大尉とオーバーロード   作:まぐろしょうゆ

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なんか続きを書けと言われたので書いてみました。
しかし、こういうのは続けば続くほど駄作になるのがお約束。

今回はHELLSING巻末・表紙裏のノリに近し。


リア充大爆発!ぶっちぎりフラグヴェアヴォルフ

(どういうことだ!?)

 

モモンガは即座に確認作業に入る。

コンソールが出現しない。

GMコールが出来ない。

ログアウトが出来ない。

〈伝言〉………繋がらない。 いや、大尉には繋がる。

 

『大尉! 聞こえますか? どうなってるんでしょうこれは!』

 

〈伝言〉を受け取った大尉は、片耳を手で抑えながらモモンガを見やる。

彼の首は横にふるふると振られていた。

(うわー様になるな大尉。 ああいう仕草してると本物の兵士みたいだ)

と一瞬思ったが、モモンガは急いで思考を切り替える。

だが、次の瞬間に

 

「どうなさいましたか? モモンガ様」

 

大尉とは反対側に控えていた、絶世の美女であるサキュバス…

アルベドが表情豊かに、自主的に話しかけてきた。

あり得ぬ光景にわたわたするモモンガを尻目に、大尉は両者を放っておく。

殺気も闘争の空気も微塵も感じず、モモンガに危険は無いと理解しているからで、

しかもある程度こうなる…と大尉は予想していた。

非生物ではありえない濃厚な匂いが、ナザリックに満ちているからだ。

大尉は、一歩一歩己の足の感触を確かめるように靴を鳴らして玉座の階段を降りる。

並ぶプレアデス達の前をゆっくりと歩き、見開いた赤眼で凝視するように彼らを観察する。

無言のまま見下ろし、自分らの前を緩い歩調で行ったり来たりを繰り返す至高の人狼に、

既に生き物となったセバス・チャンと戦闘メイド達は緊張を隠せない。

ピタリ…と大尉の足が止まった。

ワーウルフの少女、戦闘メイドであるルプスレギナ・ベータの真ん前。

 

(え、えぇ? な、なんなんすか!? 私何かご無礼しちゃったっすか!?

 あぁ~~、でも…目に前に立たれると……

 大尉様……いい匂い……ワーウルフの逞しいオスの…大尉様の匂い~)

 

とか思いながら若干瞳を蕩けさせながらも不動で跪き続ける。

そんな彼女の首元に、大尉はゆっくりと身を屈め顔を近づけていき、

 

(うぇぇぇぇ!? あ!? え!? これ!? 近っ! 近づいて! 近いっす!!)

 

スンスンと鼻を鳴らして、思い切り耳付近の匂いを嗅がれてしまう少女は、

 

(な、なななな、な!?)

 

くすぐったいやらこそばゆいやら。

至高の御方に匂いを嗅がれる名誉?と、

少女の羞恥心とが絡んで膨らんで爆発して大変なことになっていた。

しかも、次の瞬間…

ペロリ。 とルプスレギナの頬を温かく柔らかく…ぬるっとしたものが撫でていった。

 

「「「「!?!?」」」」

 

大尉がルプスレギナの頬を一舐めしたのだ。

これには一同、声を失ってびっくりである。

玉座から見守っていたモモンガが、

 

『な、なにやってるんですかー!? 大尉ぃぃ!!?? R18行動ですよお!?』

 

大尉の乱心的行動にメッセージで叫んでいた。

が、大尉は周囲の反応も気にせず、スッくと立ち上がりモモンガを見ながら、

己の整った精悍な鼻をトントンと指で叩き、

次いで突き出した自分のベロを親指で軽く撫でる。

モモンガは気付いた。

 

『あ、ああ! に、匂いか! 味も感じるんですね大尉!?

 ユグドラシルではあり得ない筈の嗅覚と味覚が……!

 そういうことですねえ!?』

 

ギルド長からのメッセージにコクリと頷く人狼は、

そのまま即座に次の行動に移るとセバス・チャンの前に今度は立つと、

ガッと床を軍靴の踵で蹴る。

(私に何か用があるに違いない…)と判断した家令。

伏せていた顔をセバスが上げると、大尉の赤い瞳と視線がぶつかる。

通常、「立て」とかそういった命令を受けなければ跪きを解除するのは躊躇われる。

至高の41人の1人を前にして、独断で立ち上がるなどもってのほかだが……

大尉が非常に寡黙な人物であることは、ナザリックの誰もが知っていること。

言わんとする事を察して行動するのは、大尉に対しては必須スキルなのだ。

 

「付いて来い……と仰られますか」

 

頷く大尉は、そのまま玉座の間の大扉を片手で押し開け、

セバス・チャンも急いで立ち上がり大尉に追随する。

 

「大尉!? どちらへ!?」

 

モモンガもまた玉座から立ち上がると、慌てた様子で大尉を呼び止めた。

振り返った彼の、熱帯仕様のトレンチコートの高い襟と

深く被られた帽から覗く瞳は、赤く爛々と輝いている。

五感の全てが戻ったという事実と、

起きたであろう一大事に大尉の胸は少年のように高鳴っていた。

ワクワクしているのだ。

モモンガの空洞の瞳を見ながら大尉は、指で上を示す。

 

「外に偵察に行くと? やめて下さい大尉。

 それは…セバスとプレアデス1人にやらせます。

 あなたはナザリックの最大戦力………そうそう気軽に、俺の側(ここ)を離れないで欲しい」

 

モモンガは、矢継ぎ早に指示を出す。

周辺の探索をセバスと適当な一名に命じ、

その他のプレアデスにはナザリック9階層から順次上階へと警邏を命じる。

大尉が、ほんの一瞬残念そうな顔をした気がするが、

すぐにいつもの無表情で玉座へと歩き戻って、モモンガの横に静かに立つ。

 

(すみません大尉……楽しみをとってしまって……。

 でも、何が起きたのか不明瞭な現在……あなたを万が一の危険に晒すわけにはいきません)

 

心でそう謝罪するモモンガ。

一斉に素早く動き出すセバスとプレアデスだが、

何やら1人だけおかしな者が……。

全く動かずフリーズしている少女がいた。

 

あたりまえだがルプスレギナである。

モモンガと同じく少しもナザリックを見捨てなかった至高の1人。

そして同じ人狼という同族意識。

とても強い、逞しいオスの人狼。

ついでにあまり関係ないが褐色仲間でもある。

そんな存在に匂いを嗅がれ、あげくペロリとされて、

ワーウルフの少女が無事でいられるわけがなかった。

 

(はうぅぅ…大尉様ぁ…大尉さまぁ……お慕いしてたっすよぉ…)

 

”至高”へ抱いていた尊敬と忠誠以外の感情…

漠然と抱き、そして抑えこんでいた年頃ぴったりのオスワーウルフへの慕情が噴火していた。

ちなみにイヌ科が耳元や鼻先や肛門の匂いを嗅ぐのは、

「お前のことをもっと知りたい」という感情の表れだとかなんとか。

しかし大尉には少なくとも、今はそんな気は無く…

同族になったのだから(ユグドラシル時代は”人狼の紛い物”認識)

この程度のスキンシップは大丈夫だろう…という判断だったようだが。

戦闘以外では、結構脇の甘い大尉。

ワクワクしてテンションが上がっていたのも手伝って

誠に迂闊にフラグを突貫作業で建設していた。

 

(し、至高の御方に……大尉様に……ぺ、ぺろぺろされた…

 スンスンされた………こ、これって…子を産めってことっすか? えへ。

 うへへ…大尉様と私の群れ……子供は男の子が5人に女の子が6人)

 

感動と緊張と羞恥と発情とがごちゃ混ぜになって思考が定まらないルプー。

 

「御方々の御前で……。 まぁ今回は仕方ないですね…シズ」

「……はい」

 

ユリ・アルファに命じられた機械少女が固まりつつもトロけたルプスレギナを担ぐと

 

「お見苦しい所をお見せしてしまい、誠に申し訳ございません……」

 

ユリが一礼し、ガチコチに緊張した顔の姉妹達を引き連れ退出していった。

既にアルベドも、命令をこなす為に玉座の間にはいない。

メス人狼の先ほどの様子を見て、

あいつ大丈夫なのか?とモモンガは一抹の不安を覚えつつも

 

「とりあえず置いといて……。

 大尉、これから第6階層で僕らの力を試しましょう。 あそこには闘技場がありますから。

 色々と変わっていそうな感じですし………。

 それから……ついでに守護者全員をそこに集めます。

 NPC達の思考と忠誠を確認しなくては………

 彼らがバグとかで、俺らに造反してきたらシャレになりませんからね。

 まぁ、大尉がいれば万が一が起きても安心ですよ」

 

テキパキと次なる行動プランを示し、

無言で頷く人狼は早速動き出した髑髏の王に付き従う。

2人が指に嵌めている指輪、

リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力をもってすれば転移で一瞬である。

そして2人の気配を感じれば、一目散に駆け寄ってくる美少年風美少女が1人。

 

「モモンガ様! 大尉様! ようこそ私達の第6階層へ!」

 

両手でピースサインを作りながら元気よく挨拶しているこの少女とその弟を、

大尉は結構可愛がっていた。

アウラ・ベラ・フィオーラという少女は、

大尉と何故か仲が良かった最後の大隊のシュレディンガー准尉を彷彿とさせる。

匂いを嗅いでも話を聞いていても、いまいち性別がはっきりしなかった彼だが、

少佐やドクははっきりと『彼』と言っていた。

しかしたまにメスのような匂いもして、彼の能力同様謎が多いヴェアヴォルフだったが、

その准尉と、アウラは少し似ている…と大尉は思った。

ぽてぽてと姉の後をついてくる美少女風美少年、マーレ・ベロ・フィオーレひっくるめて、

この双子はなんだか少し……准尉の面影が感じられた。

「大尉! 大尉!」とまるで犬のように尻尾を振って擦り寄り、

撫でると猫のようにゴロゴロ喉を鳴らしていた彼。

少女のようで少年で、犬のようで猫のような二面性が、

双子という特性にあっているのかもしれない。

だからつい、

 

「あ…た、大尉様……」

 

ぽふぽふ、とアウラの頭に柔らかく手をのせてしまう。

それをするとアウラもアウラで、やや目を細めて「あふぅ」などと呆けて受け入れてくれる。

この反応は、ユグドラシル時代には無くて新鮮だ…と大尉は少し喜ぶ。

「お姉ちゃんずるいよ~」というマーレの声が耳に入れば、

大尉はモモンガに目だけで合図を送り…、

 

『え!? お、俺が撫でてやるんですか?』

 

〈伝言〉であたふた気味にモモンガが返事をすると、

ぎこちなさ気なドクロの手が美少年の頭に伸びてナデナデと優しく撫で回した。

 

「モ、モモンガ様…! あ、あのぉ…こ、こんな……恐れ、多い…ですぅ……」

 

マーレも頬を染めて満更でもないのだ。

 

ガタイ良し、な人外の2人が美しい少年少女を可愛がっているのは

絵的に背徳な香りがプンプンする。 

特に大尉は一見すると人間なため余計変質者である。

少佐やドクが戦争と関係の無い時…

やる気のない不真面目モードの時にこの光景を見れば、

「あーー!! 何やってんだこのムッツリ野郎! ショタ専かと思ったらロリコンか!」とか

「さすがミレニアム最大戦力! 手が早いなぁー! 私の男の娘フィギュアあげようか大尉」

などとわけのわからないことを言って茶化してくるだろう。

ずーっとナデナデしている2人に、される2人。

やめるタイミングを逃していた。

ナデナデ

ナデナデナデ

ナデナデナデナデ

そんな所に、

 

「おや、私が一番でありんす―――

 ってぇえ゛え゛え゛え゛え゛!!?? な、なにしとんじゃあああああ!!!!」

 

やってきてしまった守護者が1人。

登場早々に某ドンパチ警察ドラマの某優作ばりの叫びを上げてしまったが、

これでもとっても美少女ですごく強い吸血鬼で、名前をシャルティア・ブラッドフォールン。

 

(あ゛……ず、ずっと撫でてしまったああああ!? 魔法とか試しそこなったぁぁぁ)

 

とオーバーロードが心で喚いて恥ずかしがっていたがすぐに、

すぅーっと落ち着くオーラに支配されて羞恥から開放される。

目の前ではアウラとマーレに猛然とシャルティアが抗議していた。

 

「あ、あああ、あんたら…! アウラ、マーレ! 至高の御方々に…な、撫でられて!

 ぐ、ぬ、ぬ!!」

「へーん偽乳! 私はずっと前から大尉様にこういうことされてるんだもんねぇー」

「僕は…えへへ~……モモンガ様に初めてしてもらいました」

「むきぃーーーーーーーっっ!」

 

なにやら言い争っていると、

 

「騒ガシイナ…御方々ノ前ダゾ三人トモ」

 

コキュートスが、

 

「皆揃ったようですね…遅くなってしまい申し訳ありません」

 

次いでデミウルゴスが、

 

「では至高の御方々に忠誠の儀を」

 

最後にアルベドがやってきて、階層守護者全員が闘技場に集う。

先ほどの喧騒が嘘のように一糸乱れず傅き、頭を垂れる守護者達。

 

「各階層守護者、御身の前に平伏し奉る」

 

整然とした動作と言葉によって、忠誠の心がモモンガと大尉に捧げられた。

守護者らの持つ雰囲気にかつての仲間を見たモモンガが感動したり、

その後冷静になって向けられる忠義の重さにどんよりなったりしつつも、

セバスからの「辺り一面大草原」報告にえっ!?ってなったり

めげずに対応策を打ち出してマーレに隠蔽工作を命じたりでなかなかの指導者ぶり。

そんなモモンガを見つめる大尉の目は満足気だ。

 

一通り指示を終えて、2人の至高は指輪の転移によって玉座の間の手前…、

ドーム型大広間レメゲトンに帰還した。

67体の壁内に配置されたゴーレムの視線が2人の主を出迎える。

 

「はぁぁ~~~~……つ、疲れた…。

 なんなんでしょう大尉ぃぃ、彼らのあの高評価は………。

 尊敬が重い……俺はただの一般人なのに、いきなり王様扱いですよ?」

 

「…………」

 

と、言われても大尉は割りとああいう扱いは慣れている。

あの君臣的なものとは少し違うが、

大尉はそれなりに大きな組織でそれなりに高い役職についていたことがあり、

多くの部下を抱える尉官であった。

跪かれたことはあまりないが、敬礼され敬服されたことなら腐るほどある。

もっとも…上官といっても大尉は決して喋らなかったので、

指示はもっぱら常にへばりついていた准尉が副官面で出していたが。

 

ゲンナリしているモモンガの肩に手をのせた大尉は、軽くポンポンッと叩く。

立派だった、と言っているつもりの人狼である。 喋れよ。

 

「あ、ありがとうございます大尉。 俺、やれてましたか?」

 

こくんっと頷き肯定する大尉を見て、

モモンガの無表情のはずの髑髏フェイスがパァッと明るくなった気がする。

 

「よぉーし……俺、がんばりますよ大尉! 見てて下さい!」

 

気合が充填され、豪奢なマントの下で静かにガッツポーズを作るオーバーロードは、

寡黙な人狼を連れて歩き出す。

しかし彼はほんの少しだけ残念がってもいた。

(肩ポンじゃなくて、撫でてくれても………。

 いや、いやいや違うぞ。 俺は……ノーマルだ。

 男色の気があるからこの歳まで童貞だったわけなじゃいぞ。

 決してアウラを見て羨ましがったりしていないからな。

 マーレが照れてる姿をみてときめいたりもしていないからな!

 俺は純粋に大尉を尊敬しているだけだ……

 かっこいい人に認められリャ、誰だって嬉しいよな!?)

モモンガは自分に言い聞かせた。

 




モモンガのメインヒロイン力

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