、穂乃果の唇を人差し指で抑えて、普段は滅多に見せないような優しい笑顔で穂乃果に微笑みます。

 だ、ダメです……! ただでさえ執事服で強化された零の魅力に、そんな行動と笑顔まで来られたら穂乃果は……!

 私は、心配になって穂乃果の方を見ると――

 

 

「…………………」

 

 

 ――――穂乃果は最早、何も言わずに固まってしまっていました。

 

 

「さて……次で最後の注文ですね、少し待っていてください」

 

 

 そう言って、零は厨房の方に下がっていきました。

 

 

「穂乃果……穂乃果っ!!」

 

 

 私はさっきの零の笑顔をまともに受け、真っ白になってしまった穂乃果の肩を揺さぶります。

 

 

「えへへへへへ……えへっ……えへへ…………」

 

 

 しかし、穂乃果は何処か違うところを見て笑ったまま、こちらを一切見ようとはしませんでした。

 

 まさか……穂乃果……座ったまま意識が飛んでしまったんですか!?

 

 私は、自業自得とはいえ無惨に散ってしまったそんな穂乃果を、優しく机の上に上半身をうつむせになる形で寝かせてあげます。

 

 

「しかし……これで分かった事は一つ。零は……私達の変装に気が付いています……!」

 

 

 私はそんな確信を得ました。零は確かに変態なところはありますが、女性に対しては紳士です。だから、見ず知らずの女性に対して、あそこまで過度なスキンシップはしないはず。

 

 つまり零は、確実に私達の変装に気が付いたうえで、私達にちょっかいをかけて楽しんでいるのです!

 

 ――――だったら、負ける訳にはいきません。

 

 私の中で闘争心が燃え上がるのを感じました。

 散ってしまったことりや穂乃果の分まで……私は生き残ってみせます!

 

 

「お嬢様、ご注文の品をお持ちしました」

 

 

 ――――私は……私は負けない……!

 

 

 そんな覚悟を決めて、私は零の方を向きます。

 しかし……そんな零の執事服姿に、先程までとは違うアイテムが追加されていました。

 

 

 

「眼鏡……っ!!」

 

 

 

 何という事でしょう、さっきまでの零も十分魅力的でしたが、その魅力に、今度は眼鏡をかける事によって生まれる、知性までもが加わってしまったのです……!

 

 零……私が変装に気づかれている事に気づく事を想定して、そんな小細工を……!

 

 

「はい……お嬢様、白玉ぜんざいにございます」

 

 

 そう言って、私の目を見つめながら、白玉ぜんざいが入ったガラスの器を私の前に置く零。

 

 もう……そういう目線はいりませんから、早く行って下さい零……!

 

 

「――おや、そこのお二人は寝てしまったのですか?」

 

 

 しかし私の願いも空しく、零はとぼけ顔でそんなことを私に問いました。

 私は、そんな零をキツく睨みつけて言います。

 

 

「そうですね……誰かさんの所為で二人は、今後目を覚ます事があるかどうかも怪しくなってしまいました」

 

「そうですか……でも、お嬢さまとゆっくりお話し出来て、逆に好都合かもしれません」

 

「えっ……?」

 

 

 そう言うと、零はいきなり私の手を取って、そして私の前に跪きました。

 零……いくら気づかれたからといって、こんな直接的な手段出てくるとはっ!

 

 

「なっ……何を……!?」

 

「お嬢様……あなたは美しい。その艶やかな黒髪、そしてその凛々しさと可愛らしさが共存した美しさ……素晴らしいです。お嬢様、是非一生私を、後ろにいる二人のお嬢様方と共に、お傍に置いて下さい……」

 

 

 そう言って、零は私の手をそっと口元に運びます。

 まさか……零、やめてください……! そんな事をされては、私は……私はっ……!!

 

 

 

 そして、ついに零は私の手の甲に、そっと優しく口づけをしました。

 

 

 

「―――――っ!!!」

 

 

 

 …………私は、零の唇が手の甲に触れた瞬間、全身に電撃が走るような感覚を覚え、そのまま目の前が真っ暗になっていくのを感じました。

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 ――そして気が付けば、私とことりと穂乃果は、フラフラな足取りで執事喫茶を後にしていました。

 

 かろうじてカウンターのレジに立って、支払いをしたところまでは覚えているのですが、それ以降の記憶が全くありませんでした。――白玉ぜんざいをせっかく頼んだのに、それを食べたかどうかも怪しいです。

 

 

「穂乃果……ことり……大丈夫ですか?」

 

「うん……何とか……」

 

「ことりも……多分大丈夫」

 

 

 そんな風に弱々しい返事を返す二人に、私は安堵を覚えます。あのまま、もう二度と現実世界に帰ってくる事は無いかと思っていたので、尚更その安堵は強いです。

 

 

「結局……零君はなんで執事さんのアルバイトしてたんだろう?」

 

「さぁ……? 結局、私達は零に全員やられてしまったので、聞けずじまいでしたね」

 

 

 そうです……零が執事喫茶でアルバイトをしていたのはわかったのですが、何故アルバイトをする必要があったのかは、結局は謎のままでした。

 でも、零の事ですから、きっとその内にアルバイトをしていた理由も、きっといつか話してくれるでしょう――私はそう信じて、それ以上考えるのをやめました。

 

 

 

 ――――それよりも、私にとって一番大切なのは……

 

 

 

「ねぇ……ことりちゃん、海未ちゃん……明日からも、練習終わりにここに来るってのはどうかな?」

 

「……異議なーしっ!」

「異議なしです!」

 

 

 

 ――――これから、放課後の楽しみが増えたという事なのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 ~※~

 

 

 

 

 

「ふぅ……やっと三人とも帰ったか……」

 

 

 俺は、執事喫茶の店内のカウンター裏で、安堵のため息をつく。

 

 

「それにしても、最初は穂乃果達が来てるのを見た時はヤバいって思ったんだけどな……何とかごまかせて良かったぜ」

 

「零くん、そろそろ時間だからバイト上がって良いよ」

 

「あっ、了解っす! お疲れさまでした先輩!」

 

 

 俺は先輩にそう言うと、店内の更衣室に戻って執事服を脱ぐ。

 

 

「それにしても、あまりにも穂乃果達の反応が面白かったから、ついついからかい過ぎちまったな……海未の手の甲にキスをしたのはやり過ぎだったか……? ま、でも楽しかったからいいか!」

 

 

 俺は、手の甲にキスをした瞬間、真っ赤になって机の上に突っ伏して動かなくなった海未の姿を思い出して笑った。全く……そういう反応が可愛いんだから困るんだよな海未は。

 

 

「それにしても、そろそろバレるかもな……俺の計画が」

 

 

 

 そう――俺は、この執事喫茶のアルバイトの高い時給で、俺の“九人”の彼女全員に、日頃の感謝のプレゼントを贈るつもりなのだ。

 

 

 

「“あの一件”を乗り越えた後に、俺が決めた――μ’s全員と付き合うっていう決断。

 それを、後悔なんてしてるつもりなんてないけどな……でも、そんな俺に愛想を尽かさずに、好きって言ってくれてるみんなの為に……俺は、自分で稼いだ金でみんなに何かしてやりたい」

 

 

 

 

 ――そう、あの日に誓ったんだ……俺は彼女全員を幸せにしてみせるって!

 

 

 

「だから……穂乃果、ことり、海未……もう少しだけ待っててくれ。あと少ししたら、俺はみんなに――綺麗な花束と一緒に、俺の今までの感謝の気持ちを伝えるから」

 

 

 

 そう、これが俺の――神崎(かんざき)(れい)の覚悟。

 

 

 他人からどんな非難を受けようとも、決して曲がらない俺の覚悟だ。

 

 

 

 俺はそんな思いを新たに、執事服をから制服に着替えて家路につく。

 

 

 

 

 ――――さて、明日も執事……頑張りますか!




 ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

 今回、この企画の掲載順はランダムのくじで決めたのですが、その時に私がまさかの大トリという大役を任されるということになり、大変焦ったのですが、いざ書いてみたら、椿さんの新日常のノリがとっても楽しく、スラスラ書くことが出来ました! 新日常のノリはやっぱり最高だと思います! 書いててとっても楽しかったです!

 では、最後に……椿さん!
 新日常100話到達――そして、椿さんのハーメルン投稿開始から一周年――その両方ともとっても凄いことだと思います!おめでとうございます!
 心から祝福させて頂きます!
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