本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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もがみんもがみんもがみんみん




八日目

6月□日

 

朝 10時 晴れ 艦娘寮前

 

「憲兵さん……お手伝いします」

 

「大丈夫ですので…」

 

荷物を運んでいる憲兵を手伝おうとしているのは潮だった。前回のお詫びをすると朝から憲兵にベッタリでどこに行くにしろ着いてくる。朝起きたときに布団に潜り込んでいた時は驚き腰がまた痛くなったのは秘密である。朝からずっと後ろを着いてくる潮。朝食もともにし、資料を纏める時も、鎮守府内の巡回をするときも、正門で警備をしているときもだ。それを蒼龍や榛名、曙、吹雪、大和が少し羨ましそうに見ているのを気づいていない憲兵。彼女を無下に扱うことも出来ないので気が済むまで共に行動することにする。しかし、憲兵の仕事は駆逐艦、ましてや女の子がする仕事だけではない。それをさせるのは流石に気が引けたので休んでいて構わないと言ったが真面目な彼女は手伝おうとしてくる。

 

「力仕事は私がしますので潮さんは少し休んでいてください。折角の休日をなんの面白味も無い私と付き合わなくてもいいんですから」

 

「でも…」

 

どうしたものかと悩んでいる憲兵。最近胃薬が手放せなくなったのは歳のせいだと考えることにしていた。

荷物を運び終えて、次は中庭の手入れをすることに。花の水やりを潮がすることになり、楽しそうに今は水やりをしている。憲兵は新しく育てた花を庭へ移していく。

 

「憲兵さんはお花が好きなんですか?」

 

潮だけではない。この鎮守府の大半が疑問に思っていること。何故花を憲兵が植え始めたのか。それを潮はいい機会なので尋ねた。

 

「いえ………気まぐれですよ」

 

そう返し黙々と作業を続けていた。潮はその後に憲兵から多くの花の名前などを憲兵から教えてもらったりしていた。

 

「ただいま戻りました。憲兵さん」

 

そこへ赤城が演習を終え帰ってきた。憲兵は立ち上がり頭を下げる。潮も敬礼をして返事をする。

 

「お疲れ様です!赤城さん!」

 

「おはようございます。赤城さん」

 

「あれ?潮ちゃん憲兵さんとあれからずっと一緒なんですか?」

 

首をかしげる赤城。朝に演習で出るときに正門で警備をしていた二人を見たからである。もうあれから三時間は経っているのに二人で行動しているのが不思議で仕方がないといった様子。

 

「今日は憲兵さんのお手伝いをしようかと」

 

「へぇ~……偉いわね」

 

そう言って潮の頭を撫でる赤城。照れながら撫でられる潮。赤城はこの後暇と言うことで二人の作業を手伝うことにした。

 

「憲兵さん。この花は食べれるんですか?」

 

「食べれません」

 

 

 

昼 13時 食堂

 

憲兵と潮、赤城は昼食をとっていた。相変わらず憲兵は黙々と日替り定食を食べ、赤城は幸せそうに蕎麦をすする。潮は魚の骨と格闘していた。そこにお盆を持ち向かいの空いている席に来たのは北上と大井だった。

 

「前失礼するよー」

 

「お邪魔します」

 

「どうぞ」

 

軽く挨拶を交わし再び箸を進めていく。北上は食べながら憲兵の顔をチラチラと見ていた。

 

「北上さん?私の顔に何かついてますか?」

 

「いやぁ~無表情で食べる憲兵はかわいいなぁ~って」

 

「そうですか?」

 

「大井っち~。よーく見てごらん」

 

大井は憲兵の顔をまじまじと見つめる。なるべく気にしないように考えていたがここまで見られていると食べ辛い。

 

「あの…あんまり見すぎるのは良くないと思います」

 

助け船を出したのは潮だった。潮に咎められた二人はごめんねと謝罪し食事を再開した。

 

 

夜 19時

 

「本日はありがとうございます。助かりました」

 

「でも…あんまりお手伝いできていませんでした」

 

1日の業務が終わり憲兵はもうすることがないと潮に伝えお礼を言う。しかし、潮は納得していない。

 

「手伝おうとしてくださっただけでも結構です。昨日の事なら気にしなくてもいいです」

 

「でも……」

 

「艦娘を守るのが我々憲兵の仕事ですから」

 

「でも腰を痛めて…」

 

「それは歳のせいです」

 

「え?」

 

「もう三十路なので…」

 

冗談なのか本気なのか分からない返答をする憲兵に対して潮は少し気が楽になる。もうすぐ消灯時間であることを伝え潮を艦娘の寮へと戻らせた。

 

 

 

夜中 0時 鎮守府内倉庫

 

潮が戻った後、自室にて資料をまとめ憲兵は夜の巡回にて出ていた。一人警備をしながら歩く憲兵はふと後ろから誰かに見られているような気がして後ろを振り向くが誰もいない。気のせいだと考え歩く。また時間が経つと視線を感じる。今度は確実に気配を感じていた。憲兵は腰につけている銃に手を掛け、警戒しながら進んでいく。角を曲がり待ち伏せをすることにし、息を殺し気配を完全に消す。するとヒタヒタと足音が近づいてくるのを確認し銃を抜き近づいて来ていた物を取り押さえた。ヌルヌルとした感触がしたが気にしている場合ではなかった。

 

「何者だ?ここが世界海軍連合管轄の鎮守府と知っての狼藉か?」

 

「……………ヲ」

 

「………………?!」

 

憲兵が取り押さえたのは深海棲艦の空母?だった。

抵抗することもなくじっと憲兵を見つめる深海棲艦。資料で見た様な感じの物ではなく、かなり小さい。駆逐艦並の大きさだった。驚き固まっている憲兵は足に何かが体当たりしているのに気づく。足元を見てみると深海棲艦のイ級?のような物二匹がぱしぱしと体当たりをしていた。

 

 

本日の主な出来事

 

 

潮さんと共に行動する。

 

 

赤城さん、潮さん、北上さん、大井さんと昼食を取る。

 

夜中

深海棲艦らしきものを捕獲?する。資料で見たものよりも小さく、ヲ級は駆逐艦並の大きさ、イ級は手のひらの大きさのもの二匹を捕獲。抵抗することもなく従ったので憲兵寮の空きの部屋へ。翌朝の早朝に提督に報告することにする。なおこの資料は大本営には提出しないものとする。

 

一言

 

不味いことになった。

抵抗しないものは撃つなという憲兵隊の教え以前に撃てるわけがない。

 

最後に

 

本日は晴れ、異常発生

 




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