ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 Anthology~【完結】 作:薮椿
今回は
『ラブゴースト!~歴史へ成る少年~』
を投稿している秩序鉄拳さんの『新日常』をお送りします!
深夜を超えた西木野邸、ある一人の少年が宅内の廊下を抜き足差し足とゆっくり移動していく。
その少年の名前は神崎零――何を隠すこともない。当作品の主人公である。
九人の彼女のうち、その一人であるお嬢様――西木野真姫に誘われ、彼女の自宅で一夜のお泊りをすることになった零。
だが、特に何事もドキドキ胸の高鳴るイベントが起こるわけもなく、彼は嘆きの想いを抱いた。
愛しき彼女のほうから誘われたせっかくの機会なのに……
と、膨らんだ胸をまるまるしぼまされた気になってしまい、少々不満げな彼。
故にこの度真姫に対し、いつかは行ってやろうと心に秘めていた、ある計画を決行することになったのである。
「ふっふっふ……今日は真姫の家にお泊りとなっている時点で、実はこうなる予感がしていたんだ……!」
なぜか廊下を歩く彼はノリノリで。
どこか予感はしていたという呟きに乗せてやり切れなさを吹っ切ってゆく。
ここで、今深夜に他人の住宅を見るからに怪しい歩き方で足を進める彼の姿を見てみよう。
彼はアニメでよく見かける泥棒のような黒タイツ、そして黒く長めのコートを羽織り、そのうえで紅いバンダナを使い口元を覆っている。
顔にはスキーで使うようなゴーグルを付けて眼まで隠す徹底ぶり。
はたから見れば不審者そのもの、家の住民に見つかっては通報不可避待ったなしにしかならない。
しかし彼には時間が味方をしている。
幸い使用人も、西木野一家も全員寝静まっている。
あらかじめ西木野母へ協力の要請もしてあるので、自身の使っている客室から真姫の部屋までの間に使用人がいるなどということはないと、そういう確信もある。
西木野母に自身らの関係が知られてる。と、真姫に聞いていた零は顔を合わせた時冷や汗を流したもの。
しかし自身の姉である神崎秋葉の手回しが、南理事長の時のように及んでいたらしい。
いざ対面したときに――
――秋葉ちゃんから聞いていたわよ。真姫のこと、これからもよろしくね?――
――とにこやかに声を掛けられたことは、彼にとって驚愕以外の何物でもなかった。
南理事長の時だけでなくこうして西木野母にも手が回っているということは、既に全家族に露呈しているのではないかという新たな恐怖も表れるが、ひとまずそれについてはおいていただきたい。
――アイツの人脈は本当にどうなっているのだろうか。――
と、彼がつらつらに考えながら歩いていると、目的の部屋に到達する。
「それじゃあ……YBI作戦、開始だ」
あらかじめ西木野母から受け取っていたマスターキーで、部屋の鍵をゆっくりと開ける。
カチャリ。
と静かな、それでいて確かに響く開錠の音。
それと同時に零はキョロキョロと左右を見渡す。
一応安全は確保されているといっても、見つかっては格好が格好のために通報は避けられない。
万が一を考え、万全の警戒と体勢を整える。
ドアノブの真下にしゃがみこみ、ゆっくり、音を立てないようにしてドアノブをひねる。
この部屋のドアは外開き。つまり自分はドアの開く方向とは真逆の位置にいればよい。
そういう結論を導いた零はそぉっと、ドアを開く。
ドアを開いていないほうの片手でゴーグルを上にずらし、部屋の様子を確認する。
事前に寝静まっているであろうことは予測済みで、電気が消えているので確実に真姫は就寝中であると考えられる。
まさかあの真姫に限って電気を消した空間で携帯電話を弄っているとは考え難い。
一通り部屋の様子を伺った零はゴーグルをずらし直し、そろっとまるで蛇が滑り込むような鮮やかさで部屋の中に入りこむ。
真姫がドアの閉まる音で目が覚めることも考えられるため、内側からゆっくり、ゆっくりとドアを戻してゆく。
音を最小限のみに抑えながらドアを閉め終わったのを確認した彼は、フラァと立ち上がり再び部屋の中を見渡す。
実は零のつけるゴーグルのレンズ部分には特殊な加工をしており、暗闇に多少眼を慣らす必要はあるものの、それさえできれば快適な使い心地をもたらしてくれるのだ。
バンダナは呼吸音を最小限に抑えるための装備、黒タイツは衣擦れを少しでも減らすため。
黒のコートは内側に道具を仕込むためと、様々な下準備を怠らないようにしている今の彼には、隙はない。
「さてと……」
ポツリとか細く息をついた零は足元に気を使いながら真姫の下へ忍び寄る。
たまに真姫は本人でも気付かないまま、床に物を置きっぱなしとしてしまうところがある。
完璧思考やらそういう類の彼女にしては存外間が抜けているというべきであろうか。
とにかく、そのような小物一つでも足で踏んでしまえば自身のリアクションによって起こしかねない。
それを危惧して足元に気を使うのである。
「おぉ……!」
真姫のベッドに着いた彼の抱いた感想は『感動』。これに尽きる。
感動故にその声は思わず漏れた。
元から知性溢れる美貌と本人が謳うだけあるその美しさはまさに女神。
横向きで丸まっているその寝相は彼女の横顔を一つの絵画にできるほどである。
――真姫の寝ているこの横顔を写真に撮ってコンクールとか出せば最優秀賞は確実かな――
――などと、零は少々ゲス目な思考を一時放棄し、改めて真姫の寝相、その寝顔を観察する。
美容に気を使っているのか、暗いのにどこかしっとりとしたようにその肌は映る。
美しいの一言が漏れそうになる。
しかしここで声を漏らせば真姫が目覚めるかもしれない。
そんな危険を思い出し、急いで彼は口をふさいだ。
それほどまでに、幾度も言うが真姫の寝姿は麗しく、美しく、まさしく女神の様で有るのだ。
μ’sという九人の女神たちそれぞれに魅力は当然ある。
その中で、今ここにいる真姫は触れることが禁忌であると、本能に訴えかけるような神聖さを彼に与えている。
――ひるむな。やると決めたんだろう?――
ゴクリと生唾をのみこむ。
零は怖気づいてしまったのだ。
恐怖に? いや、違う。
では怯え? それも違う。
尊く感じたのだ。真姫の寝姿に、その美しさに。
――ためらうな。今しかないんだぞ――
無理やりな理由づけではあるが己へ鼓舞し、いざ足を踏み出す。
しかしその残るためらいは大きなミスを起こす。
先ほどまで足元に向いていた注意が真姫に向いたことで足元をよく見てなかったのだが……
「なっ……!?」
丁度その足元に真姫のカバンが置かれていた。
躓いたことで足がもつれそうになる。
倒れてはまずい。
その思いだけで足を踏み出し、右腕をベッドの端に押し付けることで体を支えた。
足で床を踏み鳴らす音、ベッドに突如かかった衝撃、零の焦りからの息遣いが室内に響く。
よもや起きたのではないかと、彼が冷や汗を垂らしながら真姫のほうへ顔を向ける。
――よかった、寝ているな――
寝つきのよい真姫はぐっすりと目が覚めた様子もない。
ひとまず安堵した零は改めて真姫のベッドに近寄る。
今の彼にはためらいが消えた。
いや、消えたというよりそれを吹き飛ばすほど先の事象は恐ろしいものだったのだ。
真姫のベッドの脇にしゃがみこみ、YBI作戦を改めて実行に移す。
それ以前にYBI作戦とは何か気になった人もいるのではないだろうか。
YBI作戦とは、字面通りYoBaI――夜這いだ。
古き日本では男が女の下へ通う求婚行為から発展した言葉。
転じて夜に男が女を寝屋に求めに行く行為を指すなどとざっくりとした言葉で有る。
少々紛らわしい作戦名でもあるが、もともと神崎零という人物がこういうノリの良さを求めがちなのもある。
服装に関しても彼がノリノリでチョイスをしたという事実があり、単純に彼の趣味でこのような作戦名として扱われているのであろう。
手始めに何処に触れようか。と、彼は悩む。
しかしその前に目につくものがある。
それは真姫の寝間着と体を覆い隠すもの――布団だ。
現代のシチュエーションの一つでもある夜這いとは、布団一つ剥がすことにもこだわらなければならない。
部屋に入るとき然り、近づくとき然り、動き然り、そして――衣服を剥がすときもしかりだ。
相手が起きないように最後までその行動を済ませる一連の流れ。
一つでも狂いを生じさせないように完遂する綿密なプランニングを求められる。
零は思う。
――雑誌や漫画では睡眠薬だとか睡眠ガスとか使っているがそんなものは邪道だ――
零は断ずる。
――俺はそういうものを抜きにしてこの作戦を完遂する!――
改めて本腰を入れなおしたところで布団をゆっくり、ゆっくりとはぎ取ってゆく。
コツは布団内部と外気の温度差を急に認識させないこと。
急に寒気を感じて起きてしまわないように、徐々に腕を、脚を外気に触れさせて行く。
急な寒さで起こしてしまうというなら徐々に寒さを感じさせればいい。
慎重かつ丁寧に、それでいて大胆に。
時間をかけて布団を剥がした零は再び感嘆の声を上げそうになる。
布団に隠されたその御姿にまたもや気圧されるのだ。
前開きに止められた薄いピンクのネグリジェは、見るからにそれなりの値段を張る代物。
そんな質のいい服を女神である真姫が纏えば当然美しさがまた変わる。
すぅすぅ。と、寝息を立てる彼女を見て零は一瞬呆けてしまう。
……が、そこは二度目の感動。何とか意識を回復させることに成功する。
――さて、どこから触れていこうかな……――
最初からいきなり胸や、お尻のラインなどに触れてしまうのは夜這いする者として三流以下の愚行である。
夜這いの最終目的は本来『男女の交わりをする』ことであり、そのためには自身を高ぶらせるだけではなく相手の本能まで高ぶらせなければならない。
即ち、最初からそのような部分に触れ、相手の本能を動かさずに事に及ぶことで、相手に『受け入れさせる』こともできない。
零はそこに気付いていた。
YBI作戦は何も自分が楽しむために行うだけではない。
真姫の元来ある、ツンデレ特有の『壁を能動的に用意しがちな癖』を取っ払い、彼女自身から零の
ただ単にこういうシチュエーションを彼がしてみたいと思ったからではない……多分。
決して、思う存分触れてその気にした後で真姫という眠り姫を、自分という王子様の熱烈な想いのキスで目覚めさせてやろうとか思っているわけではない……恐らく。
――脚か? いや……腕がいいかな。撫でてみよう――
手始めに真姫の横倒しになっている右の二の腕に触れてゆく。
あらかじめコートのポケットなどで色々手を温めていた甲斐があったのか、彼の手もほんのりと温かく、外気の寒さを与えないようになっている。
零の手が真姫の腕を滑っていく。
きめ細やかな肌はツルンと肌触りがよく、いつまででも触っていたい。そんな気持ちを沸き立たせてゆく。
二の腕を数度往復させた零はそのまま滑らし、肘から手首までの間をなぞる。
二の腕に触れているのとは違う触感にまたもや心が不意に跳ねる零。
彼には意外にも小心者なところがあるのであろうか。
それともこのような状況でじっくりと彼女の体に触れていくことへ思いがけない興奮があるのか。
真姫の寝顔をちらちらと横目で見るたびにそのプルンとした唇に自身の唇を押し当てたくなる気持ちがますます主張しだす。
一度気持ちを落ち着けるために手を離し、真姫から視線を外して大きく生唾をのみこむ。
飲み込まれそうになる自身の欲望の大きさを恨めしく思い、その欲を必死に理性で押さえつけ再び、今度は彼女の指へ手を触れた。
白魚のような指、ピアノを弾いているために切りそろえられた爪。
細く、少し力を入れてしまえば壊れてしまうのではないかと思えてしまうような指。
撫でるたびにピク、ピク、と動くその様に思わず見入る零。
時間を忘れ、触り続けてしまいそうになるが、いまするべきはそういうことではない。
急いで思考を振り、後ろ髪を引かれる想いをますます強くしながらも、真姫の脚へと移動をする。
再び一息ついたときに彼が感じたのは口の渇きである。
急激な乾き、水分の飢え、そしてそれに繋がって喉の痛み。
どうやら思ったよりも真姫の腕を触れることに集中しすぎたらしい。
ズキズキと少しばかり苛み始めた頭の痛みを治めるように深く、それでいて慎重に息を吸う。
零はそのまま息をついてコートの内側からあるものを出す。
醤油さしにも見えるそれに入っているのは水。
一度に多くの水を欲してしまうと音も大きく立ててしまう。
少量の水を、何度も何度も同じように服用すれば少なくとも口の渇きは抑えられる。
――ちょっとばかり我を忘れそうになってたな。真姫、恐るべし――
水を口になじませながら、いつの間にか汗を激しくかいていたことを実感する。
顔にはそこまで出ていないが、タイツの内側はなかなかにびっしょりと湿り、重さを感じる。
――なるほど、道理で喉も乾くわけだ――
なじませた水を飲みこみ、改めて真姫の脚に視線を向ける。
視られていることが本能的にわかるのか、時折モジモジと脚の位置を直そうとするのも分かる。
――こりゃあ、悠長に楽しんでいられる時間は少なめか?――
いつ彼女が起きるかわからない。起きそうな瞬間を見計らいこちらの動きを止めるしかない。
ある意味チキンレース、ある意味度胸試し。
彼女が起きた時どれだけその気になっているかの勝負。
少しでも判断を見誤れば真姫によって制裁を加えられる
覚悟をまた腹に決めた零は、彼女の左足首に触れる。
またしてもスベッとした触感に意識が奪われそうになるがひとまず我慢。
手の角度を代えて触れ続けると、脚がまた動き、触りやすい位置に移動をした。
足首から膝へ、丹念に触れ、丁寧に撫で。
ゆっくりと味わうように触った後、太ももに触れた瞬間に零はパッと真姫から手を離した。
――あっぶねぇ……! 起きるかと思った……!――
真姫が身じろぎをしたのだ。
彼女は寝苦しいのか、横向きの姿勢から仰向けに転がる。
そんな彼女を見て、零はあることに気が付く。
――お、少しその気になってきてるのか……?――
真姫の呼吸が少しばかり荒い。
少しばかり余裕を取り戻した零はマッサージをするような手つきで、真姫の右側の太ももを触る。
すべすべとよく滑り、それに加えもちっとすいつくような感覚。
飽きない触り心地とはまさしくこれのことか。
彼女の触感を楽しんでいると、うなされるような声とともに真姫の首の右側にスペースができる。
時折顔を緩ませたりするところから何か楽しい夢でも見ているのか。
うなされるような声とは裏腹に夢を楽しんでいることに安堵しながら、零はその首の右側に手を這わせるために動く。
いきなり喉に近い部分や頸動脈に触れるのはご法度。
圧迫感や息苦しさを与えては確実に目覚めを速めてしまう。
寝ている相手に快楽の前兆を与えるには首の後ろ側、肩のラインに触れることで精一杯なのだ。
零は真姫のネグリジェの内側に軽く手を入れ、肩甲骨あたりを撫でる。
服が動きを阻害するためにあまり長々とできないのが苦労するところ。
早々に切り上げ、狙いを服の内側――お腹へ移行する。
服の上から触れるのではなく、ネグリジェが前開き型であることを利用して肌に触れることにする。
一度手を揉み、冷え始めた指を温め、一息つきなおしたところで行動を開始する。
さわさわとお腹に触れたとたん、真姫の体がビクリ、と反応した。
腕よりも冷たさを感じる部分だからか、少し体が驚いたのだろうか。
寧ろ一度手を離せばまた冷えた指に反応をしてしまい、それだけ起きるまでの時間を減らすことになるだろう。
ならばその手をしばし動かさず、その冷たさを真姫の体に馴染ませることを優先するべし。
その間に零は真姫の全身に目を通す。
服の上からではどれだけ真姫の気分が出来上がっているのかは伺えない。
顔をみると多少息が荒いことしか伝わらない。
しかし先ほどよりも頬の緩まりは強く見える。
――ゆるゆる過ぎてアイツらには見せらんないなこれ――
時折にへらと笑う真姫の顔は、本当に寝ているのか疑わしきもので。
しかしその呼吸は一定のモノで寝ていることは疑いようがない。
希などのように腹芸がうまいのならともかく、真姫がそういうことを得意としていないことも彼氏故に留意はしている。
そのため、真姫の寝顔が素であると判断し、観察を続行することにした。
――どんな夢を見ていたらこんな顔になるんだか――
零の顔にはいつの間にか苦笑が浮かぶ。
彼女のこんな表情は自分だけの秘密にしておいてやろうと思い、お腹に添えていた手を動かす。
撫でるよりも強く、圧すよりも柔らかく。
左わき腹あたりからへその中央あたりまでの間を数度往復させる。
さすがは真姫というべきか、そのウエストは細く引き締まっている。
伊達にμ’s実質トップである巨尻を持っているわけではない。
そのウエストに触れているうちに、だんだんとなぜか落ち着き始めていた欲が彼の中に再び湧き上がる。
心無しかゴーグルの内側で真姫を見るその眼も据わり始めている。
――もっと、もっと、もっと。
一度高ぶる欲は歯止めが聞かないほどせりあがってくる。
しかしここで一度振り返ってみよう。
今回の目的は夜這い。真姫が起きないようにそのすべてを達成することにある。
そのためには慎重に、真姫の体を、感覚を必要以上に刺激しないほうがよい。
だが、それを行う零は現在欲望がヒートアップ。
思考力がメルトダウンを始め、どう動くべきかの当初立てていたプランニングが丸々頭から抜けてしまい始めている。
神崎零という人物がいつもいつも、彼女の一人である園田海未などによって制裁を加えられるのには、このように彼自身が欲に流されやすい気質であることも関係しているのだろう。
それはきっとこれまで同様に、これからも変わることは早々にない。
つまりだ、この後にどんなことが起こるのは、想像にたやすい。
しかし、未だ真姫は目を覚ましていない。
それでも、彼の行いへの審判の時は近い。
――真姫はどんな下着を今付けてるんだろ――
彼自身の熱が熱くなってきた故に暑く感じたのか、付けていたゴーグルとバンダナ、来ていたコートを脇に脱ぎ捨てる。
ネグリジェのボタンを先ほどまでとは違った荒々しい方法で外す。
勢いよく開いた服の内側にある真姫の下着を見て、零は隠しもせず感動の声を上げる。
「おぉぉ……!」
真姫の大事な場所を飾る上下の下着。
真姫のトレードカラーでもある鮮やかな朱色をベースの生地として、ひらひらと薄いレースの生地が装飾されたそれらをまじまじと注視する零。
「やっぱこの色合いといい、この豪華さといい……真姫らしいなぁ」
もはや当初にあった『起こさない工夫』を全てかなぐり捨ててダストシュートしてしまった彼には、言葉を抑えることができない。
一人感嘆と感動をつぶやきながら真姫のあばらに手を添える。
なぞるように、それでいて擦る様に触れ始める零。
その動きには、YBI作戦の面影は見えない。
ひとしきり堪能をした零はその上部にあるブラへと腕を持ってゆく。
慎ましやかではあるがそれでもμ’s真ん中付近に座するその胸は、下着によって隠されており視えはしないが、呼吸に合わせて胸が上下するたびにその肌の隙間から艶めかしさを誘う。
ゴクリと大きく生唾をのみこんだ零はあえて、ブラの隙間に手を差し込み、その胸に直に触れる。
既に数度触れてきた真姫の胸だが、こういうシチュエーションで触れることは新鮮味を与えるのか、いつもとは違う反応を零は示す。
息と生唾を交互にのみこみ、真姫の胸という一つの空間をその指で侵してゆく。
だんだんと動きが大胆になり始めたことで、彼は太もものほうへ再び狙いを定め、左の手を添える。
既に真姫の息は先ほどよりも粗めになっており、頬や肌の所々に、零から与えられた手の熱とは、違う熱を示す紅色が混ざる。
時折こらえるような喘ぎも唇から漏れ、耳で、眼で、その手で真姫の全身を零は楽しむ。
――しかし、だ。しかしだ。
幾らなんでも、何度も執拗に触り続けては刺激によって真姫は目を覚ましてしまいかねない。
零が冷静な判断をできる状況で有れば、事を急いて真姫の胸、及び脚を一度に長々と触り、さすり、揉むべきではなかった。
それをしなかったということは、つまり――
「んぅ……」
――
自身に来る何かの感覚によって、寝ぼけた声を上げながら眼を開ける真姫。
しかし当の零は自身の欲望に集中してしまい、真姫の起床に気付いていない。
もっとも――今更気付いたとしても遅すぎるのだが。
「あ……れ? れい……?」
真姫がまず認識したのは、暗がりの中で自分の体のすぐ脇に陣取りながら何かをする恋人の姿。
そして次に認識したのはその恋人が何やらへんてこな黒タイツに身を包んでいるということ。
そして次に認識したのが――
「……ねぇ、零?」
「いまいいところなんだ、邪魔しn――え、真姫?」
「なに……してんのよ?」
その恋人が自身の体に触れているということであった。
別に普段から自分の体に触れてくるような男だ。
今更触れてくること自体も、触られるときのムードも、今までのシチュエーション的に期待していないため問題はない。
だが、だが。
彼女には一つだけ、許せないことがあった。
それは――
「あっ、あのな? その、俺は真姫に――」
「なんで……よりによって今! やってきたのよ!」
「――えっ!? なに!? 何に怒ってるんだ真姫!?」
「もう! 最低!」
――自分が彼に見てほしい寝間着と下着を付けていないときにしてきたことだ。
真姫は、彼の性格上寝る前に部屋を訪れるのではないか。という期待の元、寝るまでの間では勝負下着、勝負寝間着を着ていた。
だが、彼は結局寝る前に来なかった。
もしかすれば母との対面に緊張を見せたりしていたために、疲れて寝てしまったのではないか。という気づかいで、彼女はそのまま着替えなおして寝てしまったのだ。
いつもならば真姫の思うとおり、彼のほうから動いてくるのだが……今日、彼は確かに疲れていた。
故に、それを労わってくれる。と零が望んでしまった結果のすれ違い。
だがしかし、そんな事情は互いに語らぬ故わかるはずもない。
真姫は怒り狂い、それの理由が思ったのと違うことで困惑する零。
最終的にその怒りは蹴りという物理攻撃で飛んでくる。
零は困惑によってそれを真正面から顔で受けてしまい、吹き飛ばされ、壁に激突する。
痛みで視界がぶれ、気絶する中で零は思った……
――ああ、なるほど、勝負下着の時に来てほしかったのか――
女心と秋の空。
変わりやすいものには用心せよ。
気付いたときにはすで遅し。
翌日目が覚めた零を待っていたのは、今ひとたびムードやシチュエーションを気にするように説教をする、真姫からのありがたい仕置きなのであった。
今回の企画の参加によって痛感したのは≪R-17.9≫を書くことはたやすくないということでした。
椿さんの強さを実感するとともに、自分の真姫ちゃん好きさも改めて実感した気がします。
所々にネタを混ぜたので、クスリとしてもらえれば幸いです。
まだまだ企画小説三日目。まだまだ数多くの方々による作品が待っておりますので、お楽しみいただければと思います。
それでは皆さん、読了ありがとうございました。